【完結】剣姫と恋仲になりたいんですけど、もう一周してもいいですか。   作:ねをんゆう

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11.変わらない○○

例えば魔法が通用しない相手が居たとしたら、どうすればいいのか。そんなのは殴って蹴って倒せばいいに決まっている。

例えば自分より早く動く敵が居たとしたら、どうすればいいのか。そんなのは殴られようが蹴られようが全力で捕まえて倒せばいい。

例えば自分の身体を一撃で破壊してくるような敵が居たとしたら、どうすればいいのか。そんなのはどうせ死なないので、常に殴り合えばいい。

 

じゃあ、その全てを持った相手が居たとしたら?

 

 

「……ウラノス様、流石にここまでとは聞いていません」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーッッ!!!!!!!!!

 

「ぇごっ……!?ぉごっ!?」

 

腹部を貫いた強烈な一撃。

胃の中にあったものが全て溢れ出る。

全く目に捉えることも出来なかったその一撃が、驚異的な破壊力をもってこの身に叩き付けられる。身体は叩き付けられ、そのまま壁の内部へと埋め込まれ、直後に凄まじい速度での連撃による追い討ちが浴びせられる。

……肉体の表皮を全て抉り取られるかの如く損傷。いくらこの身は致命的な損傷を受けることはないとしても、しかし肉体の表面から数センチ程度までなら抉られる。そして傷口に対する追い討ちというのは、当然ながらあまりにも強過ぎる激痛が走る。

 

「ぁ………ぇ……………」

 

こちらが死んだと思ったのか、一瞬攻撃の手を止めた拍子に、無理矢理に前へと倒れ込む。……あまりの激痛に意識が飛びそうになる、それを無理矢理に引き止めて回復を待つ。無様なことではあるが、死んだふりをしてでも時間を稼がなければ立つこともままならない。

 

「ぉぐっ!?」

 

しかしそのモンスターはそれでも自分に追い討ちをかけ、今度はその凶悪な尾による一撃で私を叩き潰した。

全身の骨がひび割れる、内臓も当然ながらいくつか破裂する。レベル5の、それも耐久力を中心に上げて来たこの身でこれだ。ふざけている。絶対におかしい。こんなものは深層の階層主と同等だ。

 

「……………ぁぁ…………えりくさー、もってきておいて、本当に良かったです」

 

そうでなければ、本当にこのまま敵が摩耗するまで嬲り殺され続けるところだった。……というか、敵はどう見ても骨にしか見えないし、死霊系にも見える。あれは摩耗するのだろうか。正直ここまでくるとウダイオスと戦った方がよっぽど現実的であったのではないかとも思ってくるが、もう呼び出してしまったものは仕方ない。

魔法は跳ね返される、ならばもう殴り付ける以外に方法はない。手に持つのは小さなハンマー、これで叩いて叩いて叩き壊す。事前にこういう武器が効くとは聞けていたので良かったが、さて、これを倒すのに自分はあと何回死ぬ必要があるのか。あと何日かかるのだろうか。

 

「ごぼっ……………ざ、ざあ!いっばづめぇ!!!」

 

ーーーーーーーーーーーーッッ!?!?!?

 

芸の無い攻撃。再び腹部に向けて爪を立てて来たそれを僅かに身体を晒して受け止め、それでも脇腹を抉り取っていかれた感覚を感じながら、腕に向けて思い切りハンマーを振り下ろす。

 

「……?」

 

するとどうしたことか、その如何にも堅そうな身体はただの一撃目で予想より大きくヒビ割れた。そして唸るような甲高いよく分からない悲鳴を上げるそれ。……なるほど、と。ここでようやく理解に至る。

完全とも言える魔法耐性、ここで出現するにしてはあまりに異常すぎる速度と攻撃力。どうもそれは耐久力を犠牲にして成り立っているものらしい。そもそも時にはモンスターを拳と蹴りで潰している自分、腕力は耐久力ほどでなくとも十分に強化されている。こんな見た目をしてはいるが、その実ステイタスはこれでも完全にガレスさん寄りの冒険者だ。

 

「相性悪い悪いと思ってましたけど……もしかして、相性最高でした?」

 

ーーーーーッッ!!

 

「2発目ぇ!!ぐごぇっ!?」

 

ーーーッッッツツ!!!?!?!?!!!!!

 

そこからはもう、本当にただ只管に殴り合った。

より抵抗が激しくなり凄まじい速度での致命的な攻撃を浴び続けたが、右手に縛り付けたハンマーは何をされようが絶対に外れることはなく、右腕が再生する度に全力で殴り付ける。

8回くらい右腕を粉々にされたけれど、痛みに耐えながらそれを遠心力で振り回して叩き付ける。もうずっと腹の中を破裂した内臓と血液がタプタプとしていたけれど、流石にそんなことにはもう慣れているので、麻酔成分を持った薬を気休め程度に飲み込んで攻撃を受け続ける。

 

「魔石もなく、核もなく、頭を潰してもぉごっ!?……あ、あだまをづぶじでも、じなないんでずか……」

 

多分もう80回は死んでいる。

右目は破裂したし、首の左側を裂かれて血が止まらない。右足の腱を切られて立てないし、今首の骨が折れた。思考が遅れてふわふわとしている。右手が変な方向を向いている。身体を袈裟切りされたように切り付けられている。道具を入れておいたバッグはもう粉々だし、衣服なんて当然ながら既に無い。あったとしても紅いクズみたいになっていて、最早意味を成していない。……いつものことというか、なんというか。最近はこういうことをしていなかったので、今となってはむしろ懐かしいくらい。

 

「でも……気は楽な相手ですね。気付いたら殺されてるみたいな感じですし、気を抜いたらハメ殺され続けますけど」

 

少しずつではあるが、確実にダメージを与えられていることが実感出来る。少しずつではあるが、敵の底が見えてくる。こちらは時間さえあればいくらでも再生出来るが、相手は再生能力など大してもっておらず、戦闘を続けるほどに能力が下がっていく。……ああ、本当に気が楽だ。勝利が近づくにつれて、精神的に楽になる。そして余裕が出来るほど、アイズさんへの気持ちが浮かび上がる。そしてアイズさんへの気持ちを自覚出来るほどに、再生速度は速くなる。

 

「ああ、すごい、もう痛くないです。流石はアイズさん。………それじゃあ、始めましょうか」

 

ーーーーー!!!!!

 

「痛いですか?疲れましたか?でも、ここからですよ?ここが開始地点です。ここからようやく、しのぎ合うんです」

 

最後の傷口が塞がる。

折れた右腕が元に戻る。

痛みはない、苦痛はない。

ここまでやってようやく、自分と相手は、互角になった。

 

「私が先にこの恋を諦めるのか、それとも貴方が先に死ぬのか………我慢比べ、始めましょうか」

 

これしか知らない、この方法以外なんて持っていない。……けれど、明らかに格上の相手を屠るために必要なのが自分の苦痛だけなのだとしたら。それはむしろ、安いくらいだろう。自分のこの気持ちが本物であるのなら、そもそも敗北など存在しないということなのだから。そして勝利を掴めば掴むだけ、やはりこの気持ちは本物だったのだと証明し続けることが出来るのだから。

 

 

 

まあ、正直なことを言えば。

これなら3匹のミノタウロスに果てもなく嬲り殺され続けていた時の方がよっぽど苦しかった。あれは本当にいつ終わるのか分からない地獄であり、最後には3匹が飽きた隙をついて数を減らさなければどうにもならなかったからだ。それと比べれば既にこの段階で限界が見え始めている敵など、底が見え始めている敵など。

 

…………倒したところで。

 

本当に上がるのだろうか?

 

本当に偉業と認めて貰えるのだろうか?

 

死ぬことのないというスキルに対する悪い点として、どこまでが偉業と認められるのかが分からないところがある。どれだけ何をしても死なないのだから、あとは評価点として挙げられるのはその苦痛にどこまで耐えられたのか、というものくらいしかないからだ。きっと他の冒険者と同じことをしていても意味がない、それで倒しても当然だと言われてしまう。だからレベルを上げたければ、もっともっと、もっと苦しい思いをしなければならないだろう。

 

 

……致命傷になる筈の攻撃を200回近く受けた所で、そのモンスターは崩れ落ちた。地道にハンマーで破壊し続け、稀に再びハメ殺されながらも、どうしようもならず、ただ攻撃が止むのを苦痛を受け止めながら待ち続け、反撃する。その繰り返し。その繰り返しの末に、頭部も手足も破壊して、尻尾も叩き割って、最後には動けなくなった胴体も壊し尽くした。

 

……でも、それだけだ。

必死にやったけれど、全力を出したけれど、まだ半日しか経っていない。本当に身体を貫かれたかのような攻撃を、何十回も何百回も食らったけれど、結局こうして生きている。例えそれがどれだけ苦しく辛いことであったとしても、結果にそれが反映されるのか。アンフィス・バエナの時のことを考えると、これで足りているのか心配になる。これで認めて貰えるのか自信がなくなる。あの時のように10日間近くも狂いそうになりながらやらなければ、こんな卑怯なスキルを持った自分のことを神様達は認めてくれないのではないか。もっともっと、もっと苦しまなければ……この目的は、達成出来ないのではないのか。

 

「……ウダイオス、倒しに行かないと」

 

足がふらふらと歩き出す。

武器もボロボロ、防具どころか衣服も殆ど残っていない。食糧やポーションも鞄と一緒になってズタズタ。本当に身一つのまま。

けれど、どうせ一度は18階層に戻らなければならない。それならなんだって一緒だ。そこで武器を調達して、またウダイオス討伐に向かったって、それでいい。

正直勝つ方法なんて少しも考えていないし、アンデットによって永久にハメ殺され続けるという可能性も十分にある。けれど、それこそ、それを乗り越えなければ自分は認めて貰えないのではないかとも思うのだ。そんな地獄を見なければ、それを乗り越えなければ、アイズさんに見てもらうことなんて絶対に出来ないのではないかとすら思うのだ。本当にアイズさんのことを思っているのなら、何年何十年殺され続けても変わらず耐え続けられると。それくらいでなければこの願いは叶わないと。

 

「あぁ……遠いなぁ……」

 

18階層が。

夢の先が。

自分の血と吐瀉物、そして体液の上に砂や土砂が被り、本当に汚らしい姿だ。そして持っているのは鞄の中に入れておいた緊急用の頑丈な布袋と、片手に持つボロボロになったゴミ同然のハンマーだけ。よくもまあこんな姿で、こんな見窄らしい姿で美しい彼女の横に立とうなどと思うのか。仮に今の自分を過去の自分が認識すれば、むしろ彼女から引き離そうとするのではないだろうか。こんな奴を近くに居させてはいけないと。こんなやばい奴を許してはならないと。

 

「……多分、そう思われてるんだろうなぁ」

 

少なからず、薄々と誰もがそう考えているに違いない。彼女のことを大切に思う人であれば、その思いが強ければ強いほど、本音を言えばもっと普通の感性を持った格好の良い人と一緒になって欲しいはずだ。それこそベル・クラネルのように、必死で、誠実で、さっぱりとした好ましい少年のような。

それはきっと、リヴェリアさんだってそう思っている筈。彼女は優しいから見捨てられないだけで、私はそれを利用しているだけで、心の内では大切な娘のような存在である彼女にこんなイカれた人間をくっ付けたいとは思っていないだろう。けれどそれは当然のことで、卑怯なのは単純に自分だけだ。

 

「分かってる……」

 

自分が居ない方が全てが丸く収まると。

自分の存在のせいで今回のヘルメス・ファミリアとロキ・ファミリアの上層部は大いに振り回されている。それが原因となって、もしかすれば近いうちに何らかのミスが生じてしまうかもしれない。周囲に決して良い影響を与えているわけでもなく、以前とは違い何処か腫れ物扱いされていることも自覚している。

それでもと我を通したのが今回であり、どれだけ相応しくなくとも彼女の隣に立ちたいと今日ここまで這い上がって来た。自分も、他人も、全部犠牲にして。……だから、そんな愚かな自分を見て"死にたい"だなんて絶対に言わないし、そんな意地汚い自分のことなんて絶対に見ない。その過程がどれほど泥に塗れたものだとしても、最後にそれが手に入れられるのなら全部どうだっていい。下手な自尊心や羞恥など、自分にはそんなものを持っていられる余裕がないのだから。魂がどうのこうのと言われても、結局はそれを破壊する可能性すら飲み込めなければ、自分は彼に勝れないのだから。勝ることが出来るのかどうかも分からないのだから……

 

 

 

 

 

 

『…………良かったのかウラノス、ジャガーノートのことを彼に教えて』

 

「良くはない、ゼノスとの約束もある。……だが、それ以外に策がないというのも事実だ。幸いにも現在は情勢が落ち着いている。最悪の場合になったとしても対処は可能だ」

 

『オラリオにおいて何らかの神力が使われた可能性……大神である貴方すら僅かな痕跡程度しか感知出来ないとなると、確かに脅威ではあるが』

 

「神力の使用者は間違いなくあの少年のことを重視している。ノア・ユニセラフは鍵だ、そして彼の望みが潰えた時に恐らく事は起きる」

 

『……今度は彼の望みが叶う世界に強引に改変する可能性があるということか』

 

「そこまでの権能を持った相手かは分からないが、事実としてそれに近い事象は起きていた。この私すらも認識出来ないうちに。そして一度改変を許してしまえば、2度目を防ぐことは更に難しくなる」

 

『しかしまさか眷属1人の恋愛事情のためにそこまでする神が居るとは、口に出すことはないが正直色々と思うところはあるな』

 

「それほど受け入れ難いものだったということか、それとも…………ん?」

 

『どうしたウラノス』

 

「………フェルズ!今直ぐにロキ・ファミリアを37階層へ向かわせろ!」

 

『37階層?……まさか!』

 

「恐らくウダイオスだ!急げ!」

 

『やってくれたな!!どうしてそこまで必死になれる!!ジャガーノートだけで十分と言ったろうに!!』




この辺りは賛否両論あるとは思いますが、それ以外にこの状況でレベル6に上げる方法が思い付かなかったので特に気にしないでください。
いちゃいちゃ?(困惑)するのは多分もう少し先です。
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