ナーヴギアで焼き芋作ったら日本を救えたらしい 作:エヴォルヴ
(感想&評価という名の)御子はもらっていくぞ
……許された。許されたっていう言い方あれ、だけど……うん。今回だけは許してくれるっていうことで、許してもらった。次は無いらしいので、ルナさんが泊まりに来る時はどうにかしよう。
「……温かい」
俺を抱き枕にしているルナさんを、俺もまた抱き枕にする。なんか、貞操の危険に比べたらこのくらい、って思うようになってしまった。ルナさんいい匂いするし、温かいし、柔らかいし……とにかく最高である。
凄く幸せそうに寝ているルナさんの背中に腕を回して、二度寝を試みてみる。こうするだけで、嫌なこと忘れられる気がするのは、俺がチョロいからなのか?
「……」
「フェンリー、スコルとハティ起こしてきてくれる?」
「……」
最近、一段と大きくなったフェンリーに指示すると、あの二頭が寝ている部屋に向かった。成犬だと思っていたのだが、これ以上に大きくなるの? もしかして古代種的な感じだったりするのかな?
「んー……瑞理の、ヘタレ……」
「否定できない……」
寝言でもヘタレって言われたよ、俺。否定できないんだけどね? 否定できないんだけ────────
「ルナさん、起きてるよね?」
「……」
「ねェ、起きてるよね、ルナさん?」
答えはなく、ただ俺を抱き締める力が強くなる。絶対起きてるよこの人。寝息じゃないもん、今の息の仕方。今日は色んな準備があるから離してほしいんだよなァ。
「ルナさん、ルナさん、起きないと引きずることになるけどいい?」
「……」
「引きずるね」
ぐいっ、とルナさんごと体を起こして、リビングまで降りていく。さすがに引きずるとルナさんの足を傷つけそうなので、彼女を抱えて一階に降りる。今日の朝ごはんはどうしようかな……あ、そういえば生ハム残ってた。
「……ねぇ、パワーおかしくない?」
「あ、おはよう、ルナさん。狸寝入りやめたなら降ろすよ。パン焼くから」
リビングの椅子に降ろして、作り置きしていたオートミールパンをトースターに突っ込む。焼けるまでに時間があるため、オムレツも作ろう。
卵三つを泡立てないようにかき混ぜて、塩を振って、牛乳投入。それを濾したら温めたフライパンに投入────
「そういえばさ」
「ん?」
「君、いきなり伸びたよね、身長」
「ああ……うん」
そう、そうなのだ。最近、身長が伸びたのだ。四センチくらいだけど、身長が伸びた。これで173センチだから、もう少し欲しい。
「成長期?」
「さぁね。でも、ルナさんくらいにはなったよ」
ルナさん。身長が174センチだから、あと二センチあるだけで身長を追い越せる。……よくよく考えてみると、モデル体型だよねルナさんって。そりゃ街中で、行き交う人達が一回振り返るか見惚れるよ。本当に、俺は恵まれてるんだな、と思ってしまう。
「ところで瑞理」
「何?」
「次は何がなんでもするからね」
……やはり許されないかァ、と思いながらも、本気で嫌がったらやめてくれるだろうと確信があった。
「はいはい、分かった分かった」
「む、なんか適当だなぁ…………ま、いいや。瑞理の切り替えの早さは、今に始まったことじゃないしね」
そう言って、パンが焼けるまでの時間を牛乳を飲みながら潰すルナさん。ふと、ルナさんは机に置いてある物に気付いたようで、チャプチャプと揺らしながら口を開く。
「瑞理、これは?」
「ああ、それ? ローズウォーター。作ったんだ」
「またお洒落なものを……って、作った?」
作り方は結構簡単で、大釜にバラと天然水を投下して、蒸留すれば完成する。水滴を集めるのが少々面倒だったが、品質がいいバラを使ったから、香りがいいのでよしとしている。
「何本か作ったから、持って帰っていいよ」
「どう使うのこれ?」
「飲むんだよ。一昔前に流行ったんだって」
アンチエイジングとして流行ったんだったかな? 効果とかはよく知らないけど。
なぜかは知らないけど、俺が育てる植物って恐ろしい成長や、妙に品質が良かったりするのだ。やはり葦名の天然水を使って育てると、植物も大きくなるのかもしれない。源の宮の先にある桜竜の神域と呼ばれる場所の桜も凄く大きいし。……身長には作用しないが。
「ふーん……じゃあ一本貰ってくね」
「うん、どうぞ。……さて、ご飯もできたよ」
焼き上がったオムレツを皿に乗せて、テーブルに置く。冷蔵庫から取り出した生肉を三頭の皿に盛った後、俺は大盛りの白米に胡椒とめんつゆをぶっかける。
それを見て、ルナさんは訝しげな表情を向けてきた。
「……それ、美味しい?」
「ん? うん。美味しいよ?」
感想を言えと言われても、美味しいよとしか言えないけど、美味しいのだ。ここにオムレツを合わせれば、即席玉子丼の完成である。
最近、オートミールにハマっているというルナさん用に用意したオートミールパンを齧っているルナさんは、好奇心と疑念を織り混ぜた顔で俺を見ている。
「食べる?」
「え? ……んー、いいわ。いらない。私はパンとオムレツだけで十分」
「そう?」
ルナさんはあんまり食べないんだった。俺も和人もよく食べるから基準が狂いそうになる。
というか、葦名の人達は皆よく食べるのだ。鶏丸々一羽なら余裕で食べきれるくらいだし、三~五人もいれば、葦名で育てている葦名牛一頭を骨まで食べ尽くせる。────それくらい、皆よく食べるのだ。
やはり、よく食べることが葦名の人間の強さの秘訣……なのかもしれない。世間では高齢者と呼ばれる方々でも、脂っこいものや脂の乗った肉や魚をガッツリ食べるからね。
「ルナさんはもう少し食べた方がいいと思うなァ……あ、そうだ」
「ん?」
「ルナさん、今度の連休、葦名においでよ。前は案内できなかったからさ」
「葦名かぁ……」
レポートで唸っていたし、風土についてでもレポートにすればいいんじゃないかな。大学の発表で葦名のことをやっていた人はいなかった気がするし。
ほら、大婆様とか、仏師様にお話聞いて、博物館とか仙峯寺とかの考察してさ。
「あそこ、風が冷たいんだよね」
「寒いの苦手?」
「ちょっとだけね。……でも……うん、そっか……行ってみようかな?」
よしきた。予定を立てないといけないな……プランは……ルナさんと相談するとして、源の宮の桜は外せないよね。
源の宮の桜は特殊なのか、年がら年中花が咲いている。水の中にも咲いてるんだけど、あれは……どういうことなんだろ? 植物学者の皆さんも首を捻っていたし。
ちなみに、源の宮に行くには条件がある。お香の香りを纏うことだ。……うん、あのお香だよね。
俺や和人は匂いが染み付いているんだけど、葦名の外からやって来る人達は源の香を纏っていない。だから源の香を纏うんだけど、それを「どうせ迷信」、「そんな古いことやってられない」などと言って源の宮を目指すと、同じ道を何度も巡ることになる。
「ルナさんは行きたいところってある?」
「うーん……あ、月見櫓」
渋いところ突いてくるねぇ……
葦名の城、その月見櫓では、忍びを待つ御子をお題にした神楽? 能? が満月の夜に行われる。夜に葦名に到着するバスに乗れば、初日に見ることができるだろう。
「あとは……身投げ場、かな?」
「バンジーやるの?」
「凄い高さって聞いてるから、やってみたいなぁって」
……ALOでも急降下とかしてるし、大丈夫……かな?
「ところで……今日って何か予定あるの?」
「ああ、うん。ちょっとね。夜にイベントがあるんだ」
「イベント?」
ふっ、ふふふふふふ……この暴走機関車トーマスであっても、緊張するイベントだ。驚くがいい、ルナさん!
「アルヴヘイム・オンラインのトークショー出演」
「………………………………ほへ?」
────────────────────────────────
都内にあるドーム。とあるイベントが始まろうとしている会場にて、カウントダウンの時刻を刻むデジタル時計があった。
「「「リンクスタート!!」」」
そのデジタル時計の時刻が19:00を回った瞬間、暗闇に包まれていた部屋は一気に明るくなり、そこに集まった人達を照らす。アルヴヘイム・オンラインのAnniversaryイベント、トークショーの開幕である。
「はい、ということで始まりましたアルヴヘイム・オンライン、Anniversaryイベント、アルヴヘイム・トークショー! 司会はMMOトゥモローのシンカーと」
「同じくMMOトゥモローのユリエールがお送りします」
スーツ姿の男女……シンカーとユリエールが司会進行の挨拶を行うと、会場や動画サイトのコメント欄に拍手や歓声が。
「さて! 今回のトークショーでは、アルヴヘイム・オンラインの開発代表である須郷伸行さんの他に、特別ゲストを招待しています!」
シンカーがそう口にすると、がなるようなアラート音と共に、大型モニターに何かのエンブレムが表示される。
それは見る者によって印象が変わるものだった。ある人は「なんだあのエンブレム?」と疑問符を浮かべ、ある人は「見覚えあるんだけど……どこだったか……」と記憶を漁り、ある人は「アアアアアアアアア!!?」、「わァ………………あ……」と発狂や涙でもしたかのように驚愕するもの。
映し出された『檻を喰い破る狼』のエンブレムと、『二人の騎士が剣を交差させた』エンブレム。それらがフェードアウトした瞬間、舞台袖から二人の少年が現れた。
「ハロー、皆さん! 今日ぐらいは自重しようかなって思ったけど、結局暴走することにしたトーマスだよ!!」
「やめろ、止まれ、ブレーキ付けろ。ツッコミ役兼、ブレーキ係、キリトだ」
「俺は停まらないから……! 進み続ける……!」
「停まれって言ってんだろうがこの暴走機関車ッ!!」
「「キリトーマスです、よろしくどうぞ」」
最近銀のメッシュを入れた少年と、気分転換に薄く黒緑の染料を使った少年。我らが暴走機関車トーマスと、ブレーキ係なのにノリで暴走するキリトである。
「はい、ということで! 今回のトークショーには焼き芋でチャンネル登録者数が増加したYou◯uber、キリトーマスさんがゲストとして出演します!」
拍手喝采の中、キリトとトーマス────和人と瑞理は若干の緊張をしていた。いつも暴走しているとはいえ、このような大イベントには参加したことがなかったからである。
「では、トークショーを始めていきましょう。まず最初のお題は……アルヴヘイム・オンラインの生みの親である須郷さんから一言」
ユリエールからの振りに、マイクを手にした須郷は小さく微笑みを浮かべ、口を開いた。
「うーん……そうですね……このイベントが始まるまで、色々考えてきたけど……やっぱり最初は二人にこれを聞きたいかな?」
「「なんでしょう?」」
「オベイロン戦はどうだったかな?」
「「最高でした、ありがとうございます!!」」
問いかけに対して、二人は満面の笑顔で返す。彼らは今まで戦ってきた者を覚えている。その中でも、妖精王オベイロンとの戦いは印象に残るものだった。
「初見殺しもいいところでしたけどね、最後の一撃は」
「ははは、驚いてくれたかな? 戦闘に全く起因しないはずの種族が鍵になる……ファンタジー的な要素はしっかり取り入れたつもりなんだけど」
「そりゃあもう! もう一度やりたいくらいですよ」
和人がそう言うと、須郷は苦笑してしまう。
「オベイロンは一応、僕が動かしていたから、君達と直接対決したわけだけど、ちょっと遠慮したいかな」
「ALOにはダミーのグランド・クエストと、謎解き要素をクリアした者だけが挑戦できる本当のグランド・クエストがあったんですよね? 開発の際、反対意見とかは……?」
「そりゃあ出ましたよ。滅茶苦茶出ましたねぇ……懐かしい」
遠い目をした須郷と、乾いた笑みを浮かべた運営スタッフの顔を見て、瑞理と和人は「あっ、この人大変だったんだなぁ……」、「俺達もああいうのに仲間入りするのか……」と察する。
「でも、それ以上に、遊び尽くしてくれた人達への報酬として、ああいう遊び心を込めたいと思ったんです」
「なるほど…………ところで、グランド・クエストが攻略されなかった場合、どんなイベントが?」
「妖精王オベイロン率いるガーディアンVS九種族の総力戦が始まるはずでしたよ」
明かされる新事実に会場だけではなく、コメント欄も沸く。ネット記事に載った、九種族の混成パーティーによるグランド・クエスト制覇。これが成されなかった場合始まったのは、九種族全ての力を結集させねばならないほどの戦いがあったのだ。
「その後は、封印されてたアインクラッドが現れ────って、感じでした」
「ほうほう!」
「個人的には、総力戦の方が良かったんですけどね。彼ら、やってみせちゃったので」
こうしてトークショーは進んでいく。この後、今後ALOに実装されるシステムや、アップデートによるダンジョンの追加など、様々な情報が公開され、ゲーマーの界隈がざわつくことになる。
お気に入り5000人突破企画
-
史実SAO初日クリア
-
ACBONW
-
史実ルート