「まずは自己紹介といきましょう。私はこの階層、フォールンエルフの隠村で村長をしております。エシスと申します」
「………」
「これはご丁寧にどうも。俺はゴドフリー。狭間の地、えるでの王です」
「える、で?」
「まあまあまあまあ。そこはまあまあまあまあ」
てな感じでお茶を濁して。いつの間にか始まっている宴会の輪に俺は加わった。
「ご友人!」
「ご友人!」
「友人が増えるなんて、素敵だあ」
「料理と酒はどこだ?振る舞わなければ」
「・・・素敵だぁ!!」
こいつら頭おかしい(笑)
我ながらヤバい村に来たな。みんな眼がイっちゃってるし。まるでドミヌラみたいだ。
「あれ?ところでエシスさん、そちらの方は?」
「…。ああ、ご紹介が遅れましたね。私の護衛・ヴェスです」
「………」
「どうも、ヴェスさん。ゴドフリーです」
「………」
「あの?」
「すいません、同胞ゴドフリー。…ヴェスは他人と話をすることが不得手なのです」
「なるほど」
不得手。・・・・不得手?先程からずっと殺気込めてるっぽいが?
「俺は気にしませんよ。まあよろしくです」
「………」
変な事をしたら斬る。そんな殺気であった。
◆
『第七回脳内会議開催ー!!!』
『はい』モーゴット
『はい』モーグ
『はい』ゴッドウィン
『はい』マレニア
『はい』ミケラ
『はい』ライカード
『はい』ラニ
『はい』ラダーン
『はい』ゴドリック
『はい』マリカ
『ひょんなことからこのフォールンエルフの集落?村?に腰を据えてしまったわけだが。多分こいつら全員と戦ってぶっ殺しても旨味はないだろうな?』
『はい。加えて未だ四層のモンスターと相対しておりませぬゆえ、迂闊に戦うのは早計かと』
『それに見た所めぼしい武器も持っておりますまい』
『あのけんかっこいー!』
『アイアムマレニアブレイドオブミケラ』
『ミケラぁ』
『うん?ヴェスって子が持ってるやつか?・・・あれどっかで見た気がするんだよなぁ』
『流体剣ではありませぬか?義父上』
『狭間の武器がこの地にある訳なかろうが』
『口を慎め』
『しかしながら仮にあの剣が流体化ないしそれに近い事が出来た場合如何する』
『・・・むむむ』
『なるほどなるほど。つまりは当面、あの剣士について及びこの拠点周りの情報収集が先決ってわけだな?』
『左様です義父上』
『この階層にはフォールンエルフの将・ノルツァーがいる筈なれば。その関連も含め調査すべきかと』
『それにこの村、少々妙です。エシスというあの者も。あなた』
『よし分かった!とりあえずは気を付けて調査する方向で。ではこれにて第七回会議は解散!皆ありがとう!』
◆
「まずはこの村で情報収集だ。レベル上げも兼ね、フォールンエルフ達と交流を深めていこう!」
「キューキュイッキュ?(了解。けどそんな大きな声出しちゃって大丈夫?)」
「周りには誰もいないからオッケーだよ」
「キュ~ポラ?(え?本当に?ボクの感覚だとそこに約一名聞き耳立ててるんだけど?)」
「ハハハ、こやつめ。俺は狭間を100周した戦士だぜ?近くに誰かが居れば匂いで分かるって」
そう!暗闇の中の氷山だって分かるから。
「………」
「…キュキュ(ふ~ん。なるほど?)」
ディーネは明後日の方向を見ながら相槌を打った。
「とりあえずは明日、村長さんと喋ってみるよ。近くのモンスターを狩りに行ってもいいかとか、合わせて食糧の調達とか。この層の敵がどんなもんかも確認したいし」
「………」
「キューイ(りょうか~い)」
善は急げ、つまりは翌日。早足で村長さんの所まで行き、その旨を話すと村長さんは快くゴーサインを出してくれたのだった。
「食糧の調達は是非とも願いたいですね。一人では何ですし、せっかくなのでこのヴェスも一緒に連れていってやってくれませんか?」
「了解。良いですよ」
「………」
「しっかり頼みますね?―――ヴェス」
ヴェス殿はコクリと恭しく頷いた。どうやらこの方、村長さんには素直な反応を示すらしい。
◇
さて到着。残念ながらモンスターに会う事は無かったので、さっさと食糧を集めるとしよう。
「ここの草を籠一杯に集めればいいのか?ヴェス殿」
「………」
――コクリ。
「こういう採集作業は何だか懐かしいな。
あ、君は知らないだろうがね、これでも俺はこういう草(ヘルバ)集めやら脂集めやら果実集めやらに勤しんでいた頃があってね。いわばその道のプロみたいなもんだ」
「………」
・・・・・。
「俺は狭間の地、つまりはずっとヤベー場所にいて、ずっとずーっと戦っていたんだ。戦いはきついし、死は勿論恐ろしいが、たのしさは何よりも得難い。戦士としてアンタも御同様だと嬉しいんだが?」
「………」
うんともすんとも、ていうか主な動きが縦と横の首振り運動しかない剣士殿。相棒、どうやら嫌われちゃったみたいだよ俺。
「キュイキュキュ(急に隙あれば自分語りしてきたら誰だってこうなるよ)」
え?でも君はこれに食いついたじゃないか。
「キュイフリフリー(ボクは自由を求めていたからね。ここじゃない何処かを。でもこの子は護る者だろう?そんな事考えるわけないじゃないか)」
むむむ。
「キュキュキュム(何がむむむだ)」
「………」
スイっと、流れるように。若しくはその通りだよと言わんばかりにヴェス殿が歩き去って行く。
どうやら一区切りついたので村に帰還するらしい。背中に背負った籠の中にはたくさんの木の実や草。重たくはないが、決してきつくないわけではない。なのに軽いフットワークでテクテク歩いていくヴェス殿は控えめに言って格好いい。
・・・うーむ、素顔が見てみたいもんだな。
「しかしなんだね。あの村長さんの、エシスさん。中々の腕前だとお見受けしたが」
「………、」
「一度お手合わせ願いたいものだなあ―――っと?」
前を歩く剣士の足が停まる。急な減速は俺に圧迫感を与えた。
つまりはビックリした。なのでチラっと、目線をやる。すると如何なる理由か回れ右。多分真っ直ぐに、ヴェス殿は俺を見詰めてきた。
「おや?何か?」
「………」
周りの空気が、急激に重くなる。そんな錯覚を起こさせる程に辺りが静まる。膝を曲げて軽く腰を落とした剣士の右手が、柄へと走る。
「その闘気。どうやらヤル気になってくれたのかな?」
何が逆鱗に触れたのだろうか。覆面のエルフは、音も無く腰の剣を鞘から抜いていた。
「まあ何でもいいけど。だって戦士は戦った方が互いを理解しやすい。言葉などよりも。それだけはお互い御同様みたいで、それじゃあ俺達らしい交流会といこうじゃないか」
右手に持った短剣?いや曲剣を担ぐように頭上に持ってくるヴェス殿。誰がどう見ても彼我の間合いの埒外も埒外だが・・・?
「キュ~?(一応確認だけど手出しは?)」
「無用!」
それが合図だった。気付くと俺の頚部及び鎖骨部に、曲剣の刃がまるで飛来したかのように触れていた。