【完結】剣姫と恋仲になりたいんですけど、もう一周してもいいですか。   作:ねをんゆう

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07.迎えに来た希望

「あの、ありがとうございました」

 

「おや、もういいのかい?……あんまり無理するもんじゃないよ、疲れたら遠慮せず来な。茶菓子くらい出してあげるさ」

 

「ふふ、分かりました。お言葉に甘えて、また来ます」

 

「ああ、行ってらっしゃい」

 

いつものように、ついフラフラと逃げ込んで来てしまった魚館を出る。

疲労が溜まると、精神的に限界になると、無意識に、惹かれるように、ここに来てしまう。何をするでもなく、ただぼ〜っとしているだけなのに。満たされるようなその心地に、依存してしまう。

 

余計な時間だ。

無駄な時間だ。

こんなことをしている暇はないのに。

 

……けれど。

あと少し、あと少しだから。

 

昨日、ようやくロキ様と約束を取り付けることが出来た。

半年後に、自分はようやくロキ・ファミリアに戻ることが出来る。それまでにLv.6になるのは確かに困難な道ではあるけれど、今まで以上になりふり構わずやれば、きっと出来る。やる。やってみせる。

だから手始めに今日は、Lv.4にならなければならない。

 

「頑張ら、ないと……」

 

こんな風に時間を浪費したんだ。

魚館で十分に疲れは取れたはずだ。

だからもう、Lv.4になるまでは地上には帰って来ない。帰って来てはいけない。それでは間に合わない。無駄に出来る時間なんて何処にもない。

 

……さあ、今日はどうするか。

ゴライアスに挑むか。

階層更新を狙って深くまで潜るか。

モンスターの群れを作って殲滅するか。

 

無茶でもなんでも、しなければならない。

そうでないと、振り向いて貰えないから。

また彼に追い抜かれて、取られてしまうから。

 

認めてもらうためには。

見つめてもらうためには。

平凡で才能のない自分は、それ以上の努力をする必要があって。

 

 

「……アスフィさん達に。顔だけ、出しに行こうかな」

 

 

夕暮の大通りを母親と共に笑いながら歩いていく子供を見ながら、無意識にそう口走る。思わず口元に手を当てるが、一度出してしまった言葉は無かったことにはならない。それが自分の本音を表しているということは、誤魔化すことなど出来ない。

 

……寂しい。

 

自分が選んだ道ではあるけれど。

こんなことなら狂ってしまった方が楽だ、とか。

むしろまだ狂っていないのか、とか。

そういうことも考えてしまうけれど。

 

1人で居るのは、やっぱり辛い。

 

それでも、その辛さも寂しさも飲み込んで、今日もダンジョンに向かう。怖さも痛みも全部振り切って、ただ1つ、自分の求める未来だけを見据えて走り続ける。それだけを見ていれば、それだけを求めていれば、想像していれば、夢見ていれば、苦痛も孤独も忘れられるから。

だから大丈夫だ。

まだ大丈夫だ。

寂しくとも、心細くとも。

1人でも、やっていける。

 

……やっていける、はず。

 

 

 

 

 

「ノア……?」

 

 

 

 

「っ!」

 

背後から声を掛けられ、思わず振り返る。

勢いよく、思わず。嬉しさのあまり。

だって自分の名前を知っている人間は、今のこの世界にはそう多くない。その中でもこうして名前を呼び捨ててくれる女性となると、それはより絞られて。

 

 

「………リヴェリアさん?」

 

目に映る緑色の長い髪。

夜でも輝く綺麗な佇まい。

つい先日、ロキ様に自分を紹介してくれた彼女が、声を掛けてくれた。……ただそれだけなのに、なんだか嬉しくなってしまうのは何故だろう。自分はこの人を利用して、アイズさんに近付こうとしているだけだった筈なのに。そんな不純な理由で近付いたというのに。自分はいつの間に、こんなに。

 

「ああ、やはりお前か。どうしたんだ、こんな時間に。今から帰るところか?」

 

「あ、いえ……実はこれからダンジョンに行こうかと思っていまして」

 

「なに?……今からか?」

 

「はい、地上にはヘルメス様の使いで戻って来ただけなので。届け物は終わったので、あとはダンジョンに戻ろうかと」

 

「……ふふ、ダンジョンに戻るなどと。お前くらいしか使わなさそうな言葉だな」

 

「っ」

 

優しく頭を撫でられながら、くすくすと笑われてしまう。ただそれだけなのに、どうしてか。自分の心がとても温められたように、ほぐされてしまう。嬉しく思ってしまう。もっとして欲しく思ってしまう。

そんな自分の姿は、あまりにも、子供っぽく見られてしまうだろうに。

 

「……ダンジョンに行く前に、一緒に食事でもどうだ?」

 

「え?でも……」

 

「お前をロキに紹介したんだ。その褒美として少しくらい付き合ってくれてもいいと思うがな?」

 

「……そう言われてしまうと、弱いです」

 

「ふふ、まあ誘ったからには奢ってやる。何か食べたいものはあるか?」

 

「あ……え、と……」

 

「……魚でも食べるか」

 

「!……はい」

 

いつの間にか。自分の好きな食べ物を把握されていたことに、気恥ずかしさと嬉しさを混じらせながらも。彼女の横を歩く。

それでも自然と口角が上がってしまうのは、やっぱり、1人ではないからだろうか。あの時にすれ違った子供と、もしかしたら自分は今同じ顔をしてしまっているかもしれない。……一応、作ってはいるつもりだけど。それでも。やっぱり嬉しいから。1人ではなくて、寂しくないから。

 

 

「そういえば……リヴェリアさんはどうしてこんな時間に?」

 

「ああ、今朝方からアイズとレフィーヤが何やら街中を走り回っているようでな。こんな時間になっても帰って来ないとなると、心配にもなるだろう?」

 

「それは、確かに……心配ですね」

 

「全く、私が出払っていた時に限って何をしているのだか。……だがまあ、そのおかげでお前とこうして会えた訳だしな。馬鹿娘共は放っておいて、少し良いところにでも行ってみようか」

 

「ふふ、なんだか珍しく悪い顔をしていませんか?」

 

「あいつらのせいで夕食を取れてないんだ、悪い顔もするさ」

 

リヴェリアさんはそうして、悪戯な笑みをして自分のマントを私に掛けてくれた。……そんなに寒かったりはしないのに。

けれどそれがどうしても温かく感じてしまうのは。それほど自分が他人の温もりに飢えているということなのか。それとも、実は本当に凍えているだけなのか。……それはまあ、どちらでもいいことではあるけれど。

 

 

 

 

 

「ノア!!」

 

 

 

「っ」

 

 

また、後ろから名前を呼ばれる。

 

今日で2度目、こんなことは珍しい。

 

となると、次はアスフィさんか。

それとも、タバサさんか。

もう考えられる人はそれくらいしか居ない。

 

 

 

……けれど、そう。

 

 

それにしては何だか。

聞き覚えはあるのに、聞き覚えのない。

それはそんな、女性の声で。

 

 

 

「アイズ……?」

 

 

「え……?」

 

リヴェリアさんの言葉に、私も振り向く。

 

……いや、そんな筈はない。

 

そんな訳がない。

 

だって私と彼女とはまだ、こちらの世界ではそんなに話したこともない。まだ挨拶を数回した程度。"ノア"なんて呼ばれるほど気安く接したこともないし、そもそもまだロキ・ファミリアにも入っていないから、関わりも殆どゼロだし。むしろ、どこまで彼女に自分のことを覚えて貰えてるのかも心配なくらい。……だから。

 

「アイズさん!」

 

「レフィーヤ!!こっち!!」

 

だから、そんな風に。

必死になって駆け寄ってくるようなことは、ないはずで。

アイズさんどころか、まだこちらの世界では一度も顔を合わせたことのないレフィーヤさんまで。一緒になって……涙を流しながら、走って来るのは。何故?

 

 

 

「「ノア(さん)!!」」

 

 

 

「………えっ?」

 

 

 

抱き付かれる。

 

 

 

押し倒される。

 

 

 

抱き締められる。

 

 

 

そして……ああ、泣かれてしまう。

 

 

 

「ノア、ノアだ……ノアが居る……」

 

「やっと、やっと会えた……ノアさんに、また会えた……」

 

 

「ぁ……え……え?」

 

 

「な、なんだお前達!?どうした!?というか……な、なんなんだ?」

 

私もリヴェリアさんも、状況が理解出来ない。押し倒されて2人に抱き締められたまま。混乱する頭で、動揺する心で。リヴェリアさんと顔を合わせて、困惑する。

……分からない、分からないけれど。

2人がどうしてか自分のことを知っていて。自分に間違いではなく、こうして抱き着いて来て。何かが悲しくて泣いているということだけは。どうしようもなく、間違いがなくて。

 

「あ、あの……?」

 

「生きてる……ここに居る……」

 

「は、はい。ここに居ますよ?なのでその、えっと……」

 

 

「……ノアは、私のこと、信じてくれる?」

 

 

「!……ええ、信じますよ。アイズさんの言うことなら」

 

「っ……ありがとう、嬉しい。やっぱりノアはノアのままだ」

 

「ぅっ」

 

涙を目の恥に浮かべながら、満面の笑みを浮かべる彼女に、思わず息が止まる。こんな表情、それこそ前の時でも見たことがない。というか、ベル・クラネルと一緒に居た時ですら見たことがない。……そもそも、その表情は母親代わりであるリヴェリアさんですら驚いているくらいのそれで。

 

「ノアさん……これを」

 

「?……これは、何かの宝石ですか?」

 

「飲み込んで?」

 

「え」

 

「お願いします、ノアさん」

 

「飲み込んで」

 

「うっ……わ、分かりました。飲み込めばいいんですね」

 

なんだか妙に暖かい黄色の幾つかの塊。レフィーヤさんが光と共に何処からともなく取り出したそれは、けれど確かに不思議な雰囲気を放っていた。

それこそ、なんというか。

こんな塊に使う言葉としては適切ではないと思うけれど、親近感が湧くというか。妙にこう、受け入れることに難がないというか。……それこそ、飲み込めと言われた時には戸惑ったけれど。いざこうして口にしようとしてみると、それは本当に当然のことのようにすら思えて。

 

「お、おい?お前達は本当になにを……」

 

「リヴェリアはこっち」

 

「なっ!?わ、私も飲むのか!?」

 

「大丈夫、信じて」

 

「〜〜っ……後で、後で必ず説明して貰うからな!」

 

「説明しなくても、大丈夫だから」

 

リヴェリアさんとまた顔を見合わせる。

困ったような顔をしている彼女。

きっと自分も似たような顔をしている。

……けれどまあ、そこまで言われたら。

 

「ノアさん」

 

「っ、は、はい」

 

「大丈夫です。きっと、それで分かるはずです」

 

「レフィーヤさん……」

 

「お願い、します」

 

「……分かり、ました」

 

今も涙を浮かべているレフィーヤさんに手を握られて、勢いに任せてそれを口に含む。それと同時に、リヴェリアさんもそれを口の中に入れた。飴でもお菓子でも無さそうなそれを、自分の中に。

 

 

入れ、て……

 

 

「っ……?」

 

 

溶ける。

 

 

溶ける。

 

 

溶け込む。

 

 

硬いそれは、直ぐ様に液体に変わり染み渡る。

 

 

そうして飲み込むまでもなく、身体の中へと溶けていき、馴染んでいく。

 

 

……不思議な感覚だった。

まるで、自分の中に生じたたくさんの傷跡に、それが入り込み、埋めていくような。そんな不思議な感覚が、感じられて。

 

 

「ぁ……ぇ……?」

 

 

思い出す。

 

思い出す。

 

知るのではなく。

 

見るのでもなく。

 

ただ、思い出す。

 

 

「あ、れ……なんで、私……」

 

 

知らない景色が、知っている景色として、思い浮かぶ。

知らない事実が、知っている事実として、頭を巡る。

 

 

「なん、で……私……ここ、に……?」

 

 

思い出す。

 

思い出す。

 

思い出す。

 

思い出す。

 

思い出す。

 

あらゆる事を、多くのことを、思い出す。

 

 

「私、は……もう……消えた、はず……」

 

 

彼女を求めて突き進んだ。

 

彼女を求めて破滅した。

 

彼女に心を奪われた。

 

彼女の心を得られた。

 

そうして最後に……自分は……そう、何もかもを取りこぼした筈で。

 

 

「私、は……」

 

 

「ノアさん!!」

 

 

「っ……レフィーヤ、さん?」

 

 

「ノア!!」

 

 

「アイズ、さん……?」

 

 

世界が変わる。

世界を見ている自分が変わる。

世界の見え方が変わる。

 

目の前の人達が、どんな人で。

自分にとって、何者で。

そして、自分がいったい、誰であるのか。

 

理解、するには。

 

 

 

「愛してる」「愛してます」

 

 

 

「っ」

 

 

そうして、理解してしまった。

そうして、分かってしまった。

 

 

ああ、本当に……本当に……この人達は……

 

 

「何、してるんですか……?駄目、じゃないですか、こんなこと……」

 

 

こんな、こんなこと。

こんな、いけないこと。

絶対に、絶対にしたら、いけないことなのに。

 

 

「そんなの、だって……仕方ないじゃないですか」

 

「うん……会いたかった、から」

 

 

「………っ!!」

 

 

「会いたかったから!ノアに!!」

 

 

彼女が声を荒げる。

 

 

「ノアさんに!会うためだけに!……私達は!!」

 

 

だから、もう、それ以上は。

男として、言わせては駄目だと思った。

 

涙を流す2人を、抱き締める。

もう、屁理屈なんか要らない。

余計な言葉なんて要らない。

 

だって、確かに。

確かに自分には、奇跡なんて起きなかったけれど。

なればこそ、彼女達は奇跡に頼ることなく、こうしてまた自分に会いに来てくれたのだから。こうしてまた会うために、きっと、頑張ってくれたのだから。

……それなら、もう、何を迷う必要がある。

自分が言うべきことは。

自分がすべきことは、一つしかないだろう。

 

 

「ありが、とう……」

 

 

「「っ」」

 

 

「ありがとう……ありがとう……」

 

 

「……ノア」

 

 

「私も……私ももう一度、もう一度だけでも、こうして……2人と、いっしょに……」

 

 

「……はい」

 

 

「いっしょに……!」

 

 

 

「居たかったから……!!」

 

 

それが本音だ。

 

それが全部だった。

 

それ以外に、何がある。

 

 

「好きです……大好きです……」

 

 

怖かったから。

 

痛かったから。

 

苦しかったから。

 

 

「愛しています……」

 

 

ずっとずっと、恐ろしかった。

自分の身体を蝕んでいく破滅が。

少しずつ少しずつ、死に近づいているという事実が。着実に見えなくなっていく彼女達の顔が。触れ合えなくなっていく温もりが。思い出せなくなっていく人達のことが。何もかもが。ずっと、ずっとずっと、怖かった。

 

嫌だった。

死にたくなんてなかった。

もっと一緒に居たかった。

もっと長く生きたかった。

ずっとずっと、この人達と一緒に。

ずっとずっと、この人達の隣で。

もっと、もっとたくさんのことをしたかった。

知りたかった。

 

だから。

 

「私は、私は……」

 

「もう、離しませんから……!もう絶対に、ノアさんを1人にはさせませんから……!」

 

「はい……」

 

「ノアのことは、私達が助けるから……病気にも、神様にも、世界にだって、絶対に渡さないから……!」

 

「はい……!」

 

 

もっと、もっと話したいことがたくさんある。

もっと、もっと伝えたいことはたくさんある。

けれど、それは今伝えられるほど少なくないから。

これから先、ずっと。もっと長く、時間を使って。

……そうして、伝えていかなければならないことだから。

 

 

 

 

「っ……そうか、上手くいったか……」

 

「リヴェリア……」

 

「リヴェリア、さん……?」

 

「全く……本当に手のかかる馬鹿娘共め」

 

2人に抱き付く私を、丸ごと全員抱えるように、リヴェリアさんに抱き締められる。……温かい、心地の良い空間。もう2度と、こんな幸福に、包まれるなんてことはないと思っていたのに。

 

「遅くなって、すまなかったな……」

 

「っ……私の体感、本当に直ぐですよ」

 

「助けてやれなくて、悪かった」

 

「……いえ」

 

「私は……もう、迷わない」

 

「……?」

 

「お前は、私にとっても娘同然だ」

 

「!……息子では、ないんですか?」

 

「お前は可愛げがあるからな、アイズよりよっぽど」

 

「むぅっ」

 

「もう大丈夫だ。……お前も、私が守ってやる」

 

嬉しい。

嬉しい。

涙が止まってくれない。

止まる訳がない。

こんなに満たされることがあるなんて。自分の全てはあの瞬間で終わりなんだと、諦めていたから。寂しさも辛さも、全部全部持っていってしまおうと思っていたから。こんな風に、また抱き締めて貰えるだなんて。

 

「ノアさん、もっとちゃんとお顔を見せてください」

 

「その、泣いている姿を見られるのは流石に恥ずかしくて……」

 

「私達だって、泣いてるから。お互い様」

 

「……もう、ずるいですよ」

 

「だって、見たいので。ちゃんとここに居るんだって、確認したいので」

 

もう、とても他人に、特に好きな人に見せられる顔をしていないというのに。こんな姿を見せたくはないのに。けれど2人はそんな自分の顔が見たいと言うし、半ば強引に顔を上げさせられる。それに、それはリヴェリアさんも同じだ。こんなに汚れた自分の顔をマジマジと見られてしまって。もう、恥ずかしくて仕方ないというのに。3人はそれすらも嬉しそうに見つめてきて……

 

「ふふ、いつまでもこうしていてもいいが……だが、まあ、やるべきことはまだあるからな。そろそろ動くか」

 

「やるべき、こと……?」

 

「……その、私達には時間がありましたから」

 

「!」

 

「色んな神様に、手伝って貰った。……ノアも、女神様も、みんなを助けるために」

 

 

「……助け、られるんですか?」

 

 

「うん、任せて」

 

そうして、アイズさんに右手を引かれる。

レフィーヤさんに、左腕を抱かれる。

リヴェリアさんはそんな私達を、呆れたように、けれど何処か嬉しそうに見つめた後、背中を見せて前を歩き始めた。……まるで3人がかりでノアのことを守るように。彼のことを、もう決して離してしまわないように。しっかりと、囲い込んで。

 

「さあ、ここからが本番だ。準備はいいな、お前達?……世界を1つ救った程度で、自惚れてつまらないミスをするなよ」

 

「はい!」「うん……!」

 

 

 

「……え?何の話ですか?」

 

「大丈夫です!どうせ私たちも直ぐ忘れちゃう話なので!」

 

「え?え??……あ、あの!?本当に私が眠っていた間に皆さん何をしていたんですか!?」

 

「大丈夫。……浮気は多分、してないから。安心して」

 

「え?あ……た、多分!?」

 

「あ!わ、私は寂しくてもずっとノアさんのこと想ってましたよ!?私はノアさん一筋です!」

 

「むぅ……私だって、ノア一筋だもん……」

 

「い、いえ!別に責めた訳では!?……うぅ、死んでてごめんなさい……」

 

「いや、どんな謝罪の仕方だ……」

 

身体が軽い。

心が晴れる。

自分の足で、自分の身体で歩くことが。

そして、こうしてまたこの人達の隣を歩けることが。こんなにも嬉しくて、幸せなことだなんて。きっと、一度死んでいなかったら思えなかったことだ。

 

(あ……そういえば、あれが2度目だったっけ)

 

きっと、2度も死んで。

これから3度目も間違いなくあるというのに。

それでもこんなに希望に満ち溢れているのは自分くらいではないだろうか。……もちろん、そう何度も死んだ人がいてたまるかという話ではあるけれど。

 

 

「幸せだなぁ……」

 

 

心から、そう言える。

それがどれだけ幸福なことなのか。

今の自分になら、よく分かる。

 

 

「ノア」

 

「はい」

 

 

「ノアさん」

 

「はい」

 

 

これ以上の幸福が、これからの人生で待っているというのなら……

 

そんな怖さなら、大歓迎だから。

 

 

 

「今日は寝かせないから……!」

「今日は寝かせませんからね!」

 

 

 

「……………はい」

 

 

 

大、歓迎……ですとも。

 

もちろん……幸せなので……




あと1話だけダラダラっと書いて終わります。
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