ナーヴギアで焼き芋作ったら日本を救えたらしい   作:エヴォルヴ

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桐ヶ谷和人

トーマスのツッコミ&ブレーキ担当。ある日焼き芋を食べたいと呟いた時、ナーヴギアの運命が決まった。ある意味彼が元凶。実行したのはトーマスだけど。

トーマスこと遠間瑞理とは昔からの親友。小学校で孤立していた和人に瑞理が「やぁダニエル! 君を助けに来たんだ!」といきなり言い出し、トロコンしたばかりで深夜テンションだったのもあり乗ってしまい「お前の武器は!?」と返してしまったのが運の尽き。そこからトーマスとの縁ができた。できてしまった。

わりと常識人だが、トーマスと共にネジを外す時はとことん外す。栗毛の女性に一目惚れしている。さー、誰なんだろうねー。(すっとぼけ)

精神面がトーマスのお蔭で本来の世界線よりも強固。ジョナサン・ジョースターくらいの精神力を持ち合わせている。


3.焼き討ちならぬ焼き芋男、妖精になる。

 ナーヴギア焼き芋大会から一年と二週間が経過した。いやはや、時間の流れっていうのは笑っちまうほど早いですな。

 

 ナーヴギアの危険性を受けて、ゲーム機開発のノウハウがあるゲーム会社は安全性に特化したVRデバイスの開発に心血を注いでいた。ナーヴギアの設計図を公開していなかったアーガスが設計図を公開したのもあって、その流れはさらに加速。

 

 当時、公開されてから半年だったというのに、あらゆるメーカーがナーヴギアに代わる新たなVRゲーム機を発表……そして選ばれたのは某任◯堂並みの大手メーカー開発のフルダイブ型ゲームマシン《アミュスフィア》である。

 

 その特徴はなんと言っても安全性特化の性能。ナーヴギアと遜色ないフルダイブ能力がありながら、ナーヴギアよりも深くは隔離しない。使用者のバイタルに明らかな異常があった場合、強制的にログアウトさせる機能や、外部の衝撃に反応して強制的にログアウトさせる機能も備わっているのだ。他にも安全に考慮した機能がついているらしいが、そこは割愛。

 

 アミュスフィアの発売前日、ゲームショップは深夜から行列が生まれ、食品メーカーが格安の炊き出しをやって経済を回したりと色々あったらしい。あ、ちなみに値段はナーヴギアよりお手頃な五万円。それでも高いけどね。買ったけど。

 

「さぁさぁ、飛び込もうじゃあありませんか!」

 

 そして今、興奮を抑えながらアミュスフィアを被る。……あ、オーグマー外すの忘れてた。このおっちょこちょいめ。ははっ、くたばりやがれ。(豹変)

 

 購入したのは、アルヴヘイム・オンライン。ちょっと前に不祥事をやらかした人が逮捕されたことで皮肉にもさらに有名になった大手企業、《レクト・プログレス》がアーガスを吸収合併した後に発売したVRMMORPGである。……あれ? 最近運営がベンチャー企業に切り替わったんだっけ? よく覚えてないや。

 

 安全性は考慮されているそうで、その安全性を公式サイトで確認することができる。まぁ、面白ければそれでいいんですよ。ログアウトできないみたいな不具合が起きなければそれで。

 

「和人はもう向こうで暴れてるんだろうなぁ……」

 

 先月からログインしているらしいし、もうダンジョンに突撃している可能性が微レ存。

 

「ま、行けば分かるか! レッツゴー、妖精國! ……くたばれ妖精!」

 

 魔法の言葉「リンク・スタート」を唱え、仮想現実の世界へと飛び込む。

 

 ようこそ、アルヴヘイム・オンラインの世界へ、というロゴを眺めていると、アカウント及びキャラメイクが始まった。胸の高さにホロキーボードが出現し、新規IDとパスワードの入力を求められる。面倒だからいつも使っているものを流用。

 

 続いて継続料金だが、そこまで高くない。初心者応援パックやバトルパスみたいなものを買わないなら無料でプレイできるようで、無課金でも頑張れば強くなれる。

 

 次いでキャラクターネームの入力。遠間瑞理、なのでトーマス。綴りは《Thomas》。どこぞの機関車と同じ綴りだ。和人────キリトと合流する時もスムーズになるはず。

 

 名前を入力し終えると、キャラクターの作成を促した。細かいキャラメイクができるわけではなく、種族を選ぶのみらしい。容姿はランダム生成されるため、キャンセルは不可能だそうだ。どうしても気に入らないなら課金して作り直せということじゃな? どんな見た目でも俺は問題ないけど。

 

 選べる種族は……おお、九種類か。

 火のサラマンダーの初期装備は大剣。

 風のシルフの初期装備は片手直剣。

 土のノームの初期装備は斧。

 水のウンディーネの初期装備は細剣。

 闇のインプの初期装備は槍。

 影のスプリガンの初期装備は片手直剣。

 鍛冶のレプラコーンの初期装備はメイス。

 妖精のフレンズのケットシーの初期装備は短剣。

 音楽のプーカの初期装備は弓と楽器。……楽器? 

 

 あとで武器屋に行けるだろうし、どれ選んでもプレイに支障は出ないだろう。……武器ってレプラコーン以外も作れるのかな? そう思い調べてみると、初期から鍛冶スキルがあるだけで、他の種族を選んでも鍛冶スキルは獲得できるようだ。多分そんな無駄なことするならレプラコーンになれよって話なんだろうけど……せっかくだから俺は、このプーカを選ぶぜ! そしてALO一の変態ビルドを組む。私がそう判断した。

 

 全ての設定が終了し、アナウンスに幸運を祈ります、と伝えられ、光の渦に飲み込まれる。AMSから、光が逆流する……! 

 

 そして異世界が俺の目の前に出現した。現在時刻が夜であることもあって、賑わっている街……プーカのホームタウンに降り立つ……はずだったのだが。

 

「……どこですかいねぇ、ここ」

 

 森の中で一人、呆然としていた。にしても凄いな、この世界……重厚で硝煙と燃料とコジマの香りがする世界も凄かったが、こちらもこちらで凄い。SAOと遜色のないゲームを謳い文句にしていたのも納得がいく。

 

「……フレンドリスト……あ、ACのフレンドリストそのまま使えるんだ。へー、便利」

 

 まぁ、フレンドはキリトしかいないんですけどね! 

 

「とりあえずメッセージ送っとくかぁ……」

 

 件名は『AMSから光が逆流して、森の中にいた』でいいや。本文打ち込んで送信っと。キリトと俺の仲だし、伝わるでしょ。……お、返信来た。早いなぁ。

 

「むむっ……!」

 

 ALO内で知り合った人と一緒に探しに来てくれるらしい。まさかあのコミュ障のキリちゃんに友達ができるなんて……トーマス感激。

 

「さて、と……プーカにしたの、不味かったかなぁ」

 

 夜空を見上げて呟き、肩から下が存在しない左腕を見下ろす。

 もうずっと前の話。ちょっとした事故で左腕を切断する必要があった俺は、その日から義手を使って生活している。

 

 VRのACは腕がなくても操作ができたし、リアルは義手での生活に慣れていたから別によかったが、ALOではそうはいかない。生体スキャンの精度がいいからか、腕がないままこの世界に放り込まれてしまった。

 

 これでは弓を使うことはできないので、早急に修正してもらうか武器を買うかをしないとまともに遊べもしねぇ! ……魔法の腕とかロマンだから、実装してくれてもいいのよ? 

 

「スクショ送ったろー」

 

 パシャパシャとスクショしまくってはキリトに送りつける。これで場所も分かりやすいだろ。ほら、さっさと見つけてくれや。じゃないと凶悪なモンスターちゃんに襲われて喰われちまうわい。もしくはプレイヤーに。やめて! 俺に酷いことするつもりなんでしょ! エロ同人みたいに!! エロ同人みたいに!! 

 

「……うーむ、ツッコミが来ない」

 

 いつもならこの辺りでツッコミが飛んで来るんだけど……あれ、もしかして今ならボケ倒すことができるのでは? デバッグしても怒られないのでは? ……止めておこう。バレた時が怖い。

 

「ドヒャドヒャできたりするのかな、この世界」

 

 それはいつか試すとして……暇だし、何か考えよう。内容は……彼女ができたらやりたいこととか? 

 

 うーん……やっぱり手を繋いでデートとかかなぁ。お昼はダイシー・カフェで食べて、皇居の東御苑とか歩いてみたり。帰りにちょっと話をして「また行こう」なんて約束をしたりとか……まぁ、俺に彼女ができる未来は見えないんですけどね、初見さん。学校の女子曰く、俺の腕とか妙に勘が鋭いところとか、化け物じみた身体能力が気持ち悪いんだそうで。酷くない? 気にしてないけど。

 

「あとは……やっぱり父さんや母さんみたいな感じになりたいかなぁ……」

 

 あの二人はどこにいても一緒だ。息子の俺でも羨ましいと感じてしまうくらいには、いつもいつでも一緒にいる。あんな感じに、俺もなりたい。

 

「キリト、まだかなぁ」

 

 迎えが来るのを待っていたその時だった。

 

「お? ラッキー! カモ発見!」

 

「ん? おおサラマンダー」

 

 俺の頭上からの奇襲をさらっと避けて、さっきまで俺が居た場所を見る。そこにいたのは、重そうな赤い鎧に身を包んだサラマンダーのプレイヤー。人数は三人。一人はランス使い、一人は大剣、もう一人は太刀? そして重装備とか殺意高いな。

 

「一人でノコノコサラマンダー領付近で遊んでるとは馬鹿だねぇ」

 

「いや、バグでここに迷い込んだ人畜無害なプーカなんですけど?」

 

「はっ、御託はいいからよぉ、金とアイテム置いていきな!」

 

 うわぁ、チンピラかよ。サラマンダーって皆こんな感じの民度低めの方ばっかりなのかねぇ。うちの視聴者見習え? 

 

「金っつってもねぇ……初期装備と初期のお金しかないよ?」

 

「ニュービーのくせに勇者気取りかよ! まぁいいや」

 

「「「とにかく死ねやお前!!」」」

 

 ええ……こいつら単なる初心者狩りの人達なのか。サラマンダーはもしかして民度低めな種族なのかもしれない。しかし、まぁ、なんだ……相手が俺を殺しに来ているんだ。しっかり本気で抵抗しないと無作法、だよね。

 

 迫り来るサラマンダー三人を見ながら、さっきまで見ていた随意飛行の極意を思い出して、羽を震わせる。……あ、これアサルトアーマーとかOBとかCBと同じ要領だわ。

 

「……メインシステム、戦闘モードを起動。ターゲット捕捉。戦闘を開始する」

 

 この世界でもドヒャドヒャできる可能性を感じ取ったところで、俺は重装備のサラマンダーに超高速で激突した。

 

 

 ─────────────────────────────────

 

 

「キリト君! 待ってってば!」

 

「速いって……! どうやってるのそれ!?」

 

 あいつよりも先にALOにログインしていた俺は、この世界で知り合ったプレイヤーのアスナとミトと共に低空を飛行していた。まさか、うちの動画視聴者とフレンドになるとか思ってもみなかったぜ。

 

 あ、友人を迎えに行くとしか説明せずにいるのは悪いと思っているが、結構切羽詰まっているため許してほしい。

 

 あいつ────トーマスがメールしてきた時は呆れたが、スクショが送られてきた瞬間、俺の意識は切り替わった。トーマスのやつ、サラマンダー領の近くにいやがる。あいつのことだから、ケロッとしてるかもしれないが、サラマンダーは血の気が多い連中が多く、初心者狩りも横行しているという噂もクラインから聞いた。このままではトーマスが危ない。

 

「キリト君の羽から、聞いたことがないような音がするんだけど!?」

 

「悪い、アスナ、ミト! もっと加速する!」

 

「「嘘でしょ!?」」

 

 羽が千切れるんじゃないかと思うレベルで震わせて、音の壁を突き破るイメージで滑空する。アスナとミトの声が遠ざかり、見えてきたのはサラマンダーのホームタウン付近の森。赤みある森の中にトーマスがいるはず……こういう時、フレンドリストで居場所が分かればいいんだけどな……! 

 

『ギャアアアアアア!!?』

 

「!?」

 

 誰かの叫び声が聞こえ、辺りを見回す。どこだ? どこから聞こえた? さっきの断末魔はどこから……って、あ、見つけた。重装備のサラマンダー二人! 一人は真っ赤なエンドフレイムに巻かれて消滅している。

 

「敵影、残り二。残弾三十%」

 

 あの隻腕で銀髪赤メッシュ……間違いなくトーマスだ。あいつの左腕がないのは知っていたが、どうやって弓を撃っているんだ? 

 

 その疑問は即座に解決した。トーマスが矢を口で咥えて放ったのである。その命中精度は恐ろしいもので、バイザーの隙間を潜り抜けて大剣を持ったサラマンダーの目に直撃する。

 

「……うわぁ……」

 

 そこからは、一方的だった。目を潰された経験のないサラマンダーのプレイヤーがパニックになっている間に、ドヒャドヒャと幻聴が聞こえてくる見事な加速で接近して武器を奪い、順番に脳天をかち割ってゲームセット。まさかニュービーがリンクスだったとは思うまい。

 

 サラマンダーのプレイヤー三人に心の中で合掌した俺は、奪い取った武器を地面に突き刺して正義の味方ごっこをしているトーマスの近くに降り立つ。

 

「ナイスファイト。さすがだな、トーマス」

 

「…………あ、キリト! わー、リアルにそっくり。顔バレ待ったなしじゃん」

 

「今更だろ。お前だって髪色と目の色以外そっくりじゃないか」

 

「お、そうだな!」

 

「「ハッハッハッハッハッハッ」」

 

 肩を組んで笑い合う。ああ、やっぱりこいつと馬鹿やってるのは楽しい。疲れるが、パズルのピースがはまった感じ……っていうんだろうか? そういうのがある。クラインとか、エギルとか、アスナとかミトとかとALOで遊ぶのも楽しいのだが、親友のトーマスがここにいたら、なんて思ったりもしていたのだ。

 

「ようこそ、ALOへ。歓迎しよう、盛大にな!」

 

「お? キリトにとっての魂の場所はここだったのか」

 

「あーいや、どうだろ……あのコジマの香りが懐かしく感じる時がたまにあるんだよな……」

 

 あそこもまた、俺の魂の場所なのかもしれない。トーマスとあーだこーだ言いながらアセンブルしてたし、交代でオペレーターやったりと楽しんでたしなぁ。

 

「おーい! キリトくーん!」

 

「やっと追い付いた……!」

 

「ん? キリちゃん、あれ、知り合い?」

 

「キリちゃん言うな。ああ……置いていったんだった」

 

 俺が置き去りにしてしまったアスナとミトが降りてくる。

 

「もう、速すぎるよキリト君!」

 

「わ、悪かったってアスナ」

 

「まぁまぁアスナ。あとでキリトにはあの飛び方を伝授してもらうとして……キリト、そのプーカが例の?」

 

「例のってのがどういう意味なのか知らないけど、暴走機関車トーマスなら俺のことだよ。デュエルする? あ、しない? そっかぁ……」

 

 ケラケラと笑うトーマスはいつも通りの暴走機関車トーマスで、アスナとミトは目を丸くした。悪いなアスナ、ミト。こいつはいつでもこういう感じなんだよ。キリトーマスの部屋の真面目なトーマスは稀にしか出てこないぜ! 

 

「な、なんか個性的、だね?」

 

「今更だろ、視聴者さん?」

 

「あれ? お二人さん俺達の動画見てるの? マジで?」

 

「ええ、そうよ。私もアスナも息抜きで見つけてね。最初に見たのは……二十四時間ダンス配信」

 

「おっと、結構古参じゃないか……」

 

 

 

 

 

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