ルイジアナ州ダルウェイの沼地にその森はあった。
狂暴なワニが棲み、危険と隣り合わせの森の中にひっそりと建つ古い館。
時は11時。
夜の闇の中、不気味な雰囲気を醸し出すその館の前に3人の男たちがいた。
1人はカメラを手に。1人はプロデューサーのように偉そうに。1人は司会進行のように明るく2人を導いていた。
「今宵の『スーワ・ゲーターズ』は、こちらベイカー邸で皆さんと遊戯に浸りたいと思います!」
「どうも~」
「ようこそいらっしゃい」
MCのピートが盛り上げる中、館から顔を出したのはルーカスとイーサン。
闇夜を明るく照らす笑顔で3人のテレビクルーを迎え入れた一家の男衆。
「すまない。妻や娘はもう寝ているんだ。ここからは静かに頼むよ」
「お袋もゾイもな」
「そうだな。今夜は男だけ、ということで、ちょっとゲスいゲームでもやっていきましょうか」
家の中に静かにお邪魔していくスーワ・ゲーターズ。
リビングの薄明りの中、男たちは円を作って座った。
「なぁちょっといいか? 男だけでゲスいゲームっていうと?」
「そりゃもちろん、そういう系だろ」
ゲスい顔で笑うのはプロデューサーのアンドレ。ルーカスはニヤニヤと笑い、イーサンは少し気まずそうに笑った。
「ほぉ、ゲスいゲームか」
その時、家の奥の闇から老人がヌッと姿を現した。
一家の主であるジャックだ。
「親父!?」
「お義父さん!?」
腰を抜かすほど驚くルーカスとジャック。
「あの子たちを放っておいて男だけで。ほぉ」
ジャックのドスの利いた声にスーワ・ゲーターズも戦慄する。
「なぜ俺にも声をかけなかった? 水臭いじゃないか」
ジャック・ベイカー参戦決定。
こうして始まった男たちの宴。参加者はジャック、ルーカス、イーサン。そしてカメラマンのクランシーだ。
「今日のゲームは『ゲット・スイート・ラブ』。略して『ゲスラブ』だ」
そう言って4人の前にカードを置いていくピート。
そのカードには可愛らしい女の子のイラストが描かれていた。
「皆には今から、この4人の女の子のハートを射止めてもらう。そういうゲームだ」
「俺には妻がいるんだぞ」
「俺にもミアとエヴリンがいる」
「俺にはいねぇ」
「「「だが、いいじゃないか」」」
声を合わせるベイカー&ウィンターズ。
そんな彼らの前にピートは何か文章が書かれたカードを配っていく。
「これは性格カード。これを順番にこの女の子たちにつけていく。どんどん性格が変わっていく感じだな」
「へぇ。それぞれ点数が書いてあるな。マイナスのもある」
「そう。例えば『ロマンティスト』は1点プラス。『メシマズ』でマイナス3点。ロマンティストだけどメシマズな娘っていう属性をどんどん付け加えていく感じだ」
そう言って女の子の周りに4枚のカードを置いていくピート。
「属性は合計8つ、つけ終わったらゲーム終了だな。ちなみにそのうち4枚は裏側で正確カードを置くこと。終わってから初めてその娘の隠れた性格が分かるっていうことだ」
「なるほど。女の本性が隠れているというわけか」
ジャックの本質を突いた指摘にニヤッと笑い合う男たち。
「あと性格カードを置くのと一緒に、愛チップも置いてもらう。それぞれ点数が違うチップを裏側でな。その娘をどのくらい愛しているかのチップだ。ゲーム終了時に誰がどのくらいの合計点でチップを置いたかで、どの娘がプレイヤーの彼女になるかが決まる」
「つまり、プラスの性格のカードとチップを置いて好きな子をキープしながら、他の対戦相手がキープしてる子にマイナスの点数のカードを置いていくっていうことか」
「飲み込みが早くて助かるぜ若旦那」
おおよそのルールを把握した4人。彼らは同じことを思った。
『このゲーム、ゲスい。これは妻や娘、妹たちに見せられんな』と。
こうして始まった『ゲスラブ』。
置かれた女の子カードたち。それぞれ「モエ」「サクラ」「ミドリ」「アカネ」といった可愛らしい名前がつき、男たちの告白イメージがより鮮明になっていく演出付きだ。
「俺はモエちゃんに『賢い』属性を付与。高得点な子になるぜ」
「そのモエちゃんに『地雷』。地雷属性に隣接した性格カードはマイナスになる!」
「くっ。俺も狙ってたのにその娘。じゃあミドリちゃんに裏側で属性を付与する。さぁこのカードはプラスかな? マイナスかな?」
「俺はアカネちゃんに『特殊性癖』。このカードは一見マイナスだが、『やさしい』と組み合わせることでプラス3点になる。そしてチップもアカネちゃんに。というか俺しかアカネちゃんを狙ってないな」
ゲスい盛り上がりをみせるゲスラブ。
ついにゲーム終了となり、女の子たちのパートナーが決まっていく。
結果だけで言えばイーサンが無難に優勝したわけだが・・・このゲーム、ほとんどの場合は合計点が低空飛行になることが多い。
「勝ったには勝ったが。美人でやさしくて、特殊性癖で嘘つきで、家庭的で不思議な子。なんか面白みのない組み合わせになったな」
「ミアみたいじゃないか。お前さんらしいよ」
「それよかクランシーが悲惨すぎて逆に優勝だな」
「ああ。高身長で爆乳で色白で、高慢で切れやすくて、金持ちだけど万年金欠な犯罪者だったな」
どんな女だよ!と笑い合う男たち。
彼らは気付いていなかった。
その背後にヒッソリと立ち、軽蔑した目で彼らを見下ろす娘や妻たちがいたことを。
「以上がE型被験体第1号『エヴリン』の消息が途絶えたエリアで撮影された映像になります」
「報告はわかった。同エリアに潜入したエージェントの消息もわかっていない。そういう話だったな?」
「ええ。当初はエージェントの手に負えない脅威へと成長し、付近の生命体を侵食しているのだと思われていたのですが」
「この民間人は地元の放送局に生還しているということか」
「はい。しかしエージェントの後方支援部隊も消息を絶っています。いえ、任務を放棄しているとも言えますが・・・」
「部隊の最終位置は?」
「ダルウェイの市街地です。そして部隊の最後の通信は『ウノって言ってない』だそうです」