運命に逆らえってな。
「はーーーい!それじゃあそろそろ始めさせてもらいまーーす!」
「・・・」
「今日は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう。俺はディアベル!――職業は気持ち的に!ナイト(騎士)やってます!!」
「・・・」
へーそうなんだ凄いっすね。まあ俺も気持ち的にって言うか名実ともに『えるでの王』なんだが?
「――今日!俺達のパーティーがボスの部屋を発見した」
「マジかよディアベルさん!?」
「・・・」
百回だよ百回。祝福全開放全ボス撃破サイン溜まり全開放その他全部全部。それを百回。
「俺達はボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームもいつかきっとクリアできるって事を、始まりの街で待っている皆に伝えなくちゃあならない!」
その自負が俺をこのクソゲーにあっても突っ走れる起爆剤となっている。だからナイト(ディアベルはん)よく聞け。俺は王だ。
「それが!今この場所にいる俺達の義務なんだ!そうだろう?皆!!」
「・・・ああ!そうだ!」
「勿論だ!!!」
「当たり前だよなあ!!」
「じゃあ早速だけど、これから攻略会議を始めたいと思う! いいな?ゴドフリー」
「おう。ここに来るまで、俺達は二ヶ月かかった。長かったような短かったような・・・。そこでここで皆さんに、言っておかねばならない事がある」
王である俺は仲間であるディアベルはんの目を見て、そして集会場に集まったプレイヤー達に視線を移した。
◆
「ウらあああああ!!!」
第一層攻略会議が始まる二ヶ月前。
つまりはかの有名な私の世界にようこそハローワールド(チュートリアル)が終わって、俺はいつも通りレベル上げに勤しんでいた。ちなみにヒースクリフは何処だ?と探してみたがいなかった。カヤバーンめ。
「おい!!!そこのコボルド(モンスター)お前も来おおおい!!!」
――という感じで。拳でのレベリングは順調の一言だった。
「・・・・凄いな。君も、このデスゲームをクリアしようって腹かい?」
そんな中、物陰から俺に声を掛ける人影が。
「あ?ったりめーだろアンタ誰だい」
「自己紹介がまだだったな。俺はディアベルだ」
「・・・ディアベル・・・?」
ディアベル。―――あ!この人まさか。
「なるほど、俺はゴドフリーってもんだ。で、その有名人のディアベルさんが俺に何の用だ?」
「はは、有名になったつもりはないけど。・・・訊きたい事があるんだが、ゴドフリーさん。何で拳で戦えるんだ?」
「?それが出来るからだが?」
「すまない、質問を変えよう。あえて武器を使わない理由は何だ?」
「理由?・・・・理由か。何故だろうな、これが一番馴染み深いからじゃないか? ここに来る前のゲームではこれでよく戦ってた。打撃はいい」
「そうか」
「ん?でも改めて問われると、答え難いものだな。それを使う理由の言語化か、あまり好きじゃないしな。
しかし案外・・・、いややはりと言うべきか。自分を掴むカギはそこにあるか」
「なるほど。分かった」
「ああ」
「・・・」
「・・・」
重てえ空気。いや、というよりヤベー奴を見る人特有の気遣いムードを感じる。たしかこのゲームって感情を偽る事が出来ないんじゃなかったっけ?違うっけ。
「なあ」
「なあ」
声が重なる。瞬間、心が重なったりはしないけど。だからどうぞと譲る。
「俺達のパーティに入らないか?よかったらだけど」
「いいよ。飯おごってくれたらな」
即答。だってこの人を生かしてみるのも運命に逆らってる感じがするし。俺の勘がそう言ってる。そうだろう?皆
◆
『ディアベルはんは一層で死ぬ事が確定しているキャラだ。さて?しかしながら俺(ゴドフリー)も死ぬ事確定組なわけだが。彼を生かすべきか否か』
『こいつきらーい』ミケラ
『アイアムマレニアブレイドオブミケラ』マレニア
『好きか嫌いか、そのどちらかでないといけないのか?』ゴッドウィン
『にいさまにいさま、ただしくしんでくださいな』
『キツいジョークだ・・・』
『原作ブレイクは極力避けた方がいいと思いまする父上』モーゴット
『今更だろ』ラダーン
『左様。義父上は生を選択し、冒涜の限りを尽くす御積もりだ。ならば周囲もそうあるべきだろう』ライカード
『え?・・・そんなの俺言ったような言ってないような』
『王たるもの、下の者共には最低限の躾けは必要でしょう。あなた』マリカ
『狭間の地を見聞きした事すらない不遜者めら。王の前にあっては悉く跪くが礼であろう!!』ゴドリック
『いやこのアインクラッドって狭間の地顔負けの厳しい世界だと思うよ。一回YOU DIEDしたら復活無しだぜ?』
『であるならば、協力しようとそうでなかろうと、ひとまずは味方である事を彼らに思わせるべきだろう。
義父上の目的は運命の死の回避。その実現に至るまで、敵はそこかしこに居る。今は味方であるべきでは?』ラニ
『よし!分かった!ではとりあえずは協力するという事で。クリアまで百層もあるんだ、少しは歩調を合わせてみないとな。これにて第二回会議は解散!皆ありがとう!』
◆
回想終わり。
さて、ディアベルはんのパーティー仲間になった俺は二ヶ月間一緒にレベリング及びボス部屋の探索を行っていた。今日はついにそれのお披露目。
なので、俺は手札を一つ晒そうとしていた。
「ここに来るまで、俺達は二ヶ月かかった。長かったような短かったような・・・。そこでここで皆さんに、言っておかねばならない事がある」
見渡す。奇異の目とやる気と、キリトさんと。
「俺はβテスターだ」
・・・・・。
は?
声が一つ漏れた。
「それもただのβじゃない。俺は奴らが行った事のない階層ダンジョンまで行き、そのモンスターの悉くをぶっ殺してきた。巨人、嵐の王、暗黒の星々、ドラゴンロード。
そこには色んなスキルや武器もあったな。神聖剣、二刀流、刀、その他諸々、素敵なものいっぱい」
「う、・・・嘘つけ!!そんな奴いるわけねえだろッ!」
「そうだそうだ!そんな奴いたらネットに出回ってた筈だ!でもそんなの影も形も無かったし、垢バンだってありえる!だから嘘だ!!」
「嘘だと?ではこれを御照覧あれい」
俺は拳を光らせ、そこの壁を殴ってみせた。イモータルオブジェクト(破壊不能)。それが見える。それを見せる。
「!」
「―――ぁ」
「知り得たか?もしこの中に俺以外の元βテスターがいたら、これがどういう事か解かる筈だ」
「ちょお待ってんか!!!それは一体どない意味や?!」
「教えよう、これは『閃打』という。第二層のとあるクエストをクリアすると獲得できる体術スキルの一つだ。それを今、何故俺がこれを出来ると推理するかな?」
ちなみに答え:モンスターいっぱいぶん殴ってたら獲得した。
「まさか・・・。チート?」
「チートや!チーターやんそんなの!!!一層すら攻略できてへんこんクソゲームの中で何で今コイツが第二層で貰えるスキルを使えるねん!!」
「グリッチと呼んでほしいね。このゲームには、必勝法がある。まあこのデスゲームにチートもグリッチもクソもないってわけだ。 知りたければ教えてやるよ?そしてそんな俺がいるんだ。ここのボスなんて、楽々ぶっ飛ばしてやるよ」
ざわ・・・ざわ・・・と周囲が騒ぎ出す。なるほど愉快犯ってこんな気分かな?これっぽっちも面白くねえけど。
「ゴドフリー」
「何だ?ディアベル」
「―――本当なのか」
「全てがな」
大嘘です。
「何が望みだ」
「あなたと同じ物を」
「・・・。分かった」
その後の攻略会議は俺(ゴドフリー)がいないかのように恙無く進んでいった。それでいい。
これで皆、俺という存在を疑ってかかるからな。てなわけでキリトさん(主人公)、後は任せたぜ。全ては運命に逆らう為に、アンタに一口だ。
◆
「皆、俺から言う事は一つだ。―――勝とうぜ!」
「応!!」
ディアベルはんは俺をパーティから追放しなかった。ヤベー奴を野放しにする方がもっとヤベーと考えての判断だろう。妥当だ。
しかし周囲を見ればチラチラ俺を見つめる瞳が。
よし、これで何が起ころうとも仲違いはおきないだろう。あるとすれば俺を闇討ちするぐらいだが、えるでの王に闇討ちなど効かぬ(慢心)
よし、あとはボスをぶん殴って殺すだけだな!
「攻撃開始ッ!!」
「ぅおおぉおおおおおおおお!!!!」
先頭を走るのはたしか―――、キバオウさん。そう、良いキャラしてたキバオウさんだ。
「E隊!F隊!センチネルを近付けるな!」
「了解!」
頼むぜキリトさん。無敵のビーター様(未定)の剣技でこんなボスの取り巻き(ルインコボルドセンチネル)なんてぶった切って下さいよ。
だって嫁さん見てますよ?あと君の嫁はアスナに似てる。
「ていうかご本人様がそこにいらっしゃるんだけどね」
「? どうした?」
「なんでもない。じゃあちょっと汗かいてくる」
「汗?おい、今そんな指示は、」
「ラストアタックボーナス。カンペキに獲る。だろ?ディアベル」
ディアベルはんは驚愕と共に、そしてやはりという納得みたいな顔で俺を見送った。
「行くぞオラあああ!!世界初、史上初の、ソードアートオンラインフロアボスの討伐だよ?売れるぞ~、この戦闘は売れるぞぉ!!」
「ああん!?売れるって誰にだよチーター!!?」
「ンなモン始まりの街で食っちゃ寝すら出来ねえプレイヤー達に決まってんだろうが!!ディアベルはんが言ってただろうがボスをぶっ殺せ!!!俺達の武勇伝、ソードアートをこの世に生み出せ!生み出し続けるんだよ!!!後は勝手に尾ひれがついてくるァ!!!」
「ぉ、―――おお!」
「何がコボルド・ロードだゴラア!!!妖しい精の主かオラア!!俺はエルデンロードだこのオオカミ野郎!!!っしゃいやおらあああ!!」
ぶん殴る。右で、左で、もいちど右でぶん殴る。それを続けるだけの簡単なお仕事(体術スキル)。でもこの階層ではそんなの無いので、他のプレイヤーからはすんげえモン見てる気分になるって寸法。
まあ階層が上がっていったらコイツ只のバカってオチが待ってるんだが。まあそこは追々。
「見ろ!HPバーが残り一本を切った!」
「盾持ちは前に出ろ!!全員ボスの動きを注視!!」
「応!!」
有名だから憶えているが、たしかここってボスがタルワール(ザミェルの湾刀?)だと思ったら野太刀だったんだっけ。それでディアベルはんが殺されてなんでや!!!
ってな感じでキリトさん(主人公)が偽悪者になって一同のヘイトを集めると。
でも別にその役目は俺でもいいよね。だって俺キリトさん好きだもの。
「ガイドブックの情報通りやな。武器が―――、?武器、武器が?」
「あれはッ!?」
「止めは俺に任せろおーー!!」
「待てディアベル!ダメだ!全力で後ろに跳べ!!!」
ほらこれこれ。俺が何かしてもしなくても主人公してくれるんだから。実を言うと、ガキの頃憧れてたよ。
「あれは―――野太刀だ!!!!」
だから任せておけって。キリトさん。
「テメエ刀かコラア!!!!させるかああああっ!!!!」
「ゴドフリー!??!」
「嘘だろ武器を掴んで投げた?!」
「いや違う。・・・腕と拳でパリィしたんだ!」
「力が足りねえな、ロード様よ。力がなきゃなあ、テメエはロードじゃねえなあ!!!!!」
憧れは。理解から最も遠い感情だとしても。
「えるでのさ!ロードの俺が勝つのか、このクソゲーの王であるテメエらが勝つのか!実験だよ実験!!」