ナーヴギアで焼き芋作ったら日本を救えたらしい 作:エヴォルヴ
実は同じ病気に罹患したことがある。
とある土地の風土病で、その土地の水で育った柿を食べ、小さな神が宿るとされた途轍もなく苦い薬を噛み締め、水なしで飲み込んだ後、かぐわしい香を焚くことで完治する。
その土地の外の医療関係者はそのことを否定または疑わしく思っており、研究を重ねているが、一向に研究が進まない。古くさい儀式のような非科学的なものを認めたくないのかもしれない。瞳が足りないようだ。
人から人への皮膚接触では感染はしないが、血液や粘膜接触によって感染する可能性がある。罹患すると、体の一部が白くなったり、鱗のようなものが出てきたり、軟体動物のようにネトネトとした体液が分泌されたりするようになるらしい。
「……ユウキ、ジュン、テッチが前衛、タルケン、ノリが中衛、シウネー、ランが後衛か」
某日、貸し切った広い部屋でボードに役割を書き込みながら、情報を整理していく。ランって前衛じゃなかったんだな。
「タンクは誰?」
「メインタンクはテッチだよ。サブタンクがジュンなんだけど……」
「あんまし耐久はないんだよなぁ……」
ふんふん、フルプレートアーマーだけど、ジュンはDPSタンクみたいなもんか。
で、テッチは肉厚のプレートアーマーに、タワーシールドとヘビーメイス。うんうん、典型的なタンクといった感じで安心感があるな。
「キリトとトーマスも前衛から中衛だろ? バランスとか大丈夫なのかい?」
真鍮色のライトアーマーと長いスピアを装備したタルケンの隣にいたノリがクオーター・スタッフを担ぎながら問いかけてきた。
「ああ、俺は後方支援もできるよ? 弓とルーンあるし。一応プーカだからね」
「殺意の塊かよトーマス」
お前にだけは言われたくないぞキリト。
「タンクにも形はそれぞれ……壁タンク、ダメージタンク、ヒールタンク……」
個人的に嫌いなのは報復型タンク。あいつら攻撃したらそれを倍にして返してくるからね。HP上限削りで殺すのがいいよね。
「キリトは……前衛と中衛を行ったり来たりしてもらおうかな」
「お前もだろ?」
「そうそう。俺も行ったり来たりするよ。忙しいね。防御力高めなジュンとテッチにはバンバン叩かれてもらうとして……」
俺とキリトに求められているのは戦闘力よりも、戦術の提供。あくまで《スリーピング・ナイツ》の面々が倒さなければ、いい思い出を作れたとは言えないだろう。
ゆえに、俺とキリトは彼ら彼女らのビルドを確認、戦術の構築を行っていく。今回は防御を考えないといけないので忙しくなりそうだなぁ、と思いつつもギースリをストレージに戻して《ソル・レムナント》と《マニ・レムナント》を装備する。ヨツンヘイムで鍛えたお陰なのか、その刃は錆が落ちて輝いていた。
「……んじゃ、行きますか、ボス部屋」
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「「「いや、バーサーカーかな?」」」
迷宮区のボスエリアに続く回廊を歩いていると、《スリーピング・ナイツ》の面々がそんなことを言ってきた。
「失礼な」
「敵が見えたら必ず殺す。常識なり」
というか、俺もキリトも《スリーピング・ナイツ》のメンバーが熟達した連携をしていることに驚いてたんたがな。
別世界と比べるとまだ易しいが、プレイヤースキルが物を言うこのALOで、ラン達の連携技術は見事なものだった。言葉は最小限、身振り手振りで止まる、動くを行っていたのだから。モンスターとは何回か戦ったが、正直俺とキリトが少し合わせてやるだけで突破できたくらいである。
「俺もトーマスも結構本能で動いてるからなぁ」
「ねー。ほら、悪口陰口言ってる連中って殴りたくならない? あれと同じだよ」
「ええ……そういうもの?」
「偉い人は言いました。右の頬を殴られたら左手の骨の拳で頭をかち割りなさいと」
「言ってない! 絶対言ってないよねそれ!?」
え、違うの? 違ったかなぁ……
「おいおいトーマス、違うだろ。右の頬を殴られる前に左手の硬化した左手で殴れ、だろ」
「それだ!」
「「「絶対間違ってる!!」」」
「「なん……だと……!?」」
俺達の継承したミームは間違っていたというのか!? いやでも……あの毎日が乱世みたいな場所で過ごしたら、こうでもしないと気絶待ったなしなんだけど? 観光大使に任命した理由の大半は絶対俺達を鍛えるためだ。
「俺達にちゃんとした観光をさせてくれよ……」
「た、大変そうですね……?」
「大変ってもんじゃなく大変────ん?」
おどろおどろしい装飾が施された扉の前に辿り着いた俺は、巨大な円柱に空気の揺らぎが発生しているのが見えた。ギミックではなく、プレイヤーの気配が漏れているため、キリトも気付いているだろう。……どうせアルゴの情報通りの連中だろうし……
「キリト、殺るよ」
「ああ」
空気の揺らぎが生じている場所目掛けて踏み込み、突撃する。後ろから困惑の声が聞こえたが、それを気にすることなく俺とキリトは空気の揺らぎに向けて刃を突き立てた。
「あっ!?」
ユウキの叫びが耳に入ったところで、エンドフレイムが二つ上がり、緑の膜が消し飛ぶ。
「お、お前ら、いきなり何しやがる!? 俺達が誰なのか────」
その言葉が最後まで続くことはなく、インプのプレイヤーの首が宙を舞う。
「知るか、卑怯者のギルドなんざ興味もねぇわ」
「騙して悪いがは常套手段だけど、人の努力を掠め取るのはゲーマーとしてなってないな」
吐き捨てるようにして武器を納めた俺とキリト。あのプレイヤーの所属しているギルドは、二十三層以降の迷宮区を立て続けに攻略していた大規模ギルドだ。だが、それは彼らの努力ではなく、《スリーピング・ナイツ》の努力を掠め取る形でのボス攻略だった。反吐が出る。
ゲームだから何でもありなのかもしれないが、人の努力を掠め取るような行為は許されない。見てみろACBONWのパッチロールをしてるプレイヤーを。実力自体が化け物級だぞ。【禿鷹】って異名持ちだぞパッチルさんは。
「ちょ、ちょっとキリト、トーマス! 隠れてただけのプレイヤーだったよ!?」
「それが問題なんだよ」
「……どういうことですか?」
状況が分かっていなくても冷静なのは、さすが団長といったところか。ユウキと真反対の反応でちょっと面白い。
「ここでクエスチョン。どうして彼らは隠れていたでしょうか?」
「ヒ◯シ君orスーパーヒ◯シ君を置いて、回答してください」
某不思議を発見する番組の音楽を鼻歌で披露すると、テレビっ子ばかりなのか、パチパチと拍手をくれた。
「はい!」
「はい、ジュン君」
「モンスターとエンカウントしたくなかったから! ヒ◯シ君を賭けるぜ!」
「────────残念、不正解!」
「はいはーい!」
「はい、ユウキさん」
「誰かを待っていたから! ギルドメンバーとか!」
お、いい線を踏んでいくね。俺達と同じ感覚派のプレイヤーだから勘がいいのかもしれない。
「うーん、それもあるけど、違うので五十点!」
「たはー、違うんだ!」
「スーパーヒ◯シ君の魂を賭けて、回答します」
……ほほう、いい自信だなラン。スーパーヒ◯シ君の魂を賭けるなど、中々できることじゃあないぜ。聞かせてもらおうか、《スリーピング・ナイツ》の団長の回答とやらを。
「…………私達を待っていた、でしょう?」
「大当たり!」
俺とキリトが大きな拍手をすると、ランは納得した表情を浮かべ、残りのメンバーは驚愕と困惑が半々で混ざった表情を見せた。それもそうだろう、隠れていたプレイヤー達が自分達を待っていたなど、分かるはずもないのだから。
「ど、どういうことですか!?」
「んーとね……結論から言うと、皆の努力を掠め取るためだね」
色々と省きながら説明すると、そういうことだ。二十五層、二十六層がすぐに攻略されたのは、ラン達がボスの情報を全て丸裸にしてみせたから。その情報を手に入れた連中が、すぐに攻略メンバーを集めてボスを倒す……うーん、気に入らん。
「ということはつまり……先程のプレイヤーを倒していなければ……」
「まんまと噛ませ犬だったかもね」
噛ませ犬なんかアニメや漫画の世界で十分だっての。
「……ところで、倒しちゃって大丈夫だったのかい?」
「ん? ああ、いいよ別に。何かしてくるようなら、皆に迷惑かからない範囲で食い荒らすから」
どの世界であってもそれは変わらない。戦争をするならかかってこい、というのが俺のスタンスだし、キリトもそんな感じだ。たった一人でカーパルスに集った猛者を食い荒らした俺を舐めるなよ。
「まぁ、連中が来る前に様子見しようぜ」
「別に今、倒してしまっても構わんのだろう?」
「トーマス、それフラグってやつじゃないのか?」
お、ジュンもご存知かこのセリフ。いいよね、一度は使ってみたい強い言葉ってやつである。
「ま、理想は一発クリアだけど……回復アイテム高いし、ランとシウネーが回復できる範囲で頑張ろう。……本当に高いからな、回復アイテム……製作スキル取ろうかな……」
プレイヤーメイドの方がいいポーションを作れるという噂も耳にするし、それもいいかもなぁ。ポーションわりと高いし、ヨツンヘイムでの修行がまだ残ってるし、クラインとの約束もあるのだ。
「じゃあ作戦を再確認しよう。仮に死んでもすぐにロンバールにリスポーンするんじゃなく、攻撃パターンを見ておくこと」
「フォーメーションは確か、僕とジュンで最前線を維持して……」
「ワタクシとノリが横からチクチクと攻撃」
「ボクは自由に動いていいんだよね?」
よしよし、皆立ち回りは覚えてる。アインクラッドのボスはレイドを想定しているからなのか、馬鹿みたいに強い。だが、俺達はそれに打ち勝つことができるはずなのだ。ちょっと前にクライン率いるギルド《風林火山》が、第十層ボス《カガチ・ザ・サムライロード》を倒してみせたのだから。堅実に立ち回れていた彼らにできて、《スリーピング・ナイツ》にできないわけがない。
「私とシウネーで支援と回復……ですね」
「俺達は皆のカバーに徹する。せっかくの思い出作り、あくまで部外者の俺達が関わりすぎたら面白くないだろ?」
「まぁ、ボス倒すつもりでいくけどね。決着は皆に任せる」
どこまで行っても、俺とキリトは部外者なのだ。もちろん踏み込んでみたいとは思うのだが、《スリーピング・ナイツ》の面々からは壁を感じる。越えてほしくない壁と、テルミットが敷き詰められた地雷原みたいなものがある気がするんだよなぁ。
こう……必要以上に近付いてほしくない、みたいな……気遣いなんだろうけど……ちょっとだけ寂しくもある。
「よーし、行こう!」
ユウキの掛け声に頷き、ボス部屋である大広間へと突入すると、ズシン、ズシン、と地響きが聞こえてきた。地響きを鳴らしていたそれは巨人。スリュムよりかは小さいものの、中々の巨体と
「「顔が二つある……!?」」
「「「え、驚くところそっち!?」」」
そりゃあ驚くだろうが! あの地の昔話には首を落としても死なない化け物のお話があるんだぞ!? 七つ首のお化けのお話もあるし! 小さい頃、俺の家にキリトが泊まりに来た時、父さんや母さんに「悪いことをしたら、七面のお化けが拐いに来る」、「首のない男が拐いに来るぞ」などと脅かされたりもしたのだ。幼い頃の恐怖ってのは中々拭いきれないものだ。
「殺られる前に殺るしかねぇ!」
「巨人殺し……! またやることになるとはな!」
身の丈四メートルはある黒い二つ首の巨人を見上げるようにして叫ぶ。ボディビルで優勝できそうな程に逞しい肉体には四本の腕が生えており、それぞれの手に破城槌のようなハンマーと大型船を一本釣りできそうな鎖を握っている。
真っ赤なお鼻のトナカイもびっくりするような赤い四つの目で俺達を睥睨していた巨人は、数秒後に野太い咆哮を放ち、手に持ったハンマーを振り上げた。
「さぁ、ボス戦です!」
「皆、行くよ!」
ランとユウキの号令に合わせて、俺達も叫ぶ。アインクラッド第二十七層ボス《ダロス・ザ・クロスギガス》との戦闘が今、始まった。……巨人殺しはもうやりたくないな!
停電してるけど関係ねぇ、投稿してやるぜぇ!!山奥に住んでるので、電気会社の人が中々来れないんですわ。
滅茶苦茶高かった蓄電器で何とか賄ってます。凄いっすね、さすが十六万超えの蓄電器。