ナーヴギアで焼き芋作ったら日本を救えたらしい   作:エヴォルヴ

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キリトーマスチャンネルの動画とか、読みたいです?


キリトーマスの秘密

実はダブルデートなるものに憧れている。旅行でもあり。その場合、三頭の狼犬フェンリー、スコル、ハティもついてくる。


18.髑髏を砕いて、踏み潰す

 ロボットホースなる滅茶苦茶使いにくい馬を何とか操って、やってきたのは砂漠地帯の洞穴。ここはサテライト・スキャンが入らないらしく、追跡から逃れるには最適らしい。

 

「つ、疲れた……」

 

「大丈夫?」

 

「なんとか……ほんっとに……銃士X(マスケティア・イクス)さん、あなたあいつに何か恨み買われるようなことしたんです?」

 

 あの野郎、銃士Xさんを殺ろうとしていたのだ。話し声は聞こえなかったが、雰囲気的には銃士Xさんに何か恨みを抱えていたっぽいんだけど……

 

「分からない……分からない、けど……」

 

「けど?」

 

「私のことを、知ってた。名前を……知っていたわ」

 

 ……ふむ。なら、現実世界で彼女と面識がある人があのプレイヤーの中身ということか。でも、透明マントがあるなら個人情報を抜き取った可能性もある。

 

 考察に頭を回していると、銃士Xさんがポツリと呟いた。

 

「トーマス、聞いてもいい?」

 

「はい?」

 

 どうしたんだろう、改まって。

 

死銃(デス・ガン)は……どうやって人を殺してるのかな」

 

「え?」

 

 そんなの、空き巣に入っての毒殺だろう。薬品をちょちょいと入れてやれば、人間なんて勝手に死ぬ────

 

「あ……」

 

「な、何……?」

 

「ヤバい……ヤバいぞ……! この仮説が正しいなら……!?」

 

 だが、だが……! ありえるのか!? あり得て、いいのか、こんな馬鹿げた話が! ……あり得ないなんてことは、あり得ない。最悪の想定を組み立てていけ。

 

 仮定その一、光学迷彩がフィードだけでなく圏内エリアでも使用可能である。

 仮定その二、死銃が複数犯による殺人である。

 仮定その三、死銃の十字切りはタイミングを合わせるための演出とカモフラージュである。

 仮定その四……この人の部屋に、共犯者が侵入して、大会の中継画面で彼女が撃たれる瞬間を待っている。

 

 複数犯だと分かっていた時点で、なぜそれを考えなかった。俺の馬鹿野郎。すぐにここから離脱したいが、大会に参加している最中で、この人がどこにいるのかも分からない。闇雲に動いて状況を悪化させる可能性すらあるのだ。

 

「ねぇ、トーマス? 何が、分かったの?」

 

「……」

 

 言えるか、こんなこと。たとえ言ったとしても、受け入れられるものではないぞ。

 

「大丈夫。私は何を言われても納得するよ。君の言葉なら」

 

「信頼が重い……つーか、あなたどうして俺にそこまで?」

 

「前に言ったでしょ? 助けてくれたって」

 

 助けてくれた……? 俺、あなたを助けたことありましたか? 初対面じゃないんですか? ……リアルでキリトがニヤニヤ笑ってきたのと関係している可能性があるな。あの野郎、彼女ができたからって最近ホクホクしすぎなんだよ、羨ましいなぁ。

 

「……本当に?」

 

「うん」

 

「後悔しません?」

 

「しないよ」

 

「………………」

 

 ここまで言われたら、受け入れるしかないだろう。

 俺は息を吸い込んでから、問いかけた。

 

「銃士Xさん、あなた一人暮らしですか?」

 

「え? う……うん。一応大学生だからね」

 

「戸締まりは?」

 

「してるよ。シリンダーと電波ロック」

 

「チェーンは?」

 

「…………してない、かもしれない」

 

 仮説の立証が、されてしまう。恐ろしい仮説、外れてほしかった予想が、当たってしまうかもしれないという冷たいものが背中で蠢いている。

 

「────落ち着いて、聞いてください」

 

「…………うん」

 

 銀細工のような瞳を真っ直ぐ見て、震える声で言葉を紡ぐ。

 

「あなたを拳銃で撃とうとした。それは……もう、準備が完了しているってこと、です」

 

「準備……」

 

「今……この瞬間……現実世界のあなたの部屋に、誰かが侵入して、あの拳銃に撃たれるのを待っている可能性が、あります」

 

 銃士Xさんの表情が青ざめ、凍りつくが、その表情はすぐに消える。多分、俺が酷い顔を晒していたからだ。俺だけが安全な場所にいて、この人は危険に晒されている。それが、なぜか恐ろしかった。赤の他人────結構ぐいぐい来るけど、凄く優しくしてくれた彼女が殺されるかもしれない。なぜなのかは分からないが、嫌だ。

 

「……私はまだ、撃たれていない。なら、大丈夫なんでしょ?」

 

「……はい。でも……それでも、危険は去ってない。あなたが一発でも攻撃を喰らえば、終わりだ」

 

 何度も落ち着けと命じているのに、落ち着かない。なぜ俺はここまで銃士Xさんに肩入れするんだ? 確かに俺の好みのストライクゾーンど真ん中だけど、そんなことで肩入れする必要はないはずなのに。

 

「なら、大丈夫。あれに当たらなきゃいいんだから、楽勝だよ」

 

「楽観的、ですね」

 

「もちろん。ぶつかり続けても、気を張り続けても折れてしまうんだよ?」

 

 なら、楽観的に楽しく過ごした方がいいじゃん。

 そう言った銃士Xさんの花のような笑顔は凄く魅力的で、こんな状況でありながら顔を赤くして目を逸らしてしまう。

 

「ふふ、トーマス、顔真っ赤だよ」

 

「……すみません」

 

「責めてないよ。可愛いなぁ、とは思ったけど」

 

「母さん似の顔つきに感謝ですね」

 

 頭を撫でてくる銃士Xさんの距離の近さが俺の脳を狂わせる中、視界の端に何か赤いランプが光っているのが見えた。これは……録画中の合図……かな? 

 

「銃士Xさん、この赤い点滅は?」

 

「え? ────ああ、ライブ中継カメラね。残り人数が少なくなってきて、こんなところまで来たみたい」

 

「あら……それは……」

 

「見られて困るような相手でもいるの?」

 

「いや全然。……あ、でも父さんと母さんが見てるなら、ちょっと怖い、かも?」

 

 父さんと母さんは俺のことをよく見てるから大丈夫だとは思うが、それでもちょっとだけ怖い。関係性とか根掘り葉掘り聞かれそう────!? 

 

「ちょ、ちょっと銃士Xさん!?」

 

 突然抱き寄せられてしまい、柔らかい感触が俺の顔を覆った。視界を支配するのは白っぽい肌色のみ。いや、なんでこうなってるんですかねぇ!? 

 

「何してるんですか一体!?」

 

「え? アピール?」

 

「アピールってなんの!?」

 

「うーん……内緒」

 

 何をアピールするんだこの人。……もしかして、男避け的な感じ? 俺のアバター女の子っぽいから、同性愛者であると示してる感じなのか? 

 

「あとで分かるよ、多分」

 

「多分!?」

 

 だ、ダメだ……この人のペースに乗せられてしまう。ああ、いい匂いするし、凄く温かくて柔らかい……! し、心拍数が……俺のBPMが加速してる……!? 上がるな、俺の鼓動……! 

 

 素数を数えて落ち着きを取り戻そうとしていると、ライブカメラの視点を現すオブジェクトが消え、赤いランプの点滅が消える。

 

「さ、アピールもできたところで、そろそろ時間だね」

 

「ヒ、ヒィ……女の人って凄い……」

 

 よろよろと離れて砂漠の冷気を全身に浴びる。冷たくていい風を感じながら、ウィンチェスターライフルとエネルギー鉈を手にして立ち上がった。

 

「サテライト・スキャンで確認しなくちゃ。一応お願いできるかな?」

 

 銃士Xさんのお願いに了解しようとしたその時。洞窟に入るための入口に、黒い影が現れる。まさか、気付かれたのか、と思って入口を見るとそこには────

 

「「「「「「さっきは、お楽しみでしたね」」」」」」

 

 凄く生暖かい目で俺を見ているキリト達の姿があった。

 

「やかましいわ!? てか、見てたのかよ!?」

 

「一部始終はっきりと。いやー、トーマスにも春が来たかぁ」

 

 どこか感慨深そうに呟くキリトと、同調するように頷く傭兵達。こ、こいつら……! 

 

「いやー、めでたいね」

 

「絶対面白がってるだろハングドマン!」

 

「いやいや! ちゃあんとめでたいと思ってるよ」

 

 絶対嘘だ。声が笑ってるし! 

 

「ハングドマン達のことは放っておいて……トーマス、ミッションの内容を確認するわ」

 

 マギさんの言葉が洞窟に響いた瞬間、俺達の意識が切り替わる。

 

「ミッションの内容は最近ネットを騒がせるプレイヤー、死銃(デス・ガン)の撃破。既に被害が二人も出ているから、ここで確実に仕留めなければいけないわ。この世界のためにも、これ以上の悲劇は防がなければならない」

 

 マギさんの言葉をキャロリンさんが継ぐ。

 

「僚機として死神部隊、トッププレイヤーの闇風、スナイパーのシノンが参加します。死銃撃破後、大乱闘による決戦でBoBを締め括ると決定されました。大会終了後、警察への通報、警備員及び警備ロボットの派遣を行うため、住所の開示をお願いします。……さて、銃士X様、あなたはどうしますか?」

 

「もちろん、参加するわ。このゲームが、この世界が大好きだから」

 

「……了解しました。では、のちほど住所の開示をお願いいたします。住所などの個人情報はこの非常時のみに使用することをここに誓います」

 

 銃士Xさんも死銃討伐作戦に参加するようだ。乱戦になれば、狙おうにも狙えなくなる。しかも彼女の武器は狙撃を得意とする銃M14EBR……つまり、安全圏からの攻撃が可能である。俺やキリト、ナインさん、RGさん、ハングドマン、マギさんとキャロリンさん、闇風さん? とシノンさん? そして死神部隊を相手にしながら彼女を狙うなど不可能だろう。

 

「作戦を開始します。現在、死神部隊と闇風氏が死銃の足止めを行っています。ポイントはサテライト・スキャンにて確認してください」

 

「了解。……っし、行くぞキリト」

 

「ああ。終わらせる。こんなくだらない殺人事件はここで全部終わらせる!」

 

 キリトの声に全員が頷き、各々の得物を握る。……さぁ、ウィンチェスター、レイジングブル、ムラサメブレード……俺に力を貸してくれ。あんな仮初の力、くだらない殺人によって欲求を満たそうとしている屑なんかに負けたくないんだ。

 

 思いが届いたのかは知らないが、何か熱いものが注がれる感覚が俺の体を襲う。

 

「トーマス、お前の目……」

 

「ん?」

 

「そんなに金色だったか? 芋けんぴみたいだぞ」

 

「もっといい表現あっただろ。お前もスイートポテトカラーだぞ、目の色」

 

 まぁ、集中力が向上してるし、いいんじゃねぇかな。目の色が変わったのはあれだよ、バグだよきっと。……ザスカー、こんなバグ残してるとは、運営の風上にも置けない存在じゃのう。……でも、この程度のバグだから放置してる可能性はあるな? 

 

「じゃあ焼き芋色」

 

「そうそう、そういう表現を聞きたかった」

 

「「「「「「感性が狂ってる」」」」」」

 

「「一週間無人島生活、近日投稿予定!」」

 

 こんな時でも動画の宣伝は忘れない。動画投稿者として、俺達はプロ意識を持っているのだ。これがプロ意識というべき代物なのかは別として。

 

 

 ────────────────────────────────

 

 

 死銃はただひたすらに焦っていた。

 目の前にいる四人と、闇風というプレイヤーを殺せない。黒星と呼ばれる拳銃で何度も撃っているというのに、全く掠りもせず、当たらないのだ。

 

「なぜだ……! なぜ当たらん!?」

 

 ボイスチェンジャーが入ったガサガサ声が砂漠に響く。その声を聞いた死神達は呆れたような、失望したような声音で言葉を紡ぐ。

 

「簡単なことだ。貴様程度の実力では、死神にはなれん」

 

「素養の持ち主かと思ったが、どうやら見当違いだった。俺の勘も鈍ったものだな」

 

「お前など、鴉にも山猫にもなれないただの人殺しだ」

 

「期待外れの獣風情だな」

 

 神経を逆撫でするような言葉に、死銃────ステルベンは声にならない怒りの叫びを上げた。

 

 自分は力を手に入れたのだ。誰もが恐れるような最強の力を手に入れたのだと。ゼクシードも、薄塩たらこも、ギャレットも粛清したはずなのに。

 

「貴様らは、何なんだ!? なぜ俺の邪魔をする!?」

 

「貴様のような存在がいるだけで、VRMMOの世界は縮小せざるを得なくなる」

 

「多くのゲーマーを貶めるような行為。死神の名を騙った貴様には────」

 

 死すら生ぬるい地獄を味わってもらう。

 ドナルドがそう言った瞬間。

 

「仲間外れはよくないなぁ。オレも混ぜてもらわないと」

 

 底冷えするような声が砂漠に響き渡った。

 

「ハングドマン、そいつは私達の獲物よ。あなただけのものではないわ」

 

「専務、自重してください。何をするつもりですか」

 

「いやいや、ちょっとお手伝いをね!」

 

 楽しそうな声が響いた直後、死銃は半ば直感で体を逸らしてみせる。彼の鼻先を掠める形で通り抜けていった弾丸は、リロードのために一瞬止まっていた闇風に直撃。フレンドリーファイアじみた攻撃に闇風は驚いたが、

 

「止まった俺の、ミスか……! あとは任せる……!!」

 

 トッププレイヤーとしての矜持をもって、闇風の後ろから接近していたプレイヤーに己の魂を預ける。

 

「借りるぜ、闇風さん!」

 

「おいこらハングドマン! ターゲット違ってんぞ!!」

 

「アハハハハッ! そうだっけ!? ま、いいんじゃないの、どうでも。先に殺すかあとで殺すかの違いだよ」

 

「狂ってるっすよ、本当に。……ま、それが俺達が知ってるハングドマンか」

 

「かの主任はさらに狂っているから、まだ優しい方だろう。……さて、ステルベン……貴様はやりすぎたんだよ」

 

 遠くからはシノンと銃士Xが狙撃の準備をしている。包囲するのは四人の死神、真紅の最強ナインブレイカー、報復において最強を誇る復讐者、己の快楽こそが至高の吊るされた男、何もかもを見通しているような能天使、青き伝説の女傭兵。そして────何もかもを黒く焼き尽くす黒い鳥。

 

 闘争を求め続け、戦い続け、破滅すら許容する。しかし、立ち塞がる者達を全て食い荒らすイカレたプレイヤーが集まる世界で、異名を勝ち取った怪物達が、死銃を────ステルベンという仮初の力に溺れた愚者を叩き潰すために集まった。

 

 誰もが……キリトとトーマスが顕著だが、瞳に薄らぼんやりと黄金の光が灯っている。

 

「ここに集まった全員が、貴様を叩き潰すために立ち上がった人間だ」

 

「人間の可能性……戦いの中で恐怖に打ち勝った者と、仮初の力に縋っているお前……どちらが強いかなど、答えは明白だろう」

 

 死銃が、荒野に集まった全員のプレッシャーにたじろいだ。今の彼は網にかかったヒンバス、まな板の上のコイキング、袋の鼠のハム◯郎。

 

 さて、勘のいい者なら、この後彼がどうなるか分かるだろう。集まった傭兵、囲まれた髑髏の男、何も起きないはずがなく……

 

「これより、第一次髑髏粉砕合戦を開始する」

 

「デュエル開始の宣言をしろ! トーマス!」

 

「はーい、始めいッ!!」

 

 ドゥンッ!! 

 トーラスレイジングブルから弾丸が吐き出され、死銃の左手が消し飛ぶ。

 

「よーし、ファーストアタックは俺がもらったァ!!」

 

「フライングはズルだろトーマス!」

 

「うははは! 殴れ殴れェ!!」

 

 ふざけた力を振るう者に慈悲はない。かといって馬鹿正直に戦ってやる必要もない。ゆえに、タコ殴りである。

 

 この中継をGGOプレイヤーやゲーマー、イグドラシル・シティで応援していたアスナ達は口を揃えてこう言った。

 

『あそこまで一方的な殴り合いは初めて見た』、と。

 

 

 




カヤバーンは闘争を求めれば良かったんだよ。デスゲームなんかよりも、AC世界の傭兵達の方が人の可能性を魅せてくれただろうさ!!
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