ナーヴギアで焼き芋作ったら日本を救えたらしい 作:エヴォルヴ
兄「愚弟よ、聞け。低評価を押す連中は、お前の才能に嫉妬しているのではない。お前を貶めるつもりで評価をしている者は少ないだろう」
私「ではなぜ低評価を押すのだ、彼女ほったらかしにして卒業論文に明け暮れていた愚兄よ」
兄「デート一回で許してもらったからいいのだ。……お前よりも面白い作品を書けるという自信があるからだ。つまり、どういうことか、分かるか」
私「……面白い二次創作がさらに増え、その原作に触れる者が増える……と?」
兄「然り。低評価とは言葉通りに非ず。新たな二次創作の種ゆえに。低評価の数はこれから増える二次創作の数と知れ」
※本来なら普通に話すはずですが、その日は五徹目でお互いテンションが狂ってます。
案内役を手に入れ、買い物を終えた。
予備弾倉、防弾ジャケット、ベルト型の《光学銃防護フィールド発生装置》────多分Iフィールド的なサムシング────などなど、小物装備を買い込むと、お金はすっかりなくなってしまった。
動画撮影用のお金はまだあるけど……あ、ちなみにそのお金はお年玉とかAC世界で稼いだものである。凄いよな、ACBONW。千クレジット稼げば百円になるんだから。
「……さて、そろそろ行かないとな」
「だね。もう二時五十分────五十分!?」
「お、さてはヤバいな?」
このゲームはテレポート機能とか転移装置なんて便利なものは存在しない。死ぬことだけが瞬間移動現象を起こせるたった一つの方法なのだ。凄く不便だが、ALOとかの高速移動手段に慣れすぎただけで、プレイヤーが狩りに出る時とかは大遠征になるのが普通である。
「……ところで、総督府は何処?」
「あそこだね。市街の北の端! 三キロ先にあるんだ!」
「ほほう……つまり……三分か」
さてさて、計算していけ。遥か彼方に見える馬鹿みたいにデカイタワー……あそこに行くには三分。三分で到達……あれ、走りで到達するのは無理では?
「つうか残りのメンバーどこ行きやがった!?」
「先に行ったよ、あははは!」
「「笑ってる場合か!?」」
ちょっと前にメッセージが送られてきてはいる。先に行くって伝えてなかったっけ?
まぁいいや。到着までに一分で一キロを踏破する必要がある。この人混みを走り抜けるのは無理だけど、どうしようかなぁ……
「……! トーマス!」
「ん?」
周囲を見渡していたキリトが突然叫ぶ。どうやら何かを見つけたらしい。キリトが指差した方向を見ると、派手な原色のバギーが見えた。なるほど、バギーというやつだな?
心臓が爆発しそうな予感がしながらも、
こうなればテンションを上げるしかねぇ……! キリトに目配せすると、彼は俺が何をしたいのかを理解したようで、頷いた。
「「突撃ィイイイイ!!」」
「えっ!?」
銃士Xさんを在庫があったサイドカー付きバギーのサイドカーに放り込んで、俺がシートに、キリトがリアステップに飛び乗って掌紋スキャン装置に右手を叩き込む。
三輪タイプのバギーの前半分は、昔やったレースゲームのバイクと同じ構造だ。……あ、これマニュアルなんだね? ここを、こうして……こうすれば……エンジン入ってフルスロットル! いいね、バイクって全部共通なのかな? そんなことを思いながら、俺達は車道へと飛び出した。
「「FOOOOOOOOO!!?」」
「ひゃあっ!?」
速い! 速いぞ! ……あ、でもACより遅いから出直してきてくれ。
俺達が興奮混じりに叫ぶ中、可愛らしい悲鳴が聞こえた。全力で掴まっててくださいね。アクセル全開で行くので。────おお、百キロ到達! 百五十キロまでいけるか……!?
「危ね!?」
「内なる藤吉郎が出てきたな今! トーマス、前見ろ!」
「気持ちはVOBでマザーウィルに突撃してる時!」
車道を走る四輪車を全力で躱しながら、俺とキリトは滅茶苦茶笑顔である。
「よくこのバギー動かせるね!?」
「戦闘機よりは簡単!」
「そういやお前BFだと戦闘機専だもんな」
「それに、レースゲームも嗜んでたし……って、危ないなぁ本当に!」
突然車線変更してきた大型バスを回避しながら、さらに加速していく。うーむ、バイクのために免許取ろうかなぁ……いやでも、キャンピングカー乗りたいから普通免許にしたい。あわよくば中型も取っておきたいので、勉強頑張らないと。
キャンピングカーに乗りたい理由は、キリトとの動画撮影で使いたいというのもあるが、フェンリー、スコル、ハティが走り回れる場所とかに行きたいからだ。海とか、川とか。
────などと考えていると、サイドカーに乗っていた銃士Xさんが楽しそうな笑い声を発した。
「あはは……! 凄い速い!」
「「ん!?」」
今、日本語じゃない言葉が混ざったぞ!? もしかして、在日外国人だったりするのかな、この人。
「ねぇ、もっと飛ばせる!?」
「了解!」
「ガンガン行こうぜ!」
残り距離、大体一キロくらいの総督府のタワーを睨み、ギアをさらに踏む。エンジンが、けたたましい咆哮を上げてスピードメーターが二百キロに迫る。
この速度なら、一キロなど簡単に突破できるだろう。しかし。
「「「ヒャッフウウウウウウ!!」」」
その僅かな時間に俺達が響かせた叫びは、GGO世界での思い出となる気がした。
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総督府に到着してからは急ぎに急ぎを重ねた。
タワー改め、《SBC》のブリッジ────この総督府は宇宙船だったらしい────のエントランスを通り抜けて、近未来なディテールまみれの場所へと向かう。
「ここでエントリー! ちょうど空いてるから間に合いそう!」
「あら、日本語。英語が来るかと思ったんだけど……」
「……なるほどな、まだまだ発展途上なゲームなんだな」
モニターに映し出されている画面は日本語表記。ザスカー社はアメリカの企業だからね。まだまだ日本語表記はある程度のものらしい。
エントリー画面に移行すると、画面は名前や職業を入力する画面へと変わる。ゲームなんだから、キャラネームくらいシステム参照してくれ……
文句を心の中で呟きながら、住所とかのフォームを空欄にしてエントリーを終える。賞品とやらはネットを見てもモデルガンっぽいし、いらないや。
「お」
再び画面が切り替わると、エントリーを受け付けた旨のメッセージと、予選トーナメント一回戦の時間が表示された。時間は────あら、三十分後。早いなぁ。
「どこのブロックだった? 私はAだったけど」
「俺はF。トーマスは?」
「G。綺麗に分かれたなぁ」
トーナメント表を見ても、全員がバラバラになっている。……あ、死神部隊の人発見。うわー……Jとハングドマン、Kとマギさん、Nとナインさん、Dとキャロリンさん……ブロックに入ってる人達、気の毒に…………あ?
「キリト、これ……」
「ん?」
トーナメント表を見て、気になる単語を見つけたのでキリトに見せると、銃士Xさんも覗き込んでくる。ヒエッ、近い……硝煙の臭いじゃなくて、女性特有の柔らかい匂いがする……!
「スティーブン……の打ち間違い?」
「いや、これ……ドイツ語じゃないか?」
「……だよね」
俺のブロックにいるこの……スティーブンみたいな名前のプレイヤー……ドイツ語表記で死亡という意味を表す言葉にしていた。ステルベン……俺の義手を用意してくれた人がドイツ人だったからスペルも覚えている。
「……分からないが、こいつかも」
「……かもな」
「え、二人ともどうしたの?」
「「いや、ちょっと用事があるやつがいて」」
こいつが例の野郎であれば、俺が一番最初に接触することになるだろう。……どうすっかなぁ……接触したら初手で殺っちゃいそうな気がしなくもない。気に入らない臭いってやつがするし…………まぁ、その時はその時。ぶつかるとしても決勝だし、その時に考えるとしよう。
「まぁ、とにかく。準備しなくちゃね。あ、場所は分かる?」
「……あの階段を下に行くと見た」
「お、正解」
近くにあるフロアマップを見ればわりと簡単だ。情報収集、大事。あとは、ACBONWのイベントフロアにそっくりだったこともあって、すぐに察しがついた。
「下に降りると、他のプレイヤーもいるんだよ。……私はまぁまぁ名が通ってるけど、二人は……」
知名度がないから絡まれたりするかもしれない、と。治安悪いんだな、このゲーム。ALOもそうだったけど、なぜこうも超スキル指向のゲームというのは治安が悪いのだろう。
────どうでもいい話になるが、ALOでの誹謗中傷による裁判は勝った。侮辱罪と、人種差別撤廃条約? と……あとなんだったかな……名誉毀損。他にもあった気がするけど、とにかく勝った。全員青ざめてたのが印象的である。ゲームの中で言ったことがまさか現実で訴えられるとは思っていなかったのだろう。
話が逸れた。とにかく、銃士Xさんは気を付けろと言ってくれている。気持ちはありがたい。だから離れて?
「別に問題ないですよ。俺達、神経は図太い方なので」
「特性てんねん、ひかえめラウドボーン並みには耐久高いんで」
「ラウ……?」
おっと、ポケモンやってない勢だったか。強いぞ、てんねんひかえめラウドボーン。ちなみに俺のラウドボーンのニックネームはカイマン。
地下の大きなフロアに辿り着くと、視線が突き刺さる。……いや、なんだろうこれ。俺とキリトと銃士Xさんに向けられてる……変な視線……もしかして、俺達女だと思われてる? 女顔だからって女だと思うなよ。あとそこの無精髭のグラサン! 女性に下卑た視線を向けるんじゃあない。女の人って結構視線に敏感なんだぞ。
さりげなく視線をカットしながら席を探していると、図太い神経を見せつけられた銃士Xさんが苦笑する。
「まぁ、君達が大丈夫って言うならいいや。絶対に勝ち上がってきて。そうしたら……」
銃士Xさんが強者の笑みを浮かべ、俺の額に人差し指を向けて口を開いた。
「私が撃ち抜いてあげるから」
……ああ、これはいい。心地いい敵意と殺意が込められた宣戦布告だ。この人はきっと、このゲームで色んな人達と戦って勝ち抜いてきた人なんだろう。ならば、なればこそ。
「
「
こちらも宣戦布告しなければ無作法というもの。善意には善意を、悪意にはさらに悪質な悪意を、裏切りには相応の報いを……ノーカウントなんてものはない。そして……殺意には殺意を。傭兵達の嗜みである。
「……本当に、ルーキーとは思わない方がいいわね。期待してる」
「ああ、期待しててくださいな」
「まぁ、俺よりもこいつに期待してくれ。こいつ、マジで飛び道具ありの戦闘なら負け無しだから」
うーん、勝率そこまで良くないんだけどなぁ。ナインブレイカーの称号もらってないし。結局、俺は野良バトル野郎なわけで。【人類種の天敵】なんて称号も、俺より似合う人結構いるんだよね。卑屈になるつもりは全くないが、虚偽の情報を与えるのは良くないぞキリト。
地下の空いている席を探しながら談笑していると、控えめなボリュームで流れていたBGMがフェードアウトし、代わりにエレキギターによるファンファーレが轟いた。
「おお、こんな感じかファンファーレ」
「凄い音だな……」
なんだかミームミームうるさそうな季節風の曲に似たエレキギターのファンファーレが鳴り響いた後、甘い響の合成音が総督府中に響き渡る。
『皆様、大変長らくお待たせしました。ただ今より、第三回バレット・オブ・バレッツ予選トーナメントを開始いたします。エントリーされたプレイヤーの皆様は、カウントダウン終了後に、予選第一回戦のフィールドマップに自動転送されます。幸運をお祈りします』
「んじゃ、行きますか」
「っし、行くぜ」
お互いに武器を装備して、買ってきたミント味のタバコもどきを咥える。……柑橘系の方が美味しいフレーバーなんだよなぁ、やっぱり。
キリトと拳をぶつけ合い、スイッチを入れる。バリバリと電流が流れる感覚……無駄な情報が削ぎ落ちていく。その時、遠くから他のメンバーと黒い隊服に身を包んだ不穏な雰囲気を纏う連中と目が合った。
「皆で行くぞ、偽物の死神を殺しに」
「……ああ」
さらに奥にいた水色の少女にロックオンされていたらしいキリトが返事をした瞬間、俺のアバターは転送エフェクトに包まれる。……あれ、今水色の少女がこちらも見た気がしたけど……気のせいだよな! 頼むぜ、キリト。水色の少女のヘイト稼いで?
転送された先は、六角形のパネル……パネルでいいのか、ここ。対戦相手は……えーと……イツキ……でいいのかな? 誰かは知らないが、敵ならばぶっ殺すだけだ。
武器は《ムラサメブレード》という聞き覚えがあるエネルギー鉈と、《トーラスレイジングブル・六連式カスタム》。背にはアサルトライフル────ではなく、《ウィンチェスターライフル》。アサルトライフルもいいのだが、ウィンチェスターの姿に惚れてしまったのである。
「……さ、遊ぼうぜ、イツキさん」
装備の全てを確認し終えた俺を、再び転送エフェクトが包むと、広大なフィールドに放り込まれた。
「……へぇ?」
舞台は市街地……それも、廃墟の街。イチジクのタルトって続けたくなるくらいには廃墟の街。さてさて、どんな戦いになるのかなぁ……と、思っていた時。
「……!」
寒気がする殺気が頭に突き刺さる。────が、多分これはブラフで本当の狙いは、脚。こういうフェイントは嫌と言うほど見てきたしやってきた。
飛んでくるであろう銃弾を予測、そこにブレードを合わせてエネルギーブレードを起動。ブゥン、と頼もしい振動が伝わり、月光のように青白い光が鉈の刃をコーティングする。タイミングが噛み合ったのか、振り上げたのと同時に弾丸がブレードに直撃、融解した。
「月光かよ」
弾丸が飛来した方向を見ると、一瞬だけスコープが光を反射して光ったのが見えた。だが、多分あそこにイツキさんというプレイヤーはいない。初弾が外れた時点で移動しているはず……なんだけど……
「……まだいるな」
さっきのが偶然だとでも思っているのか、あそこからの狙撃をまだ諦めていないようだ。次は当てるという強い意思を感じる。その意気やよし。
「行く、ぞォ!!」
ガァンッ! と、地面を砕く勢いで突っ込む。廃墟の街というだけあって、障害物が多い。
普通ならその障害物を遮蔽として使うのだろうが、俺や他の傭兵は違う。障害物は蹴って加速するためにあるのだ。跳ね回れ、バッタのように、ノミのように、ウサギのように!
これだけ動き回られると狙いが定まらないようで、さっきから一発も当ててこない。どうしたよイツキさん。これくらい当ててくれないと、死神には勝てないぞ。
「木登りとかは得意じゃないんだけどなぁ」
若干の萎えを感じながらも、加速した勢いを使って廃墟のビルを駆け上がる。もちろん走っているわけではなく、窓の金属部分……格子って言えばいいの? 時折あれを掴んで、曲芸をするように登っている。
「到着! んで────」
持ってるのは……ドラグノフかな? それを構えていた男性プレイヤーの脳天を武器ごとかち割り、ダメ押しと言わんばかりにレイジングブルの.454カスール弾を叩き込む。
「────化け物め……!」
「んふふ、よく言われる!」
悔しそうに笑ったイツキさんに対して、酷く楽しそうに笑った俺。戦闘時間は本当少ないものだったが、心を通じ合わせることができたような気がした。
トーラスレイジングブル・六連式カスタム
.454カスール弾を六発叩き込みたいがためにカスタムされたトーマス専用レイジングブル。銃身、冷却機構、グリップ、トリガー、撃鉄などなど、トーマス好みに仕上げてある。
ウィンチェスターライフル
トーマスが惚れてしまったライフル。大体の距離に対応するためのカスタムが施されており、トーマスの距離に持ち込むまでの繋ぎでもあり、第三の相棒でもある。
MP5・ブラッキーカスタム
キリトがファイブセブンよりも前に見つけて惚れてしまったSMG。フォトンソードを振り回しながら使うことを想定し、精度と取り回しにカスタムをガン振りした変態仕様。カスタムしたのはトーマスと銃士X。