ナーヴギアで焼き芋作ったら日本を救えたらしい   作:エヴォルヴ

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コラボとかやってる人とか、ゲームでコラボするイベントあるじゃないですか。あの人達尊敬してます。自分のキャラを使いながらも、コラボ相手のキャラを引き立たせるやり方、素晴らしい。

まぁ、それはともかくとして。

トーマスの身体能力と反応速度は神の領域一歩手前です。身体能力は生まれつきですが、事故で腕をなくした結果がこれ。某絶剣のOSS全部パーフェクトタイミングでパリィできるくらい反応速度が化け物。

SAOにいたら? ……まぁ、アスナには色んな意味で目の敵にされそう。いつもキリトと組んでるので。


6.蜥蜴美味しいかの穴(エンカウント)

 須郷伸行の朝は早い。

 

 かの天才、茅場晶彦が灰になって燃え尽き症候群モドキになっている中、彼は着実に茅場の研究データを学び、独自の考えを混ぜ合わせながらゲームを作り上げる。

 

 納期なども考えると時間が足りないということで、茅場が作り上げたSAOのβ版のデータも流用してなんとか作り上げたゲーム……それが《アルヴヘイム・オンライン》というゲームなのである。

 

 先輩であり、手が届かないほど高みにいる茅場の作ったゲームに勝てるわけがないと思いながらも、リリースしたゲームは今では日本で人気のゲームの一つとなっていた。

 

 驚きながらも、須郷は慢心する余裕はない。いつ茅場晶彦がリリースするはずだったSAOの方が面白かっただろう、と言われるか分からない。だから慢心するどころか常に怯えながらゲームの運営を行っていた。

 

 毎日やってくるデバッガーからの報告、プレイヤー達からの不具合報告、ゲームの売上についてなど、穏やかな休みを与えられる日はない。レクトのCEOからも無駄に期待されていて、十年以上も年が離れた少女との見合いを提案されたこともあり、その際は「ご勘弁を」と苦笑してやり過ごした。

 

 毎日毎日、怯えながら、ストレスを抱えながら仕事をこなしていたある日……

 

『ハロー皆さん! いつでもどこでもあなたの隣に現れる! 助言者暴走機関車トーマスだよ!』

 

『ツッコミ担当兼、ブレーキ役のキリトだ』

 

『ハッハァッ! 我にブレーキなどないわァッ!!』

 

『商品規格外で廃棄されてしまえそんな機関車!』

 

 とある中学生が投稿している動画に出会った。まだまだ拙い部分があるものの、視聴者への配慮を感じさせる編集。思わず笑みを浮かべてしまう挨拶からぶっ飛んだコント。久しぶりの休暇、須郷は二人の動画を視聴する。

 

『今日はね、俺が夜めんどくさい時に作る汁物を紹介するよ!』

 

『お前、わりと真面目にやれる時とふざけてる時の温度差激しいよな』

 

『それが俺だからね! この汁物、切って炊飯器にぶちこむだけだから簡単なんだ!』

 

 そう言ってトーマスがテーブルに置いた食材は、鶏肉、生姜、ネギの青い部分、鷹の爪、にんにく、玉葱、人参、鶏ガラスープの素、ゴマ油、水、酒、塩コショウ。独り暮らしの須郷の冷蔵庫に余っている食材ばかりである。

 

『これを、切り刻みまして……』

 

『あ、こちらが切り刻んだ後の食材です』

 

『これを炊飯器にどーん!』

 

『からの炊飯スタートであとは待つだけだな。んじゃ、炊き上がりまで……カット』

 

 その動画は最後まで二人の少年が楽しそうにしていた。それが昔の何も分からずとも楽しめた少年時代と重なり、須郷は小さく笑う。

 

 かくして、須郷伸行という男は心の炉に燃料を投下する。無邪気だった頃、アニメの世界でしかなかった仮想空間を使ったゲーム……その一つを自分達が生み出したという事実と、数多くのゲーマーが面白いと言ってくれるようなゲームを作り上げてみせるという覚悟を宿したのだ。

 

 ここから須郷伸行という男は変わる。茅場への嫉妬はもうどうでもよくなっていた。

 

 

 ─────────────────────────────────

 

 

 ……うーむ、あれだな。《イビルグランサー》? って火を通しすぎて固くなった白子みたいな味がする。味覚エンジンどうなってるんだろう……あんまり詳しくはないけど気になる。

 

「……マジかよお前!」

 

「この手に限る」

 

「だからって喰うか普通!?」

 

 だって、その方が早かったし。森を抜ける途中、モンスターが突っ込んできたからそのままガブリ。噛み付きにもダメージ判定があるとは、よく作り込まれてるなこのゲームは。この調子で俺の腕もくださいな!! ……いやマジで。頼むから左腕くださいよ。武器切り替えるのそろそろ面倒になってきたんだよチクショウめ。

 

「クライン、トーマスの奇行には慣れないと、この先やっていけないぜ」

 

「もっとネジ外してよろしいか」

 

「やめろぉ!?」

 

 ダメなんだ……そうですか……

 

「まぁ冗談はともかく、トーマス、この世界での戦闘には慣れたか?」

 

「ん、慣れたよ。でも不満が一つ」

 

「なんだ?」

 

「ウィッチタイムないの?」

 

「あるわけねぇだろあんなもん! てか、あれやったのかよ!?」

 

 ファンの声に応えて作られたかの有名ゲームのVR版。自分のキャラを作って遊べるのだが、中々に鬼畜なのだ。某魔女達のようにスタイリッシュにやろうとすれば、判定がシビアなウィッチタイムを連発することを要求される。

 

 まぁ、俺ルーメンの賢者でやってたけど。

 

「結構簡単だったよ?」

 

「あれを簡単だと言えるのはお前だけだよフィジカルモンスター」

 

「せやろか」

 

 ……まぁ、そうかもしれない。俺の身体能力って、普通の人から見たら化け物にしか見えない身体能力らしいから。

 

 なぜこんなものを手に入れたのかは知らないが、俺は某梟の機関でも彼岸花でも鈴蘭でもないぞ。まだ最終話見てないんだよな。あとで見なくては。

 

「そういえば、トーマス君の戦い方、キリト君にそっくりだね」

 

「え、そう?」

 

 そんなに気付かないなぁ。そもそも、この世界での俺はどちらかと言えば技量寄りのステータスだと思われる。リアルでも武術家の人に肉体の全てが異常なまでに柔らかいと言われ、技を磨くことを勧められるぐらいだった。

 

 力押しもやれないことはないが、太い筋肉は付かない体質らしいので、真っ向からのパワー勝負はあまりやらない。それはともかく猪の頭を砕いたけど。

 

 対してキリトは上質ビルドと言ってもいい。だから戦闘スタイルが全然違うはずなんだけど……

 

「ああ、それは多分、俺がトーマスの真似をしてるからだな」

 

「競うな、持ち味を活かせ」

 

「競ってるつもりはないよ。ただ……トーマスの戦い方が俺が一番戦いやすいからな。トーマスのスタイルに俺のやり方を混ぜてるんだ」

 

 なるほど? 確かにキリトは俺とつるんでいる時間が長いし、何度か組手もしたことがある。型を覚えるくらいはやるよな、キリトは天才肌だから。努力もできる天才とか化け物かよ。

 

「キリトが鋭く重い攻撃なら────」

 

「俺は鋭く巧く。ただでさえ腕がないんだ。工夫してかないとね」

 

 いくら俺の武器が強いとしても、ハンディキャップはある。それをいかにして潰すかに懸かっているのだ。いやらしいところを狙って攻撃するのは基本中の基本。

 

「俺とキリトの戦い方はともかく。皆時間は大丈夫なん?」

 

「俺は問題ない。クラインは?」

 

「問題ねぇよ。お嬢さんらこそ大丈夫なのか?」

 

「私達も大丈夫。ミトの家にいるし」

 

「あたしも大丈夫だよ」

 

 おや、皆大丈夫なのか。それは重畳。今日中に洞窟は抜けられそうですな。

 

「トーマスはいいのか? 犬の散歩あるだろ?」

 

「がっつり深夜帯にやるから大丈夫」

 

 フェンリー達と散歩に行くのは深夜帯三時。問題ないだろう。このまま洞窟を抜けるために下に降りて────? 

 

「「視線?」」

 

「ん、どうかしたのか?」

 

「いや、視線感じたからさ。キリトもか」

 

「ああ、うん。なんか誰かに見られたような気がして」

 

 これが俺一人だったら勘違いで済んだのだが、キリトもとなると話が変わってくる。キリトは俺以上に鋭いため、誰かに見られているという言葉が事実の可能性が高い。

 

「トレーサーが付いてるのかも……」

 

「トレーサー?」

 

 リーファの言葉に俺は首をかしげた。

 

「追跡魔法よ。小さな使い魔の姿をしていて、対象の位置を教える魔法」

 

「へー、そんな便利なものがあるんだ」

 

 一応、どんな種族でも使える────そもそも魔法はMPが足りていて詠唱さえ覚えれば誰でも使えるが────魔法だそうで、特にPK目的の粘着や、クエストでNPCの追跡を行う際に使うのだという。さすがPK推奨ゲーム。……いや、そんなものに頼るよりさっさと追跡してぶっ殺せよ。

 

「うーん……気のせいかもしれないしなぁ。……とにかく、さっさと進もうぜ」

 

「了解」

 

 この後、ローテアウトしたりしながら、《ルグルー回廊》と呼ばれる洞窟に突入した俺は、昔読んだことがある本の内容を思い出していた。確かタイトルは……魔物の洞窟だったか? 

 

「デルト◯クエストっぽい」

 

「懐かしいな、それ」

 

「あいにく、この洞窟には悪魔系モンスターも軟体動物系モンスターも出てこないけどね」

 

「あら、そうなんだ」

 

 ちょっと残念。その代わりにオークが現れるらしいので、それを狩ることを楽しみにしておこう。

 洞窟の中は薄暗く、冷たい空気を纏っている。暗い中で戦闘するのは中々大変なので、どうしようかと悩んでいると、キリトが口を開いた。

 

「ここはスプリガンの出番だな」

 

「お? 何かいい案が?」

 

「おう。スプリガンは小手先の魔法が多いからな」

 

 キリトが右手を掲げて《力の言葉》を口にすると、ルーン文字っぽいものがキリトの周囲に出現し、魔法が完成する。仄白い光の波動は俺達を包み込み、視界を明るくさせた。……暗視効果のある魔法、なのか。こりゃ便利だ。

 

「うーむ、こういうサポート系魔法があるならスプリガンにすればよかったなぁ」

 

「プーカってどんな魔法使えるんだ?」

 

「歌によるバフ。歌うとMPが減る」

 

 いや、俺のやり方がおかしいだけなのかもしれないが、そんな感じである。

 

「デバフもあるんで、後方支援タイプかな」

 

「だから初期武器が弓なのな。……でもよ、トーの字はバリバリのインファイトキャラだよな? 使えんのか?」

 

「誰が魔法を使う時、止まると決めた?」

 

 プーカだけの特権なのかもしれないが、歌魔法は動きながらでも発動する。その証拠を見せるため、キリトと鍛え上げたステップを踏みながら歌を洞窟に響かせる。プーカの魔法の面白いところは、歌自体に魔法の効果があることだ。

 

 装備が踊り子っぽい見た目になっているので、見る人が見れば奉納の舞いにも見える……かもしれない。

 

「詠唱に淀みがない……」

 

「キリト君、キリト君もそうだったけど、トーマス君も本当に初心者?」

 

「ここでは初心者だよ。違う世界では……!? 皆、走るぞ!」

 

 突然叫んだキリトがピックを投げて走り出す。何がなんだか分からないと思いながらも、キリトが投擲した場所を見ると、消滅しかけている赤いコウモリの姿があった。

 

「キリト、あのコウモリ何?」

 

「リーファが言ってたトレーサーだ! それも、火属性の使い魔! つまり────」

 

「サラマンダー? どうして私達を……」

 

 ミトが俺達全員の気持ちを代弁する。……可能性があるのは俺のせいという線だ。あの初心者狩りの装備は高く売れたので、サラマンダーの中でも結構上のプレイヤーだったと思われる。そのプレイヤー三人を俺が殺ったから、サラマンダーが粘着してきた……のだと思う。

 

 でも、それだけならキリトは焦らないだろうしなぁ……三人程度じゃ数の暴力で潰せるはずだし。

 

「トーマス、お前を襲ったサラマンダーのことを情報屋に聞いたんだ」

 

「へ? ああ、うん。それで?」

 

「そしたら、そいつらがサラマンダーの遊撃部隊のやつだったことが分かった」

 

 初心者狩りの連中ではなかったのか、あのサラマンダー。

 

「しかもシルフ領で大暴れしたお蔭で、お前の顔は知られた。そして、このパーティーには……」

 

「リーファがいる?」

 

 リーファがシルフの中でもトッププレイヤーの一人であることは聞いていたが、サラマンダーがそれだけに執着するもんかね? 仮に執着するとしても、大局を見据えれば、トップを殺りたいなら個別撃破なんかするより罠に嵌めて数の暴力で擂り潰せばいいのに。

 

 そんなことを考えながら走っていると、大きな城門が見えてきた。あれが《鉱山都市ルグルー》かぁ。意外と広いんだな。

 

「キリの字! 結構来てんぞ!?」

 

「何人いる!?」

 

「目視十人以上!」

 

 クラインに代わってアスナが叫んだ。十人かぁ……うんうん、十人以上、ね……

 

「キリト、皆を連れて門を通れる?」

 

「は? トーマス、お前何を────!」

 

 スイッチが入る音がする。自分でも分かるくらい、凄惨な笑みを浮かべて、俺は後ろを振り返った。

 

「地上戦、慣れてきたからね。全力でやってみたいんだ」

 

「いや、無茶だろトーの字!? 十人以上もいんだぞ!?」

 

「どうかな? 俺、二十人以上同時に相手したことあるよ」

 

 かつての記憶を呼び覚まし、武器を握る。血の色に輝く鎧を纏うサラマンダーの集団の先頭の姿が、俺の視界に入ってくる。さぁて、どう食い荒らしてやろうかと思った俺を、キリトが小突く。

 

「馬鹿だろ、お前」

 

「やらせてよキリト」

 

「いや、それはいいけどさ」

 

 俺以外のパーティーメンバー全員が目を見開く。キリトの言葉が信じられなかったのだろう。

 

「何言ってるのキリト君!?」

 

「ただし、俺達のサポートは受けてもらう。いいな?」

 

 ああ、それは構わないしむしろありがたいわ。

 俺が頷くと、キリトも満足そうに頷いて数歩後ろに下がってバフをかけてくれた。その信頼に応えるようにせねばならないと思いながら息を吐いて、サラマンダーの集団に向けて足を進める。

 

「行ってこい、【人類種の天敵】」

 

「……了解」

 

 さぁ、食い荒らしてやるよ火蜥蜴共。

 

 

 

 

 

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