「イーサン。あなたに。わたし嘘をつくかも。ごめんなさい。このメッセージをもし、見てるなら。私を探して」
妻からのビデオメッセージを再生しながら、イーサン・ウィンターズは車を走らせていた。
ルイジアナ州ダルウェイの道を進み、沼と森へと続く道に入る。
「こんなところに本当にミアがいるのか?」
疑問を口にしながら森の中を進むイーサン。続く道は獣道ではない。人の通った気配がある。だが昼間でも寒気を覚えるほどに深い森。何か出てきそうな雰囲気。むしろ何も出て来ないほうが不思議なくらいだ。
そんな中、イーサンは洋館にたどり着いた。森の中にポツンと建つ不気味さもあるが、手入れが行き届いているのか見た目の古さの割に綺麗な印象を受ける。
「お邪魔します。誰かいませんか?」
イーサンはチャイムを鳴らした。電気が通っているし誰か住んでいるようだ。
家の中から明るい声も聞こえる。女性や子供、大人の声だ。家族で住んでいるのだろうか。
すると玄関が開き、中からイーサンの良く知る顔が現れた。
「あらイーサン。お帰りなさい」
そこにいたのはイーサンの妻・ミア。久しぶりの再会であるが、その懐かしく愛らしい表情はイーサンの記憶を鮮明に呼び起こした。
「ミア。どうしてこんなところに?」
「え? 何言ってるの? またまたイーサンったら、ジョークが好きね」
そう言ってイーサンの手を握るミア。冷え性なのか少し手が冷たいが、温かみのある手の感触にイーサンは安堵を覚えた。
「エヴリン。パパが帰ってきたわよ」
家の奥に向かって呼びかけるミア。だがその言葉にイーサンは首を傾げた。
「パパ?」
イーサンとミアの間に子供はいない。養子を迎えた覚えもない。
「あっ、パパだ。お帰り」
家の奥から元気よく現れた10歳くらいの女の子。走って向かってきた彼女をイーサンは笑顔で抱きかかえた。
「ただいまエヴリン」
ずっと前から父の子供のエヴリン。当たり前じゃないか。
「じゃあ今日はイーサンの兄貴も帰ってきたことだし。『適当なカンケイ』をやっていこうか」
リビングで卓を囲む幸せな家族。イーサンとミア、そしてエヴリン。その元にルーカスは元気よくカードを持って現れた。
それぞれのカードには様々な写真と、他に1から11の数字が書かれたカードがある。
「これはな。俺たちそれぞれの感性が合うかを試すゲームだ。やることは簡単、共通点を探すだけ」
そう言って写真を並べ、それぞれに1から11の数字を割り振るルーカス。そしてイーサンたちに1から11のカードをそれぞれに渡した。
写真にはそれぞれ
1:イチゴ
2:サイコロ
3:ひまわり
4:ネコ
5:大砲
6:CD
7:鳩時計
8:羅針盤
9:コンセント
10:草原
11:サンタクロース
が写っている。
「この1から11の写真でペアを作ってもらう。何でもいいから共通点を探していくんだ。例えばこの中だとイチゴとひまわりは植物だから同じ。っつうことで1と3、とかな。まぁ最後の方になると残り物同士で無理矢理に共通点を探すことになるな。ペアの数字はカードで揃えてくれればいい。で、カードが1枚残る。でもって最後に答え合わせだ」
「なるほど。互いにどのペアを作ったかを確かめ合って、どのくらい他の人と同じペアを作ったかを競うわけか」
「その通り。さすが兄貴。当然、別のペアを作って他の奴と気が合わなくても最後に救済措置。残った1枚のカードが一致してもポイントになる」
「エヴリン、大丈夫? ルールわかった?」
「うん。お兄ちゃんは説明が上手だから分かったよ」
元気よく答えたエヴリン。
「それじゃあ実験だな。価値観はどこに現れるのか。夫婦の愛か? 兄弟の絆か? 親子の繋がりか? さぁ、開始だ」
※本作をお読みの皆様も是非チャレンジして、誰と価値観が近いかをお試しください
ルーカスの合図で写真を見ながら、手札の数字をペアにしていく4人。
およそ5分でそれぞれがペアを決め終わった。
「じゃあ答え合わせだ。まずは1のイチゴをどれとペアにした?」
一斉にカードを開示する4人。当然、例えに使ったように1と3。4人ともイチゴとひまわりのペアだ。
「まぁこの並びなら当然か。次は・・・エヴリン、選んでいいぞ」
「じゃあネコさんの4。私は2のサイコロにしたよ」
エヴリンは猫とサイコロのペア。しかし他の3人は違った。
「す、すまないエヴリン。パパはサンタの11だ」
「俺もだ。哺乳類だからな」
「私は鳩時計の7。そうかぁ、哺乳類ね。でも動物。でも、うん」
「え~? だって可愛いのってネコさんとサイコロでしょ?」
早速意見の分かれた4人。
「じゃあ他の奴らはサイコロと何をペアにしたんだ? ちなみに俺は6のCD」
「え? 私は・・・余っちゃったのがCDよ」
「俺もだ。余ったのは2のCD」
「パパとママ、気が合うんだね」
「だな。さすが夫婦」
ヒューヒューと口笛を吹いて冷やかすエヴリンとルーカス。ミアとイーサンは「大人をからかうんじゃありません」と口を揃えて顔を赤らめた。
「じゃあエヴリンはCDと何をペアにしたんだ?」
「私は8の時計みたいなのだよ。どっちも丸いでしょ?」
「8は羅針盤ね。エヴリンにはちょっと難しかったわね」
「らしんばん?」
「コンパスみたいな物だよ。俺は針があるから時計とペアにしたな。7と8だ」
「俺もだぜ兄貴」
「私は羅針盤のペアは大砲ね。どっちも昔の船で海賊とかが使ったって感じじゃない? 5と8」
徐々にペアが出そろっていく。残るペアはそれぞれ2組ずつ。
「じゃあ大砲の5とペア、どれにした? 俺は9のコンセントだぜ」
「え? ルーカス、なんでそのペア?」
「これは・・・残り物で苦し紛れって感じだな」
「俺は10の草原だな。なんか広いところでぶっぱなすってイメージだ」
「そうかぁ。パパ、私は余っちゃったよ。草原ってフサフサしてるから、私はサンタさんの11だよ」
「あっ、エヴリン。ママもよ。10と11でペア」
4人のペアも残るは1枚。それぞれがカードを出し合った。
「パパの残りは6と9。CDとコンセント。どっちも電気関係だろ?」
「私もよイーサン」
「私は時計とコンセント。7よ9」
「そうかエヴリン。鳩時計は電気いらねぇんだよ。でもって俺はサイコロとコンセントで2と6だ。日頃の使用頻度で決めた感じだな」
こうして出そろった4人のペア一覧。
イーサン:1.3 4.11 7.8 6.9 5.10 余2
エヴリン:1.3 2.4 6.8 7.9 10.11 余5
ミア :1.3 4.7 6.9 8.5 10.11 余2
ルーカス:1.3 4.11 7.8 2.6 5.9 余10
「っつうわけで、一番気が合うのは・・・俺と兄貴!」
「へぇ意外。そうなのイーサン?」
「いやいや待ってくれミア」
「私はママと合ってたから嬉しいな」
「つってもこれは4回やるからな。まだまだ序盤だぜ」
そう言って他の写真を並べていくルーカス。まだまだ楽しい時間は終わらない。
「にしてもうらやましいな。仲良し夫婦にカワイイ娘。テレビで特集できるくらいだぜ」
「駄目よ。イーサンにファンクラブができちゃうわ」
「ママだって。美人だから男の人がこの家に押しかけてきちゃうよ」
「エヴリンにも男の子が・・・いや、誰とも知らん奴に娘は嫁にやらん!」
鼻を鳴らすイーサンに、エヴリンとミアは「気が早いよ~」と笑い合った。