ナーヴギアで焼き芋作ったら日本を救えたらしい   作:エヴォルヴ

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蜥蜴食べ放題は終わらぬ。我らが胃袋に空腹ある限り。


8.蜥蜴食べ放題を求めて

 自称お姉さん(年は同じ)のアルゴの話によると、サラマンダーは俺とキリトとリーファの首を狙っているらしい。キリトは言わずもがな、サラマンダーと何度かやらかしているため。リーファはシルフのトッププレイヤーだから。

 

 んで、俺は……なんでだ? サラマンダーとの戦いはあの三人と、さっきの部隊だけのはずなんだけど? あと戦ったとすればシルフ……あれ、もしかして……

 

「内通者?」

 

「へぇ、鋭いナ。正解だヨ、トー坊」

 

「同い年に坊や呼ばわりされる筋合いはないぞ背伸びしたがりガール」

 

「ぐっ……これが幸海さんの子供なのカ……? 全然違うじゃないカ……」

 

「ん? 父さんと知り合い?」

 

 アルゴの小さな呟きに出てきた名前、幸海は俺の父親である男の名前だ。遠間幸海(とおまこうかい)……若いながらも日本の考古学者として世界中から一目置かれている人らしい。遠間出雲(とおまいずも)────母さんもそうらしく、忙しくしているようだ。

 

「はっ、しまった……!」

 

「あの変人しか知り合いがいない父さんの知り合いとなると……一番は帆坂の家かな。あの家の人、いっつも外国人と結婚してるし」

 

「はぐっ!?」

 

 あ、一発目でヒットした。早いなぁ……まぁ、こういうタイプの人ってこっちのペースに乗せれば勝ちみたいなところあるし。

 

「あ、リアルのことは言わないから安心してね、一つ年上なだけのアルゴさん」

 

「ぐぐぐ……!」

 

「アルゴ、諦めろ。トーマスを敵に回しても何の得もないぞ。あるとすれば破滅の道だ」

 

 失敬な。ただひたすらに食い荒らすだけなのにさ。

 それはともかく、内通者ねぇ……シルフの現状に不満のあるやつがいて、サラマンダーと内通していたとすれば……幹部の連中だろう。誰なのかは知らないけど、回りくどい。ORCAはもっとガッツリ国家転覆狙ってるぞ。

 

「マザーウィルみたいに愚鈍なのかねぇ」

 

「マザー……なんだって?」

 

「スピリット・オブ・マザーウィル。ACに出てくる超巨大兵器だよ。……まぁ、そんなのはどうでもいいんだ」

 

 キリトの言葉に俺は頷き、今後起こるであろうことを想定する。サラマンダーはシルフを目の敵にしており、シルフもサラマンダーを目の敵にしているそうだ。なら、シルフと交流のあるキリトや、トッププレイヤーのリーファの首を取ることで手に入るメリットは……

 

「「戦争への火種」」

 

「うわっ!? ヤバい笑顔で言うなヨ!?」

 

 アルゴの口振りからして、俺達は凄く悪い笑顔を見せていたのだろう。いやはや、戦いの火種があるとなると、俺達の闘争本能が疼いてしまうのだ。

 

「……そういえばリーファが言ってたな。シルフとケットシーが同盟を結ぶって……」

 

「ふーん……やるとすれば……ここかな?」

 

 マップを開き、シルフとケットシーの領地をマークし、線を引く。全ての種族の領地は直線距離でなら世界樹への道のりがほぼ同じ距離である。世界樹を中心にして、シルフとケットシーが合流しやすい場所……ともなれば答えは簡単。

 

「蝶の谷……そのどこか。会談があるならある程度開けている場所……かな」

 

「少ない情報でよくそこまで考えられるナ?」

 

「これでも考古学者の子供だし、騙して悪いがとか毎回やったりやられたりしたし。少し考えればこれくらいは」

 

「アルゴ、分かってると思うけど、こいつは参考にしたらダメだからな」

 

「だろうナ。オレっちはそんな馬鹿じゃないゾ」

 

 酷いなぁ本当に。さてはキリトめ、騙して悪いがをやっても突破された挙げ句、ボッコボコにされたのまだ怒ってる? それとも渾身の一撃を躱して殴り殺したことかな? 復讐したいならさっさと来ればいいんだよ。そろそろ大規模イベント始まるし、食い荒らしてやるからさ。

 

「おい、俺のACの腕鈍ってるの分かってるのか?」

 

「知るか。早く帰ってきなよ、【山猫の英雄】さん」

 

「どうせ乙女とか神様とかナインさんとかいるんだからいいだろ……」

 

「あの人達結構多忙なのよ?」

 

 最近見てないなぁ……何してるんだろ、あの人達。……あれ? でも乙女って確かAIだったよね? 最近見ないってどういうこと? あ、もしかして作り手がログインしてないからいないのか。

 

「俺達のAC談義はここまでにして……皆で殴り込むかぁ」

 

「それ大丈夫なのカ? 会談の襲撃が今日とは限らないゾ?」

 

「シルフ領の旗が揚がってなかった。てことは当たりでしょ」

 

 ニィ、と笑った俺は集合場所に向かう。キリトがアルゴと何かを話していたが、聞き取れなかった。まぁ、どうでもいいことだろうから問題ないでしょ。

 集合場所に着くと、一足先に来ていたリーファが少々切羽詰まった表情を浮かべてソワソワしていた。うんうん、これは確実に当たりだね。

 

「トーマス君、ごめんなさい。私────」

 

「サラマンダーの襲撃でしょ? とんでもねぇ、待ってたんだ」

 

「へ……!? なんで知って……」

 

 推理を解説すると、驚きを隠せずに目を見開く。このくらい、AC乗りとオペレーターを兼業していれば簡単だと思うんだけど、わりと水準高いのかなぁ、あのゲーム。

 ヘラヘラ笑いながらシルフ領で購入した煙管で彼岸花フレーバーなる煙を吸い込む。……ほほう、変な味がするぞう! 二度と買うかよこんなフレーバー。

 柑橘系フレーバーと取り替えて煙を吸っていると、他のメンバーも集まってきた。

 

「トーマス君、キリト君から話は聞いたけど……本当なの?」

 

「八割は。とりあえず移動しながら話すね」

 

 ミスリードや罠だとしてもそれごと噛み砕いて利にするのが傭兵としての嗜みよ。

 ルグルーの目抜通りを抜けて、央都アルンへ向かう側の道へと向かう。時間帯も時間帯だから、プレイヤーも結構集まってきたため、人波を抜けるのも一苦労だ。そんな苦労から解放されれば、最初に見たものと同じ橋が見えてくる。

 

「でもトーマス、サラマンダーがシルフとケットシーの領主を倒すと何かメリットがあるの?」

 

「あるみたいだねぇ。……クライン、社会人のあなたに聞きましょう。商談の情報が自分の会社から漏洩して、先方の会社が不利益を被ったらどうなりますか?」

 

「そりゃあ、謝罪ものだし、二度と商売ができなくなることだってあるわな。大事な商談だったらなおさらだぜ。……っておい、もしかしてよ……」

 

「ありがとうございます。じゃ、それを今の現状に当てはめてみよう!」

 

 そう言ってやれば、ピンと来ていなかったミトやアスナは察したようにハッとする。

 

「シルフとケットシーが戦争するかもしれないよねぇ。で、パワーバランスはサラマンダーが上に立つ」

 

「それに……領主を討つとボーナスが入るの。討った時点で、討たれた側の領主館に蓄積された資金の三割を無条件に獲得できる。そして、十日間、その種族の領地を占領状態にできる」

 

 そうすれば、税金を自由に掛けられる。サラマンダーにとって狙わない手はない。

 

「だから……私行かなきゃ。ここで皆と別れて、サクヤを────シルフの領主を助けに行く。行ったら死んじゃうと思うから、皆を付き合わせるわけにはいかない」

 

 悲痛な表情を浮かべるリーファは、謝罪するように頭を下げた。多分、パーティーを抜けることを謝罪したいんだろうけど……

 俺が頬を掻いていると、キリトがポツリと呟いた。

 

「所詮、ゲーム。だから殺し殺され、奪い、奪い合う」

 

 だけど、と言って続けた。

 

「そんな風に言うやつは、腐るほどいる。あの世界じゃそれが当たり前だったし、このゲームもそうかもしれない。でも、そうじゃない。仮想世界だから、向こう側に一人の人間がいるからこそ、守らなきゃダメなこともある」

 

 うんうん、モラルは大事だよね。

 

「リアルの人格も、キャラクターの人格も、皆一緒なんだ。……そこの馬鹿は例外だけど」

 

「おや……トーマスは全ての私ですよ」

 

「【暴走卿】憧れ止まらぬトーマスは置いといて……サクヤさんやアリシャさんからは世話になったことがあるし、俺もリーファを助けたい」

 

 そういえばリーファって誰なんだろ……リーファ……リーファ……リーフ……直進する葉っぱ……草タイプマッスグマ……直っすぐな葉っぱ……あ、もしかしてキリトの妹さん? ……さてはシスコンだなオメー。

 

「……俺はそうしたいけど、皆は?」

 

「水臭ぇなぁキリの字! 俺も行くぜ! どうせ俺もギルメンもレネゲイド一歩手前なんだ。どこだって行ってやらぁ!」

 

 男前だなぁ、クライン。さすが武士。

 

「私も……リーファちゃんを助けたい。皆で世界樹に挑戦したいもの」

 

「アスナに同じく。リーファが欠けたら、私は楽しめない」

 

 アスナもミトも行くつもりらしい。いやー、楽しくなってきたなぁ! 

 

「トーマスも、だろ?」

 

「ハハハッ、楽しくなってきたぁ! ハハッ、ハハハハハハハ!!」

 

「この戦闘狂がよぉ! ま、俺も楽しみだけどな!」

 

 キリトと肩を組んで笑い合う。視線が痛いけど、気にしない気にしない。

 

「じゃ、行こうか。戦場へ」

 

「だな。時間無駄にしちゃったし……走るか。トーマス!」

 

「はいよー」

 

 ドカン、とトロッコみたいな引き車をストレージから取り出す。え、なんでこんなものを持ってるのかって? さっき買ったんだよ。

 

「はいはーい、乗り込んでくださいな」

 

「えっ? えっ? えっ?」

 

 何がなんだか分かっていないという表情の四人を大きな引き車に乗せて、片方ずつ取っ手を握った俺とキリトはニヤァッ、と笑って構える。

 

「前よーし、後ろよーし」

 

「暴走機関車キリトーマス、まもなく発車いたします。危ないですので、どこかに掴まってご乗車ください」

 

 駆け出した瞬間、俺とキリトは空気の壁を突き破るような衝撃音を唸らせて、光となった。

 

「「「「ギャアアアアアアアア!!?」」」」

 

「「わーい、たーのしー!」」

 

 妖精のフレンズになりながら走り抜ける。コーナーはギリギリを狙っていけ。誰かが言ってた……コーナーで差を付けろって。

 いいぞ! いいフォームができている! これが……黄金長方形のフォーム……!? 

 

「キリト君! オークが!」

 

「突っ切るぞ」

 

「へイヤー」

 

「「「「ワァアアアアアアッ!!?」」」」

 

 うははは! その程度で俺達は止まらぬ! 立ち塞がるなど無意味! これが俺達が求めた先頭の景色……! あ、地固め取ってないから育成やり直しです。

 止まらない、止まらない、止まらない! これが大逃げをした者だけが見ることができる世界だぁあああ!! 

 

「お、出口だ」

 

「ハッチオープン! 総員、飛行体勢!」

 

 その言葉を放った後、青空が広がる。ああ、なんだろう、この感じ……ACに乗って飛び出した最初の感覚に似ている。

 

「「「「寿命がッ縮んだッ!!」」」」

 

「「だから、時間短縮する必要があったんですね(乱数調整)」」

 

 いやー、楽しい楽しい。って、おお、あの大きな樹木が世界樹かぁ。大きいなぁ……伐採できるのかな。ま、行けば分かるかな? 分かるよね? 

 

「で、場所は?」

 

「蝶の谷、内陸側」

 

「なんでそこまで分かるの!?」

 

「簡単でしょこれくらい」

 

「「「「異常だよ!!」」」」

 

 あら……そうなのね……

 

「……ところでキリト、モンスターが出ないのはなぜ?」

 

「アルン高原はモンスターが出ないんだよ。だから会談をここにしてるんだと思う」

 

 なるほどね……アルン高原はあれか。世界樹の加護でモンスターが近付かないんだな。ふむふむ……なら、モンスターに出会わずに世界樹に行けるんだ。そこら辺は良心的。

 

「で、どこにいるんだろうなぁシルフとケットシー……」

 

「索敵スキルには……おっ、引っ掛かったぞ! って、多いな!? 多分これはサラマンダーか!」

 

「ナイスキリト! あ、じゃあクライン、ミト、アスナ。ちょっと演技よろしく」

 

「演技……?」

 

 その言葉と共に俺とキリトが急降下する。

 目指すは遠くに見える人影。突撃だオラァ!! 

 

「「「ギャッ!?」」」

 

「「あ、やべ」」

 

 内陸に着地するつもりだったのだが、サラマンダーの何人か激突してしまったよ……すまん名も知れぬサラマンダーのプレイヤーさん……お前とキリトのアイテムは俺のお金となって活かされるから……それはそうとして。

 

「「……ごめん、登場やり直していい?」」

 

「「「「「「誰だよお前ら!!?」」」」」」

 

「「キリトーマスです、よろしくどうも」」

 

 

 

 

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