【完結】剣姫と恋仲になりたいんですけど、もう一周してもいいですか。   作:ねをんゆう

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もう書き貯めは出来ているので……
今から何かを変えることは私にも出来ません……
結末がどうなるかは、とにかく待って頂くということで。


あと今回"若干"えっっ!な描写がありますのでお願いします。


54.ご褒○

「……ということで」

 

「と、ということ、で……」

 

「じゃ〜ん!どうですかノアさん!」

 

「に、似合ってる……かな?」

 

 

「に、似合ってるも何も、これって……!こほっこほっ」

 

 

「ふふふ、そうです……"ウェディングドレス"……っぽいドレスです!」

 

「……です!」

 

ティオネが2人に提案したこと。

それは単純に、色々な姿の2人を彼に見せること。それは本当に単純なものではあったけれど、しかしそれこそ彼が喜んでくれることに違いないと、2人は確信することが出来た。

 

故に本日7日目。

昨日の色々な私服に代わり、今日はちょっとした変わり種を持って来ていた。

 

「いえ、まあ、その……流石に本物は持ってこれなかったので……」

 

「それっぽいドレスを……ティオネにお願いして……」

 

「そ、そんなことないです!凄く綺麗です!……こほっこほっ。まさか自分がお二人のこんな姿を見ることが出来るなんて……」

 

「え、それどっちですか?なんか微妙に親族気分入ってません……?」

 

「え……あ、いえ、そんなことは……」

 

あくまでウェディングドレスっぽい、白のドレス。

けれど装飾品は実際に使われている物を集めて来たので、ぱっと見はそうとしか見えないだろう。そうなるように(ティオネが)努力してきたのだから。

 

そして流石に病室でこんな姿をしているのを彼以外の誰にも見せる訳にはいかないので、しっかりとカーテンも閉めてドアにも鍵はかけてある。そうでなくとも、こんな格好をしたのなら。……やりたいことは1つしか無くて。

 

「で、では……先ずは誓いのキスから……」

 

「え?」

 

「え?嫌なんですか……?」

 

「そ、そうではないですけど……ある程度この流れも、予想はしてましたけど……こほっ。そこから始めるんですか……?」

 

「ノア、誓いのキスからだよ」

 

「え、そうなんですか?」

 

「というか私達は何かしら理由を付けてキスしたいだけなので」

 

「言っちゃったじゃないですか。というか言ってくれれば私だってそれくらい……」

 

「普通にキスをしても面白くありませんから。ですよね、アイズさん?」

 

「……私はいつでも、したい、けど」

 

「裏切られた!?わ、私だってしたいです……!」

 

「ま、まあまあお二人とも……」

 

というより、なにより……あの、意外とウェディングドレスというのは露出度が高い。それこそ色々な型があるとは言え、2人の来ているそれは所謂ビスチェと呼ばれるものとハートカットと呼ばれるもので、言ってしまえば首元も肩も全部出ている。しかも正規の物でもなく大きさも本人の適性より若干大きめで、つまりは割と危うくないけど危うく見える。

思わずノアは目を逸らしてしまうが、しかし2人はしっかり左右から迫って来る。視線も身体も、逃げ場など何処にもない。

 

「さて、アイズさん?どちらからしますか?私は先にしようかなぁと思うのですが」

 

「ううん、私が先」

 

「……でも、ほら。後からの方が色々良いと思いますよ?学べると言うか、私の失敗が見られるというか」

 

「私はノアの恋人だから、私が先」

 

「!?な、何の話ですかそれ!?私は聞いてないですよノアさん!?」

 

「ひんっ!?そ、それはその……」

 

「ノアの最初のキスはレフィーヤのだけど……最初の恋人は私だから……」

 

「〜〜〜!?ノ、ノアさん!!私も恋人にしてくれますよね!?」

 

「それより先に。ノア、私と誓いのキスして」

 

「だ、駄目です!そういう事情があるなら、絶対駄目ですぅ!」

 

「あ、あはは……こほっこほっ」

 

「「っ」」

 

冷静になる。

なんだか彼がすごく嬉しそうにしてくれたから、はしゃいでしまったけれど。そう。今日起きた辺りくらいから、治療を受けた後でもこうして定期的に咳をするようになってしまった。本人は大したことはないとは言うが、しかしそれは着実にタイムリミットが近付いているということ。こんな風に困らせている場合ではない。

……もう、7日目だ。

半月を15日と考えるのであれば、折り返し地点まで来てしまった。こうして楽しんでいられるのも、もう。

 

「……アイズさん、先にどうぞ」

 

「いいの……?」

 

「はい、私は後でじっくりとさせて貰いますので」

 

「……!うん、分かった」

 

「え、あ……これ本当にする流れなんですね。いえ、嬉しいんですけど、恥ずかしくもあるというか」

 

「気にしないでください。これはその、私達もお互いに納得しての関係ですから」

 

「うん」

 

そうして彼に色々と考えさせてしまう前に、アイズは彼のベッドの上にのり、そのまま足の上に跨る。あ、そうやってやるんだ……と思ったのはレフィーヤも同じ。なるべく彼に体重をかけないようにしながら、目と鼻の先にいる彼を見つめる。

 

「ん……どう、かな?」

 

「……とても綺麗ですよ、アイズさん」

 

「うん……明日からは、また違うのを見せてあげるね」

 

「ふふ、それでは長生きしないといけませんね。こんなに素敵なものを見られないなんて、勿体ないですから……こほっこほっ」

 

「うん、長生きして」

 

すりすりと、額や、鼻や、頬を擦り付ける。

もっと、もっと大切にしないと。

この時間を、この瞬間を。

1秒たりとも、無駄には出来ない。

 

「お願いしたら……私と、結婚してくれる……?」

 

「それ、は……」

 

「出来ない……?」

 

「……そんな無責任なことは出来ません」

 

「そっか……」

 

「先の長くない人間ですから。誓いの言葉を唱えることも出来ません……こほっ」

 

「……じゃあ、キスはして?」

 

「なにを私は、誓えばいいのでしょう……?」

 

「好きって言って」

 

「!」

 

「それだけでいいから」

 

「……好きです、アイズさん」

 

「うん。私も好きだよ、ノア」

 

そうして2人は唇を合わせる。

そんな様子を見ていたレフィーヤは、いやまあ普通に考えて居づらそうな顔をしていた。覚悟はしていたとは言え、普通に嫉妬はあるし。あと自分が思っていたより2人のそれは深いし。なんだか自分としていた時よりも水音が聞こえて来て、2人の間を唾液が垂れていて。とても淫美で、見ているこちらまでドキドキしてしまって、まるで彼がアイズに貪られているようで……………ん?

 

 

「ぅ……ふっ……んんっ……」

 

「あ、これ駄目なやつだ」

 

 

レフィーヤは理解した。

 

 

「っはぁ……ノア、ノア……」

 

「ま、まっへくらさい……い、息が……」

 

「ん……好き、好き……」

 

「ひゅぐっ!?……んっ、ひぁっ」

 

 

「ちょちょちょ!ま、待ってくださいアイズさん!ストップです!ストップ!!」

 

 

「んちゅっ……レフィーヤ?もう交代……?」

 

「そ、そうじゃなくて!ノアさん!ノアさんが……!」

 

「……あ」

 

もうなんか途中から押し倒して、魂でも引き摺り出そうとしているのか?というくらいに滅茶苦茶にされていたその様子は、さながら捕食者と獲物のようで。

 

「だ、大丈夫ですかノアさん!?」

 

「ご、ごめん……だ、大丈夫……?」

 

「はぁ、はぁ……だ、大丈夫です……けほっ、けほっ」

 

「あ、あぁ……ご、ごめんねノア……ごめんね……!」

 

「………」

 

ここに来て、レフィーヤはようやく悟った。

というか、分かってしまった。

こんな特殊な状況でもなければ、きっと一生知らなかったであろうその事実を。知ってしまった。

 

 

(アイズさん、キス下手だ……)

 

 

知りたくなかった、そんなこと。

けれどもう間違いない。

いや、当然と言えば当然だけども。

彼女がキス上手に見えるかと言われたら、それは確かに首を横に振るしかないけれども。だからと言って下手が過ぎる。なにせキスというか殆ど吸引だから。彼の口を舌でこじ開けて、その何もかもを吸い取ろうとしているだけだから。そんなもの死ぬ。やっていることは殆どサキュバスだ。流石のレフィーヤでも擁護することは出来ない。

 

「……はぁ、仕方ないですね。これも必要なことですから」

 

流石に『今後はキスするの禁止です!』とは言えない。ここで2人に罪悪感を与えるくらいであれば、ここは恥ずかしくともしっかりと修正しておくべきだ。……いや、本当に恥ずかしいけれど。人前でするだけでもなのに、それをじっくり見られるなんて。恥ずかしくて頭から火を吹きそうだけれども。

 

「ア、アイズさん……」

 

「な、なに……?」

 

「その……これから私が、まあ、言うほど上手でも無いんですけど……手本を、見せますので……」

 

「……!」

 

「な、何回もはしませんから!なので、その……」

 

「……うん、勉強する」

 

「……はい、お願いします」

 

レフィーヤに背をさすられながら、苦笑いをする彼。いや、本当に。レフィーヤが止めなければどうなっていたことか。……好きなのは分かるけれど、今のアイズと恩恵を失った彼では完全に生物として力量が違うのだから。特に弱ってきた彼には、たとえキスであっても激しいものはしない方がいい。……そもそも、激しいキスとは言うけれど、あれほど激しいものは普通ではないので。しっかりここで学んで、実践して欲しい。彼のためにも、本当に。

 

「そ、それでは……その……」

 

「は、はい……もう少しこちらに」

 

「あ……ありがとうございます……」

 

彼の横に座り、少し見上げるように位置取りながら身体を寄せる。彼は片腕だから身体を寄せるのは自分の役目で、残った左手だけはしっかりと繋いでいた。……こういう時、自分の背の低さや身体の小ささに感謝したくなる。きっとこの背丈は、彼とのキスに適しているから。

 

「い、いきますね」

 

「は、はい……お願いします……」

 

まずは重ねるだけ。

柔らかな唇を優しくゆっくりと当て合って、時折離しては見つめ合う。好きになる、愛おしさが増していく。幸福感に溶けてしまいそうになって、互いにより身体を密着させるようにより深く抱き合った。

……少しずつ、少しずつ感情が昂り始める。誰かに見られている事とか、緊張とか、そういうことも頭の中から消えていく。

 

「んっ………はっ……」

 

「ぅん………んく……」

 

レフィーヤだって決して上手い訳ではない、まだまだぎこちない所は多くある。……けれど、彼が苦しくないようにすることくらいは出来る。それに、そうでなくとも彼は上手いから。あくまで自分は彼を楽にさせるように気を遣うだけで、それは自然と満足の出来るものになって。

 

「……ぁ……ぅあ」

 

「ふふ……可愛いですよ、レフィーヤさん」

 

位置関係的にたくさん飲まされてしまった2人分の唾液と、腰が震えてしまうほどに齎された快楽で、まるで酔ってしまったかのように意識が朦朧として。力の抜けた身体をそのままに彼の胸元にもたれ掛かる。それでもこれで終わる訳にはいかないから。自分ばかりがされているのは、良くないから。相手にも、同じように。

 

「わ、わたしも……」

 

「?」

 

「わたしも、ノアさんのこと、気持ちよく……」

 

「して、くれますか?」

 

「ぁ……は、はい……します……」

 

そう言って彼は今度はレフィーヤを自分の膝の上に乗せる。それは奇しくもアイズがした時と同じ形であるが、しかしその様子が自分の時とは違うということは、静かにそれを見守っているアイズだって分かる。

……というか、ぶっちゃけアイズもものすごくドキドキとしている。甘くて情熱的なキス、蕩けるようなレフィーヤの表情、2人の唇を繋ぐようにかかる銀糸の橋。そのどれもがアイズの背筋を伸ばすには十分な衝撃を持っていて、彼女の顔を赤くさせる。縋り付くようにして彼に甘えるレフィーヤの姿は、そんな彼女を愛おしげに見つめるノアの表情は、なんだかとても羨ましく思えて。

 

「んっ、ふにゅ……っはぁ、はぁっ……っんぅ!?」

 

「大丈夫、大丈夫です……そのまま……」

 

「は、はい……んぅっ」

 

彼に腰を撫でられながら、身体を震わせて、少し目端に涙まで浮かべて。それでも必死に彼を気持ちよくさせようと、まだまだ未熟なその舌使いで奉仕する彼女。上下を変えても、少し気を抜いてしまうと、負けそうになってしまう。気持ちよくしてあげたいのに、自分の方が負けてしまいそうになる。

 

「んぇ……す、すき……すきれす、のあしゃん……」

 

「っはぁ……私も、好きですよ……レフィーヤさん」

 

「ぁ……はぁっ……ふっ、ぅ……っ」

 

「おっと……」

 

荒い息を吐きながら、思わず脱力して彼にもたれかかってしまう。駄目だ駄目だとは思いつつも、身体に力が入らない。彼の肩に頭を置いて、せめてとばかりに抱き締める。……自分は恩恵があるのに、体力だって自分の方があるはずなのに。

 

「んっ……こ、腰……撫でるの、だめ……」

 

「こほっこほっ……ふふ、反応、可愛くて」

 

「うぅ、意地悪……」

 

最後になんとか身体を起き上げて、数秒ほど普通のキスをする。目を閉じながら、一心不乱に。もう全然しっかり出来なくて、口の周りが濡れてしまって、彼の布団の上にもポタポタと水滴が落ちてしまう。こうなるともうなんだか、誓いのキスでもなんでもなくなってしまったけれど……

 

「むゅ……」

 

「ふふ……舌、出てますよ?まだ足りないんですか?」

 

「っ〜〜!」

 

恥ずかしい。

自分の恥ずかしい顔が、全部見られてしまった。

ちょこんと出ていた舌に人差し指で触れられながらそんなことを言われて、無意識にもう一度とせがみそうになった自分を恥ずかしく思う。でも仕方ないじゃないか、こんなにも幸せな気持ちになってしまうのだから。もっともっとと求めてしまっても、誰が責めることが出来る。もっと愛して欲しい、もっと夢中にさせて欲しいと、もっと溺れさせて欲しいと、そう求めてしまっても……

 

 

「………すごい、ね」

 

 

「「っ!!」」

 

互いに身体を跳ねさせる。

ああ、しまった。

流石に夢中になり過ぎた。

完全に見られていることなんて忘れてしまっていた。いや、忘れていたなんて言ったら酷いのだけれど。でも彼女も自分の時には夢中になっていたのだから、それはそれでお互い様で……

 

「レフィーヤ、すごい……」

 

「あ、いや!これは、その……!」

 

「う、上手いのは私ではなくノアさんの方で……!」

 

「私もしたい」

 

「「………」」

 

この瞬間、ノアは察した。

ああ、今日は多分これで終わるんだなぁと。

けれどそんな1日は決して悪いものではなくて、体力の心配は確かにあるが、それでもこれ以上に良くなることもないから。出来るうちに出来ることをしておくに限るし、割と欲に溺れてるしまっている状況ではあるけれど、これのためなら多少寿命が削れてしまっても仕方ないと思える。

 

(っ……あと少し、もう少しだけ……頑張れ、私の身体……)

 

何やらレフィーヤに迫ってコツを聞き出そうとしているアイズ。レフィーヤはそんな彼女に顔を赤くしながら、しどろもどろに言葉を返している。……こんなにも可愛らしい2人の様子を見ることが出来るのも、あと少しなのだ。泣いている姿より笑っている姿を見ていたい。そんな2人の様子を、しっかりと頭に焼き付けてから死にたい。

 

(この半月のために私の人生があったというのなら……)

 

 

 

「えい」

 

「ひゃうっ!?の、のの、ノアさん!?」

 

「せっかくですから、もっと近くに来てお話ししませんか?アイズさんも」

 

「……うん、そうする」

 

ああ、あと何日こうして人として生活出来るのだろうか。あと何日歩くことが出来るのだろうか。着実に身体が動かなくなっていることを感じている。回復出来る上限が減ってきたのを自覚している。それでも出来る限り、隠していきたい。少しでも長く彼女達の笑顔を見ていたいから。そのための我慢なら、これまでの我慢と比べれば、よっぽど簡単だ。


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