ナーヴギアで焼き芋作ったら日本を救えたらしい 作:エヴォルヴ
無駄に声がいい暴走機関車。多分というか、確実に思い出の中でじっとしていられないタイプ。とにかく強固で馬鹿みたいな精神力があるので、多分アドミニストレーターとかの天敵。
ナーヴギアを焼き芋製造機に変えて日本を救った変態。悩み相談とか恋愛相談とか、真面目な時はしっかり真面目だが、変人な状態が目立つ。
システムの穴を見つけて、傷口を広げるどころかぐちゃぐちゃに掻き回した後化膿させて収拾がつかなくさせてしまう。アインクラッドの中にいたら確実にカーディナルやカヤバーンの天敵になる。多分カーディナルが分からせられてダブルピーススマイルを晒し、カヤバーンが頭痛と胃痛に悩まされる。
この世界線ではそんなことはなかったよやったね!!
やぁ皆! 僕、ミッ────おっと、止めておこう。死を根絶する夢の使者Dがやって来そうだからね。
オッホン。俺は遠間瑞理! 考古学に魂を奪われた母親と、わりかしサイコな母に恋をしたイカれ考古学者の父親の間に生まれた暴走機関車さ! 身長は169、髪色は茶色! 三白眼が怖いってよく言われるけど、多分美形な方だと思う。父さんも母さんも綺麗だし。
完成されたニュータイプならぬ、完成された放任主義で今もイチャイチャしながら去年からエジプトにいる。ケッ、リア充め!! だからいつまでも若々しくて夫婦円満で周りから砂糖を吐かれるんだ。あ、一人っ子です。父さんも母さんも作りにくい体質らしいので。
まぁ、そんなことはともかく。今俺は親友の桐ヶ谷和人と一緒にダンディな外国人男性と綺麗な外国人女性が経営している喫茶店に来ています。誰かとの待ち合わせとか、ダブルデートの待ち合わせとかじゃなくてプライベートで。
「和人、いつまで停止してるんだよ」
「いや、だって瑞理。ここ明らかに場違い……」
「いや、喫茶店に場違いもクソもあるかよ。マスター、ナポリタン大盛とブラック!」
「あいよ。そっちはどうする? オススメはこのスペアリブだが」
「あ、じゃあそれで……あと、ジンジャーエール」
「よし、ちょっと待ってろ」
あまり喫茶店慣れしていない和人がたじたじになりながらも注文すると、店主はカウンターの奥へと消えた。
台東区御徒町のこみごみとした裏通りにある喫茶店兼バーの『Dicy Cafe』。俺の行きつけのお店で、高校生になったらバイトで雇ってもらう約束もしている。ありがとう、ミルズ夫妻。あなた方二人のおかげで、来年の食費を賄うことができます。
あ、もちろん両親から生活費はもらってる。放任主義の極みみたいな人だけど、性欲というものが消え去るレベルで考古学に没頭していた二人が愛し合って生まれたのが俺だ。滅茶苦茶愛されている自覚はあるし。
「それにしても……びっくりしたなぁ、今日あのニュース」
「あーね。アーガスの謝罪会見」
俺達があの配信をした翌日、VRMMOの最高到達点の一つと謳われるタイトル《ソードアート・オンライン》の発売と、VRMMOをプレイするために必須のゲーム機ナーヴギアの開発販売をしていた会社《アーガス》の謝罪会見があったのだ。
内容はもちろん、ナーヴギアの危険性について。何度も性能確認は行っていたらしく、世界規格も合格していたらしい。だが、俺達の配信で何かきっかけがあった場合爆発を起こし、使用者が死亡する可能性が出た、というわけだ。
その結果、アーガスは作成者である天才茅場晶彦及び開発チームの開発自粛とか色々処分を下したらしい。茅場さん、心なしか真っ白だったけど大丈夫なのかな。
邪剣カリバーとかカリバーンと名前似てるし、漂白剣カヤバーンとでも呼ぼう。……なんだか強そう。(小並感)
あと、ナーヴギアの回収しているというが、俺は絶対に回収させんぞ。あれは爆発させて調理器具にしてやるって決めたんだ。
「いや、回収してもらえよ?」
「あれ、口に出てた?」
「バッチリな」
うーむ……口に出てたかぁ……
「回収業者に連絡して回収してもらえば代金の半分くらいは弁償されるらしいぞ」
「マジで?」
「マジ」
なら回収してもらった方がいいかもな。和人曰く、壊れてたりしても一万円くらいは支払ってくれるようだし。
「にしてもこれからどうなるんだろうなぁ、VRゲーム……」
「少し衰退はするだろうけど、消えないだろうさ。ほら、ACなんかはVRとして再発売するって言ってただろ?」
「あー、確かに! なんだっけACVDをやるんだっけ?」
「闘争を求めてる連中が狂喜乱舞してたぞ」
肝心のナーヴギアがこの様だから、発売は遅れてしまうだろうが、楽しみではある。この先のVRMMOの行く末に想いを馳せていると、マスターが皿を持ってやってきた。
「お待ちどお! ナポリタンとブラックコーヒー、スペアリブとジンジャーエール」
「おっほう! 来た来た!」
「うわ、凄いな……!」
銀皿に乗せられたコテコテのナポリタンと、カレー皿くらいの大きさの皿に盛られたスペアリブを見て、俺達は目を輝かせる。
「って、あれ? マスター、この白米は? 頼んでないんですけど」
「初来店サービスってやつだよ。今後ともご贔屓に、ってやつさ」
見事な照りのあるスペアリブに白米を合わせるとか、マスターは分かっていらっしゃる。食べ盛りの男子たる和人には間違いなくドストライクだ。
「ありがとうございます!」
「んじゃ早速……」
「「いただきます!」」
同時に手を合わせて食事を始めた俺達は、お互いに頼んだ料理に舌鼓を打つ。
うん、最高すぎる。このバターとケチャップの殴りかかるようなこってりとした味わい。炒り卵が入っているのもポイントで、脳天に美味さが直撃してくる。
「最っ高……! 和人、食べるか?」
「うっま! 白米進む……! あ、もらうぜ。──おお、美味いな!」
「だろ? スペアリブ一欠片もらっていい?」
「いいぜ」
和人の許可を貰い、スペアリブを一欠片もらう。こっちもこってり系で、甘さとしょっぱさの黄金比で煮詰めた肉の旨味に笑みが溢れた。間違いなく白米やバケットで優勝できる美味さである。
「っはぁー……俺、彼女できたら絶対にここでご飯食べるわ」
「それな。値段もリーズナブルだし、マスターも話上手で聞き上手だし」
「おいおい、おだててもオニオンスープのサービスしかできねぇぞ」
「「サービスのレベルが高い!」」
こんなに気前が良くて儲かっているのだろうか……でも、レビュー見る限り、喫茶店よりもバーの方で滅茶苦茶稼いでるみたいだし、儲けてはいるんだろうな。……和人じゃないが、彼女ができたらデートのランチはここに決定だ。
ま、肝心の彼女いないんですけどねぇ。……寂しくはないぞ。和人もいるし、和人の妹さんやネットの民がいるし、クリスマスには父さんと母さんが帰ってくるしね! 二年ぶりの家族団欒、最高じゃないか。
甘い玉葱のスープとコーヒーで口直ししていると、マスターが口を開く。
「ところで、お二人さん」
「ん?」
「なんですか」
「とっつき二刀流について、どう思う」
「「話を聞こう。まずはそれからだ」」
ふっ、こんなところに傭兵がいるとは思ってもみなかったぜ……! しかも話を聞く限りパイルバンカー二刀流で武器腕ブレードというロマン式! この傭兵、できる!!
「ち、ちなみに……装甲は……?」
「軽装甲一択。もう一つの方はタンク」
そう言って見せてくれた写真に写る至極のAC。一方は高速機動特化で、もう一方は鈍足だが積載量ギリギリまで詰め込んだ重装甲アセンブルだった。
「なんて美しいアセンなんだ……!」
「ふっ……分かるか。お二人さんのアセンも聞かせてくれるか?」
「俺はレーザーブレードとアサルトライフルで、瑞理が確か……」
「コジマ二刀流!」
「こっ、このアセンは……!? 悪魔的すぎるぞ……!」
ここから俺達は小一時間くらいACのアセンブルについて語り合うことになる。
途中でミルズ夫人に窘められて、また話をしようということでお開きとなった。……ちなみに、ミルズ夫人はもっぱらオペレーター専らしいのだが、マスターより強いのだとか……マギーかな?
「んじゃマスター、お会計お願いします。現金で」
「はいよ。……丁度いただきます。またのお越しをお待ちしております」
「「ごちそうさまでした!」」
マスターに見送られながら、俺達はダイシー・カフェを後にする。自転車で行ける距離にあるので、これからも通うつもりだ。
「っはぁ……美味かったなぁ」
「だね」
ダイシー・カフェの料理の余韻に浸りながら、帰り道を進む。この後、和人が両親と妹さんに日頃の感謝を込めてお土産を買いたいそうなので、ボストンパイが美味しいケーキ屋さんに寄ることになっている。
「ところで和人、プロトオーグマーどう?」
「ん? 滅茶苦茶使いやすいと思うぜ?」
車の通りや人の通りが多い道で自転車を漕ぎながらも、大きな声を出さずに会話できているのは、親戚からテスターとして使わせてもらっているデバイスのお蔭だ。
ウェアラブル・マルチデバイス《プロトオーグマー》。親戚から「忌憚のない意見が言える君と、電子工学に興味がある君の親友にテスターをお願いしたい」と言われて渡された凄いデバイスである。
優秀なCPUが搭載されており、充電も三日充電せずとも問題なし。耐水、耐熱、耐寒、耐衝、どれも高水準。和人に渡した時は大興奮だった。……まぁ、重村伯父さんの愛娘である悠那お姉ちゃんへの溺愛ぶりにはちょっと引いていたが。
……ちなみに、俺が悠那お姉ちゃんのことをそう呼んでいるのは、悠那お姉ちゃんにカラオケで負けたからである。あの人歌上手すぎなんだよ。
「でももうちょっと重い方がいい気がするなぁ」
「え? 軽い方がいいんじゃないの?」
「いや、ちょっと重い方が、万が一落とした時気付きやすいだろ?」
確かに。起動していない状態で落としたらそっちの方が気付きやすいかも。
「あとは……道案内機能がまだちょっと甘い……かな」
「あー、それは思った。和人がプログラミングしたマップアプリの方が精度いいもんね」
学生の身でやれる程度、と和人は言っていたけど、東京都内を詳しく道案内してくれるマップアプリは果たして学生の身でできるプログラミングなのか? ……和人がそう言ってるならそうなんだろう。詳しくは知らん! 俺、あんまり数学得意じゃないしね!
「それ以外は全く気にならないな。オーグマー……早く発売してほしい。絶対買うぞ、俺」
「おー、あのインドア派だった和人が……」
「だってこれあればスマホ要らずだろ?」
うーむ、ものぐさだったか。気持ちは分からんでもない。スマホよりも便利だし、歩きスマホよりかは安全だ。ただ、ソシャゲしながら歩く人が増えそうで怖くはある。
『次のニュースです。VRMMOの最高作品として期待されていた《ソードアート・オンライン》の販売中止がアーガスから発表されました』
「「あら……」」
赤信号が青信号になるまで待っていると、そんなニュースが耳に入ってきた。和人はβテストも体験して、素晴らしいものだったと言っていたし、俺もムービートレーラーを見て発売を楽しみにしていたんだけどなぁ……
『アーガスの発表では、システムに重大なミスがあったとされていますが、ナーヴギアの危険性が露呈したからではないかという議論も展開しているようです』
モザイクや変声編集がされているが、間違いなく俺達のライブ配信が大画面でお届けされている。なんだか恥ずかしくなりながらも、青信号になった横断歩道を横断して数分後、ケーキ屋さんに到着した。
「さーてさて……俺は何買おうかなぁ……」
ここのケーキ屋さんはどれも大きくて滅茶苦茶美味しい。値段もそこそこ安いので、ちょっとした贅沢をしたい時に利用している。俺のオススメはボストンパイ。スポンジケーキとリンゴのシロップ煮をビスケット生地で包み込んで、バタークリームをこれでもかと塗りたくった一品だ。コクが深く、それでいて上品な味わいのケーキで、ワンホール千五百円弱。ミニサイズは四百円くらい。
「あ、でもチーズケーキも美味しそうだなぁ……うーん、迷うなぁ……」
「……」
「チーズケーキ……ボストンパイ……あ、カボチャケーキという選択肢も……いっそのこと二つ買うか……って、和人どしたん?」
こんな華々しいケーキを見ても反応がなかったのでちょっと振り向いてみると、何かに見惚れてしまっている和人の姿が。
おや……と、どこぞの黎明卿の声が脳内に響く中、和人の視線を辿ってみると、ケーキと紅茶を楽しんでいる二人の女性の姿があった。ケーキセットか……ありだな!
あ、いや……正確には栗毛の女性か。あの制服……お嬢様学校のやつではなかろうか。今日は日曜日なのに、制服とは……大変なんだな、お嬢様学校。
「おやおや、和人……一目惚れですか? 愛です。愛ですよ、和人」
「はっ……! 声似てるんだからやめろ! この暴走機関車!」
「悪態もユニークで可愛いですね」
さて、和人へのからかいも済んだところで、店員さんに注文を伝える。いつの間にか顔を覚えられていたらしく、「今日はチーズケーキの気分なんですね」とナイスな笑顔で言われる。俺が購入したのはどっしり系のチーズケーキ。濃厚なベイクドチーズケーキである。和人はボストンパイを買ったようだ。
「さて、目標は達成しました。帰りますよ、和人」
「だーかーらー、黎明卿の声真似止めろって!」
「HAHA! じゃあ帰ろうか! 行こう、プ────」
「さらにヤバい声真似やめろ!?」
いやぁ、やっぱり和人といるとツッコミが来るから楽しいなぁ!! あ、ちなみに、和人は栗毛の女性に一目惚れしちゃったらしい。
うーむ、一にゲーム、二にゲーム、三四が配信五にゲームだった和人に春が来たと喜ぶべき……なのか? いやでも、あの栗毛の方、怒ると怖そうだなぁ……もし和人が付き合うことになったら尻に敷かれそう。
漂白剣カヤバーン
使うワンダーライドブックは《鋼鉄城剣物語》。(適当)
使用者は代償として夢を奪われる。大変だなー。誰のせいだろうねー。(すっとぼけ)