「貴方があの有名なミスター・ブラッキー、キリトさんですか。お噂はかねがね」
「え。そうなのか?」
「ちなみにどんな噂なんです?ゴドフリーさん」
星の、じゃなかった二刀流、じゃなかった黒の剣士キリトさん!二つ名多すぎ問題が俺の中で発生中。
「えっとたしか・・・、凄まじきフェンサー(細剣使い)の相棒。でしたかな?」
「凄まじきフェンサー……」
「見事な情報網だな。遜色なしだ」
キリトさんがそう言うと、凄まじきフェンサー(アスナさん)はギリィッと眼を光らせ彼を睨む。
ひょんなことから(第四層到達直後なので情報交換!)お話する事になった俺は今とても緊張していた。
「キュ?(どうしたんだい友達?心拍数が上がっているよ?)」
ディーネが一声可愛く鳴る。・・・・色々端折るけど彼らは俺にとって憧れの人なんだ。だからめっちゃ緊張する。
「うお!デカい鷹だな。・・・って、あれ?コレ森エルフが使役してる鳥モンスターじゃないか?」
「よくご存知で。三層でとある森エルフを倒したら付いてきてね。テイミングってやつかな」
「そんな事が出来るのか?」
「何でも出来るのがアインクラッド、ってな感じで俺も驚愕したよ。でもこの現実を見せつけられちゃ納得せざるを得ない」
「なるほど・・・」
ゲーマーにとっては体験したことのみが現実。キリトさんは頷いた。
「きゃ、何これ可愛い鳥!あの森エルフが従えてたヤツとは大違いなんだけど~!」
「キュキュ、キュイ(少し照れるな。でもお目が高い。特別モフモフさせてあげても、いいけど?)」
「・・・・」
素直じゃないなお前。ディーネはキュー!と嬉しそうに一鳴きした。
「撫でていいですかっ?」
「どうぞどうぞ」
「ありがとうございます!…毛並みやわらか~っ」
「(モフモフ)」
モフモフ。見てると癒される光景だ。
「それでゴドフリーさん。この川をどう思う?」
しかしキリトさん(原作主人公)は大真面目だった。
「すごく・・・大きいです?・・・」
「?何言ってんだ?」
「ごめん」
ホントにごめん。
「オホン。えっとβテストの時だと砂地の峡谷だった筈だから、この仕様変更は中々ハードだ。とすると、逆に言えば何かしら川を渡る手段が用意されてしかるべき。 そうは思わないか?キリトさん」
「・・・。そうだな」
キリトさんは同胞を見るような顔を浮かべて頷いた。
「イカダとか何か乗り物があるかもしれない。探してみよう」
原作だと浮き輪になる木の実があるんだったかな? なので俺は二人から距離を置いて何かないか探し始めた。原作カプっていうか推しカプの邪魔はしたくないんでね。
「キュー?(え?あの二人デキてるの?)」
「そりゃ見りゃ分かるだろ」
「キュキ(人間の番いを判断するのは難しいね)」
「ちなみに君達の番いはどうなんだ?」
「キュイハラ(それセクハラ)」
「マジかよごめん」
探していると、それらしき実がなっている木を発見。何だか怪しくないか?それをアスナさん達に報告すると、モノは試しと俺とキリトさんは拳を木に打ち込んだ。
「お?これ見てくれ」
「これって…ヘタ?」
「!もしかして」
落下した木の実。そのヘタのような部分をキリトさんが口に含み、息を吹き入れる。すると瞬時に実は大きく膨らみ、まるで浮き輪のような形に変化した。
「キーキュイィ…(摩訶不思議アドべント)」
「これで川を渡って主街区に行けってわけか。でもこれだけが移動手段なのか・・・?」
「舟みたいなものがあるかもしれない。探してみれば意外とあるかも。キリトさん、アスナさん。こっから先はお互い速い者勝ちレース、別行動といこう」
「アンタはソロでいくのか?」
「滅相もない。俺にはダチがいる」
「キューキュー!(イエスゴーゴー!ワンツースリフォー!)」
「そっか、じゃあお先に。・・・・それとゴドフリーさん」
「ん?」
「・・・・」
キリトさんは押し黙り、ジッと俺を見ては俯いた。一層で俺が元βテスターだと(大ボラを)大衆の面前で吹いたことを気にしているのか。怒っているのか。或いはお前何なんだよ!!ってな感じなのか。
アスナさんはそんなキリトさんを見続けて、いや、案じ続けていた。それはきっとこれからも。
「――何でもない。死ぬなよ、王様」
「そっちこそ」
◇
「行ったか?ディーネ」
「キュ~シュ~(お~二人とも東へ東へプカプカ流れてく、楽しそうだね~。さて貴公はこんな所でこれから何をする予定?)」
キリトさん達から離れ、しかし俺は浮き輪の実を膨らませる事なく物陰に潜んでいた。・・・ディーネが疑問を呈しているが、俺のやる事は一つに決まっている。
「練習だよ」
「キュ?(練習?)」
「この川を泳いでいく。楽しそうだから。何かあったら引き上げてくれよ、友達」
「キュゥー…(ホント君は無茶ばかり口にするね。まるで、炎に向かう蛾のようだ)」
呆れた鳴き声。けど見つめる瞳はキラリと輝く、炎のような琥珀色。
「カンバ(だから気に入った)」
「さあ泳ぐぞオラアア!!!!!」
自由な俺は水流の中に飛び込んだ。
「うわっふ。おっふ!・・・あ、何かコツ掴んできたかも」
「ギュー?(流石に早くない?)」
「あ、わふ。わ、わっふー!ルプルドゥ!!」
「キキュー(うわキモい)」
「必死に泳いで息継ぎしてる奴に掛ける言葉かそれが!!!」
む、難しい。水の中を泳ぐなんて狭間の地でも無かったから中々に、これは・・・。
「もうちょっ、と。わふー、浅い所で、わふー、水に顔をつける練習とか、わふー!カニ歩きからだな、あばばば」
「キュイキュイ(この辺にそんな浅瀬があるわけないだろう)」
「いや無理か分かんないだろ!わふー・・・、ちなみにカニ歩きとは水泳初心者なら誰でもやる筈のトレーニング方法で、水に慣れるって意味でも有意義な練習の一つだよ」
「スイ、キュー(お気持ち表明してるところ悪いけどボクは水に入る意味ないから、さっさと慣れてくれるかい?望んだ世界が君を忘れる前に)」
「言われなくても!!ルプルドゥ!!!」
謎な息継ぎ音を何度も繰り返し、バタ足全開レッツゴー。俺は水流に逆らうように西方向へと泳いでいく。
「キュッキュ!?(ってちょっと何でわざわざそっちに行くんだい?流れに逆らうなんて無謀だろ!)」
「いつだって運命に逆らえってな!!それが俺のモットーだぜ友達ィ!!」
バシャバシャ手をかき足をかくと、何とか上手く水面に浮く事が出来るようになってきた。しかしちょっと疲労感が凄いことになっている。・・・・このままでは。
「や、やべ、い、一旦上がるわ。流石にビート板が欲しい所だから、な!」
「キッキュイキュイ(オッケイ。体調と準備は万全にね)」
陸に上がる。水を吸った効果でもあるのか重くなった全身を両腕の力でもってグイっと、水中から脱する。
・・・結構スタート地点から離れてしまったな。辺りにはモンスターすら一匹もいないときた。
「キュークゥー(お疲れ。さっき上空から見てみたけど、主街区っぽいデカい街はここからもっと東の方だったよ)」
「そっかあ・・・・。ちなみにこの近くには何もない感じ?」
「キュネイル(ここからもうちょっと西に小さな村があるみたいだ。行ってみた方が良いかもじゃないかな?)」
「よし。とりあえずそこで宿でも探すか、疲れたし」
テクテク歩いていく。空からでもって目端が利くディーネがいると道に迷わない。ラッキーだ。仮に宿が無くても今日はその村で腹拵えでもするとしよう。
「お、あったな。 ちわーっす!通りすがりの『えるで』の王でーす。この辺にぃ、宿か御飯食べれる所ってありませんかー?」
誰がどう見たって平身低頭。村の入り口前で叫んでみると、俺の眼の前には人っ子一人いなかったが、その代わりに、
「なんだ――?この人族は」
「何故この場所が分かった」
「貴様。何者だ」
「・・・・、えっと」
そう。出て来たのは人間ではなく長耳が特徴の顔をした二足歩行生物。いわゆるエルフの方々であった。
「色はフォレストほど白くはないし、ダークエルフ・・・ってわけでもありませんよね?皆々様?」
なので訊ねてみる。平身低頭。
「知られたからには生かしておけぬ」
しかして得物を抜く、よく分からないエルフ達。それは戦いの合図。たのしいたのしい時間の号砲だぜ。
「でもそれ仕舞えよ」
「・・・なに?」
しかし俺は待ったをかける。確認が先だからだ。
「戦いは楽しいけど、フォレストかダークか答えてくんなきゃ。俺、その両方に喧嘩売ってるもんで」
「―――退がりなさい」
美しく響く、凛とした声。俺の間合いまであと六歩。
スルリと出てきたのは二人組のヒト型。顔は帽子のような何かで双方隠し、耳も眼も見えない。細身の体躯は二人ともだが、しかし明確な違いが只一つあった。
独り一歩前に出て、俺との間合いを僅かに狭めている片手剣士。まるで相方を衛るように、しずと此方を見詰めている。
曲剣か・・・・?やるな、良い戦士だコイツ。ってあれ?でも持ってるあの剣ってどこかで、
「――単刀直入に尋ねましょう」
「はい何でしょう?」
「貴方は、同胞ですか?」
「同・・・胞?」
「聖なる白き大樹と黒き大樹に、背を向けたモノですか?」
フォレストとダークに属してませんよねって事か? あ、なるほどお。
「はいそうです」
「よろしい。ならば歓迎しましょう、我らの新しき同胞を。――我らの素晴らしいこの村に」
「同胞!」
「同胞!!」
「我らが友人!!」
「・・・。我らがご友人!!!」
とりあえず、俺は叫んで同調してみるのだった。