位高ければ徳高きを要す   作:CATARINA

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注意

この回には

・綺麗な社長
・劇場版社長
・凄い綺麗な社長 が含まれます

ご了承の上お読みください。




修羅を行く

『つまり、スレッタとミオリネは別行動していたのだな?ゾルタン。』

『撃っちゃうんだよなぁこれが!』

『ええい、ふざけている場合か!しかも誤植の方では無いか!』

『振ったのは君だろう!?』

『とにかくだ、その場所を動くな。今から部下を向かわせる……』

『なるべく早めに頼むよ!』

 

これで全員固まっていたのなら話は早かったのだが、そうもいかぬか。

 

「部隊を再編するぞ、楯無は予定通りここを護れ。」

『任務了解。』

「神威、八龍と二人で我が学友を救援に行け。」

『正直嫌なんですが……』

『あら、ひどいじゃないの。』ヌルヌル

『見てください社長、すんごいヌルヌルしてます。絶対ご学友に悪影響が出ますよ。』

『そんな事ないわよ?ただ■■(ピー)■■(ピー)して■■■(ピーーー)しようと』

『頼むから口を開かないで下さい。』

『もーホントに素直じゃないんだからぁ。そんなところも可愛い♡』

『社長、次代の八龍を探すのはどうでしょうか。』

『冗談でもそんな事言われたらお姉さん傷ついちゃう……』

 

「八龍。」

『はい。』

「荒坂重工が七代目。荒坂神威が我が鎧に命ず、地球寮の皆を頼むぞ。」

『了解しました。』

 

これでまぁ、当分は大丈夫だろう。

不真面目でふざけているようにしか見えないだろうが、任務を違える事は決してない。

 

『社長ハドウスルンダ。』

「スレッタ・マーキュリーとミオリネ・レンブランを確保する。」

『アテハアルノカ?』

「もし俺がスレッタなら……とにかく自分の機体が欲しくなるところだ。」

 

 

 

 

 

 

とはいえ、何処にエアリアルが格納されているのかは分からないのだが。

しらみ潰しに探しても良いのだが、時間が無いのだ。

俺や神威達と違ってスレッタ自身に戦う力は無い。

人殺しなど、以ての外だろう。

 

「武器の一つも持っておくべきだったか……」

 

素手で人の命を手折る事は容易い。

容易いが、どうにも加減が効かぬ。

気を配ってこそいたが、ある程度返り血が付着してしまった。

 

「スレッタ・マーキュリー。我が友よ、お前は何処に居る?」

 

検討もつかない。

ふと目に止まった78番ドックへの看板。

理屈ではない、確信はない。

それでも、『行け』と。

何故かそう聞こえた気がした。

 

足音が四つ。おそらく全て成人男性。

心拍音が五つ、一つは緊張状態。

見つけたぞ。

 

足音を殺しながら走り、蹲るスレッタの口を後ろから覆い塞ぐ。

「……落ち着けスレッ「んんん!?!?」うおっ……!」

突然死角から何かに覆われたスレッタはパニックを起こし、渾身の頭突きを神威に食らわせた。

強靭な体幹故、体勢を崩すことなく耐えたが僅かに音が鳴ってしまう。

 

「俺だ、スレッタ・マーキュリー。落ち着け……」

「んん……?カムイさん……?」

 

巻き込みかねない故、交戦は避けたかったが。そんな余裕も無いな。

来ていたジャケットを脱ぎ、スレッタに被せる。

衝撃は防ぎきれないが、対物ライフルとて貫けぬ最新の防弾である。

若干血が付いているがやむを得ないだろう。

 

「そのままで良い、頭は下げろ。何も見るな、何も聞くな。お前は知らなくて良い。」

「あ……えっ、と、でも。」

「良いな?」

 

()()()()に来る必要は無い。

お前はまだ、知らなくて良い。

そう考える自分も、甘くなったモノだ。

 

十五の歳で元服し、会社を継いだあの日からもう二年以上経つ。

どうやら自分の想像以上に俺はこの学生生活に感化されていたらしい。

だからこそ。

お前はまだ来るな、スレッタ・マーキュリー。

 

足音が近付いてくる。

幸い、一人が先行している。

角のギリギリで息を殺し、先頭の一人が現れた瞬間力任せに殴打。

鉄パイプを容易く握り潰す異常な筋力。

人間を全力で殴ればどうなるか?

 

頭蓋は砕け、顔の肉と皮は吹き飛び、脳漿がどろりと零れた。

声を挙げる間もなく絶命した一人目を肉弾として一番遠い敵に押しやり、射線を潰すと共に二人目に向き直る。

まだ銃を構え切っていない。回避は不要。

勢いのまま回し蹴りを胴に一撃、内臓が爆ぜ、背骨が砕ける。

裏拳の追撃、背骨の粉砕に加えて衝撃で首骨を外されたテロリストはそのまま死亡した。

時間を掛けすぎた三人目は既に拳銃を此方に向けていた、向けていたが。

「ウチの銃とは、ご贔屓にどうもッ!!」

首が座る前から自社の銃で遊んでいたのだ。

例え一切の光を絶たれた暗闇だとしても、感触一つあらば分解は容易い。

フィールドストリッピング等、様々な呼称はあるが。

テロリストからしたら理解出来ないだろう。

抜き出し、引鉄を引くその間のコンマ数秒。

瞬き二,三回程の僅かな時間で握られた銃を分解されたのだから。

 

バラバラになったパーツから薄く丈夫な部品を適当に掴んで、一閃。

頸動脈と気道の両方が切り裂かれ、血飛沫を撒き散らしながら沈黙。

 

鮮やかに、無駄なく殺戮していく。

故に気付くのが遅れた。

最後の一人が持つ得物が散弾銃であったことに。

 

この位置、間違いなく後ろのスレッタを巻き込む。

一人目の屍で距離を離したのは間違いだった。

今からではどうやっても第一射は止められない。

 

躊躇う事は無かった。

咄嗟にスレッタと銃口の間に飛び込み、その巨体で包むように庇う。

僅かな間の後に、衝撃。

背中に散弾が食い込んだ。

立て続けに二射、三射。

 

装填された弾を撃ち切った銃手が狙いを外す。

既に撃てないのもそうだが、死亡を確認する必要があった。

動かなくなったその背中に念の為、ナイフを突き立てようとして__その頭が弾けた。

 

「スレッタ、怪我は無いか?」

「あ、ああ、せ、背中、撃たれ、撃たれて」

「こーんな豆鉄砲で俺を殺せるワケなかろう、多少血は出たがかすり傷よ。それよりもだ。」

 

今テロリストを撃ったのは誰か?

敵か?味方か?それが最大の問題だ。

スレッタを背中に庇うように立ち上がり、下手人を確認する。

 

「……お母さん!?」

「あらスレッタ、随分素敵な王子様と一緒なのね。」

「む、母君であったか。」

 

一先ず安泰、か?

取り敢えずスレッタを母君に、プロスペラと名乗る怪しい女に預ける。

確かにスレッタは信用しているようだが……どうも胡散臭いモノだな。特に仮面。

大丈夫?『これぞ人の夢!人の望み!人の業!』とか言い出さない?

まぁスレッタも自分の母が人権の無い犯罪者(テロリスト)とはいえ目の前で射殺したなら困惑するか。

俺は軽く止血をしながら、お付と思しき男から話を聞く。

 

やはりと言うか、ミオリネが居るとしたら父親であるデリング総帥のところか。

問題はこの襲撃の目的が恐くその総帥ということ。

ある意味一番危険な状況下にあるだろう、一刻を争う。

 

二度目になるが、場所の検討が付かないのが厳しい。

さっきスレッタを見つけたのは奇跡に近い、そう二度は起こるまい。

改修されたエアリアルは確保した以上、一度戻って揚陸艇に入れるのも手か。

本音を言うとこれ以上連れ歩きたくないのだ。

身内が手を下したとはいえ、目の前で一人殺されただけであの狼狽え様。

やはりスレッタは殺人にはてんで向いていない。

性根が善性に過ぎるのだ。

 

それに今回は庇えたが、次も出来るとは限らない。

俺とは違う。流れ弾の一つで命を落とす可能性があるのだ。

エアリアルに乗せて一度通用口の方に避難させるのが丸いだろう。

 

「スレッタ、やはりお前は避難して……」

 

ぞわり、と。

幾度となく味わった嫌な悪寒。

こういう時は、いつも選択を迫られる。

今のところ間違えた事は無い、と思っているが。

もし選択を違えたなら、その時は致命的な失敗をする。

そう確信していた。

 

「スレッタ、貴方が皆を守って。」

「わ、わたしは、わたしが?」

「進めば二つ、そうでしょう?」

「……そうか、そうだよね、逃げたら一つ、進めば二つ。」

 

 

 

絶対である母の言葉。

その言葉をトリガーにスレッタの思想が塗り替えられていく。

皆を守るため、地球寮の皆を、神威を、ミオリネを。

だから戦う、戦って、敵を___

 

「おや、ご婦人……我が友に何をしておられるのかな?」

 

考えるよりも早く身体が動いた。

友人の目から光が消え、一種のトランス状態に入るのを見逃さなかったから。

落ち着いて宥めるような、説得するような口調。

何か一つ、特定言葉で自由意思を奪う刷り込み。

これは、洗脳だ。

スレッタに殺人を教唆するに等しい。

 

 

 

 

頭に二発。

プロスペラから、付き人から、それぞれ一発ずつ。

 

身体が弛緩し、膝から崩れ落ちる直前。

体落下の加速を前方への踏み込みに変えて腕を振るう。

強靭な頭蓋に阻まれた弾丸は薄皮一枚を削るのみで弾かれた。

衝撃によりほんの一瞬意識が飛ぶが、返って一種のスイッチとして。

 

良かった、俺はまた正解を選べたらしい。

 

滴る血に顔を濡らしながら笑う。

指を粗雑に折り曲げ、引き裂くような一撃がプロスペラの義手を薄紙のように割く。

一瞬驚愕の表情を浮かべたプロスペラだが、冷静に再度射撃。

心臓を狙った一射は真っ直ぐに標的へ向かうが、強靭な筋肉と骨に阻まれ傷を付けること叶わず。

 

「あら、本当にアーシアンは丈夫ねぇ。」

「なんのつもりだ、女。スレッタは貴様の娘であろう、それを操り人形のように。」

「人聞きが悪いわね、これはお願い。人の教育に口を出すのはどうなのかしら?」

「議論は無駄か、取り繕う必要も無い。死ね。」

 

荒坂 神威、荒坂重工の七代目。

生まれながらその生き方を教えこまれた彼にとって。

何かが欲しい、何かをしたい……その原始的な感情が、即ち。

自らの望みのままに生きる事が、最上の使命だと。

大望を抱き、自ら先陣を切り、声を張り上げれば自ずと集まる。

その姿に、その生き様にこそ。民は夢を見る。

 

時に強欲に、時に豪笑し、時に激怒すれば、悲哀に涙を流す。

王とは清濁を含め、人の臨界を極めたる者。

 

民草もまた、我もまた王たらんと。

或いは、王の歴史に名を刻む勇士たらんと。

そう渇望し、全てを捧げるのだ。

その忠に報いるべく、王は在る。

故にこそ、民は王を羨望し、魅せられるのだ。

 

その勇士とは、チュアチェリー・パンランチであり、ニカ・ナナウラであり。

将来の社員たる地球寮の皆であり、無論スレッタ・マーキュリーでもある。

 

自らの自由意志を奪い、意のままに操る人形にする。

彼の逆鱗に触れるには十分過ぎた。

 

義肢ではなく生身の頭の一つ千切り飛ばせば死ぬだろう。

殺した後にその仮面を剥いで面を拝むか。

 

身体を沈みこませ、四肢を地に付ける。

ダメージに屈したのでは当然ない。

獲物を一撃の屠り去ろうとする捕食者の構えである。

四足で踏み切り、プロスペラに飛びかかる。

「だ、だめです!」

その腕が無防備な首を刈り取る刹那、何かに取り押さえられた。

この場で動けるのは無論、一番近くにいたスレッタだけ。

 

「な……離せ我が友よ!そやつを殺せないではないか!」

「だめです!お母さんを殺さないで下さい!殺さないで下さい……!」

 

無理やり引き剥がすのは容易い。

容易いが、今の自分に力加減の調節は難しい。

スレッタを傷つけてしまう可能性があった。

 

「ありがとうねスレッタ♪お母さん行くわね〜!」

「ぐぅ……離せと言っておるのだ!なぜ分からん!」

 

故に、揚々と去っていくプロスペラを見送る事しか出来なかった。

そのまま、貴重な時間を数分浪費するまで動く事すら叶わず。

 

 

 

 

「……離れてくれスレッタよ。」

「嫌です、お母さんに死んで欲しくないです……」

「あぁ、クソ。時間が無いのだ!離れろスレッタ!!!」

 

ミオリネが見つかっていない以上、時間は一秒でも惜しいのだ。

こんなところで浪費している場合では無かった。

細心の注意を払いながらスレッタを力ずくで引き剥がす。

 

「それがお前の為だと言うのにお前は……!」

「ひっ……」

 

 

 

泣いていた。

生まれて初めて味わうであろう本物の暴力に。

友と呼んだ者の激昂に、恐怖して。

 

「あ……」

 

失敗した。

あの場で誰よりもスレッタに耐性がない事は分かっていたろうに。

本来なら、涙を流すスレッタを放置してでもミオリネを探すのが先決。

しかし、どうしても放っておけなかった。

 

位高ければ徳高きを要す。

そう教えこまれたから?無論それもある。

彼はどうしても身内に甘かった。

部下の奇行も笑い飛ばす程度に甘かったのだ。

その涙の理由が自らにあるなら、尚更。

 

「…………ああ、クソ、はぁ……」

 

言葉にならない感情が口から漏れ出す。

情けない。

自分を恥じるばかりだ。

 

ぐっとスレッタを持ち上げ倒れ込む自らにのしかからせるような体制で抱き締める。

涙と鼻水でワイシャツがぐしゃぐしゃになったがまぁ構わない。

子供を泣き止ませるのに、心音を聞かせると良いとか何とか。

聞きかじりの知識をぼんやりと思い出したのだ。

 

「済まなかった、許せ我が友よ。」

 

あんなでも、スレッタにとっては唯一の肉親なのだ。

それを俺の一存で害するのは軽率であった。

そして気が立っていたとはいえ、スレッタに酷いことをした。

 

「あ……!そうだ、カムイさんも、血、血が。」

「同じ事を言わせるか?こんなものはかすり傷よ、既に血は止まっておる。」

「そ、そうです、か。でも、でも私、ごめんなさい……」

「……まぁ、お互い至らなかったという事だな。」

 

仕方あるまい、まだ俺らは幼いといえる歳故にな。

だが、そうやって慰め合う時間も無いのだ本来は。

 

「そのまま聞け、スレッタ。」

「はい?」

「逃げたら一つ、進めば二つ。良い言葉だ。」

「……」

確かに聞こえは良い言葉だな。

「だがなスレッタ、逆に考えれば逃げても一つ手に入るのだ。

そしてその一つは得る二つより価値がある事も、ある。」

 

命を捨てて金と賞賛を得ても意味が無いように。

失ってはならないモノもある。

 

「だから、この先はお前が選べ。誰の思惑でもない、お前の思うままに。」

「私の、思うままに?」

「そうだ、お前がもし逃げる事を選ぶならば。この俺が、荒坂神威がミオリネ・レンブランを救う。テロリストども全てを鏖殺し、お前たちを必ず守る。我が名誉に掛けて誓おう。」

だからお前は、逃げる事を選んでも良いのだ。スレッタ・マーキュリー。

 

「だが、もしお前が。進むと言うのなら。その手を汚し、修羅の道を行くならば。

俺はお前と共に歩もう。お前の友、荒坂神威として誓う。」

そして、進んでも良いのだ。

お前が自らの意思でそう願うなら。

 

 

 

未来はお前が選べ、スレッタ。

 




地獄へ道連れ。

カムイ……何故かスレッタとフラグが立った。
ここまでやっといて本人にその気は全くない、ヤバい。
生身でも海坊主くらいは強い。俺の身体はカンツーせん。
怒鳴ってから優しくするDV彼氏に天性の才能がある。

たぬき……催眠が半分くらい解けた上、カムイとフラグが立った。
もちろん本人にその気はない。お前もか。

プロスペラ……ヒヤリハット。
余裕を装って煙に巻いたが義手の方で良かった……と死ぬほど安堵している。

社長が怒鳴って後悔する流れを書きたいが為の5600文字。
作者も忘れがちだけどまだ17歳なんだよね……
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