ナーヴギアで焼き芋作ったら日本を救えたらしい 作:エヴォルヴ
ルーン解読スキル
ALO内のあちこちに存在する遺跡や建物のルーン文字を解読できるようになるスキル。トーマスはこれ抜きでルーン文字が読めたが、このスキルを持っていると、勝手に言語を訳してくれる。
解読すると、その文に応じたルーン刻印がランダムにドロップする。
ルーン刻印
ルーン解読スキルで獲得したルーンを装備に付与する。
鍛冶スキルとはまた別物らしく、刻印専門のエンチャントショップがあるくらいである。
装備ステータスの底上げや、特効を乗せたりと、攻略の自由度を広げる。
なお、刻印できる数は装備によって異なり、アップデートで武器に追加されたルーンスロットの数で刻印できる数が決まる。
クエスト難易度の表示
ノーマル、ハード、ベリーハード、エキスパート、エンシェント、レジェンダリーの六つ。クエストのカラーリングも違う。
ロスト・マジック取得クエスト
妖精王オベイロンが消えたことによって解き放たれたのは、アインクラッドだけではなかった。その一つがロスト・マジックと呼ばれる強力な魔法である。
現在追加されているのは重力魔法のみだが、運営は「随時解放していくので楽しみにしていてほしい」と話しているため、期待されている。
山盛りのキャベツにオリーブオイルと味の素、塩一摘み、ブラックペッパーをかけてレンチン。しなしなになったそれと、半熟の目玉焼きをご飯に合わせて食べる。
「うーん、ご機嫌な朝飯……ちょっと遅めだけど」
秋刀魚は高いから、安かった鯖を焼いて食べているが、中々脂っこい。
「朝からよく食べるね、瑞理」
「ん? ああ、うん。俺、燃費が悪いから……朝ごはんちゃんと食べないと昼まで持たないんだ」
ダボダボのパジャマを着て部屋から出てきたのは、ルナ・バルバストルさん────一応、俺の彼女だ。あの日から二週間以上経過しているが、未だに信じられない時がある……こんなに美人な人が俺の彼女なんて。
「ふーん……あ、私の分ある?」
「ホットチョコあるよ。あとクロワッサン」
「わ、やった!」
ルナさんって朝食は軽い……というか、甘いものを好む。フランスの方って皆そうなのかな?
ああ、なんでルナさんが俺の家にいるのかだが、防犯対策としての措置だそう。焦園寺さんや要人警護のエキスパートであるジョシュアさん────ジョットの本名だ────から説明を受けたのだが、うちのウォークトーカーは要人警護ロボットのプロトタイプだそうで、要人が複数人いる状態でのデータが欲しいらしい。
恋人同士一つ屋根の下、何も起きないはずもなく……なんてことはないぞ。本当だぞ。手を繋いだりはするけど、それ以上はないぞ。俺が死ぬ。
なんだか温かいなぁ……フェンリー達でも来たのかな、と思ってその毛並みに顔を埋めようとしたらフェンリー達よりも柔らかくて甘い匂いがして、意識を覚醒させたらルナさんが俺の隣で寝ていて過呼吸を起こしたことがある。断末魔も上げて気絶した。
「焼きたてのクロワッサン……最高……」
「はは……そういえばルナさん、今日何かご予定は?」
「え? うーん……大学の講義もないし、単位も足りてるから暇だよ」
ほほう、やはりルナさんは優秀だ。この時期まで単位のために講義を取る人もいるらしいし……
「何かあるの?」
「ああいや……ALO始めたじゃないですか、ルナさんも」
「? うん」
ガンゲイル・オンライン────通称GGOで
……ノームだけどゴツい感じじゃなくてスラッとした……GGOに近い容姿だったのは驚いた。
「さっき和人から電話が来てさ。ALOのクエストをやろうって」
「へぇ。クエストの難易度は?」
「レジェンダリー」
最近になって大型アップデートがあり、とんでもないものがやってきたのだ。その一つが鋼鉄の要塞《アインクラッド》。あのソードアート・オンラインの舞台になるはずだった要塞と、その古代技術たるソードスキル。ALOの世界では失われた魔法、いわゆるロスト・マジックの部類らしい。
それと同時に、妖精王オベイロンが使っていた重力魔法などのロスト・マジックの取得クエストや、進行不可だったクエスト類の続きの解放、クエスト難易度のカラー&言語概念表示が追加されて、より攻略の幅が広がって忙しくなりそうである。
ちなみに、クエスト難易度はノーマル、ハード、ベリーハード、エキスパート、エンシェント、レジェンダリーの六つ。レジェンダリーのクエストは基本的にヤバイものばかりだが、その代わりとして報酬が凄まじい。
レジェンダリークエストは種族ごとに報酬が変わるようで、プーカなら楽器に使う超激レア素材や楽譜、レプラコーンならオリハルコン・インゴットや武器素材など……とんでもない報酬が贈られる。それと合わせて、クエストの中には
「レジェンダリークエスト……名前は?」
「《世界の根を断つ剣》」
「それ、絶対に
興奮気味のルナさんの言葉に頷く。
「前に確認した感じだと、聖剣エクスキャリバーだと思う。歌いたくなる名前だよね」
「エクスキャリバー? エクスカリバーじゃなくて?」
「ん。カレドヴルフでもないよ」
ACE COMBATかな? レーザーが放てるとか、魔法をある程度弾けるとか、そんな能力が備わってそう。
《聖剣エクスキャリバー》。
それは、ALOにおいてユージーン将軍が持つ《魔剣グラム》を超えると謳われる唯一の武器だ。入手方法は不明だったが、俺と和人、明日奈さん、直葉さん、深澄さん、壺井さんは知っていた。……まぁ、満場一致で「今は行かなくてよくね?」となったので行っていなかったのだが……
「……あれ? でもあの剣って……」
「うん。逆ピラミッドのダンジョンの最下層にあるよ」
「そんなのどうやって取りに行くの?」
「えーと……象クラゲみたいな邪神の……なんだっけ、とんぬら? ……いや違った。トンキーに乗って行くんだ」
我が友人ロキの依頼でもあるし、いつかは……と思っていたのだが、アインクラッドの実装でそっちにかまけていたり、GGOに行ったりACBONWに出戻りしてたりと……ね?
そうこうしている間にニュースサイトにも掲載されたらしいし、そろそろ取りに行こうということになったのだ。
「トンキーに乗れるのは九人だから……俺が見つけた方法を使うしかないな」
「それって、前に言ってたルーンのこと?」
「うん」
そうと決まれば話は早い。朝飯を済ませて、準備を整えてしまおう。
弾むような足取りでキッチンに食器を運んでいく。そんな俺をルナさんは微笑ましそうに見ていたけど、あなたもゲーマーだから分かるでしょ? 気心知れた仲間と困難なクエストに挑む楽しさは。
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……さて、クリスマスイブが迫り、年末の仕事納めが始まるらしい今日この頃。午前中に十人パーティーがアッサリ揃ってしまうあたり、ネットゲーマーって身も蓋もない根性があるんだなぁ。
待ち合わせ場所となった、イグドラシル・シティ大通りに看板を出す《リズベット武具店》の工房では、レプラコーンのリズベットが武器を回転砥石に当てている。大がかりなクエストの前には、装備の耐久度をマックスまで回復させておくのが常識だ。
壁際のベンチであぐらをかいてお酒を呑んでいるクラインに、ふわふわ水色ドラゴンを頭に乗せているシリカが問う。
「クラインさんは、もうお正月休みですか?」
「おう、今日からな。働きたくても、この時期は荷が入ってこねーからよ」
輸入企業ってそんなもんなのかね。
「おうキリの字、トーの字よ、もし今日ウマイこと《エクスキャリバー》が取れたら、今度オレ様のために《霊刀カグツチ》取りに行くの手伝えよ」
「「もち。取りに行こうぜ」」
「へへっ、やりぃ!」
あそこ暑いけど、まあまあ面白いギミックがあるみたいだからね。
男衆で話していると、左隣からぼそっと一言。
「あ、じゃあ私もアレ欲しい。《光弓シェキナー》」
「「天使狩りかぁ……」」
「空の王者してるからやりたくないんだよなぁ、あいつ」
「空の王者してるって何?」
「黒炎王リオレウス……」
それくらいのクソボスらしいんだよな、あいつ。
「というかキャラ作って二週間でレジェンダリーをご所望ですか?」
「リズが作ってくれた弓も素敵なんだけど……もう少し射程が……」
「ルーン使おう? ねぇ、ルーン使いなよ? 皆ルーン使えって」
「「「誰もがトーマスみたいにルーン解読スキルなんて取ってないの!!」」」
アルヴヘイム・オンラインがリリースされてから今に至るまで、誰が取るんだこんなスキルと馬鹿にされ続けたスキルがある。それがルーン解読スキル……各地に散りばめられている古代ルーンの文書を解読できるというスキルで、取得しているプレイヤーは俺以外で何人かいる程度。
最近のアプデで古代遺跡のルーン解読を行うと、低確率で武器に刻印するルーンが獲得できるというものが追加されたのだ。超レア刻印にはなるが、射程距離UPのルーンがあるらしい。
「そもそも、この世界の弓ってのは、せいぜい槍以上魔法未満の距離で使う武器なんだよ! 百メートル離れたとこから狙おうなんて、普通しないの!」
「欲を言えばその倍の射程は欲しいわね」
「だからルーン刻印しようよ……リズベット、スキル取ってないの?」
「あいにく、武器作成スキルとか諸々で圧迫されてるわ」
そりゃ残念。俺は《ソル・レムナント》と《マニ・レムナント》を扱うための短剣スキル、弓スキル、ルーン解読スキル、各種耐性スキル、デフォルトの音楽スキルのみで、まだまだ空きがある。生産系スキルでも入れようかな? いやでも、武器とか手に入れたら……うーん……
などと考えていると、キリトの右にある工房の扉が勢いよく開いた。
「たっだいまー!」
「お待たせー」
「情報も集めてきたわ」
「凄いことになってるみたいよ」
声の主は消費アイテムの買い出しに行っていた
「ヨツンヘイムでスローター系クエストが見つかったらしいの。その報酬にエクスキャリバーが提示されてるみたい」
「ただ、変なのよね。クエストの依頼主の名前が文字化けしてるらしいわ」
「へー……」
文字化けねぇ……昔、ロキが自分の名前は分からないようにしていたとか言っていたし、それ関連かな?
「にしてもよう、《聖剣エクスキャリバー》ってのは、おっそろしい邪神蔓延る空中ダンジョンのいっちゃん奥に封印されてんだろ?」
「確かにそうですね。それをどうしてNPCが報酬に提示したんでしょう?」
クラインの疑問に続き、シリカが水色ドラゴン────ピナをモフモフしつつ首を捻った。
「ダンジョンまでの移動手段が報酬、なら分かりますけど……」
「────まぁ、行ってみなくちゃ分からないわね」
ミトが冷静なコメントを発した直後、工房の奥で作業をしていたリズベットがテーブルに武器を置く。
「よーっし、全武器フル回復! トーマス、お願いできる?」
「はいはーい」
俺は専用アイテムであるドワーフのノミを腰から取り出して、全員の武器に刻印を施していく。共通して施すのはクリティカル威力補正が乗る《ヤドリギの刻印》と、邪神族への特効が付与される《アースガルズの刻印》。
「えーと……ルーンスロットは……結構ギリギリかぁ」
これでは一人一つが限界だろう。そもそも俺の武器はルーンスロットが無いから考えることもないけど。
「何かリクエストある?」
『お任せしまーす!』
ありゃ……じゃあ巨大系モンスターに特効が乗るという《破砕の刻印》を付与しておこうじゃないか。どうして破砕が巨大なモンスターに特効なのかは……トールが影響してるのかねぇ。トールって暴れん坊なイメージあるし。
新品同様の輝きと、ルーンの刻印によって生まれた妖しい光を纏ったそれぞれの愛剣、愛刀、愛弓、愛杖を受け取り、分配されたポーション類をポーチに収納。持ちきれない分はアイテム欄に格納して、俺達は顔を見合わせる。
「さてと! 皆、今日は集まってくれてありがとう! このお礼はいつか必ず……オフ会とかで! それじゃ────いっちょ、頑張ろう!」
『おー!』
「んじゃ、いっきまーす!」
アインクラッドの回廊結晶と似たような力を持つ消費系ルーンアイテムを取り出して、地面に叩きつけると、俺達の足下にポッカリ穴が開く。
『え゛っ』
あらかじめ検証をしていた俺とキリト以外、初めて体験するであろう浮遊感に戸惑うメンバーに笑みを浮かべるのと同時に、俺達はヨツンヘイムに繋がるトンネルへと落ちていった。