ナーヴギアで焼き芋作ったら日本を救えたらしい 作:エヴォルヴ
あ、ちなみにマザーズ・ロザリオ終わったらロキからの依頼連戦行きます。
ユウキ達《スリーピング・ナイツ》からの定期連絡で皆が回復に向かっていることが知らされた。その代償として、皆のゲームの時間がリハビリや睡眠などに使われるそうで、ゲームができないと嘆いていたのは記憶に新しい。
さて、めでたい話はそこら辺にしておいて、俺は両親の書斎で色んな本を読み漁っていた。『人と毒の歴史(著者遠間幸海)』やら『世界の神話、人の繁栄と酒の繋がり(著者遠間出雲)』など、色々読んでいるが、やはり父さんや母さんの書いた本は面白い。他の本を読んでみても、長ったらしい前置きがあるのに対して、父さんと母さんの書いた本にはそれがないのだ。
「……へぇ、媚薬って本当にあるんだ……蜂蜜……果物……花……ほへぇ……毒と薬は紙一重だなぁ。うわ、毒を化粧品にしたのか人間って……」
こうやって色んなものを調べているのには理由がある。こういったところから動画のネタを見つけることがあるからだ。
「お、神話にもやっぱり薬はあるんだな。……メデューサとテルシオペロ……なるほど、これなら怪物にやられたって勘違いするわ」
石になったように壊死していく様を見れば、確かに勘違いする。
「酒に漬けると毒性が和らいだりするんだ……ベニテングタケ……そういうのもあるのか」
興味深い記述ばかりで、俺の親がどれだけ凄い人なのか嫌でも分かる。両親嫌ってないから嫌でもって表現はおかしいかな?
「ほほう、猿酒……自然発酵して……なるほど……え、竹も酒を……?」
へぇ……色んなことがあるんだなぁ……お酒は長い間人間と付き合ってきた存在だし、こういうのを勉強してみるのも面白いなぁ。
「すーいーりーくーん! あーそびーましょー!」
────────悠那お姉ちゃんのダイナミックエントリーにより、書斎のドアが大きく開かれた。来年度から高校三年生だよね? 子供っぽいところがあるなぁ、全く。
「いらっしゃい、悠那お姉ちゃん。今日はどうしたの?」
「遊びに来たんだよ。ほら、最近一緒に遊んでないでしょ? お互い恋人もいるし?」
「ああ、まぁ……てか語弊がありそうな言い方やめてよ」
「ああ、ごめんごめん。それで、姉弟水入らずな時間を久しぶりにーって」
正確には従姉弟だけどね、俺達の関係性って。……まぁ、確かに悠那お姉ちゃんと一緒に過ごすなんて、最近はしていなかった。俺は基本的に和人かルナさんと過ごしていて、一人になっても地下室に籠っているのだから。
「あと、これ渡そうと思って。はい、どうぞ」
「ん? ────何これ」
警戒も何もせずに受け取ったものを見て、首をかしげた。
「楽譜だよ?」
「なんで楽譜?」
「前に言ったよ?」
…………ああ、デビューがなんちゃら言ってたな。本気だったのかよ、この人。
「てかこれ、
「うん。瑞理君が小さい頃いっつも私に歌って、ってせがんでた歌だよ」
そうそう、懐かしいことだ。この歌は隻狼と呼ばれた忍様の縁を歌ったもので、これを口ずさむと鬼寺で仏様を彫る仏師様が眉間の皺を薄くして、色んな話をしてくれた。あの仏師様は、葦名の歴史を知る一族の出で、代々葦名の歴史を語り続けてきたのだとか。……俺を見ると、とても優しい目をしてくれるのはどうしてなのかは、謎だけど。
「歌えるよね?」
「もちろん。葦名の人間で歌えない人はいないでしょ。でも、悠那お姉ちゃんってアイドル的な感じだし、民謡なんてイメージ崩れるんじゃないの?」
「バラードも結構歌ってるし、大丈夫!」
大丈夫……なのか……? ……まぁ、大丈夫か。その程度で人気が減るなら、俺も彼女も成功していないと思うし。
「で、アバターなんだけど……こんな感じ」
「どれどれ…………あれ、これって……」
観光大使として活動した時、仙峯寺の槍術士の服を貸してもらったことがある。悠那お姉ちゃんが見せたアバターの姿はそれにそっくりだ。ただ、ちょっとずんぐりむっくりしているような……?
「ちょっと可愛い感じにしてみました。ほら、瑞理君と和人君がプレイしてたゲームでいたでしょ? 玉葱みたいな……」
「カタリナの騎士?」
「そうそう、それ! その人をイメージしてみたんだよ」
ふぅむ……ということは、このアバターを使うなら唸って登場した方がいいのかもしれない。
「でも、これ使わなくてもいいんだよ? アバターあるよね? ほら、あの狼のエンブレムのアバター」
「あれを使えと?」
悠那お姉ちゃんが言っているのは、ACBONWのアバターのことだ。あれのビジュアルは俺が持っているアバターの中でも断トツだが……あれはちょっとなぁ……
「嫌?」
「あのアバター使ってると、ちょっと殺戮衝動が……」
「大分染まってるよね、瑞理君」
あのアバターを使っていると、何もかもを焼き尽くしてしまいたくなる衝動が溢れる。あれもまた、俺の姿なのかもしれない。ほら、よくあるあれだよ……そのキャラを演じると、そのキャラの性格が染み付くってやつ。
「まぁいいや。話は変わるんだけど、修羅について調べてきたよ」
「あ、本当?」
「うん。修羅修羅うるさいしね、葦名の爺様達」
うん、それは分かる。修羅ってなんだよ、ちゃんと説明しろよ。説明不足が祟って俺達が困惑してるんだよ。
「大昔のことだけだけど……修羅っていうのは、大昔葦名を襲った内府────幕府を狩り尽くした鬼のことなんだって」
「幕府……江戸幕府とか?」
「うーん……戦国だし、室町幕府とかじゃない?」
ああ、室町幕府ね。……あれ? 確か室町幕府って滅んだよな? もしかして、葦名に主力を投入したはいいけど、それらを全員修羅に斬られたせいで滅んだのか……? ダサくないか。
「幕府は葦名一心様を怖がってたみたいだね」
「一心様の刀と槍と……火縄銃? マグナムだよねこれ……どこで仕入れたの……?」
国立博物館に時折展示される葦名一心の武具は、当時の技術力ではよく分からないものばかりだ。……いや、俺の義手もそうだけどさ。てか葦名一心様の武具全部返還要求してたよな? 返して上げなよ国立博物館さん……
「にしても、鬼ねぇ……」
「鬼って言っても、表現だと思うよ。斬られたってことだし」
「あ、そっか。でも……誰のことだろ?」
修羅なんて呼ばれるような人がいたとは思えないんだけどなぁ……
「修羅は人を殺しすぎた人を表す言葉みたい。怨嗟の積もる先なんだって。鬼寺の仏師様が言ってたよ」
「怨嗟……積もる先………………あれ?」
確か、鬼寺の源流にあるのは仙峯寺だった。そして仙峯寺にはとあるものが置かれている。不動明王が握っていたという、真っ黒な刀が。大婆様にあれのことを聞いたら、怨嗟の積もる先と言われたことがあった。そしてその力が奪われて久しい、とも。
「怨嗟の積もる先が修羅なら……あの大太刀は……」
「大太刀って、拝涙?」
「黒い方。開門の方だよ」
「ああ、そっちね。…………あ!」
悠那お姉ちゃんも気付いたらしい。あの日、俺と話を聞いていたのは悠那お姉ちゃんだけだが、大婆様が言っていたのだ。奪われて久しい、と。その奪われた力というのは、どこに行ったのだろう? 力を奪った者がいるはずなのだ。
「怨嗟の積もる先が修羅なら────」
「奪った人が初代修羅……」
開門が怨嗟の積もる先だったとしての仮定ではあるが、怨嗟の積もる先があの禍々しい大太刀であり、その力が失われた瞬間、人間に怨嗟がターゲットを変えたのなら……何百年も前の怨嗟が、人間に積もり続けている可能性がある。
「悠那お姉ちゃん……ちょっとこの話止めない? 俺、嫌だよ。俺が拠り所にされてる可能性とか」
「う、うん。私としても嫌だよ。可愛い弟が鬼だなんて」
「うわ、ちょっと寒イボ立ってる……好奇心は猫をも殺す、なんて言うけど……これはちょっと……」
怨嗟としても人間の方が都合がいいのかもしれないけど、迷惑な話だ。
「オカルトっぽい話は終わりにして、別の話しよう。お父さんから言われてたことなんだけど……」
「重村伯父さんから?」
最近の重村伯父さんといえば、前から渡されていたプロトオーグマーの製品版────つまりオーグマーが完成したため、各業界から引っ張りだこになっていると聞く。今を駆け抜けている方が何を……
「プロトオーグマーのアップデートするから、一旦回収させてほしいんだって」
「アップデート? 市販のもの買うつもりだよ?」
「せっかくデータをたくさん提出してくれたんだから、貰えるものは貰っておきなよ」
うーん……まぁ、貰えるのなら貰っておけばいいか。
余談になるが、プロトオーグマーに積んでいる和人のアプリは、重村伯父さんから高く評価されていた。現在ユイにも協力してもらったアプリを入れているのだが、下手なアプリよりも分かりやすい。
お前のことだぞ《ザ・シード》。お前で作ったアプリよりも、和人のアプリの方が優れてるってどういうことだ。仮想世界は作れるけど現実での生活で活用は難しいってか? 畑が違うのかもしれないけど、もっと頑張れよ。あ、アプリといえば……
「悠那お姉ちゃん、お願いがあるんだけど……」
「ん、何?」
「俺と和人の将来の話なんだけどね?」
そう言って俺が取り出したのは、複数枚の企画書。俺と和人がお互いの両親を交えて話し合いをして、考え出したものを悠那お姉ちゃんに渡す。
「これ……もしかして……」
「うん。俺と和人の進路……その第一歩、になるのかな。重村伯父さんにも話してある」
「オーグマーを使った、ARMMO……」
その名も、《オーディナル・アリシゼーション》。命名したのは鋭二さんである。もちろんまだ、夢や希望、企画書の状態だけど、実現してみたいものの一つだ。
「VRMMOをやってきたから思うんだ。拡張された現実を舞台に遊ぶゲームっていうのも面白いって」
空を飛べる、ロボットに乗れる────ああ、確かにこういったものもロマンだ。だけど、誰しもが一度は考えたことがあるのではないだろうか? 「突然現れた敵に、自分が特別な存在となって立ち向かう」なんて妄想を。
少なくとも、俺と和人はそういう妄想を何度もした。やれシチュエーションはこうだ、やれ特別な存在になる時の瞬間とか……色褪せることのない小学生の頃の記憶。それを実現してみたい。
「俺の腕がないってのも……拡張された現実世界でなら、色々設定が作れるじゃん?」
「……それで、私にお願いって?」
「ああ、その《オーディナル・アリシゼーション》で登場する敵は、ダメージは与えられても倒せないんだよ。歌姫って呼ばれてる存在の歌声がないと」
雑魚はともかくとして、ボスはどれだけ瀕死に追い込んだとしても、死ぬ前に次元の狭間へと逃げてしまう。だから、歌姫と呼ばれる存在が結界で閉じ込めないといけない。歌姫の歌声が、ボスを俺達がいる次元に縛り付ける……って感じ。
「悠那お姉ちゃんには、その歌姫の歌を歌ってほしいんだ」
「私に?」
「うん。俺が知っている中で────悠那お姉ちゃん以上に歌姫としての存在が似合う人はいないから」
もちろん、悠那お姉ちゃんは音楽業界から引っ張りだこで忙しい身。鋭二さんからもそう説明されているから、断られても文句は言わないつもりだ。
「そんな顔しなくても、受けるよ?」
「えっ……いいの?」
「うん」
マジか。断られる前提で考えていたから衝撃が凄い。だけど、悠那お姉ちゃんが了承してくれるなら、俺と和人の夢が一歩前進する。
「私のデメリットはあんまりないみたいだし。断る理由が見つからないよ」
「そ、そっか……うん、ありがとう」
「お礼はこの企画が成功してから、だよ」
それはそうだ。でも、感謝をしたいのは本当のこと。俺と和人でゲーム会社を作る……なんてあんまり現実的ではなさそうな夢を実現する第一歩を踏み出せるのだから。
「計画はオーグマーが発売してからにはなるけど、ある程度詰めちゃおうか」
「うん。それで曲なんだけど……」
「瑞理様、失礼いたします」
計画を進めようとした直後、ウォークトーカーが入ってきた。彼女が部屋に入ってくる時は、お茶を淹れてくれた時とかだけど、彼女の手にお茶の入ったカップはない。何かあったのだろうか?
「どうかしたの?」
「はい。紺野家の罹患について、いくつか発見があったと」
おお、こっちも進展があったか。あんまり期待していなかったけど、さすがは葦名……あ、ちなみに悠那お姉ちゃんはこの話を知っている。葦名の情報網を舐めてはいけない。
「感染は輸血によるものではないようです」
「? ………………もしかして、紺野家って────」
「はい。ユウキ様とラン様のお母上が葦名の傍流、その派生にある家だそうです」
「本家は?」
「巴……というそうですが、存じておりますか?」
「「と、巴……!?」」
なんてところの血を引いているんだ……! 巴なんて、秘明と遠間が霞む────いや、その程度であの家は霞まないけど────くらいの名家だぞ!?
「血が薄くなってるはずだけど……あんなになるもの?」
「恐らく、隔世遺伝や先祖返りの類かと」
世間って、狭いなぁ。