「ザミェルの騎士でも出てきそうだなあ」
少し歩けば広がる森。しかも雪景色付きとくればテンションが上がらないわけがない。
「魔女の呪いで永久凍土になってるんだっけ・・・?この第八層」
凍りついた道を歩きながら、ロアの原種とかないかなとか探してみながら進むと街が見えてきた。
この階層は特段寒くはないが、雪や氷は見るだけで元気がなくなる。何故かはわからないが、人間とはそういうものなのかもしれない。だから暖をとろうとする。
今の俺のように。
「ふぅー!火を見ると落ち着く」
「キュイ(雪で視界も悪いし、ボクの翼もここではあまり高く飛べないよ)」
「この階層ならではの設定ってわけか。持久戦になりそうだな。早めに迷宮区タワーをみつけて、ボスをぶちのめしてえってのに。だって戦いが俺達を待ってるからな」
「キュル(違いないね)」
温かいブラック・ティーをお互い飲みながら俺達が意気を強めていると、何やら声が聞こえてきた。暖かい建物の中だからかもしれない。
それにつけても迫真の音声で、その誰かは叫んでいた。
「誰かいないのか!!我に賛同してくれるものは!誰か!!」
「・・・・あん?」
「きゅ?(うん?)」
「我と共にお嬢様を助けんとするものは!我が名はランゴヴァルド!お嬢様にお仕えする騎士なり!誰かいないか!賛同する志あるものは!!このランゴヴァルドと共に!!」
「おいおい黄銅の短刀かようるせえな」
名乗りと叫びを同時進行しているNPCの頭上にはピコンと『!』マークが。つまりクエスト開始のようである。
「黄金の種子を手に入れたい所だが(いつものように)、それ以上に面白いことがおきそうだ。話しかけてみようぜディーネ」
相棒は嬉しそうにきゅいっと一鳴きした。
「よお、オジョウサマとやらの騎士。本名はケネス・ハイトか?アンタ」
「おお!そういう貴公は志ある・・・―――? なんだ鳥使いか。まあこのさい誰でもよい、私の話をきいてくれるか?!」
「いいよ」
―――クエスト『魔女と騎士』を受注しました。
「これは聞くも涙語るも涙の話である!我が主君であらせられるお嬢様は素晴らしいお人だった!」
「だろうな。アンタを見てると嫌でもそう思えるよ」
「キュイ(言い方)」
「それがどうだ!見よ!この氷と雪の冷徹たるを!凍土を!これは図らずもお嬢様が起こしたものであり、お嬢様の力がそうさせてしまっているのだ!
私はそれを止めたい!お嬢様を元に戻してさしあげたいのだ!!」
「この巨人たちの山嶺みたいな永久凍土はアンタのお嬢様の仕業だってのか?天候すら操るとは」
魔女みてえだな。 そう言おうとしたが、騎士の眼光の鋭さと重みを見て取ったので閉口した。
「お嬢様が好き好んでやっているのではない!!!お嬢様の力がそうさせているのだ!! あの日、聖大樹の小枝を取り込んでしまったあの時から!!」
「なんでアンタのお嬢様がそんなのゲットできてんだよ。エルフかお嬢さん」
騎士ランゴヴァルドは首を横に振りながら続けた。
「古の世、まだこの大地が空に浮かんでいなかった時代、お嬢様は好奇心旺盛な御人だった。
朽ちることなき黄金に興味をしめし、しかし失われたそれは一体なんであるか?探究者でもあったお嬢様はエルフと協力し、聖大樹の枝を手に入れた。だのにこの仕打ち!!お嬢様は小枝の力に呑まれ、ただ力を行使し続けるだけの存在となってしまわれた!分かるかこの口惜しさが!わかるか貴公!!」
「分かるよ勿論。自業自得、あるいはそれこそ冒険心。
探究に終わりはないからな。あそこ本当に行けるのかなあとか、ちょっと転移してみたら急に崩れゆく地とか表記が出てビビッて、こんな所まで行けんのかよって畏怖するよな。分かる分かる。
んで、肝心のお嬢様をほっといてアンタここで何してやがるんだ?さっさと助けにいけよお嬢様を」
「愚問。それが出来たらもうやっておる!!!口惜しいかな私一人の力ではお嬢様の元にはたどり着けぬ・・・!」
「おっと。そりゃまた何で」
騎士と俺は地面に座り込んだ。腹を割って話す合図と仕草だ。
「・・・お嬢様が今おられるのは天柱の塔。しかしてその入り口は、カレス・オーの領内にあるのだ!排他的なカレシアン共はリュースリアン共よりも結束力が強い!短所ゆえの長所だ!」
「なるほどね。自殺行為はごめんってわけだ、意外とクレバーだねアンタ」
「我が目的はお嬢様を救出すること!仮に自死することでそれが叶うならば喜んでそうもしようが、此度の作戦にそれは当てはまらぬ!」
「へえ~」
目的を達成することに全力なのだ。俺達と同じようにこの騎士は。
「ますます気に入った。俺たちも力を貸そうじゃないか」
「かたじけない!・・・・しかし貴公は、どうも懐かしき匂いがする。もしやノルツァー殿と関わりがあるのか?」
「ああ。この前だったかな、ダチになった」
「おお。かの御仁は凄まじき定めの持ち主よ、どうやら貴公も同様とみえる」
「定めなんて知らねえよ。俺はただ戦いたいだけさ」
探究心が原初だけどね。俺も。
「で、これからどうする? これで戦力は三人になったわけだが斬りこむのか?」
「無論!」
「きゅい(短絡的すぎないかい)」
「意気軒昂って言いなディーネ。作戦は?」
「カレシアンの領内南方に目的の天柱の塔はある!そこに入るにはきゃつらの城塞を掠めながら進んで行く必要があり、しかし防備は手堅い!
ゆえにスピードが命だ!一気呵成に突き進み、塔の中に入りお嬢様に会う!」
「なるほどね。たった一人じゃ無理なわけだ。誰かが時間稼ぎをしなきゃならない場合ありありってわけだもんね、それ」
壁役が要る突破作戦ということ。つまり楽しそう。素敵だ。
「いいぜ。もっと楽しみになってきた。だがこっちの事情(レベル上げ)は慮ってくれよ?俺達だって死にたくて戦ってるわけじゃあない。勝つためだ」
「勿論だとも!」
「よし、そうこなくちゃ。じゃあ作戦開始は二日後でどうだ。それまでに準備を整え、俺達は森エルフ領内へ斬りこむ。そしてアンタのお嬢様を取り戻す」
「異議なし!!」
「よっしゃあ!作戦開始だ!!」
退屈などない戦いが、またも幕を上げた。