脳内ゴドフリー   作:ブロx

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Welcome,honored guest.To the birthplace of our dynasty!
2024/6/21






第四層→第五層

 

 

 

 むくりと起床。えるでの王の朝は早い。

しかもこのゲームは脳内投影だから短時間でも適当に寝るだけでいいので、ゲーマーにとっては最高だ。

 

「おはようございます、エシス村長」

 

「おや。おはようございます。同胞ゴドフリー」

 

「今日は少しお話したいことがありましてね、お時間よろしいですか?」

 

「今は少し忙しいので、そうですね。今日の夕方であれば大丈夫ですよ」

 

「ありがとうございます。では夕方に」

 

「はい」

 

顔の見えない村長さんは柔らかく静かにお辞儀した。

 

「では少し村の外に出てきます。鍛錬がしたいので」

 

「分かりました。お気を付けて」

 

 さて村の外に出ると、モンスターを幾匹発見。とにかくレベリングが好きな俺はじゃんじゃか殴りかかっていった。

 

「じゃかじゃかじゃん、オラア!!」

 

 ヒット。中々の手応え。だがまだ足りない。もっともっと鎬を削るとしよう。

 

「ふん!ふん!!」

 

「キューのワの(少し淡白だね。やはり君が敗北を喫したあの体術、早急に会得すべきだ)」

 

「ああ!こいつらで肩慣らししたらッ!ヴェス殿にちょっかいかけにいくさ!」

 

「キュアキュア、キュアッキュア?(しつこい野郎は嫌われるよ?)」

 

「しつこくしなきゃならねえ時間だよ今も昔も!」

 

俺の拳がモブエネミーをついに貫く。レベリングは順調であった。

 

 

 

 

「――耳が遠くなったな。もう一回ほざいてくれるか?」

 

「俺を蹴ってくれ」

 

 ドガ。っていうより思ってた以上にドガン。ヴェス殿は俺を蹴った。

 

「変態が。近付くな」

 

「そんなんじゃねえだろ!!!」

 

俺は逆ギレした。

 

「こんなもんじゃねえ!!!俺が求めた体術(武)の極みは!!!ちょうだいちょうだい!モット頂戴モット頂戴MOTTO!!!」

 

「人族には、誇りもないのか。生き易いものだな羨ましいよ」

 

 村に戻ってくると、見えずとも一人の剣士と目と目が逢った。

蔑みながら、しかしそんなこんなでも俺に体術スキル≪水月≫を約束通り教えてくれるヴェス殿を、俺はちょっと好きになってしまっているようだ。

 

「キューアンサ(チョロすぎだろ)」

 

 戦いながら鍛錬しながら色々話をしながら時間が過ぎていく。あっという間に夕方になったので、俺はさっそく村長さんと話をしにいった。

 

「どうもすいません、お時間取って頂いて」

 

「いえいえ。丁度この時間は暇なのです。なので相談でも何でもおっしゃってくれていいですよ?」

 

「あ、そうなんですね。助かりますー」

 

 多分村長さんはニコニコしているのだろう。見えなくてもそんな雰囲気を感じる。ニヤニヤという風でないのが良い。流石はヴェス殿の妹さんだ。

 

「実は先日、この隠村の有り様を同胞から聞きましてな。―――フォールンエルフの将・ノルツァー閣下。この村ではその御方へ女性を見繕うのだとか」

 

「はい。そうです」

 

エシス村長は自然に頷いた。

 

「次は誰なのですか?」

 

「私です」

 

事も無げに。

 

「・・・・ははぁ、成る程。では次の村長はヴェス殿が?」

 

「ええ、そうです。私達は双子として生まれまして。だからこそなのです」

 

「ほっほー、双子ですか懐かしい。あ、失礼ですが村長さんは納得されているので?」

 

「無論です。これはもうずっと続いている御役目ですから。その証拠に、だからこそ私の名前はエシス(あなた)。どこの誰でもあり、誰でもない」

 

「へー、そういう伝統ってわけですかあ」

 

「はい。そうです」

 

彼女が頷く。

 

「でも貴女、戦士ですよね?」

 

「………え?」

 

 俺が訊く。息が止まる。しかしそれは一瞬にも満たない、僅かな刻。

 

「貴女強いでしょう? それも相当。そんな戦士が伝統だか風習だかに流される。哀れどころか些か、滑稽ではないですか?」

 

「同胞ゴドフリー、人族の貴方は今まで随分と自由であったようですね。共感は出来ませんが理解は出来ますよ」

 

「それが戦士ですからね。そして、えるでの王だ」

 

「私は戦士ではありません。村の長です」

 

歴代に連なる。エシス村長は続けた。

 

「この村で長となる、そしてエシスの名を与えられる。それはノルツァー閣下への貢ぎ物であるという名誉の証。始まりのフォールンエルフから続く伝統、私はそれに準ずるのみです」

 

「その上で本題を申しますが。私が連れ出してあげましょうか?村の外へ」

 

「不可能かつ無様な申し分ですね。聞かなかった事にします」

 

「まあまあ。そこはまあまあ」

 

つれないことは言いっこなしにしてほしい。俺は思った。

 

「貴女に敵対などしませんよ。ヴェス殿との約束ですし。

――ではもし、もしもです。ここのフォールンエルフ共が貴女方姉妹以外いなくなってしまったら、村長はどうするんで?」

 

「仮定の話には答える事は出来ません。そして聞きたくもありません。けれど一つだけ私からも問いがあります」

 

「なんでしょうか?」

 

「――あなたの目的は?」

 

「勝ち残ること」

 

 いつも考えていることを言う。胸を叩きながら。何故なら俺は炎と共に歩む者。いつも何処でもメリナと共に。

 

「我が内に炎あれ」

 

エシスさんが、少し震えた。

 

 

 

 

 

 

さてさてまたまた明くる日。俺は村の入り口に陣取っていた。

 

「ご友人?どうしたのです?」

 

肩を回し、小さく四股なんて踏んでみたりする。

 

「我らが同胞」

 

「我らがご友人。もしやサプライズですか?」

 

「ああ」

 

「キュ~?(友達。最終確認してもいいかい?)」

 

「ああ」

 

首を動かす。軽く柔らかく。

 

「キュウ(戦っていいよね)」

 

「ああ」

 

「ご友人、今日はノルツァー様への貢ぎ物を洗浄する日なのです。あなたも是非ご参加の程を」

 

「フッキュ~?(好きに、やっていいんだよね?)」

 

「ああ」

 

「それはよかった。ではさっそく近くの河、水路の流水で清めまして手始めに四肢を――」

 

「キュイ(じゃあ始める。相手にとって不足ないし、もう我慢できないし)」

 

「ああ、始めよう。盛大に」

 

「え?」

 

「ご友人?――――っが」

 

 ディーネが高く舞う。俺はストレージから得物を取り出す。

俺達が一斉に動くと、周囲にいた気持ちの悪いフォールンエルフは粉々に砕け散っていた。

 

「贈り物ですかご友人」

 

「ならば我々も贈呈しなくては。素敵な友人に」

 

「もっと素敵になるように」

 

「これからの、エシス村長のように」

 

 本音しか言わない系のこいつらに最初で最後、礼を失する事なく俺は本音という名のつるはし(得物)を叩きつける。

 これより先は岩より薄いお前らという名の経験値を、俺に奪わせてもらおう。

 

「さあ、先手は必勝。かかってこいやご友人オラァアアアア!!!!!!」

 

「素敵なサプライズっ――!それでいて遅くて遅くて速くて速い甘美な調べを奏でておいでですね、ご友人!!!!」

 

 頭と様子のおかしい者同士の戦いが始まる。いつものことなので気にしないが。俺は今回も楽しく戦って戦って戦って勝つのだった。

 

 

 

 

 

 

「ふう。気晴らしにはなったな」

 

「キュウ(うん。久々に楽しかったよ)」

 

「経験値が旨かったのが救いだ。結構レベル上がった」

 

「キュ~(それは良いね)」

 

 それにつけても傷一つ付いてないディーネが強すぎる気がするが。流石は我が相棒と褒めてやりたい所。

 

「キュイキュイ(なら褒めてよ)」

 

「流石ダア!」

 

 ひとしきり撫でていると、あと二人しかいないだろうこの廃村の奥からその二人がこちらに歩いてきた。エシス殿とヴェス殿だ。

 

「……これがお前の目的か」

 

「まあまあだったけどな。けれどもこれでアンタ達は自由だ。もちろん仇討ちしてくれてもいいぜ?」

 

「いや、いい。…もはやお前とは逢わんだろうしな」

 

「はは、まあ。縁があれば因果の交差路でってね」

 

「フフ。ああ」

 

「戦士ゴドフリー」

 

 エシス殿が声を出す。帽子は外れ、ヴェス殿と同じくらいに綺麗な顔がついに露わになる。

 微笑みながら口にするのは歓喜のそれ。そんな声だった。

 

「貴方はどこを目指すのですか?」

 

「最上階です。この世界の」

 

「そこには何かが。貴方の言うところの勝利があると?」

 

「もちろん。そこにはきっと良いものがある。戦いの果てとはいつもそうでしたから」

 

「その果てにもしも何もなかったら?」

 

「また戦いますよ。何度でも」

 

「では貴方に祝福を。この先ずっと、道を違えないように」

 

「間に合ってますよ」

 

円満な俺達は笑いあってお別れした。

 

 

 

 

 

 

 さてやって来ました第四層ボス部屋は意外と早く発見されていた。何故なら思いもよらない援軍がいたからだ。

 

「リュースラの騎士ヨフィリスの名において命じます。立てる者は立ち、我に従いなさい!!」

 

 発破をかけるこのお方は。

俺は行かなかったが第四層にあるダークエルフのお城、ヨフェル城の城主・ヨフィリス子爵である。

 

「凄え!バフがかかった!」

 

「来た!黒エルフ来た!これで勝つる!!」

 

 周りは大はしゃぎ。そしてヨフィリスさんの見事な刺剣捌きと、あれはたしかキズメルさん。彼女の曲剣?刀?みたいな武器の威力は正に折り紙付きである。

 ・・・なのだが俺はムカムカしていた。それというのも今戦っている第四層フロアボス、ウィスゲー・ザ・ヒッポカンプ。コイツがほんとにもう、

 

「ぬッる!!!祖霊の王のほうがまだ気合入ってんぞこの馬魚がゴラァアアアア!!!!水しか出せねえのかこの雑魚!!!」

 

 エリア全体を水で水没させてくるこの四つ足ボスは、前半分が馬で後ろ半分が魚みたいな奴なのである。

 しかし実際の程は見掛け倒し。そんな言葉が適当なこいつは祖霊の王以下。まったくもって楽しくもないボスだ。

 

 なので俺は渾身の水平蹴り、またの名を体術スキル『水月』をエネミーの鼻っ面にぶちかましていた。

 

「キリトさん!!よろしくう!!!」

 

「応!!!」

 

 久々に会ったキリトさんがスイッチ。ラストアタックボーナスを取得し、アインクラッド第四層は無事死者ゼロでクリアされた。

 歓声が湧き、キリトさんとアスナさんが拳をぶつけ合う。けど俺はまっすぐにフロアの奥へと向かうよ。

 

 わくわくする脳みそを抑える事なく第五層へと続く扉を開けるとやっと、やっと今度こそ俺は楽しく叫んでいた。

 

「ただいま!シーフラとエインセル!!そしてノクステラとノクローン!!!」

 

綺麗な星が満天の空。永遠の夜空が、そこには広がっていた。

 

 

 

 

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