ナーヴギアで焼き芋作ったら日本を救えたらしい   作:エヴォルヴ

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久しいな、御子の忍びよ……(投稿が遅れたことを)卑怯とは言うまいな。

(感想&評価という名の)御子はもらっていくぞ


37.帰還車トーマスと大イベント

 ……許された。許されたっていう言い方あれ、だけど……うん。今回だけは許してくれるっていうことで、許してもらった。次は無いらしいので、ルナさんが泊まりに来る時はどうにかしよう。

 

「……温かい」

 

 俺を抱き枕にしているルナさんを、俺もまた抱き枕にする。なんか、貞操の危険に比べたらこのくらい、って思うようになってしまった。ルナさんいい匂いするし、温かいし、柔らかいし……とにかく最高である。

 

 凄く幸せそうに寝ているルナさんの背中に腕を回して、二度寝を試みてみる。こうするだけで、嫌なこと忘れられる気がするのは、俺がチョロいからなのか? 

 

「……」

 

「フェンリー、スコルとハティ起こしてきてくれる?」

 

「……」

 

 最近、一段と大きくなったフェンリーに指示すると、あの二頭が寝ている部屋に向かった。成犬だと思っていたのだが、これ以上に大きくなるの? もしかして古代種的な感じだったりするのかな? 

 

「んー……瑞理の、ヘタレ……」

 

「否定できない……」

 

 寝言でもヘタレって言われたよ、俺。否定できないんだけどね? 否定できないんだけ────────

 

「ルナさん、起きてるよね?」

 

「……」

 

「ねェ、起きてるよね、ルナさん?」

 

 答えはなく、ただ俺を抱き締める力が強くなる。絶対起きてるよこの人。寝息じゃないもん、今の息の仕方。今日は色んな準備があるから離してほしいんだよなァ。

 

「ルナさん、ルナさん、起きないと引きずることになるけどいい?」

 

「……」

 

「引きずるね」

 

 ぐいっ、とルナさんごと体を起こして、リビングまで降りていく。さすがに引きずるとルナさんの足を傷つけそうなので、彼女を抱えて一階に降りる。今日の朝ごはんはどうしようかな……あ、そういえば生ハム残ってた。

 

「……ねぇ、パワーおかしくない?」

 

「あ、おはよう、ルナさん。狸寝入りやめたなら降ろすよ。パン焼くから」

 

 リビングの椅子に降ろして、作り置きしていたオートミールパンをトースターに突っ込む。焼けるまでに時間があるため、オムレツも作ろう。

 卵三つを泡立てないようにかき混ぜて、塩を振って、牛乳投入。それを濾したら温めたフライパンに投入────

 

「そういえばさ」

 

「ん?」

 

「君、いきなり伸びたよね、身長」

 

「ああ……うん」

 

 そう、そうなのだ。最近、身長が伸びたのだ。四センチくらいだけど、身長が伸びた。これで173センチだから、もう少し欲しい。

 

「成長期?」

 

「さぁね。でも、ルナさんくらいにはなったよ」

 

 ルナさん。身長が174センチだから、あと二センチあるだけで身長を追い越せる。……よくよく考えてみると、モデル体型だよねルナさんって。そりゃ街中で、行き交う人達が一回振り返るか見惚れるよ。本当に、俺は恵まれてるんだな、と思ってしまう。

 

「ところで瑞理」

 

「何?」

 

「次は何がなんでもするからね」

 

 ……やはり許されないかァ、と思いながらも、本気で嫌がったらやめてくれるだろうと確信があった。

 

「はいはい、分かった分かった」

 

「む、なんか適当だなぁ…………ま、いいや。瑞理の切り替えの早さは、今に始まったことじゃないしね」

 

 そう言って、パンが焼けるまでの時間を牛乳を飲みながら潰すルナさん。ふと、ルナさんは机に置いてある物に気付いたようで、チャプチャプと揺らしながら口を開く。

 

「瑞理、これは?」

 

「ああ、それ? ローズウォーター。作ったんだ」

 

「またお洒落なものを……って、作った?」

 

 作り方は結構簡単で、大釜にバラと天然水を投下して、蒸留すれば完成する。水滴を集めるのが少々面倒だったが、品質がいいバラを使ったから、香りがいいのでよしとしている。

 

「何本か作ったから、持って帰っていいよ」

 

「どう使うのこれ?」

 

「飲むんだよ。一昔前に流行ったんだって」

 

 アンチエイジングとして流行ったんだったかな? 効果とかはよく知らないけど。

 なぜかは知らないけど、俺が育てる植物って恐ろしい成長や、妙に品質が良かったりするのだ。やはり葦名の天然水を使って育てると、植物も大きくなるのかもしれない。源の宮の先にある桜竜の神域と呼ばれる場所の桜も凄く大きいし。……身長には作用しないが。

 

「ふーん……じゃあ一本貰ってくね」

 

「うん、どうぞ。……さて、ご飯もできたよ」

 

 焼き上がったオムレツを皿に乗せて、テーブルに置く。冷蔵庫から取り出した生肉を三頭の皿に盛った後、俺は大盛りの白米に胡椒とめんつゆをぶっかける。

 

 それを見て、ルナさんは訝しげな表情を向けてきた。

 

「……それ、美味しい?」

 

「ん? うん。美味しいよ?」

 

 感想を言えと言われても、美味しいよとしか言えないけど、美味しいのだ。ここにオムレツを合わせれば、即席玉子丼の完成である。

 

 最近、オートミールにハマっているというルナさん用に用意したオートミールパンを齧っているルナさんは、好奇心と疑念を織り混ぜた顔で俺を見ている。

 

「食べる?」

 

「え? ……んー、いいわ。いらない。私はパンとオムレツだけで十分」

 

「そう?」

 

 ルナさんはあんまり食べないんだった。俺も和人もよく食べるから基準が狂いそうになる。

 

 というか、葦名の人達は皆よく食べるのだ。鶏丸々一羽なら余裕で食べきれるくらいだし、三~五人もいれば、葦名で育てている葦名牛一頭を骨まで食べ尽くせる。────それくらい、皆よく食べるのだ。

 

 やはり、よく食べることが葦名の人間の強さの秘訣……なのかもしれない。世間では高齢者と呼ばれる方々でも、脂っこいものや脂の乗った肉や魚をガッツリ食べるからね。

 

「ルナさんはもう少し食べた方がいいと思うなァ……あ、そうだ」

 

「ん?」

 

「ルナさん、今度の連休、葦名においでよ。前は案内できなかったからさ」

 

「葦名かぁ……」

 

 レポートで唸っていたし、風土についてでもレポートにすればいいんじゃないかな。大学の発表で葦名のことをやっていた人はいなかった気がするし。

 ほら、大婆様とか、仏師様にお話聞いて、博物館とか仙峯寺とかの考察してさ。

 

「あそこ、風が冷たいんだよね」

 

「寒いの苦手?」

 

「ちょっとだけね。……でも……うん、そっか……行ってみようかな?」

 

 よしきた。予定を立てないといけないな……プランは……ルナさんと相談するとして、源の宮の桜は外せないよね。

 

 源の宮の桜は特殊なのか、年がら年中花が咲いている。水の中にも咲いてるんだけど、あれは……どういうことなんだろ? 植物学者の皆さんも首を捻っていたし。

 

 ちなみに、源の宮に行くには条件がある。お香の香りを纏うことだ。……うん、あのお香だよね。

 

 俺や和人は匂いが染み付いているんだけど、葦名の外からやって来る人達は源の香を纏っていない。だから源の香を纏うんだけど、それを「どうせ迷信」、「そんな古いことやってられない」などと言って源の宮を目指すと、同じ道を何度も巡ることになる。

 

「ルナさんは行きたいところってある?」

 

「うーん……あ、月見櫓」

 

 渋いところ突いてくるねぇ……

 葦名の城、その月見櫓では、忍びを待つ御子をお題にした神楽? 能? が満月の夜に行われる。夜に葦名に到着するバスに乗れば、初日に見ることができるだろう。

 

「あとは……身投げ場、かな?」

 

「バンジーやるの?」

 

「凄い高さって聞いてるから、やってみたいなぁって」

 

 ……ALOでも急降下とかしてるし、大丈夫……かな? 

 

「ところで……今日って何か予定あるの?」

 

「ああ、うん。ちょっとね。夜にイベントがあるんだ」

 

「イベント?」

 

 ふっ、ふふふふふふ……この暴走機関車トーマスであっても、緊張するイベントだ。驚くがいい、ルナさん! 

 

「アルヴヘイム・オンラインのトークショー出演」

 

「………………………………ほへ?」

 

 

 ────────────────────────────────

 

 

 都内にあるドーム。とあるイベントが始まろうとしている会場にて、カウントダウンの時刻を刻むデジタル時計があった。

 

「「「リンクスタート!!」」」

 

 そのデジタル時計の時刻が19:00を回った瞬間、暗闇に包まれていた部屋は一気に明るくなり、そこに集まった人達を照らす。アルヴヘイム・オンラインのAnniversaryイベント、トークショーの開幕である。

 

「はい、ということで始まりましたアルヴヘイム・オンライン、Anniversaryイベント、アルヴヘイム・トークショー! 司会はMMOトゥモローのシンカーと」

 

「同じくMMOトゥモローのユリエールがお送りします」

 

 スーツ姿の男女……シンカーとユリエールが司会進行の挨拶を行うと、会場や動画サイトのコメント欄に拍手や歓声が。

 

「さて! 今回のトークショーでは、アルヴヘイム・オンラインの開発代表である須郷伸行さんの他に、特別ゲストを招待しています!」

 

 シンカーがそう口にすると、がなるようなアラート音と共に、大型モニターに何かのエンブレムが表示される。

 

 それは見る者によって印象が変わるものだった。ある人は「なんだあのエンブレム?」と疑問符を浮かべ、ある人は「見覚えあるんだけど……どこだったか……」と記憶を漁り、ある人は「アアアアアアアアア!!?」、「わァ………………あ……」と発狂や涙でもしたかのように驚愕するもの。

 

 映し出された『檻を喰い破る狼』のエンブレムと、『二人の騎士が剣を交差させた』エンブレム。それらがフェードアウトした瞬間、舞台袖から二人の少年が現れた。

 

「ハロー、皆さん! 今日ぐらいは自重しようかなって思ったけど、結局暴走することにしたトーマスだよ!!」

 

「やめろ、止まれ、ブレーキ付けろ。ツッコミ役兼、ブレーキ係、キリトだ」

 

「俺は停まらないから……! 進み続ける……!」

 

「停まれって言ってんだろうがこの暴走機関車ッ!!」

 

「「キリトーマスです、よろしくどうぞ」」

 

 最近銀のメッシュを入れた少年と、気分転換に薄く黒緑の染料を使った少年。我らが暴走機関車トーマスと、ブレーキ係なのにノリで暴走するキリトである。

 

「はい、ということで! 今回のトークショーには焼き芋でチャンネル登録者数が増加したYou◯uber、キリトーマスさんがゲストとして出演します!」

 

 拍手喝采の中、キリトとトーマス────和人と瑞理は若干の緊張をしていた。いつも暴走しているとはいえ、このような大イベントには参加したことがなかったからである。

 

「では、トークショーを始めていきましょう。まず最初のお題は……アルヴヘイム・オンラインの生みの親である須郷さんから一言」

 

 ユリエールからの振りに、マイクを手にした須郷は小さく微笑みを浮かべ、口を開いた。

 

「うーん……そうですね……このイベントが始まるまで、色々考えてきたけど……やっぱり最初は二人にこれを聞きたいかな?」

 

「「なんでしょう?」」

 

「オベイロン戦はどうだったかな?」

 

「「最高でした、ありがとうございます!!」」

 

 問いかけに対して、二人は満面の笑顔で返す。彼らは今まで戦ってきた者を覚えている。その中でも、妖精王オベイロンとの戦いは印象に残るものだった。

 

「初見殺しもいいところでしたけどね、最後の一撃は」

 

「ははは、驚いてくれたかな? 戦闘に全く起因しないはずの種族が鍵になる……ファンタジー的な要素はしっかり取り入れたつもりなんだけど」

 

「そりゃあもう! もう一度やりたいくらいですよ」

 

 和人がそう言うと、須郷は苦笑してしまう。

 

「オベイロンは一応、僕が動かしていたから、君達と直接対決したわけだけど、ちょっと遠慮したいかな」

 

「ALOにはダミーのグランド・クエストと、謎解き要素をクリアした者だけが挑戦できる本当のグランド・クエストがあったんですよね? 開発の際、反対意見とかは……?」

 

「そりゃあ出ましたよ。滅茶苦茶出ましたねぇ……懐かしい」

 

 遠い目をした須郷と、乾いた笑みを浮かべた運営スタッフの顔を見て、瑞理と和人は「あっ、この人大変だったんだなぁ……」、「俺達もああいうのに仲間入りするのか……」と察する。

 

「でも、それ以上に、遊び尽くしてくれた人達への報酬として、ああいう遊び心を込めたいと思ったんです」

 

「なるほど…………ところで、グランド・クエストが攻略されなかった場合、どんなイベントが?」

 

「妖精王オベイロン率いるガーディアンVS九種族の総力戦が始まるはずでしたよ」

 

 明かされる新事実に会場だけではなく、コメント欄も沸く。ネット記事に載った、九種族の混成パーティーによるグランド・クエスト制覇。これが成されなかった場合始まったのは、九種族全ての力を結集させねばならないほどの戦いがあったのだ。

 

「その後は、封印されてたアインクラッドが現れ────って、感じでした」

 

「ほうほう!」

 

「個人的には、総力戦の方が良かったんですけどね。彼ら、やってみせちゃったので」

 

 こうしてトークショーは進んでいく。この後、今後ALOに実装されるシステムや、アップデートによるダンジョンの追加など、様々な情報が公開され、ゲーマーの界隈がざわつくことになる。

 

 

 

 

 

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