脳内ゴドフリー   作:ブロx

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ナイトレイン楽しみです。





第六層 その2

 

 

 

アッシュグレーの髪がたなびき、戦場を彩る。

 

「うっひょわう!こいつは・・・すげえぜ!!」

 

剣士カイサラが振るう刀の軌跡が俺に懐かしさと恐怖を去来。この強さこそ刀の故よ。

 

「このゲーム出血するのかなあ?キャラクターは人体モチーフなんだし骨の設定もあるしだから多分あるなあ!

 やはり出血イズパワー!さらに言えば居合イズトップティア!」

 

「………」

 

 無言の上での斬撃が更に追加。俺を襲うが、それを無刀無手で以てなんとか捌く。こんな手数武器に対して俺のつるはしはまだ不利。

 

今は凌ぎ、時期を待つべきだ。

 

「キュイキュイ(とはいえだよ友達、少しずつだけどダメージが蓄積していってる。このままじゃジリ貧だよ?)」

 

「モチロンだぜ友達!」

 

 その上でカウンターを狙うって寸法よ。

剣士の手元を見つつ、俺はパリィのタイミングをこそ凝視し――そして。

 

「っしゃあ!!!」

 

 敵が鞘に刀を納めた。やはり居合、つまりはチャンス!俺は抜刀する刀身に左手を合わせてその斬撃をパリィして、

 

パリィして、

 

パリィして、

 

「っ、なに!」

 

居合抜刀攻撃が、逆に俺の左拳をパリィしていたのだった。

 

「さらばだ」

 

「―――!」

 

 態勢が崩れた俺の顔面へと刺突が飛ぶ。

刺突カウンターかな?そんなことを考える脳みそは無視して俺の右手はコンソールを操作。つるはしを出現させていた。

 

「おもしれえ!!!!」

 

「!?」

 

間一髪。間に合った俺の武器は敵の攻撃を防いでいた。

 

「居合でパリィできるのか!『えるで』じゃそんなの見たことないぜ!やはり面白いなこの剣の世界はよおッ!!」

 

 そう言い、俺は大地をつるはしで思いっきり殴りつけた。するとその反動でもって俺は空中を一回転、勢いそのままに剣豪・カイサラに得物を振り下ろす。

 

 それは腐敗に塗れても尚闘い続ける軍勢たちの戦技。居合と並ぶ、最強の技の一つの似姿である。

 

つまりは獅子斬りの出来上がり。

 

「おっらああ!!!!」

 

「! 狼か貴様」

 

「獅子だゴラア!!!かかってこい!!惰弱はいねえぞ、この姿を見せる以上はなあッ!!!!」

 

「………ふ」

 

 俺の口上が面白いのか剣士は刀を片手のみで上段に振りかぶり、その切っ先を俺に向けた。ギラリと陽光を反射し、睨み付ける。

 

 牙突きのようなその構えは俺に底知れない恐怖を与えた。しかしその時、遠くから妙な音が聞こえてきた。

 

「?キュイキュ(?これは…声だね。下がれって言ってるみたいだよ)」

 

「なに?声? 俺のログには何も出てないが?」

 

「………」

 

 正解と言わんばかりに、カイサラは刀を鞘に納めた。

居合かもしれないが。だからこそ剣豪は恐ろしい。抜け目がない。俺はお前に近づかない。

 

「勝負の最中だぜ。おい、なぜ武器をしまう」

 

「命令だからだ。貴様と立ち合うこともな」

 

「けっ。なんでえ、最初からお手並み拝見が目的ってわけかい。ノってきたのに、気に入らねえな」

 

わざと強い言葉を遣ってみる。しかし敵はのらなかった。

 

「何とでも言うがよい」

 

 油断なく半身で、一歩一歩この場から歩き去るカイサラに俺は遠吠えを放つ。この勝負はちょっと俺の負けだと思っているからだ。

 

「次は勝つぜ。貴女にも、貴女の王にもな。力こそ王の故ってやつを見せてやる」

 

「そうなれば。貴様も貴様の減らず口も跡形消え去ることになる故、愉しみだな」

 

 猟犬のステップのような速度で見えなくなるフォールンエルフを、敵を、俺はずっと睨みつけていた。

 

 

 

 

「キュイー…(ふーっ、何とか死なずにすんでよかったと言っておくよ。ひとまずは。…強敵だったね)」

 

「まあな。おっかない手合いだった。刀使いは特にやべえからな」

 

「キュルー?(で、どうするんだい?この湖。渡る?それとも街に帰って順路通りに行く?)」

 

「帰るってのもなあ・・・」

 

 ・・・たしか六層は原作だとパイサーグルスさん絡みでセアーノさんやミィアさんの話がメインだった筈だし、キリトさん達がいるだろうガレ城(黒エルフの拠点)に行って一緒に暴れるってのもいいが、多分俺門前払いどころか即戦闘になるだろうなあ。

 

「よし、この湖を渡った方が面白そうだぜ。なのでディーネ、俺を掴んでこの湖の上を飛んでってくれ」

 

「ムキュ(無理)」

 

「無理かあ。しゃあねえ、試しに根気強くこの湖の主の触手を全部ぶっ潰してみるか。どうだ、面白そうだろ?」

 

「キュー!(腕が鳴るねえ!)」

 

 思い立ったが吉日。それからというもの、俺とディーネは小石を拾っては湖に放り、出てくる触手に攻撃を加える事にした。

 

 オヒオメトゥスは少しでも湖に何かが触れると外敵と判断し、触手で襲ってくる。でも毎回必ず本体が出張ってくるわけではない。

 

 それはチャンスであり、レベル上げのいい機会でもあった。

生物だからか弱い触手と強い触手が奴にはあるようで、そのスパイスが更に俺達を楽しませる。

 

「ディーネ!そっち行ったぞ!!」

 

「キュールウゥウウ!(フー!楽しい楽しい戦い!!わくわくもんだあ!!)」

 

 素敵だ。テンションじゃなくてその気持ちが分かるのが。

しかし良いレベリングだあ。ディーネと俺は丁寧に触手へ攻撃を重ねていった。

 

 ――で、そんなこんなをしていたら3日経ってしまったある日のこと。

 

「む!?今日は触手が出てこねえぞ!」

 

「キュー!?(やったか!?)」

 

多分違うからおいバカやめろ。

 

「―――ボゴ」

 

「・・・・ボゴ?」

 

「――ボゴボゴボゴ!」

 

 湖底から現れる巨大モンスターのエントリーだ。

それはついに看過できない脅威だと俺達を認めてくれたのか、或いは単にひとえに邪魔だからか。

 

タルファ湖の主・オヒオメトゥスのご尊顔を俺達は拝していた。

 

「キュイッキュルー(このクソだらあって言ってるよ友達)」

 

「こっちのセリフだって言ってやれよ友達」

 

「キュ(もちのろん)」

 

 『えるで』の陸ダコみてえな形しやがって。蛸たまでも出しやがってろや、ぶっ潰してやる。

 

「とは云うものの、勝負は湖から引きずり出してからだな。・・・問題は奴がこっちの誘いにのってくれるかどうかだが」

 

「…キュー…(残念ながらのってこないっぽいね。…全然自分のテリトリーから動かないよ)」

 

「そう上手くはいかないか。ま、対岸に渡れれば御の字さ。というわけでかかってきやがれ!!」

 

「ボゴボゴボゴ!」

 

「どうした俺が怖いのか!俺はここだ!さぁ来いよ!!」

 

「ボッゴボゴボゴ」

 

しかしさっきから何語を話してらっしゃるのだろうか?意味不明だ。

 

「?おい何て言ってる?」

 

「キューリジック(こうだよ。テメエのおふくろのケツにキスしろ)」

 

「このくそったれが!!なめやがって!!しかもそれはこのデスゲームに囚われたプレイヤー全員に喧嘩を売る言葉だぞかかってこい!臆病者!」

 

「キューグリーズ(まあまあ。自分が絶対有利なテリトリーから出る奴がいると思うかい)」

 

「うーん口惜しいが正論・・・。あ、でも待てよ?

こいつをやり過ごせばいいだけなんだから、ディーネが向こう側で石を落として気を引きつけている内に俺が泳いで向こう側に行けばいいんじゃないか?」

 

「キュイッシュ?(なるほど?)」

 

「お前飛べる。俺飛べない。でも泳げる。気合で。よしそれでいこう!」

 

「キューク(そんな単純な手に、マジでかかると思うのかい?)」

 

「やってみなきゃわからねえよ?何事も」

 

 というわけで作戦開始である。

ここタルファ湖は五角形の形をしているので、遠い場所への移動には時間がかかるはずだ。

 しかもディーネは飛べるからどんなに遠くに行っても俺が見失うことはない。

 

 そして作戦開始の合図は首を二回もたげること。わかりやすいことこの上ない。

 

 ―――合図だ。

瞬時に現れるオヒオメトゥスのどでかい姿を遥か遠くに目視した俺は湖へと飛びこんだ。

 

「ゴボゴボボ!!!!」

 

 水中だからか音がよく聴こえる。性懲りもなくクソだらあと言っているのかな? 泳法をクロールに変えた俺は向こう岸へと泳ぎに泳ぐ。

 

ちょろいもんだぜ。

 

「っむお!?」

 

 ・・・って触手がすぐそこに!?

ば、馬鹿な、まだ残ってたのか?いやだったら何でさっきは触手を出さなかった?

 

頭使ってたのか?クソディレイか?クソだらあ。

 

・・・いや、違う。

 

「うおおおおお!!!!!もう一匹いやがるなんてきいてねえぞぅおおお!!!!」

 

湖底に日潜む影がもう一匹。オヒオメトゥスは二匹いた!

 

「だがしかし最初に小石を落としたディーネの方に二匹とも注意がいってる筈!!その隙に届けえええ!!向こう岸までえええええ!!!」

 

 泳ぐ。難しいけど気合で泳ぐ。脳が頑張ればいける。だってここSAOだしアインクラッドだし。

 

「ぐぅうおおお!!!!!!!触手が俺の脚に!?!?離せ俺は俺を誰だと思ってやがる『えるで』の王だぞ俺はゴルア!!!」

 

 岸はすぐそこ。

泳法をバタフライに変化させ、トビウオのように水面から跳躍する俺は見事タルファ湖を泳ぎきっていた。

 

「ぐほああああ――!あぁうおぁあああ・・・――、酸素をくれ」

 

俺の脳内に。

 

「キュイッフル(ようやっと向こう岸だね。ナイスガッツだったよ友達)」

 

「・・・ああ、ディーネ。君のおかげだよありがとう」

 

「キュアー(どういたしまして。ところでこれからどうする?)」

 

「・・・ちょっと休憩してから近くの村にいくとしよう。あ~、一仕事終えた感があるわ楽しいこれ」

 

「キュー…コオオ(浸ってるところ悪いけど触手がこっちに向かってきてる。…その数ざっと5ってところかな)」

 

「追い打ちかよ、もっと楽しくなってきやがった。――迎え撃つぜ全部まとめてえ!!!」

 

 大ショートカットを終えた俺達は触手を全部ぶっ潰し、ついに六層迷宮区がある東エリアに到達したのだった。

 

 

 

 

 

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