ナーヴギアで焼き芋作ったら日本を救えたらしい   作:エヴォルヴ

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トーマスの秘密

実は刀を握るなと言われている。トーマス個人としては刀との相性が最高だと思っているが、師範代や化け物みたいな爺様達から言われているため、渋々使っていない。なお、ALOなどのVRMMOではちゃっかり使っていたりする。


28.【修羅モドキ】トーマス

「「ヴェアアアアア!」」

 

 ロンバール中央広場に面したドーム状の建物の中。セーブクリスタルの周囲で、俺とキリトはフルフルの物真似をしながらのたうち回っていた。

 

「いやー、負けた負けた!!」

 

「頑張ったんだけどねぇ……」

 

 あの巨人め……絶対ぶっ殺してやる。カバーとか言ってられるか。あのふざけたにやけ面に刃を叩き込んでやらねば気が済まん。

 キリトもその思いがあったのか、俺と同じように殺意の波動を迸らせている。

 

「全員、時間大丈夫?」

 

「え? ────ええ、大丈夫ですけど……」

 

「ボス撃破は可能と見た。三十分────いや、二十分でボス部屋に行くぞ」

 

「「「はい!?」」」

 

 おや、さすがの猛者達でも、これには驚きか。

 

「パターンは読めた。多腕が厄介だけど、それだけだ。振り下ろし攻撃は空振りすると硬直がある。突進は見た目に反して威力は低いし、ブレスは一歩下がるを意識すれば問題ない」

 

「鎖は武器の腹を使って受け流せばいいしね」

 

 俺達のレクチャーは早口だったが、《スリーピング・ナイツ》の面々は、要所要所をしっかり聞き取って頭に叩き込んだようだった。本当に優秀だなぁ。

 

「繰り返しになるけど、このパーティーならあの巨人に勝てる。【黒の剣士】と【銀の剣士】が保証するぜ」

 

「キリト、また異名増やしたの?」

 

「お前もだからなトーマス」

 

 ええ……そんなありきたりな異名いらないんだけど……というか、俺は剣を使ってないぞ。……あ、でもこの双剣は剣か。

 ミーティングを終え、アイテム分配も済んだ俺達は、もう一度ボスに挑むために気持ちを整えた。

 

「……キリト、トーマス」

 

「「ん?」」

 

「ボクの勘は間違ってなかった。二人に頼んで、本当に良かったと思ってる」

 

 ユウキがそう言って、眩しいくらいの笑顔を見せた。

 

「私も────いいえ、私達全員がそう思っています。ありがとうございます、二人共」

 

 うーむ、なんだろうこの今生の別れみたいな雰囲気は。俺は嫌だぞ。このメンバーといつものメンバーでニーズヘッグ倒しに行きたいんだ。多分それくらいのメンバーでようやく倒せる感じのボスだと思うからな。

 

「礼とかは、打ち上げで聞くよ。どうせだから忘年会みたく大勢でやろう。俺達の友達を紹介したいし」

 

「だな。アスナ達と気が合うと思うぜ」

 

 打ち上げの算段を組み立てながら、俺とキリトは体を揺らす。現在時刻は昼の二時半。なんだか待ち伏せされてそうな予感はするけど、いつものメンバーと対人専のギルドにメールを送っておいたから何とかなる。きっとなる。

 

「と、いうわけで……」

 

「最後の転移ルーンを砕いて迷宮に向かいたいと思います」

 

 高いんだよな、このルーン……作るにしてもレイス系の素材、ゴースト系の素材、ゴーレムのレア素材、邪神の目玉とかを使うのだ。

 

「多分すぐに対人戦が始まるから、ここでバフかけちゃってから行こう」

 

「「そしてヒーラーは絶対に殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……」」

 

「二人共、ヒーラーに何かされたの?」

 

 ヒーラーに殺意が沸くのはゲーマーとしての性である。あれがいるだけで戦いが泥沼化するからな! 

 

「んじゃ、行くぞォ!」

 

「俺達に喧嘩を売ったこと、後悔させてやる」

 

 俺達は殺意の波動を、《スリーピング・ナイツ》のメンバーはやる気を漲らせながら、開いた転移門に飛び込んだ。

 

 

 ────────────────────────────────

 

 

 迷宮区に飛び込んだ俺達の動きは、凄く早かった。最短距離を最高速度でぶち抜いたために、モンスターとの会敵が何度かあったものの、ほぼノータイムでモンスターを轢き潰して進むことができた。

 

 設定しておいたタイマーを見れば、なんと十五分を回ったばかりである。これを見ている人がいたなら、タイムアタックでもやっているのかと思っただろう。

 

「よっしゃ、間に合うぞ!」

 

「よーし、戦闘準備! 一番槍は俺が貰うからな!」

 

 モンスターとの戦いも楽しいが、対人戦はまた別格の楽しさがあるよな。

 そんなことを考えながら回廊を突破すると、予想通りの光景が俺達の目に飛び込んできた。ボス部屋前に集った大規模パーティー……合計二十人くらい。武器を持ってこちらを見ているということはつまり、俺達に報復するつもりで待ち伏せていたのだろう。

 

「来たぞ! あのパーティーだ!」

 

「メイジ隊、焼いちまえ!」

 

 その声が響いた直後、集団の後方から、スペルワードの高速詠唱が聞こえてくる。反応も滑舌も悪くないけど……残念だったなメイジ共。

 

「やってみせろよキリト!」

 

 こっちにはインテリ細身マッスルなキリトがいる。最近腹筋が割れ始めたらしい。彼女ができてから、男磨きに更なる磨きがかかっている。俺も負けてはいられない。

 

「なんとでもなるはずだ!」

 

 不敵な笑みを浮かべて最前線に出たキリトに驚く面々と、ニヤリと嘲笑うようにしている大規模ギルドの連中。

 

 キリトを見せしめに使いたいのか、キリトのみに狙いを定めた《単焦点追尾(シングルホーミング)》型の魔法が飛んでくる。高速で近付いてくるそれに向けて、キリトは少し前に手に入れた魔剣《エリュシデータ》を抜き、刃に深紅のライトエフェクトを宿す。

 

 飛来する魔法、炸裂する閃光と轟音の中で、俺はキリトの技量に大きな笑い声を上げた。

 

 キリトが繰り出した片手直剣七連撃ソードスキル《デッドリー・シンズ》が、殺到した魔法を全て切り裂いたのである。

 

「うっ……そぉ……」

 

「魔法を、斬った?」

 

「偶然じゃなく、狙って?」

 

「どうよ、キリト」

 

「んー……まぁ、どんな高速魔法よりも、佐瀬師範代の居合の方が速いかな」

 

 あれを基準にしちゃいかんよキリト。

 あ、ちなみにキリトがやってみせたのは《魔法破壊(スペルブラスト)》。武器破壊よりも難易度は高いけど、慣れてしまえば武器破壊よりも簡単にできるシステム外スキルだ。

 

「な……ァ……!?」

 

「よーし、次は俺だな。キリト、刀貸して」

 

 ちょいちょい、と右手を動かしてみせると、キリトが凄く嫌そうな表情を浮かべる。

 

「……マジで?」

 

「うん」

 

 心底嫌そうなキリトと、屈託のない笑みを浮かべる俺。何をそこまで嫌がるのか分からない《スリーピング・ナイツ》のメンバーの視線を感じながら、キリトに向けた手は戻さない。

 

「俺の取り分無くなるじゃんか……」

 

「時間ないし、いいでしょ?」

 

「────まぁ、それもそうだよな……」

 

 納得してくれたのか、溜め息を吐きながらもストレージから取り出された刀を俺に放り投げたキリト。本来なら俺のストレージに入っているはずのものなのだが、キリト曰く「お前が握ったら、俺の取り分全部無くなるだろ」ということで、彼が預かっているのだ。

 

「んー、三分────いや、二分で終わらせてくる。ボス戦の準備しといて」

 

「はへ? ────ちょ、トーマス!?」

 

 ユウキの叫び声が後ろから聞こえてくる中、俺はキリトから受け取った刀を鞘から抜き放つ。その行為をしただけで、俺の意識は氷のように冷たく研ぎ澄まされる。

 

「……死にたくないやつは、退けよ」

 

「たった一人で俺達とやるつもりかよ!」

 

「馬鹿が、返り討ち────プエ?」

 

 目の前に迫ってきていたノームの男、その首を刎ねた。首を守るような装備をせずに近付いてきたのは、油断や慢心の表れだったのだろう。

 ゴロン、と音を立てて転がった首を一瞥した後、次の標的に目を向ける。

 

「二つ……」

 

 今度は片手剣を振りかざしたサラマンダーの手足を切り落とす。達磨になったプレイヤーは何かを喚いているが、聞くに堪えないので踏み潰すことで黙らせた。

 アサシンビルドのシルフ二人が突っ込んでくるのを確認し、単調な攻撃を弾いてから足払いで転倒させる。

 

「寝てろ」

 

「「ギッ!?」」

 

 腰に下げていた《ソル・レムナント》と《マニ・レムナント》をシルフの背中に突き刺し、地面に縫い付けた。炎と氷の魔法属性を帯びた刃に貫かれているため、数秒後には死ぬだろう。

 

「ハハッ、ハハハッ、アァハハハハハハッ!! 死ねよお前らァッ! ハハハハハハハッ!!」

 

「な、なんだこいつ────ギャアッ!?」

 

「ひ、怯むな! たった一人だぞ!? 囲んで殺せ!?」

 

 対人戦で熱くなってくると笑う癖がある俺は、狂ったように笑いながら次々とプレイヤーを斬っていく。前にキャラ作りだと言ったが、最近はこんなキャラでもいいかなぁ、なんて思い始めて、癖として染み付いてしまった。

 途中、何度か攻撃を喰らったが、この刀《血腐丸(ちぐさまる)》の攻撃したプレイヤーのHPを吸収する吸血スキルによって無いものにしてみせた。

 

「ひ、ひぃっ!?」

 

「た、助け────いぎゃあっ!?」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……! 殺さなガァッ!?」

 

「や、やめギュブッ!?」

 

 斬る。斬る。斬る。斬る。斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る。

 

 立ち塞がってくる連中全てを捉えて、切り裂き、蹂躙し、食い荒らし、貪り尽くす。

 

 最後に残ったローブやカソックを纏ったキャスター達の目に宿っていたのは無。理解したくないものを見た人間の反応というのは正直だなぁ。思考を止めて、現実から目を逸らす。向こうの世界────ACBONWや父さん達の地元の皆とは大違いだ。

 内心でそんなことを考えつつ、俺はキャスター達の首を一太刀で刎ねた。

 

「……修羅」

 

 刀を鞘に納めた直後に、畏怖が混じったランの声が聞こえた。

 

「────失礼な! 俺は暴走機関車だぞ!」

 

「いや、ランの言いたいことはよーく分かる」

 

「おいコラ、キリちゃん。お前の革靴ふやかしてお粥にして食わせんぞ」

 

 爺様や婆様から刀を握るな、なんて言われるくらいには刀との相性が最悪らしい俺だけど、個人的には対人戦で刀を使っている時、凄く楽しい。こう……どう斬れば相手が嫌がるかとか考えたりするのとか。

 

「でも怖かったよ、さっきのトーマス。おとぎ話の鬼みたいだった!」

 

「笑顔で言うことかなそれ」

 

 溜め息を溢した後、キリトに《血腐丸》を返した俺は、残りのプレイヤーが来る前にボス戦を終わらせるために準備を行う。

 

「シウネー、バフはかけ終わった?」

 

「あ、はい。全部終わってます」

 

「了解。じゃあ行こうか、ボス戦に」

 

 俺の声に元気よく応じた《スリーピング・ナイツ》の士気は十二分にある。

 一回目の挑戦と同じく、ジュンが扉を押すと、重苦しい音を立てながら扉が開かれた。俺達は開け放たれた扉の先に飛び込み、猶予キャンセルボタンを踏み抜く。

 

 開けられた時と同じように重苦しい音を立てて閉ざされていく向こうで、ボロボロの頭陀袋を被ったプレイヤーと、髑髏のマスクを着けたプレイヤーが手を振っているのが見えた。その後ろにはアスナやリーファ、クラインといったいつものメンバーと、棺桶のエンブレムが刻まれた鎧を着たプレイヤー達が見える。どうやら大規模ギルドの増援を全滅させて、こちらに来たらしい。

 

「ラフコフに連絡して正解だったな」

 

「ん。まさかザザさんとジョニーさんが来てくれるとは思ってなかったけどね」

 

 あの二人、リアルが凄く忙しいと聞いていたから、来てくれるとは思わなかった。ポーションでHPとMPを回復させながらボス出現を待っていると、ランが口を開く。

 

「あの、キリトさん、トーマスさん……さっきの人達は?」

 

「俺達の友達。《スリーピング・ナイツ》がボスを攻略する瞬間を是非見たいって言ってくれて、快く手助けしてくれたってわけ」

 

「このボス戦が終わったら紹介するよ。とにかく今は、ボスに集中しようぜ」

 

 俺とキリトの言葉を聞いて、一瞬だけ《スリーピング・ナイツ》の面々の表情が曇ったように見えた。だが、それもすぐに消えて、笑みが浮かぶ。

 

「そうだね。よーし、皆、やってやろう!」

 

「「「おお!」」」

 

 ユウキの号令に皆が頷いたところで、最後のかがり火が激しく燃え上がる。ボス戦が始まることを伝える演出を前に、全員が武器を手に取った。

 ……うん、やっぱりいいギルドだよ、《スリーピング・ナイツ》というギルドは。大きな隠し事はありそうだけど、言葉もいらないくらい、本気の思いを伝えてくる人達ばっかりで。どんな冒険をしてきたのか、打ち上げの時に聞いてみたいものだ。

 

「さぁ皆! 扉の向こうで期待してくれてる連中に、Vサインを見せつけてやれるようにしよう!」

 

「ラストチャンス! 気張って行こうか!」

 

 地響きを響かせながら現れた黒い巨人を見て、俺達は好戦的な笑みを浮かべてみせる。

 

「よぉーし……もう一回、勝負だ!!」

 

 ユウキの声と俺達全員のウォークライにも似た叫び、そして、巨人の咆哮が重なった。

 

 

 

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