脳内ゴドフリー   作:ブロx

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第三層 その2

 

 

 

それは何かを壊すように直すように。

・・・落ちた葉が伝えている。

かつて、『えるで』は豊穣であった。

そして、それは束の間であった。

すべての生命と同じように。

おお、だからこそ褪せ人よ。未だ死にきれぬ死者たちよ。

遠い昔に失くした祝福が、我らを呼ぶ。

霧の彼方に向かい、狭間の地に至り、そして。

えるでの王となるがよい。

 

 

 ―――こうして、俺の狭間の地は始まったのであった。

てな感じの昔話に区切りをつけると、一羽の鷹が鋭く声を上げた。

 

「キュイキュイ!!(何て素晴らしい…!そんな世界が、嵐が、空があるの?)」

 

続きが聞きたい。鷹の顔にはそう書いてあった。

 

「ああそうさ。ふと見上げれば黄金の導きが俺の行く手を誘って、沢山の戦いがそこにはあった。親友、相棒、好敵手、王、そして―――メリナも」

 

「キュ~イ?(ディーネも、貴公とそこに?)」

 

「ディーネは・・・・」

 

「こらこらァ、人族サンに近付いて突っかかるのはお止めなさい。前にも言ったでしょう?」

 

 遮るようにしてこちらを見詰めるエルフ。フォレストエルブン・ファルコナーは笑って、自身の鷹の首を絞めた。

 

「キュー、キューキュー(ごめん、ご主人。でも私はもっと話を聞きたいんだよ。…何故かは…分かんないけど)」

 

「あァー、もういいからいいからそういうのは。

人族サンすいませんねえ。猛ってるみたいで、ウチの仔。あまり相手にしないでもらえます?」

 

「分かりました」

 

 鷹使いさんってDVが趣味なんです? ゲスいっすね。とりあえず俺は頷いた。想い出話くらい良いだろうに。

 

「キュイキュ!(そうだそうだ!)」

 

 何でか俺の思考が読まれてるのは気になるが、まあいいや。このゲームの動物ってのはそういう仕様なのだろう。なので俺は鷹に向かって目配せをした。

 

――すまないね。話はまた今度。今度があれば、だけど。

 

「キュイ(約束っ)」

 

 小さな鳴き声を後ろに、俺は鷹使いさんに連れられ森エルフ達の輪の中に向かう。

 そこではこれから行われる殲滅戦の確認と、作戦の最終調整を行っていた。

 

「人数的には心もとなく感じますが、隊長。よろしいので?」

 

「黒エルフ如き我らの敵ではなかろう。作戦に変更はない」

 

「このような時でも戦いは戦いです。そして戦いの基本は数。誰も、下賤な黒エルフ共に殺されたくなんてありません」

 

「だからこそ人族を頭数に入れたのだろうが。これで万全だ」

 

「ええそうですね、――たった一人だけ。なんと貴方は随分と人族如きを買っておられるようだ」

 

「そうだ。と言ったら?」

 

「理性的ではなく個性的と言わざるを得ませんね。騎士としての名声が泣きますよ?

 此度の一番槍の誉れは、是非とも貴方にお譲りします」

 

「言ってくれる」

 

「・・・・」

 

 大丈夫かなあ。もしや森エルフってギスギスしてるのがデフォだったり?

 頼むぜおい。俺に良い武器くれよ。ていうかあわよくば敵と刺し違えて落としてくんねえかなあ。

 

「あっ、そういえばなんですが皆さん。良い武器とかって黒エルフは持ってたりしませんか?」

 

「何?武器が欲しいのか貴様」

 

わざとらしい笑顔を浮かべ、俺は森エルフ達に話しかけた。

 

「そうなんですよ~。あ、俺ね?ずっと辺鄙な所でずぅっと戦っていましてな。拳で。それ以来ピンとくる武器が見つからないのです」

 

「ピンとくるも何もないだろう。剣で良いではないか」

 

「ん~もう一声って言いますかもっとこう・・・」

 

――それもう飽きました。なんて言ったら喧嘩になりそうなので黙っておく。

 

「無駄口はそろそろよしてくれると助かりますねぇ」

 

「む。・・・それもそうだな」

 

鷹使いさんが細目を開く事なく言う。中々の強かさだ。

 

「ちなみに人族サン?得物なんて何だってイイと思いますよ?」

 

「え。そうですか?」

 

「モチロン。得物でも何でも誰でも、選んで殺すのが、そんなに上等ですかねえ?」

 

「・・・・・」

 

 何それ。一理あるんだけど美学が感じられない。不思議な気分になる。つまり名言だ名言。否定してやりてえけども。

 

「―――隊長。集落を発見」

 

「分かった。では手筈通りに」

 

「了解。人族はこっちに来てもらおうかな。

作戦はごく単純。今から君は僕らと共に敵陣を突っ切ってもらう。そして集落の出口まで辿り着き、逃走する黒エルフをそこで狩ればいいだけ。戦法は殲滅戦。なんでそちらが手違うと最悪死ぬけど、まあその積もりで。生きている黒エルフ共が全員いなくなればそこで作戦終了。そんな所かな」

 

「え?あの、カバーは勿論してくれるんですよね?多数対多数はカバー命だって俺ご存知ですよ?」

 

俺は戦法の大前提を訊ねてみた。

 

「人族は質問が多いね。僕が答えるとでも?」

 

しかし取り付く島もなかった。

 

「・・・了解。では突っ込みます。ダークエルフなんて気持ち悪いですから」

 

なんて。テキトーに戦わせてもらいましょうかね。てなわけで作戦開始だ。

 

「――おや?」

 

 がやがや。喧騒の音。・・・ほうほう?森エルフ(こちら)の襲撃を感付いてたらしい。流石はエルフ。黒エルフ。

 

「・・・・」

 

 悲鳴が上がる集落の中を突っ切りながら、少し考える。

この三層辺りからどうも記憶が曖昧だが、黒エルフのキズメルさんのイベントの始まりがこの層だったかな?

 ここで秘鍵を森エルフに奪われ、それでキズメルさんが奪還に来る。みたいなイベントだったか。

 

 しかしながら俺は今その前日譚的なイベントに参加しているらしい。凄いな、なんでもありかSAO。長年の人気の秘訣はこれですね?

 

「でもやっぱエルフって格好いいなあ。ダークエルフって肌黒くて良いし、森エルフは白くて流麗だし。もしこれで重力魔法なんて使ってたら笑っちまうよ。石肌か!ってな」

 

 なんてジョークはさておき。そろそろ俺も動くか。それなりの格好をつけなきゃ、クエスト失敗かもだしな。

 

「オラオラー秘鍵は何処だあー」

 

「人族!?!」

 

「やはり人族はそういう輩か!!!」

 

「秘鍵を持ってたらすぐに差し出せー。死体から剥ぎ取られる前になあ」

 

 ――棒読み。だって対人なんてめんどくさいし。適当ってのが存在しないんだもん。化け物相手、PVEが気楽で一番だよ。

 

「森エルフめ、人族め!!!聖大樹の怒りを知れ!!!」

 

「我らが森エルフ様にゴマ摺る為に死んでくれ。としか言えないなー」

 

「ほざくな!!!!」

 

 向かってくる黒エルフを殴る。いわゆる腹パン。綺麗に入った。感動的だな。だが死んでない。

 

「こやつ・・・!」

 

「その拳!」

 

「相当な練度だ・・・っ!」

 

「ほいよッと!」

 

―――体術スキル・弦月を獲得しました。

 

 むう、やはり硬い。まだエリートモブって奴は見当たらないが、これは中々きついイベントかもだ。

 

「オラオラオラ!」

 

―――体術スキル・ストームストンプを獲得しました。

 

 しかしレベリングが捗る。殴ってるだけでスキルだってホイホイ覚える!何だよ、良い事ずくめじゃねえかこのイベント。

 

「人族!出しゃばるな!出口を固めろ!!」

 

「了解!」

 

 これなら俺の目的の一つであるレベリングが捗る捗る。そしてテンションも上がってきた。全員俺のレベルの肥やしにしてやろう!そんでテキトーなとこで後方に退かせてもらおうかい。

 

――薬師殿、これを――

――は、はい…!――

 

「む!?!」

 

――どうか貴女に、黒大樹の、加護を――

――必ず!!――

 

「あれは・・・、女の黒エルフか? 人族!」

 

「俺がやります!ここをよろしくぅ!」

 

 果たして俺にはそれが見えていた。大事そうに、秘鍵を手渡した瞬間を。

 持っているのはあそこの、女性のNPCだ。記憶が甦る。たしかキズメルさんの妹さん。名前は・・・ティルネルって名前だったかな?

 

「待ちなあっ!!森エルフ様のお通りだ!それ置いてさっさと失せやがれえ!あっははははは」

 

そうして後ろ姿の彼女が、こちらに振り向く。

 

「ははは―――――、は?」

 

 綺麗な黒髪。端正な顔立ち。だから見覚えなんてある訳がない。なのに・・・・何故?

 

 眼と眼が合う。殺意。――いや、敵意と叛骨の視線。見覚えのある強い意志。

別人に決まってる。当然だ。ではこれは俺の脳内が勝手に創り出し投影している、記憶のフラッシュバックか?

 

だから。でも彼女が、今そこに。

 

「・・・メリナ?」

 

そこには100度別れた、忘れられない人がいた。

 

 

 

 

 

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