ナーヴギアで焼き芋作ったら日本を救えたらしい 作:エヴォルヴ
スイッチが入るとドス黒い殺気すら纏った【黒い鳥】になる。デュオでの対人戦で全力になる時は大体黒い鳥状態。単独であっても【人類種の天敵】&【山猫の英雄】なので普通に強い。アインクラッドでの経験がなくても別世界で死ぬほど対人戦やりまくってるせいで化け物級に強い。
「ゼッケン」
「運動会かぁ……嫌いな行事だったなぁ」
クリスマスを終えて、今年もそろそろ終わるという頃、ALOにログインした俺はキリトと一緒に頷き合う。運動会もだが、文化祭も嫌いだった。合唱なんかは悠那お姉ちゃんの歌を聴いていたせいで物足りなく感じてしまう。美術の作品展示とかも面倒だったし。
模型で実物大ローブシンを作ったのがそこまで不満か中学校。
「違う違う。ゼッケンじゃなくて絶剣。絶対の剣だよ」
「強いのか?」
「うん。滅茶苦茶強い。二人いるんだけどね、どっちもOSSを持ってるんだよ」
ソードスキルが実装されてからしばらくした後、面白いものが実装された。それが《OSS》。オリジナルのソードスキルを作れるというもので、制限時間以内にシステムアシスト無しでその動きをできればいい、というもの。なお、一人二つ作るのが限界らしく、新しく作りたい場合は一つ削除せねばならない。
「なんと、十一連撃ですよ! それを勝者に継承するって条件で辻デュエルをしてるんです」
「……キリトよりは少ない?」
「「「はい?」」」
え、十一連撃は少ないでしょ。キリトを見てみろ、とんでもないOSSを作り上げてたぞ。確か、《メテオブレイカー》? 十五連撃OSS。突きからの薙ぎ払い&回転斬り、その勢いを活かした状態で上段、下段、左右、斜め斬りをした後、タックルで距離を詰めてから剣を突き刺して斬り払い……あとどうするんだっけ? 覚えてないや。
「まぁ、モンスター用だよ。個人的な見解になるけど、ソードスキルは対人戦闘向きじゃない」
「硬直あると、どうしてもね」
「いや、それでも規格外なんだよキリト君」
「そうかな? 俺としてはトーマスの方が怖いけどな」
え、俺ですかキリト君。
皆の視線が集まる中、キリトは俺に呆れた表情を向けた。
「お前にメテブレ使ったら、ずらされて首を刎ねられたの忘れてないからな」
「首を出せい」
「断る……」
「掟は絶対だぞ」
「んな掟ねぇよ!?」
そんな言い合いをしている俺達に、そういえばとアスナが口を開く。
「キリト君とトーマス君って、京都に親戚はいるの?」
……あたりに漂う地雷の香りを検知。どうやって抜け出すかって? んなもん決まってるだろう。隣でひきつった笑みを浮かべているキリトに擦り付けるのだ。
「ん? ……えーと……キリトはいたはず」
「おいこら、お前もいるだろうが。逃がさねぇぞ」
「いないったらいない! あんな変人は親戚じゃ────あっ」
墓穴を掘りましたね、これ。水路の中にいるピエロのように笑ったキリトと片腕ラッシュ勝負をしながら、興味津々のアスナ、シリカ、リズベット、ミト、銃士X────リーファは知っているから苦笑している────を見る。
「やっぱりいるんだ?」
「あれを親戚と言いたくない……」
「あんたも大概だと思うけどね」
む、失礼だなリズベット。これでもモラルってものを持ってるんだぞ。
「
「ご存知も何も、ウィスキー制作の大手じゃない。バラエティー番組でよく見るわ」
「確か、ノンアルコールのウィスキーも作ってますよね?」
リズベットとシリカの答えに頷いた俺は、その中でも異端と言われている男性の顔を思い出して口を開いた。
「その中で揚げ物の道に行った人がいてな……?」
「あ、揚げ物……?」
「
「鹿天フライ……?」
「
一瞬で検索したらしいユイに礼を言って、彼がどれだけ変なのかを語る。彼の揚げ物への執念は恐ろしい。練り物やミンチを作る時、彼は「────潰す……潰す……! 潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す!!」としか喋らなくなる。秘明の出は大体変な人だけど、あの人ほど変な人はいないだろう。てか、彼、確実にロッテンフライなんだよな……ACVDの。
ちなみに、普通に話せる人だ。揚げ物への執念が恐ろしすぎるし、揚げ物の話を始めると止まらなくなるけど。前日、お歳暮で人気の刻みレンコン入りメンチカツ、はんぺんの磯辺揚げ、鯛の擂り身の揚げかまぼこが送られてきたので、動画にさせてもらうつもりである。
「そんな梓さん、キリトの親戚でもあります」
「やめろ、言うな」
「キリトさんの親戚なら、リーファさんの親戚でもあるんですか?」
「んー……まぁ、そうだね。うん」
……キリトは幼い頃に実の両親を亡くしているからな。リーファもそれを知っているため、歯切れの悪い答えになるのも無理はない。
「ま、そんなこんなで梓さんは秘明の出でも異端なのでしたっと。ところで、なんでそんなことを?」
変な色の液体が入ったティーカップを手にした俺がアスナに問うと、アスナは悩み百面相を披露した後、答えた。
「うーんと……、親戚の集まりで凄い雰囲気を纏った人がいてね? キリト君とトーマス君の話を嬉しそうにしてくれたの」
うーん、俺の親戚って変な人しかいないから分からないぞ……
「ちなみに、どんな人?」
「えーと……凄く強そうな……白髪のお爺さん────どうしたの?」
「「アバババババババ……!」」
と、トラウマが……! トラウマが蘇ってくる……! 模擬刀片手に山の中を追いかけてきたあの人だ……! 絶対あのお爺さんだよ!?
「ち、ちなみに、なんと……?」
「また腕が上がったようだから、次は……とか?」
「……キリト、年明けにあそこ行きたくないよ……」
「あ、ああああ、ああ安心しろトーマス、俺もだ……!」
今度こそ死ぬ自信があるぞ。くっ……でも観光大使にされちゃったから行かざるを得ない……!
「ま、まぁ……二人のトラウマはともかく、絶剣のこと、気にならない?」
「……うーん……気になるには気になるけど……辻デュエルは飽きたしなぁ……」
シルフ領で何十人も斬ったし、別に……ね?
「メリットもそこまで無いしなぁ……ルーン探ししたい」
「トーマスって、ルーンスロットある武器使ってたっけ?」
「最近ゲットした」
そう言って俺がストレージから取り出したのは、白銀の槍。固有名付きの
「うわ……魔剣クラスじゃない……!」
「いつの間にこんな武器を?」
「ヨツンヘイムでの修行で」
巨人の残党が潜むダンジョンの奥にあった宝物庫に突き刺さっていた槍で、対人向けの武器だ。長いクールタイムがあるが、防御を貫通する効果付き。まぁ、そこは別におまけだからいい。恐ろしいのはこの武器のスロット数が凄まじいことだ。ルーンスロット数驚異の八つ。初めて見た時は目を疑ったものだ。
「ち、ちなみに……ルーンは何を?」
「えーと……今組み込んでるのは雷神のルーン、と最高品質の破滅のルーンだけだね。雷神のルーンのコストが高すぎる……」
ルーンスロットを四つも食われるのだ。強化しなくても強いかもしれないが、今は他のルーンを刻んだ方がいいのでは? と思う時がある。対人向けなら尚更。
「……十分では?」
「馬っ鹿、キリト! ニブルヘイム、ムスペルヘイムにはさらにいいルーンがあるって話なんだよ! 掘らなくちゃならぬ……」
「キリト、トーマスってこんなキャラだっけ?」
「いや、ハクスラに熱中するタイプなんだよ、トーマスは。俺もだけど」
呆れたような視線を向けられる中でも、俺はまだ見ぬ強力なルーンに想いを馳せる。動物変身系のルーンギミックもあったりするかもしれないし、マイナスオプションがある代わりに滅茶苦茶強い効果を持っているルーンとかも……!
「さて、ルーンのことは置いておいて……皆は戦ったの?」
「私とリーファ、リズは戦ったわね。銃士Xは────」
「勝っても負けてもお互いに旨味がないからやらなかったわ」
ああ、銃士Xは魔法特化キャラだもんね。ソードスキルを貰っても意味ないか。杖兼バトルスタッフだからソードスキル貰っても使えないだろうし。
「種族は?」
「インプとウンディーネだね。武器は片手直剣……なんだけど、アスナさんのレイピアくらい細かったかな。────ともかく速いんだよ。どっちも通常攻撃がソードスキル並みに」
「スピード型か……」
「なら、OSSは突きメインだろうな。レイピアくらい細かったのなら、斬撃属性より刺突属性の方が補正値が高い」
鋭利さに特化させていればそれはさらに加速する。斬撃属性は重さの方に威力補正値が入りやすいのだ。
「ねぇ、キリト君、トーマス君、挑戦してみたら? 互角の戦いになるかもよ?」
「うーむ……興味はあるけど、なんかなぁ……」
「何よ、弱気ね」
リズベットがキリトの呟きに首をかしげる。
「なーんか引っ掛かるんだよな……OSSなんて努力の結晶を代償にしてまで、なんで辻デュエルなんかしてるのか」
「? 普通に力を示したいとかじゃないんですか?」
「だったらアインクラッド攻略があるじゃん?」
「PVP専のプレイヤーなんじゃない?」
「それだったら大会に出ればいい。目立つし」
皆からの可能性を加味しながらも、俺とキリトは違和感を感じて思考を回す。考えて、考えて、なんとなく出てきたのは、何かを探しているという可能性。OSSを餌にして、誰かを探している可能性は大いにある。
「「……情報が足りない」」
「そこはもう、絶剣さんに聞くしかないんじゃない?」
「「……だな」」
俺とキリトはアスナの言葉に頷く。そしてふと、時計を見て手を叩いた。
「アスナ、時間大丈夫? お母さんと進路の話し合いあるんでしょ?」
「え? ────ああ! ごめん、もう落ちるね!」
いいところのお嬢様は大変だなぁ……その彼氏であるキリトも大変だろうけど……お互い幸せそうだし、まぁ大丈夫だろう。
アスナがログアウトしたのを見送った俺達も、そろそろ解散しようということになって仮想世界から離脱する。……絶剣ねぇ……案外リスナーさんだったりするのかな? ……いや、ないか。
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イグドラシル・シティでの会話から二日後。世界各地に点在する小さな世界樹が生えた孤島の一つに立っている俺とキリトは、ウンディーネとインプのプレイヤーと向き合っていた。
俺とキリトの前にも戦ったプレイヤーがおり、彼らで累計九十八人抜きだそうで……いやぁ、凄いプレイヤーもいたものである。
「次はお兄さん達、でいいのかな?」
「あー……うん、まぁ。どっちとやればいい?」
「そこはお二人に任せますよ」
ほうほう、凄い自信が見て取れる。強さは……うん、ハングドマンレベルだな。ガチで行かないと死ぬかもしれない。
インプのプレイヤーは黒曜石のアーマー以外布系統の装備で構成されており、ウンディーネのプレイヤーは青白い軽量アーマーで身を包んでいて顔半分しか見えない。まぁ、ただ者ではないな。
「ルールは?」
「何でもありだよ。魔法、アイテム、全部OK! ボク達はこれだけだけどね」
紫色の髪を揺らす少女は無邪気に笑い、水色髪のプレイヤーも微笑んで持っている片手剣を掲げてみせた。
……挑発じゃなくて、マジで自信があるんだな。今まで積み上げてきたものへの、とんでもない自信。なら────それすら食い潰して、捩じ伏せてやるのが【黒い鳥】というものだろう。
「言葉は不要だな」
「ああ、そうだな。言葉など、もう意味を成さない」
「「────ッ!?」」
俺とキリトの闘争心にエンジンがかかる。今の俺達は凄惨な笑みを浮かべていることだろう。目の前のプレイヤーが一瞬だけ表情を強張らせたのが見えたし。
「地上、空中、どちら?」
「……お兄さん達が選んでいいよ」
「んじゃ……両方で」
地上での戦闘も好きだが、俺とキリトは常にドヒャドヒャしてる方が好きなのだ。
地面、空────使えるものは全部使おう、という提案に向こうは笑みを浮かべて、デュエル申し込み窓が出現させた。最上段の文字列は【Yuuki&Ran is challenging you】。ユウキと、ラン……ね。
カウントダウンが始まる中、俺は槍を、キリトは剣を両方とも抜く。それだけで俺とキリトのエンジンは完全にかかり、自分でも分かるくらいの殺気が滲んでくる。
環境音が聞こえなくなっていき、食い荒らすべき相手だけを見据える。俺はランさんをメインに、キリトはユウキをメインに戦うことになるだろう。大きく息を吸い込み、吐いたところで、カウントがゼロになり────
「「ッ……!」」
震わせていた羽の力を一気に解放。オーバードブーストを連想させるような轟音を掻き鳴らして突撃すると共に呟く。
「「行くぞ、絶剣────」」
それは、俺達が黒い鳥として組む時の合言葉。全てを焼き尽くす、死を告げる鳥としての、敵対者への挑戦状を叩き付けた。
「「途中で消し炭になるんじゃねぇぞ」」
絶剣シスターズVS黒い鳥、ファイッ!!