「さあ行こうぜ行こうぜこの先へ!もっと楽しい戦いへ!」
「キュー!(オッケイ!)」
モンスターを打ち倒しながら進む俺達は山岳地帯を突破。その先にあるトリブラの村で休憩した後、白骨の平原という場所に来ていた。
このフィールドには竜の骨があるという。あんだけ強い古竜が朽ちて骨になるわけがない。ということは所詮この世界の竜ってのはどこぞの馬の骨なんだろう。
「にしてもデッかいなあ。グランサクス並みじゃないか?ってそんなわけねえか!だらしのねえ古竜もどきが、フン!」
ぶん殴る。文字通り骨が折れるように俺達は進んでいく。
「キューシャ(なにしてんの?)」
「いやもしかしたら起き上がって襲い来るかもと思ってね。よくあるだろう?ぶん殴ったら敵対するってお約束が」
「キュウ(ないと思うけど。それに、竜といえど死者は丁寧に遇するべきだよ)」
「む。・・・それもそうか」
イモータルオブジェクト。
その表示が出るばかりで、特に何も起こらなかった。が・・・しかしちょっと待てよ?じゃあなんでこんな意味ありげに竜の骨なんてものがこんな所にあるんだ?
ここのフロアボスは竜ですよっていう伏線だけの為か?
そんなことあるか? この剣の世界で。
「・・・、ディーネ。ちょっとこの辺を探索してみよう」
「キュアウ?(え?マジかい?)」
「血が騒ぐなあ。『えるで』の王になる前の、探索者としての俺の血がな」
というわけでちょっとこの辺に何かないか探してみよう。
「ディーネは空から見ててくれ!」
「キィ(りょうかーい)」
もしかしたら隠し扉とかあるのかも? と思いながら竜骨を軽く叩きながら周囲を探る。果たしてなにか仕掛けがあるのかないのか。
「探索欲が刺激されるな。・・・・しかし何もなしと」
「キュー(上からも同じく。特になにも変化はなかったよ)」
「うーん、掘ってみるか?」
「キュルキュル(無理じゃないかな。大きすぎるよ)」
うーん。
「・・・・この骨って岩よりぶ厚いのか?試してみるか」
「キュハ?(は?)」
「フン!」
俺はつるはしを両手持ちで竜の骨にフルスイング。すると、
―――竜の骨の化石を入手しました。
「え。なにこれ」
「キュボーン(骨だろ)」
「いや骨なのはさっきから見てるんだからわかるけども。何に使うんだよこれ・・・」
化石を指で叩いてみる。すると装備している黄金比の手甲(セアーノさんからもらったやつ)から光が発生。
「まぶしっ。・・・・なんなんだこれ」
驚く俺を尻目に光は化石へと吸収され、それが消えるとそこには色の変わった化石が手の中に納まっていた。
―――竜の骨の赤石を入手しました。
「赤色か。なんだ、原初の黄金かこれ?」
「キュル~(かっこいいじゃん)」
特に何かバフがかかるわけでも無しと。てことはこれ、アギエラ関連のアイテムかな?
「なるほどな。これ使えばぶちのめせるってわけか」
「キュ?(へ?)」
「俺のカンがな、これ使えって言ってるんだよ。さっさと赤竜アギエラをぶちのめせってなあ!!」
機嫌がよくなった俺達はさらに進撃。ついに迷宮区タワーへと足を踏み入れた。よし、ちょっくらここで回復タイムだ。
「ほれディーネ。ポーションだ、うめえぞ」
「キュー(さんきゅ)」
しかしポーションをグビグビ飲む事に夢中になっていた俺達は、背後から近づいてくる一体のモンスターに気付かなかった。
「あん? ――ってアリだあああああああ!!!!!!!!!?」
「キュイキュアホヘイタイ(あ。言い忘れてたけどこの迷宮区周辺は蟻通しの谷って言われているね)」
「きもいきもいきもい!キモイ!!なんでこんなところにこんなやつらが!?EDF(助けての意)!『えるでの王』はどんな害獣も神もデミゴッドも恐れないが、熊とアリだけは別だ!!休憩中止はやく奥へ逃げろぉおおオ!!!」
なし崩し的に奥へ奥へと進んだ俺達は結果オーライ、ボス部屋を早期発見。すぐさまディアベルはんにマッピングデータを送ると、彼らも今まさに迷宮区へ到着という連絡がきた。
―――俺達が行くまで待っててくれゴドフリー。少しだけでも。
―――少しでもここで待てる俺達じゃあないんでね。
返信し、ボス部屋に入る。するとそこには誰も何もいなかった。広大なフィールド内は明かり充分。しかしボスの姿だけが見えない。
「ということは――」
「…キュエッ(上だねッ)」
見上げる。瞬間、俺とそいつの眼が合った。
「よお」
「―――」
それは竜の威容。いや、威圧の眼。文字通り眼光を前に、しかし一歩俺は踏み出す。かかってこいよと示す為に。
「また逢ったな。お前がアギエラだな?」
「―――」
対する竜は、静かに見詰めている。
「ノルツァーの話だと、古い竜だという話じゃないか。評価してやるから、はやく降りてこい。どれほどのものか『えるで』の王たるこの俺が相手になってやる」
「―――」
「降りるのが嫌ならブレスだけでいいぞ。そういった手合いのパターンも知ってる。どんな手を使ってこようとも、狩ってやるから安心しろよ」
「―――」
ギラギラと眼に光を湛えて赤竜は一言も発しない。怖いのか、洞察か、アウトオブ眼中でないことは確かだが。
「これ俺から攻撃しないと戦いが始まらない系かな? ならちょっと待ってろ、ちょいとディーネ(相棒)に声をかけて――」
「キュベル(あ、まずいよ)」
「あん?なにがだ相棒、」
するとやっと、赤竜アギエラは俺に返事をした。 その長い尻尾でもって。
「―――!」
それを拳で防いで、俺は更に言葉を返す。
「知らないとでも思ったか? 尻尾は攻撃手段に決まってる。やはりお前、俺を敵認識してるよな?さっきから。でもこんなんじゃ殺せねえぞ。俺達『えるでの王』を誰一人」
まあ、この尻尾攻撃に何度もぶっ殺されてきたからね。避けずらいんだなこれがまた。
だからこそもう大丈夫ってわけだが。
「――グオア」
「本腰入れてかかって来いよ。さあ、強いんだろ?お前」
「――ゴォアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
「ゥオオラオアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
ついに飛び降りて来たアギエラ・ジ・イグニアス・ウィルム。赤竜アギエラが俺に向かって咆哮した。
「やるぞディーネ!!」
「キュアサー!!(応とも!!)」
足元に潜りこみ、俺はつるはしを振るう。しかし直下ブレスの雰囲気。察知して間合いを図ると、またも俺とアギエラの眼が合った。
笑みを向ける俺に対し、それは今度は嬉しそうに見えた。
「来いやあ!!!!」
アギエラが手を振りかざす。竜爪だと思った俺はつるはしで迎え撃ち叩く。
「おおおおおッ!!! テメエどこ弱点だあ!?!」
今度はこっちが洞察する番だ。
コイツは顔が弱点なのか。それとも火の巨人よろしく手か。咬みつき攻撃を避けた俺は顔面につるはしをぶちこむ。
けっこうHPが減った。つまり弱点は顔か!
「なんやもう誰か戦っとるで!!?」
「やはりか!」
「い、いったい誰が―――、ってゴドフリーさん!?」
「またアイツかいな!」
「ゴドフリー!!無事か!?」
「その前に偵察報告だ!!ディアベルさん、こいつの弱点は顔!でも強制的にスタンがかかるから見ないほうがいいぜ。こいつの赤く輝く眼をなあ!!!」
報告する俺目掛けてアギエラの体当たり。効果は抜群で俺はフィールドの端へと吹っ飛ばされた。
「わざわざ威力偵察してくれてたのか!」
「アホか!ただの無謀やないかいッ!!」
「相手は竜だからさ。誰かが犠牲になるよりはマシだと思ったんだよ!」
大噓をこけるので俺はまだ大丈夫。しかしこの体当たり、防御してなければ即死だったがこの緊張感悪くない。
「ゴアアアアアアアアア!!!!」
「戦闘開始!!!タンク隊、前進!!」
「了解!!!」
――竜狩り竜狩り竜狩り。この言葉とシチュエーションが俺をいつも鼓舞する。だって眼前を見ろ、赤い雷はないが偉大なる竜が我々人を相手取り打ち砕こうとしている様を。そして我々もまたヤツを打ち砕こうと覇を吐く姿を。
「何笑ってんだ変態!」
「・・・・え?」
誰かの叫び。しかし何ってお前、
「楽しいとは・・・こういう事だからさ!!!」
体術スキル・闘士の咆哮再発動。と同時に胸元の赤石が淡く光を放つ。
それは俺のHPを瞬間的に底上げしてくれていた。今この時のみ、古の化石が俺に力を与えてくれている理由は恐らく、俺と同じ理由だろう。俺のカンがそう言ってる。
―――つるはしを地面に叩きつけ、俺はその反動を利用して跳んだ。
赤い光を纏った俺目掛けて、ヤツ(アギエラ)は直下ブレスを吐こうとしているが、必ず首ごと顔ごと下を向くこの瞬間こそが最大のチャンスだ。
「キュイィア!!(やっちまいなア!!)」
ディーネのバフ効果発動。しかしそれでも問題はこのエセ獅子斬りで手に入る高さ。普通にやっては高度が足りない届かない。
「おい、なんだあれ!?」
だから工夫が必要だ。更にもう一回転、俺は空中で空転。全身をバネみたいにしならせて高度を上げた。
「体操選手か有りかそんなの!!」
「ゥオオラオアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
届く。獅子斬りに工夫を凝らし、ついに俺のつるはしは確実に竜の顔面(弱点部位)を貫いていた。
「お前も岩よりぶ厚くはなかったなあ―――赤竜アギエラ!!!!!!」
「ゴオおおああああア!!!?」
「けどプラキドサクスよりも好いぜ!お前のその戦い!フォルサクスやランサクス並みのガッツを感じるから喜んで俺の愉しみになれやア!!!!」
「ゴ・・・ァアアアアアアアア!!!」
「ひるんだ!!チャンスだ、ヤれえ!!!!!」
「うおおおおおおお!!!!」
キリトさんのなんだか凄い十字の斬撃がアギエラの首を刎ね上げ、バトル終了。と思ったがしかしその眼光は些かも衰えることはなく、強く睨み上げながらアギエラは腕を振りかざし攻撃をし続けようとしていた。
その姿、正しく古竜。
「ゴォアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
「ゥオオラオアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」
素晴らしきアギエラに相対し拳で以て迎え撃つ俺の前で、赤竜はついに爆発四散したのだった。
◆
「あー楽しかった!やっぱ最高だな竜狩りは!」
「キュルウ(あれが竜か、良き良きだね)」
ディーネも嬉しそうな声をあげる。相棒も良い戦いが出来てよかったよかった。
「次はどんな敵がいるかなあ。たのしみだなあ、ふへへへへ」
扉を開ける。やってきました第八層。
と思った瞬間、俺は寒気を感知。辺り一面(フィールド)は白い森が広がっていた。
「凍てつく霧かよお。最高だなこのフィールド」
想い起こすのは狭間で最も高い最果ての地。
ボレアリスがいるかもしれない第八層に到達した俺は更に笑顔になるのだった。