第六層・主街区のバーについた俺は一杯の酒を注文していた。
「へいマスター。黄金律のカノンを一杯」
「ロックorストレート?」
「我が友に敬意を表し、ストレートで」
「かしこまりました」
NPCバーテンダー(マスター)がそう言って酒を作ってる間に、俺は早速脳内会議を行うのだった。
◆
『第九回脳内会議開催ー!!!!!』
『はい』モーゴット
『はい』モーグ
『はい』ゴッドウィン
『はい』マレニア
『はい』ミケラ
『はい』ライカード
『はい』ラニ
『はい』ラダーン
『はい』ゴドリック
『はい』ラダゴン
『ついに来たぞ。黄金律原理主義にまみれたこの第六層に!
Dよ、見てるか?まあ見てたら何度だってぶっ殺すけど。フィアの為に』
『照れるじゃないか、我が友よ』
『てめえは黙ってろ我が友よ』
『父上。律などは偶々なだけで似て非なるものと存じますが』
『左様!律といった高尚なもの、この世界には存在しえないと愚行致しまする父祖よ!』
『かんぜんりつー』
『アイアムマレニアブレイドオブミケラ』
『ミケラぁ』
『さりとて問題はこの階層での目的やねらいでありましょう義父上。レベルを上げることはもちろんの事ですが、』
『そろそろフォールン・エルフの大将や副将が出てきてもおかしくない筈。義父上、いかがなさるおつもりか?』
『そういえば・・・カイサラさんだっけか。原作だとキズメルさんとやり合ってた彼女とここで逢えるかもだなあ』
『父上は全てのエルフの敵になっておられる。ゆえ今のレベルでは危ういかと』
『慎め。義父上は負けない』
『ゆえに労力など惜しめと言うのか?それは敗者の理屈だ。勝者とは常に労力をこそ王の故に変える者であろうが』
『兄上の言う事にも一理はあるが、この世には無駄な労力というものもある。義父上、合わせて御一考のほどを』
『フームたしかに。攻撃手段も増えてきたことだし、敵も多いしここらでいっちょ新調するか』
『しんちょー?』
『アイアムマレニアブレイドオブミケラ』
『ミケラぁ』
『防御力と継戦能力の強化。だな?友よ』
『ああ。この階層では防具を新調しようと思う!それでもって向かってくる敵どもは全部ゴッ倒す!これにて第九回会議は解散!皆ありがとう!』
◆
「そろそろ新しい防具を手に入れたいと思う」
「キューイ?(今更だと思うけど。まあ悪くはないと思うよ?)」
「よせやい。パリィだけでは捌けない相手もそろそろ出てくるだろうしな、防御力を上げるのは悪い事ではないだろう」
「キューセスタス?(そういえば貴公はパリィ動作がいやに板についてるね。いつの間に練習を?)」
「パリィ縛りのタマモンよ。毎日毎秒がタイミング命な狭間も悪くないぜ。・・・でもやっぱり防具や盾はあった方がいいよな」
「キューキュ!(どっちにしたって好きなように戦えばいいだけじゃんね!違うかい!)」
「その通りだぜ友達!!」
というわけでテンション爆上がりな俺達はレベリングを開始した。
「この街は扉を一つ開けるにもパズルばっかだからきついぜ!だから隣町のスリバスに向かいながら、行く先々のモンスターをぶっ殺していくぜ!!」
道すがら目につくモンスターをぶん殴る簡単なお仕事のスタートであった。ちなみにディーネがいるから捗るのであって決して一人ではやらないが方がいいが、いるやつはいるんだよなあ。
どこもかしこもレベリングばかりだ。
「おっと兄ちゃんあぶないぜー」
「す、すまねえゴドフリーさん!」
「アンタもあぶねーよー」
「助かった!」
ソロの良いところは劣勢のパーティーに加勢にいける所かもしれない。派閥がないってこういうこと。
まあでも忘れてはならないのは一人より大勢、強いに決まってる点だけど。
「ディーネ!南下するぞ!」
「キュイ!(オッケー!)」
戦いながら所変わって、俺達はこの階層の中心・タルファ湖まで来た。
たしかこの湖があるせいで第六層はグルリと反時計回りする順路になっているんだっけか。
「よし休憩だ。しっかしひっろい湖だなあ・・・・。待てよ?これ泳げるな?」
「キュー、キューブ(ちょい待ち。ヒトでは厳しいねこれは。その証拠に、ホイっと)」
なんだか泳いで行けそうな気配がする。何より運命に逆らってる感じがする。 しかしディーネは小石を投げた。器用に足で、湖へ。
「おい何やってんだディー・・・・ネ?」
ゴボゴボと鳴る泡沫。そこから巨大なモンスターの触手が海面より現れていた。タルファ湖の主・オヒオメトゥスのものである。
哀れ小石は湖の藻屑のなったとさ。
「・・・そうだった。これ泳いでも死んじゃう系のやつだった」
「キュースイキュースイ(十中八九これダメなやつだよ)」
「うーん、どうしよっかな・・・・。古のタコつぼゲッソーよろしく触手から血祭りに上げてやればいけるかもだし」
「キューファイア?(ちなみに言っとくけど流石にボクでも水中は無理だよ?)」
うーん楽しくなってきたなと、その時。桶を持った何者かが湖に徒歩でやってきていた。
「手こずっているようだな」
そう言うや否やその者は立ち止まった。
・・・水でも汲むつもりだろうか?地面に桶を置き、ジッと目の前を見つめているが。
顔はフードで隠されており、その眼差しを窺い知ることはできない。しかし声だけはしっかりと、綺麗な女性のものだ。
俺は通りすがりのNPCだと思い、とりあえずお茶を濁すことにした。
「そうなんだよ。ここを渡っておけば楽なんだけどさあ、いや~まいったまいった」
「渡って何がしたいのだ?」
「この階層のボスモンスターをぶっ殺したいのさ。上層に行きたくてね」
「なるほど。お前の敵はこの階層の守護者というわけか」
「敵?俺に敵なんていないよお」
「…む?」
「戦ってぶち殺しているんだ。殺されもするさ。敵味方なんて、正確なそれらは実はないんじゃないか?
明確な戦いがそこにあるだけで、俺はそこに首を突っこんでるだけだよ。褪せることなく楽しいからね」
「そうか」
「ああ」
「ではここで我らが出逢って戦っても――なんら不思議はないわけだな?人族の戦士」
「そう言ったつもりだけど?」
バサリとフードを顔から取る眼前の女性は。青紫色の左眼が殊更美しく、それでいて右眼を眼帯で覆い隠しているエルフの剣士であった。
「そうこなくちゃ面白くない。では暗殺ではなく戦の作法をご照覧あれい。俺は『えるでの王』、ゴドフリーだ。貴女は?」
「カイサラだ」
二つ名も役職も誇りも口にせず、作法を知っているフォールン・エルフが副将『剝伐のカイサラ』は左腰から刀(カタナ)を抜いた。