ナーヴギアで焼き芋作ったら日本を救えたらしい   作:エヴォルヴ

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サクサク進めます。感動などいらぬ(欲しい)。

ちょっと宣伝を。私が投稿してるリーヴラシル、暇があれば是非お読みください。

あと、ストックしていた作品も後日投稿予定なので、暇があればそちらも是非。


35.騎士の目覚め

 この世界のありとあらゆるものに、足し算と引き算の理が存在していると俺は思っている。

 

 何かマイナスの事柄があった後は、プラスの事柄がやってくるし、その逆もまた然り……という感じで。例えるなら……死銃(デス・ガン)の事件があった後に、俺に彼女ができた……みたいな感じだろうか? これは物事だけではなく、人の持っているものにも含まれているのだ。

 

「えーと、つまり……皆のVR適性が高かったのは……」

 

「死ぬ間際のギフテッド……のようなものだったみたいですね」

 

 生から死、死から生へ。ユウキとランおよび、《スリーピング・ナイツ》のメンバーのVR適性が異常なまでに高かった理由が、死と隣り合わせにいたからである。ある意味極限状態での活動が、皆を強くしていたようだ。

 

 俺とキリトの適性が高いのはどうしてなのか? 動画撮影で無人島に行ったり、毎年葦名に行ったり、ペインアブソーバーがまあまあ低いACBONWで過ごしていたりするから。

 

 とにかく、《スリーピング・ナイツ》のメンバーは、以前よりも動きが微妙に鈍くなっている。

 

「それでも結構動けてる方なのは、やっぱり仮想世界にいた時間が長いからなのかな?」

 

「そこは俺達じゃ分からないなァ……」

 

 テロか何かで仮想世界に閉じ込められでもしない限り、そんな体験はできないだろう。やられたら絶対に許さないし、必ず制裁を下すが。

 

「ま、なんにせよ、これで二人は治ったわけだ」

 

「うん! ……でも、あの物凄く甘い干し柿を食べないとダメなのかぁ……」

 

「あー、あれね。甘いよね、太郎柿の干し柿」

 

 あんぽ柿っぽいけど、もっと甘いんだよあれ。

 ユウキとランの状況だが、竜咳の症状が治まってリハビリを行っているとのこと。松葉杖無しで歩けるようになるまでまだ時間が必要だそうだが、それでも彼女らが健康に近付いているのは確かだ。

 

「太郎柿が届くまでの辛抱だな」

 

「そうですね。……あ、そういえばキリトさん、トーマスさん、母から聞いたのですが……」

 

「「ん?」」

 

「お二人は秘明の血を引いているんですよね?」

 

 キリトは薄いけど、俺はガッツリ引いているな。どうしてそんなことを聞くんだろう? 

 

「母の知り合いが秘明の人だったと聞きましたから」

 

「へー……ちなみにお名前は?」

 

「秘明天明……だそうです」

 

「「天明?」」

 

 そんな人いたかな…………あ、もしかして、酒樽作ってるところの親方さん? あの人そんな感じの名前だった気がする。俺達は確かに秘明の血を引いているが、全員の名前をしっかり覚えているかと聞かれると頷けない。秘明と一言で纏めても、たくさんいる。分家、傍流含めたら何人いることやら……

 

「で、その人に何か?」

 

「快気祝いをいただいたそうなので、お礼を、と思いまして。母は連絡先を紛失したため……」

 

「ああ、なるほどね。分かった。大婆様経由でお礼を伝えておくよ」

 

 どうせ高校入学の知らせをするために行くし。春休み中はずっと葦名にいるつもりだ。修羅とか言われようが刀振るって決めたから、あの爺様方に一太刀くらいは喰らわせる。

 

「ところで、二人は学校どうするの?」

 

「あ、それなら決まってるよ。義務教育修了検定? ってやつを完了して、高校入学だって」

 

 へぇ、そんなのがあるのか。あれかな? 入院して学校に行けない人への救済措置的な……

 

「ボクも姉ちゃんも、経過とか見て来年入学だけどね」

 

「そうか。皆のことは知れたし、トーマス」

 

「はいはーい」

 

 キリトの声に応じてデジタル化した書類を取り出す。

 

「ランとユウキ、こちらをご覧ください」

 

「何これ?」

 

「こっち側への勧誘」

 

 大型アップデートにより、ACBONWにてニュービー加入キャンペーンがやってくる。うちのオペレーターをやってくれていた人が、最近ご結婚なさって引退するらしいので、オペレーターが欲しいと思っていたのだ。丁度いい機会だし、《スリーピング・ナイツ》を引きずり込んでしまおうと考えての行動である。

 

「この換金システムって、GGOとかと同じやつ?」

 

「レートはこっちの方がいいね。100クレジットで一円だから」

 

「こっちで稼いで動画の予算確保してるんだよ」

 

 もちろん、稼ぐにしてもまぁまぁ費用がかかるから、プラマイゼロになることだってあるけど。俺とキリトは稼いでいる方だと思う。

 

「二人……というか《スリーピング・ナイツ》の皆は、これから色んなことをしたいって言ってたよね?」

 

「はい。それと、勧誘に何か……?」

 

「俗っぽいけど、お金は必要になってくるんだよね。やりたいことやるにしても、さ」

 

「「うっ……」」

 

 何をするにも金はかかる。稼ごうにも、病気で入院していた彼ら彼女らを受け入れてくれる先は────────あるにはあるけど、ちょっと厳しいかもしれない。

 

「そこでACBONWの登場ってわけ」

 

「生活費とは行かなくても、旅行代とか貯めるには丁度いいはずだ」

 

 なら、稼ぐ方法が明確な場所を用意してやるのも、支援になるだろう。ゆくゆくは俺とキリトの夢に協力してもらいたいし。

 

「「…………で、本音は?」」

 

「「戦いはいい……俺達にはそれが必要なんだ」」

 

 もちろん助けたいというのも本音だが。育てに育てて、強くなったところで狩る。狩られるかもしれないけど、それはそれで素晴らしいことだ。

 

「二人共、そういうところだよ?」

 

「別にいいじゃん。俺達こういうやつだし」

 

 そういうのも含めて好きだと言ってくれる人がいるわけだから、変えるつもりはないし、変わる必要もない。

 

「あ、決まったら教えて。招待送るから」

 

「こういうところ便利だよなぁ」

 

 あの世界に行く時、普通に購入するよりも、プレイヤーから招待された状態の方が安く購入できるのだ。これから始めようと考えているビギナーもそういうのを調べておくと便利だ。俺達は招待無しで飛び込んだけど。

 

 ちなみに招待されると、その人の所属しているクランに所属した状態になるため、マルチプレイも楽々である。……俺達はクランなんて作ってないがな! 当時のクラン制作には少々手間があったので……

 

「で、慣れたら挑みにおいで。叩き潰してあげるから」

 

「真正面から言うことですかね、それ」

 

「まさか怖いのか?」

 

「「怖くないですけど?」」

 

「「よーし、もう一度叩き潰してやるよ」」

 

 挑発に乗ってくれたならこちらのものよ。オペレーターだろうがリンクスだろうがレイヴンだろうが、かかってこい。

 

「あ、キリト、そろそろ時間」

 

「ん? ああ、もうそんな時間か」

 

 この後はちょっとした用事があるため、ALOからログアウトしないといけないのだ。ゲーム作るっていうのも大変なんだなぁ、と思う今日この頃……

 

 仮想世界の可能性を広げた《ザ・シード》のパッケージを使えば簡単に作れるかもしれないのだが、あれは仮想世界を作るためのものであって、拡張現実を作るには不向きな気がして使っていない。あれを作った人は仮想世界に相当没頭していたか、現実世界に嫌気が差していたに違いないな。

 

「んじゃ、二人共。リハビリ頑張ってね。他の皆にもよろしく」

 

「うん! またね二人共!」

 

「次は……リアルで、皆と会いましょう」

 

 お、オフ会の誘いか? 

 

 

 ────────────────────────────────────

 

 

「和人ー、ボスにこれ持たせたらダメかなぁ」

 

 仮想世界から戻った俺達は早速ゲームの開発を行っていた。プレゼンテーションを行うのはゴールデンウィーク中。そこまでにある程度の形を作っておきたいが……

 

「却下だ却下。てかよく片手で持てるな、その大太刀」

 

 インスピレーションが湧かないから、刺激になりそうなものを家の地下から持ってきた。うちの家宝の赤鞘の大太刀、銘を【拝涙】。赤鞘というか、朱色だよね、この鞘ってさ。

 

 ちなみに、滅茶苦茶厳重に縛られているし、聖遺物とかにありそうな布で固定されているので、絶対に抜けないようになっている。どんな刃をしているのか見てみたいけど、ここまで厳重に縛られているとなると、妖刀とかの類だったりするのかな? 開門もその類だって聞くし。

 

「ま、冗談はさておき……最初のボスは大事だよね!」

 

「ああ。モブを召喚ってのもありだったけど、やっぱりフィジカルモンスターがいいよな」

 

「脳筋って感じのやつね。キュクロプスなんてどう?」

 

「いやー、あれは三番目だろぉ。ゴブリンキングは数の暴力だとして……大型の騎士とかか?」

 

「塔の騎士的な?」

 

「……ありだな。騎士の動きのデータ、無料配布してる人いたよな? その人に依頼するか?」

 

 餅のことは餅屋ってやつだ。色んな人に協力してもらえば、その分お金とかもかかるけど、いいものが出来上がる可能性が上がる。ゲームのクオリティ向上のため、お金を渋っちゃダメだ。特に俺達は全くの素人なのだから、妥協したら終わりである。

 

「あとは侍とか。獣と合体させて……」

 

「四足歩行の侍か……モブモンスターはどうする?」

 

「人型は後半で、前半は動物。物語の真相に近付くってのもこのゲームのコンセプトだからね」

 

 俺達の夢、《オーディナル・アリシゼーション》の世界では、別次元から現れた化け物達による行方不明事件が多発している、という設定だから、行方不明者は化け物に改造されたりしてるのだ。ちなみに、設定的にはプレイヤー達は化け物の力を中和して攻撃する。ほら、あれだ、某歌って戦う歌姫のアニメと同じような感じ。

 

「アイテムは……まぁ、ハクスラ要素いらないな」

 

「そうね。全員にチャンスがあるのがいいと思う」

 

 もちろん、ラストアタックボーナスとか、ボス発見ボーナスとかは欲しいだろうけど。

 

「あとは……」

 

「ああ……」

 

 一番頭を抱えていることがある。お金とかは別にいいんだ……また貯めればいいんだから。俺達が頭を抱える問題は、そんなものではなく、よく分からない未知に対するものだ。それは────────

 

『件名:オーディナル・アリシゼーションへの協力』

 

「「こいつだよ」」

 

 誰が送ってきたのか分からないメール。メアドも何もかも分からないそれは、警察に通報しておいたが、紛れもなく不安要素だ。《オーディナル・アリシゼーション》については、重村家、桐ヶ谷家、鋭二さん、ルナさん、明日奈さんぐらいしか知らないはずなのに、送り主はなぜ知っているのか。

 

「逆探知ができないからな、俺達は」

 

「ウォークトーカーのスキャンでウィルスがないのは分かってるけど……開きたくはないよな……」

 

 削除しても同じものが来るのだから、俺達にとっての悩みの種になっている。帆坂家にも連絡して特定を急いでもらってるけど、どうだろうなぁ……

 

「とりあえず迷惑メールに突っ込んでおいて……」

 

「だな。これで来るようなら、買い換えってことで」

 

 携帯、高いんだよな……プロトオーグマーが手元にないから、スマホを使っているのだが、オーグマーが完成したら完全に乗り換えるつもりだ。あっちの方が通信費少ないしね。和人くらい電子系に詳しくもないから、オーグマーだけでもやっていけるはず。

 

「ガウ」

 

「ん、ハティ。どうかした?」

 

 最近、焼いたサバにハマっているらしいハティが声をかけてきた。お腹が空いたのかと思ったが、まだその時間ではないし、ハティ自身あまり食べない犬だから、空腹の訴えではなさそう……? 

 

「ウォン」

 

「んー……もうちょっと待ってて」

 

「ガウ」

 

「今じゃなきゃダメ?」

 

「ウルォン」

 

 む……それを言われると弱いな。確かにあまり構ってあげられてなかったし……

 

「ごめん和人。今日お開きでいい?」

 

「ああ、大丈夫だぜ。このままやっても進まなそうだしな」

 

 そう言って和人はパソコンの電源を落とし、開け放たれた窓から自宅の部屋へと戻っていく。小さい頃にやってた空中橋ごっこ? 秘密基地ごっこ? みたいなやつなのだが、これが中々面白くて、俺達のブームになっているのだ。それをやるためだけに軽くて滅茶苦茶頑丈なスロープっぽいのを買ったりしている。

 

 …………こういう馬鹿みたいなのも動画にしてみてもいいかもしれない。

 

 

 

 

 

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