脳内ゴドフリー   作:ブロx

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注意。今回、作者のフロム脳が少々強めに出ています。ご容赦下さい。





第六層→第七層

 

 

 

第六層東エリア・ムルツキの村にて。

 

「やっと一息ついたな」

 

「キュキュ(スリリングな戦いだったね。最高最高)」

 

「休んだら迷宮区に行って攻略組の露払いでもするか。もっともっと楽しくなるぜ」

 

「キュイ(そうこなくっちゃ)」

 

 一面が砂漠地帯となっているこの東部エリア。

砂漠越えには水が要るのは常識なので、俺達はまず水を調達することにしていた。

 

「ヘイ、マスター。その水袋を3つくれ」

 

「あいよ。値段はこれくらいだ」

 

「え?なにそれボッタクリだろ冗談言っちゃ困るぜ高い高いー」

 

「じゃあいくらなら買うね?」

 

「その値段の半額なら買うよ」

 

「それこそ冗談言っちゃ困るってもんだ。そんな安値で売ってたら商売上がったりだよ!」

 

「じゃあいいよ。買わないから」

 

「おっとそうくるかいオッケー。交渉開始だ」

 

 そんな感じで。俺は最初の額から40%オフで水を手に入れた。一度やってみたかったんだよねこういうの。

 

「びゃあああ水旨いぃ!あ、ディーネも要る?」

 

「キューター(少し頂くよ)」

 

 グビグビと水を飲む俺達。熱い砂漠のど真ん中、オアシスのようなこの村には豊富な水源がある。

 

 ステータスを見ると良い水だからか少しバフ効果もあるようで、ゲームといえど水分補給の重要性を再認識した。

 そしてすぐさま出発してモンスターをぶちのめしながら迷宮区へと進んでいると、おや?あれは?

 

「・・・・誰だ?」

 

 NPCの反応。女性で、ものすげえ勢いでモンスター共を吹っ飛ばしている。

 

 アッシュグリーンの瞳。綺麗な金髪。そして右手にレイピア。まるで神肌縫いみたいだ。

 

「キュイッ(やるね、彼女)」

 

「神肌の貴種を思い出すなあ、あの剣技の流麗さ。見てくれは真反対だけど」

 

 ・・・たしかセアーノさんだったかな? とはいえ、やはりというか段々多勢に無勢になってきたな。

 

「ちょいと失敬。助太刀ダイナミック」

 

「キュー(楽しそうじゃんね)」

 

「! あなた達は?」

 

「通りすがりの『えるで』の王です」

 

「お、王?」

 

困惑する女性NPC。しかして俺達はモンスターをさらっと平らげた。

 

「…手助け感謝いたします。私はセアーノと申します」

 

「俺はゴドフリーという者です。間違っていたら申し訳ありませんが、ミィアさんのお母様ですかな?」

 

「ええ、その通りですが…」

 

「ああ失礼。貴女の娘さんであるミィアさんの事を仲間から聞きましてな。なんでも急がれているとか。微力ながら助太刀いたしますよ」

 

「あ、なるほど。キリトさん達のお仲間でしたか」

 

 セアーノさんがレイピアを左腰の輪っかに納める。やっと納める。ちゃんとした鞘でないのは、それだけ先を急いでいるということなのだろう。

 

敵意が去ったのを確認して、俺も構えを解いた。

 

「渡りに船と申しましょうか。是非ともお願いいたします」

 

「いえいえ恐縮です」

 

やっほう。効率のいいレベル上げができるぜ。

 

「しかしお一人でとは。・・・セアーノさん、貴女が強者だということは肌で感じますが、些か早計では?」

 

「呪いを解くためです」

 

「呪い・・・? たしかこの階層のボスは巨大なパズルのキューブでしたか。なるほど」

 

 たしかスタキオンの呪いだったっけ。この階層のボスから盗み出したという黄金のパズルキューブ。それの力を使ってスタキオンの街は盛期を迎えたとか何とか。そんな設定だったかな。

 

「よくご存じですね。 そう、この黄金のキューブこそ塔の守護獣の欠点。欠けたパズルのピースなのです。

 これを元あった場所に、守護獣に納めればダメージが通るようになる。私はそれを成します。スタキオンの呪いを解くために」

 

 このイベントは原作でキリトさんとアスナさんが進めてるイベントである。

 セアーノさんと娘のミィアさん。サイロンさん。そして主のパイサーグルスさん。まさに家族の因縁である。

 

破砕戦争かな? あんなんと一緒にしちゃ悪いだろうけど。

 

「呪いを解くことには賛成していますよ。私はただ守護獣と戦えればそれでいいんで。ま、楽しくいきましょうや」

 

 そんなこんなで俺達は道中のモンスターを一蹴。ボス部屋の前に辿り着いた。セアーノさん強すぎである。

 

「戦士ゴドフリー。貴方のお陰で速くここまで辿り着けました。礼を言います」

 

「いいえー、どういたしまして。・・・って、ちょいお待ちを。このままボス部屋に入るおつもりですか?」

 

「当然です。その為にここに来たのですから」

 

「失礼ながら一人の戦士として一言申し上げます。もしや自殺が趣味なんで?」 

 

「私は強いです。最悪でも相打ちにはなりましょう」

 

「万が一の間違いでしょう。それ、意味が全然間違ってますよ?」

 

「ここまで来てくれた貴方にこれを。魔除けの手甲です」

 

「ん~、ここぞとばかりに古今東西NPCよろしく他人の話聞かずにテメエの話ばかりするぅ。

 もらえるならもらっておきますが、相打ちになったとしてミィアさんはどうするんです?」

 

「私の娘です。それくらいは覚悟の上でしょう。あの子もまた強いですから」

 

「・・・」

 

 結論を急ぎ過ぎてる感が否めない。NPCだからだろうか。しかしここはアインクラッド。どんな反応が返ってくるかな?という実験だよ実験という事で、俺は少し手札を晒すことにした。

 

「・・・うーん、一つ昔話をしましょうか。一人の女から生まれた、ある息子の話です。その者は『黄金』と呼ばれていました。見目は美しく、古い竜すら友にした素晴らしき息子だと。

 しかしその最期は家族に切り捨てられるという悲惨なものでした」

 

「…――家族に?」

 

「その世界には運命の死がありませんでした。それを取り除くことで始まった理想の世界でした。しかしどこかでおかしくなったのでしょう、ならば終わらせねばならない。だから壊れた『黄金』の世界を担う次代の息子は、もう要らない。という理屈なわけです」

 

「……」

 

「結局、息子は母に義妹たちに謀られ後ろから刺されました。取り除いた筈の運命で以て。彼は何も悪くなどなかったのに。

 まあ、もしかしたら自ら覚悟していたのかもしれませんが、つまり何が言いたいのかというと、そんな終わってる家族じゃあるまいし、大事な娘さんともっとお話した方がいいんじゃないかという話です。陳腐な言い回しになりますけど」

 

「………」

 

 黙って考えているセアーノさんを横目に、ストレージを開いて手甲を装備する。 なになに?黄金比の手甲?無限の回転エネルギーでも生み出すのかな?

 

「………ご忠告は受け取ります。しかし、これは私がやらなければならない事柄です」

 

「かもしれませんね。娘さんと一緒にやってはいけないわけでもないでしょうけど」

 

「あの子の父。………夫の為にも」

 

「尚更この場にもう一人いないとおかしくありませんか?家族の話でしょう、それって」

 

「……」

 

・・・・・。

 

「…ところで、その『黄金』の彼は一体どうなったのですか?」

 

「え?彼ですか?」

 

「はい。亡くなったとは、言ってませんでしたから」

 

「ああ、生きてますよ」

 

「は?」

 

「精神ではなく肉体だけがね」

 

「それは一体どういう…?」

 

「黄金殺しの犯人は、その精神だけを殺したかったようなのです。だからいつも彼はこう謳われるのですよ。兄様、兄様、正しく死んで下さいなって」

 

「……」

 

 考え込むセアーノさん。ちょっとびっくりさせ過ぎたかな?

しかし『えるで』の話が功を奏したようで、幾人かの足音が聞こえてくる。どうやら間に合ったみたいだ。

 

「――母さま!!!」

 

「セアーノさん!!・・・・って、ゴドフリーさん!?」

 

「やあ皆さん。待ちくたびれたよ」

 

 母娘の再会を祝し、俺はクールに距離をとった。

涙を流しながら抱き着いているミィアさんと、セアーノさん。んー、原作よろしく名シーンだなあ。

 

「キリトさん、アスナさん、アルゴさん、ここまで娘を守ってくれたことに感謝します」

 

「そんな・・・俺達こそ」

 

 更に耳をすませば大勢の足音がする。どうやらディアベルさん達攻略組もちゃんと来てるみたいだ。 じゃあやろうぜ、この階層のボスモンスターを。

 

「――腕が鳴るなあ」

 

「やあやあ王様。軒昂なところ申し訳ないが、どうやってここまで来れたんだい?」

 

「あ、どうもアルゴさん。湖を泳いできたんだ。中々きつかったよ」

 

「…え?」

 

「さあ、ここのボスもさくっとぶっ倒してしまおうぜ!」

 

「やる気満々だな、ゴドフリー」

 

「黒の剣士さんとフェンサーさんに恰好わるい所は見せたくないんでね。

よっしゃいくぞおお!!!!」

 

 可愛らしい程に呆けてるアルゴさんを脇に置き、ディアベルさん達と合流した俺とディーネはついにアインクラッド第六層・フロアボスと戦うのだった。

 

 

 

 

 

 

「来るぞッ・・・!!!」

 

そう叫んだのはディアベルさんかキバオウさんかリンドさんだったろうか。

 

「レーザー攻撃だ!回避!!!」

 

「掛かってこいよおおおお!!ルービックキューブがこの野郎ォ!!!!!!」

 

真紅のレーザーを避けながら、俺は肉薄していた。

 

「硬え!硬え!硬え硬え硬え硬え!!」

 

ぶん殴りながら、その数だけ連呼する。殴り甲斐がある奴は好きだからだ。

 

「キューブ!(ギミックがあるみたいだね!ダメージが全く通ってないよ!)」

 

 そういやギミックボスだったあ。 このルービックキューブ型のボスは体表を叩いて数字を動かし、揃うと体を覆っている無敵バリアが解かれる仕組みである。

 

それがこのボス、ジ・イレーショナル・キューブ。

 

「ディーネ!どうする?!」

 

「キュオウオオオ!!(とにかく凌ごうかあ!!!)」

 

 相棒の咆哮一閃。俺達全員にバフをかけてくれるとはありがたい。バフ要員はマジ大事である。

 

「よし!ゴドフリーさん!!右斜め下の数字に強攻撃、左方向!!」

 

「! 『三日月』!!!!」

 

 このボスのギミックを打ち負かすにはパズルを解くしかない。

だがこっちにはアスナさんやセアーノさん、ミィアさんたち数字つよつよメンバーがいるんだ。その証拠に着々とパズルが解かれていく。

 

流石は攻略組。流石の連携、楽勝だぜ。

 

「見ろ!バリアが解かれたぞ!」

 

「変化する攻撃パターンを把握!!初見攻撃に注意!!」

 

「了解!!!」

 

「漆黒の立方体!あれが奴の本体か!」

 

「NPCが黄金のキューブをはめたぞ!これでギミックは全部解けたか!?」

 

「オラァア!!!!」

 

 すかさず踊りかかる俺。新しく装備した手甲で以て、ぶん殴りぶん殴る。黒い体の中に黄金を宿すボス目掛けて。

 

「――この第六層(黄金律)を代表するには弱すぎたなあ、キューブさんよ。我が友ラダゴンとゴッドウィンにあの世で詫び続けろおおおお!!!!!!!!」

 

 理不尽な王の故という名の拳を俺はボスにぶち込み、スイッチした後にキリトさんとアスナさんはついにボスのHPをゼロにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

祝杯を後にして、俺は駆ける。扉を開ける為に。

 

「次の階層次の階層次の階層」

 

ギミックボスが大層つまらなかったため、俺は敵を求めていた。

 

「うおっ、風があっついなあ・・・」

 

カジノとか強敵のオンパレード。そんな戦いの階層を。

 

「向かい風の道一択だろ!」

 

 アインクラッド・第七層。ニルーニル様がいるこの層に、俺とディーネはついに足を踏み入れ、

 

「――やあ。ネウシアン」

 

「?」

 

その足を止めるに足る濃密な殺気。モーグがまき散らす血炎のような赤い髪。

 

「早速で申し訳ないが、少し話をしないかい。黒も白も拒絶した同胞(ネウシアン)よ」

 

そんな長髪をたなびかせ、堕ちたエルフが俺を待っていた。

 

 

 

 

 

 

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