『緊急!第四回脳内会議招集!招集!!!』
『はい』モーゴット
『はい』ライカード
『はい』ラニ
『どどどどどどーしよう、あのユナが俺の前に!ていうか歌唄って!?俺はどうすればいい!?!?・・・・逃げる?む無理です絶対むむむむむむむむむむむむ!』
『父上・・・・』ゴッドウィン
『坩堝らの頭領の姿か?これが』ラダーン
『黙ってアイデアを捻り出すがよい。しかし父上、別段どうもせんでよろしいでしょう』
『左様。只の人間一匹かと』
『只のじゃねえ!!ユナはエーくんの全てだ!そして俺はガキの頃からのファンだ!!』
『だとしても、狭間を知らぬ烏合の衆の一部である事には変わりませぬぞ!父祖よ!』ゴドリック
『適当に相手してやればよろしいかと。義父上』
『し、しかしッ・・・憧れは理解から最も遠い感情だとしてもしかし!!眼の前に悲劇のヒロインである彼女が居たら何かしてやりたいのがこの俺ゴトー・自由でもあるからして!』
『大分限界なようだな、友よ』????
『!? そ、その声は!?』
『貴公でも手こずる程のものか。この剣の世界は』ラダゴン
『その声は、我が友、ラダゴンではないか?』
『そう。私だ』
『てめえこのクソ野郎ここで逢ったが101回目瞬間移動する前にもう一度岩石剣で片膝どころか両膝つかせてやんぞゴラ。
・・・と言いたい所だが、何か妙案があるのか。友よ?』
『貴公ともう一度鎬を削るのも悪くはないが、今はまあ聞け。貴公はこの木っ端に働きかけたいのだろう?ならば迷うな』
『アイアムマレニアブレイドオブミケラ』
『ちちうえー』ミケラ(の光輪)
『し、しかし彼女に対して俺に何が出来る・・・?』
『戦い以外に何がある。貴公の戦い、そして間合を教えればよい』
『つまり一緒にレベリングをしていけってコトか?我が友よ』
『その通りだ。さすればきっと、彼女も運命の死を回避できる筈。全ては貴公次第だ、友よ』
『ぬ、ぬぅ・・・分かった。レベルは上げて損など無いからな。とりあえずは逃げずに行動を共にしてみようと思う!皆ありがとう!』
『何処へなりとも王となれ。王の道を行け。我が友よ』
◆
「そっかあ。ノーくんのお友達なんだね、ゴドフリーは」
「まあ、はい。そうです」
「? 何でずっと敬語?」
「いや、その、今も。あ、いやずっとファンなもので」
「…え?それって私が歌ってる所を最初から見てたって事?」
「いや、まあ、ははは」
頷く。知ったこっちゃないけど。
ユナは赤くなった顔を、しかし覆わずにこちらを見続けていた。
「うあ~恥ずかしいけどそれと同じくらい何か嬉しい!私、このゲームをどう過ごそうかとか何か出来る事無いかなって思ってただけだったから」
「自分なりに生き抜こうとした事は凄いと思いますよ」
「そう…かな。…ありがとう、でも口調は普通でいいよ?」
「そ、・・・・分かった。君と会って話せて光栄だ、ユナ」
書いてもらったサイン色紙を片手に俺は言った。ありもしない心臓がバクバクいっているが、それを抑えて。
「そうだ、ねえゴドフリー。貴方はどうしてレベル上げをするの?」
「この剣の世界を生き抜く為に。それは皆その筈だ、ノーチラスも」
「本気でこのゲームクリア出来ると思ってるの?」
不意に、瞳を覗く。そこには邪心も純心もない、事実だけが浮かんでいた。
「今話題の攻略組に参加すらしていないこんな私でも、予測位は出来るよ。多分だけど、100層到達までには少なくとも3年はかかると思う。多少の犠牲とかを容認すれば2年かもだけど、そんなのは許さない筈。
――犠牲はゼロでクリアする。それが攻略組の、強い人達の絶対。その為には安全なレベルが攻略組全員に必要。でもレベルが上がってくればくるほど、それを一つ上げるだけでも時間がすごく掛かるようになる。それはどんなゲームでも一緒。違う?」
「・・・だろうね」
『えるで』でもそうだったし。俺は真意を訊ねる為にも頷いた。
「ゲームは人が造った物。だからどんなに時間がかかってもクリアは出来る。でもその前に、今の私達には限界が来る。自分の肉体っていう限界が」
「・・・・」
「それは筋肉。使わないと衰えてくる物の代表格。現実世界の大人の人達が、たとえ国単位でいくら私達に働きかけていたとしても、栄養を与えていったとしても人間の筋肉の衰えは回復出来ない。自分の意思で身体を動かせないままじゃ、いずれ心臓を含めた全部が弱ってくる」
「なるほど?」
「私達の肉体が先に駄目になるかゲームがクリアされるのが先か。このゲームの本当の勝負はここ。だから私達の安全を第一に考えていけば、」
「・・・必ずゲームオーバー。だと?」
「その上で。ゴドフリー、貴方はエーくんを強くさせて戦わせるの?」
それは威圧ではなく気迫だった。不退転とか恐怖とかそう言ったそれなりの物ではない。
思考する人間の真価。考える葦である我々の根底がそこには有り、深淵のように俺を覗いていた。
「まるでマレニアだな。その瞳」
「答えてゴドフリー」
「答えは一つ。彼が望み、行動していたからだ。俺はその手伝いをしているだけであり、結果彼の延命に繋がっている。現に初めてノーチラスに会った時、彼は危うく死ぬ所だった」
「その事には感謝してる。感謝してもしきれない。でもその後、戦いを諦めさせる事だって貴方には出来た筈」
―――だから教えてと。刃のような瞳の女性は口にした。
「俺はこの世界にルールを敷く。俺のルールだ」
「例えば?」
「えるでの律(ルーン)」
「? 律?」
「アインクラッドだろうが茅場晶彦だろうが関係ない。『王』である俺だけの物を。この世界に創り出し、圧倒し、敵は全て倒す。邪魔はひれ伏し、味方は俺の姿と力を見てればいい。『王』の故を」
「………」
ジッと見つめてくる。理解不能という思考を同情・共感のどちらかに寄せる為に。そんな静寂の中で吹き流れる夜風と一緒にそっと、彼女が口を開く。
「そっか、王様になりたいんだ。ゴドフリーは」
「もう『王』だけれど。まあそれで違いは無い」
「王様は私達下々を助けてはくれないの?」
「助けるんじゃない。自分で勝手に助かるまで、俺を見ていればいい」
「何それ、笑っていいの?」
「ノーチラスに内緒なら」
あっははは。ユナは我慢せずに笑った。その綺麗な笑顔に心底エーくんが羨ましいと俺は思ったが、メリナを想い出して止めた。
「じゃあ王様?私折り入って一つお願いがあります」
「どうぞどうぞ?」
「これから私もこっそり一緒にレベル上げお願い!」
「いいよ。『力』を君にも教えよう」
拍手(かしわで)のような仕草と共に。彼女は歳相応に頭を下げた。全ては幼馴染(エーくん)の為だろう彼女が、やっぱり俺は無下には出来なかった。