MCU版『アークナイツ』 作:日立インスパイアザネクス人@妄想厨
――男はか細い声で少女へ語り掛ける。
……私たち人類の歴史は、この星の歴史のごく一部に過ぎない。
人間が刻んだ歴史の裏で起きたことを知る者はほとんど居ないからだ。
アーミヤ。
私たちがその一部ということをよく知っていたほしい。
「はい。――この星に
そうだ。
おおよそ5000年前から現代まで続く、歴史に記されない悲劇の一つがそれだ。
かつて、中国の山奥に落ちた隕石が鉱石病の始まりだった。
落下した隕石は周辺に居た生物に多大な影響を与えた。隕石に何かしらのウィルスが着いていたのか、隕石そのものが特殊なガンマ線を発していたのかは今になってはわからない。その最もたる災害が鉱石病という奇病だった。
「……鉱石病は、
……源石の悲劇は命を奪うことだけじゃない。
今から語ることは君にはまだ話していなかったことだ。
鉱石病にかかった人間は短命になる代わりに常人より優れた能力を発揮し、それこそ魔法の真似事も出来たこと。
加えて源石そのものに人類を発展させるパワーを持っていたこと。
それらの要因は時の権力者を動かすには充分過ぎる。
源石と感染者の存在を知った彼らは感染者を徹底的に迫害し、源石の利用価値を見出そうと源石の独占を図った。
源石を搾取するために民は源石の毒の犠牲になり、感染者は人以下の存在として扱われた挙句捨てられた。
――我々の祖先は人間たちの感染者への迫害はその処遇を良しとしなかった。
感染者たちは権力者達に反抗し、多くの犠牲を払いながらも感染者たちを解放するまで続いた。君の祖先はその生き残りなのだ。
感染者の解放以降、迫害を恐れた君の祖先たちは源石と鉱石病の存在と共に歴史の表舞台から姿を消すことになる。
「……私の祖先の方々は、その後どうなったのですか?」
アーミヤ。私たちと同じだ。
歴史の陰に隠れたとしても、鉱石病の危害は変わらない。
我々は迫害から逃れながらも鉱石病の治療方法を探し続けた。それこそが自らに課せられた使命だというように。
そして彼らは生涯を賭けて鉱石病の研究に没頭する理想郷を造った。
非感染者の目から逃れるため、鉱石病の蔓延を防ぐために常に移動する方舟を。
そうして完成した方舟に移住した彼らは、鉱石病の研究をしながら人間社会から離れて世界のどこかで漂流しているだろう。
「…………」
いずれ君は彼らに出会う。
その時には私は居ない。
彼らと出会った時にどうするか、アーミヤ。君が決めなければならない。
「…………ドクター」
――不安げに、少女は男の瞳を見つめた。
――少女の瞳を見つめ返す男はそれ以上語らなかった。
……時間だ、アーミヤ。
もう
「…………ぃ」
始めなさい。感染者として生きるのなら、感染者の責務を果たすんだ。
――少女は炎に包まれた山小屋を前に立ち尽くすことしかできなかった。
――持った松明を落とし足元を燃やしても、少女は目をそらすことも伏せることもしない。
「おやすみなさい、ドクター」
――少女はそう呟く。
――今は亡き師を慰謝するように。
――自分を奮い立たせるように。
――誓いを胸に抱く少女はフードをかぶった。