試作一号機がエアリアルのふた周り上(22m)。
『反応ロスト!まだ動ける奴は来てくれ!』
『こっちも壊滅状態だ!あんなの、どうやったら……』
あらゆる火器を受けてなお、僅かに装甲を炙るのみ。
異常としかいい表せない装甲を纏う機体に襲われていた。
その大きさは凡そ24m。
一般的なMSより三回りも大きい巨体に大量の火器。
『もうこの機体はダメだ……吶喊する!フォルドの夜明けに!』
『ああ、俺たちもすぐに追う!フォルドの夜明けに栄光を!』
機動力だけは、幸いにして低い。
迎撃に放たれる砲撃や射撃は俺たちがカバー。
発射の直前に腕を狙って発砲、貫通はしないが僅かに逸れればそれで良い。
更に皆、無駄死にした訳ではない。
腰のグレネードも、背部のミサイルも既に弾切れ。
艦船に乗っていた者、MSに乗っていた者。
それら全ての生命が少しずつ怪物の武器を奪う。
揚陸艇も、撤退用に控えていた凄腕も撃破された。
合わせて数十人の人命と引き換えに、訪れた千載一遇の機会。
機雷散布ユニットを装備した友軍機が組み付き、残った爆装と共に爆発。
数百m離れたところからでも衝撃が伝わるほどの規模。
存在しないはずの空気が震えるような威力。
『やりやがった!』
被害は甚大でも、俺たちにも強敵は打ち破れるのだ。
自らの命を捧げた戦友への敬意と歓喜に、涙を流した。
『パージします』
『中々やるではないか……装甲を二枚持っていかれるとはな。』
爆炎を切り裂き、無機質な機械音と共に傷付いた装甲が弾け飛ぶ。
たったそれだけ。
何事も無かったように再度此方に肩部のキャノンを向けてくる。
一体どれほどの装甲と武装を積んでいるのか。
『回避だ!回避しろ!』
「……はは、はははは。」
限界を超えた絶望で、笑うことしか出来なかった。
通信越しにわざわざ伝えてくる、装甲二枚の被害。
それが戦友の、俺たちの命の価値と告げるようで。
『今すぐ退___』
放たれる砲撃を視認し、それがコクピットを貫く音が聞こえた。
到達した爆炎が身体を焼いて。
「はは、死にたくない。」
それが言えたのか、言う間もなかったのか。
認識することは出来なかったが。
「まさか特攻してくるとは……」
奴らの覚悟がこれほどとは!
読めなかった、このカムイの目をしても!!
……まぁ、ジャミングのせいで返答は無いのだが。
あったら多分だが、ろくでもない話になる気がするな。
『なんか社長は結局大事なシーンで策に溺れ余計な事をする……そんな男じゃないですか!!?』
『うっ…うるせーバーカ!』
『聞きましたか皆さん、信じられないですよこの男!』
こんな感じか、通じてなくて良かったか……
にしてと、脚部装甲を二枚持っていかれるとは中々の火力だった。
とはいえ弾切れは遠くない……
「ジャミングがあるから一発目は一時間半後と指示したが、あとどのくらいだ……?」
多分だが、あと2,3分。
キャノンも弾切れか。
『パージします』
スペースデブリが増えてしまうが、今更。
既に何機も落としたのだから気にしてもしかたあるまい。
だが無駄にはしない。
外れた肩キャノンを蹴り飛ばし、一番近い敵に激突させる。
単純な質量はいつだって脅威なのだ。
怯んだ隙にマシンガンを奪って蜂の巣にする。
使い勝手は悪いが無いよりはマシだ。
実弾はビーム兵器と違って火器管制装置が付いてないモノも多い。
単純にMSの指で引鉄を引くだけで撃てるようにしているのだ。
そうすれば多種多様なMSで運用が可能だからな。
撃破した機体が爆散する前に足蹴にして距離を取りつつ加速。
バックブーストで射撃しつつ予測着弾地点へと寄り、最後の腕グレネードを撃って即射起爆。
スーパーナパームならば宇宙空間でも短時間燃焼し、足止めになる。
同時に射出ユニットが到着。
即座に機体を背を預け、武装を換装していく。
得物は……弾速の速いモノが好ましいな。
『補給完了です』
「よし!伊邪那岐、再び出るぞ!」
この間、僅か三分。
前線で容易く再武装を可能にする補給ユニットの砲撃は、圧倒的なアラサカの財力あってこそだが。
可能ならば隙なく砲撃を続けられ、恐ろしい弾幕形成を可能とする。
弾切れのマルチランチャーはガトリングユニットに置換し、キャノンは本体ごと取り替え。
その他武装は再装填と交換を済ませてある。
「全く、この我に露払いをさせるとは……」
スレッタ・マーキュリーは確かに自らの意思で答えた。
『ミオリネさんを、助けたいです!だから……!』
強い意思を持って道を選ぶことは素晴らしい事だ。
そして俺に露払いを望んだ。
「ガハハ、なんたる不遜。なるたる不敬。恐れを知らぬ者よ。」
だが、それで良い。
それだから良い。
友の頼みとあらば尚更。
「むぅ?」
かなり減ったとはいえ、残敵は中距離からの引き撃ちを選んだようだ。
昔ながらの戦列歩兵式でとにかく手数を増やすと。
ジャミング装置の周辺ならこちらからも捉えにくい……考えたな。
「だが良いのか?その距離は我が國ぞ。」
背部ミサイル8発
膝部連動ミサイル32発
腰部四連グレネード
左肩ガトリング
右肩240mmキャノン
対艦ライフル
全武装を展開する。
この中で殲滅力が一番高いのは計40発を一度に放つミサイルだ。
しかしそのミサイルはジャミングによって無効化……
勝算はその辺だろうか、切り込まねばこのイザナギの装甲は貫けんが。
「さて、我ならどうするか。」
こういうジャミング機雷というのは存外高いのだ。
所詮奴らはテロリスト、これら全てが自ら妨害電波を発しているとは考えにくい。
親機となる機雷が発した電波を検知し、増幅して再度発する。
金銭面を考慮するなら、そんな仕組みの子機を混ぜるのが常。
一帯の電波を司る端末を潰せば良いのだ。
その他武装を放ちながらゆっくりとライフルを構える。
見た目からは当然分からず、妨害によりレーダーは殆ど機能しない。
「……」
目を閉じる。
「…………」
人間の持つ第六感、それが本当にあるのなら。
我に分からぬはずが無い。
ましてや先程スレッタを救出した時にも機能した。
キャノンで、ガトリングで、対艦ライフルで。
或いはグレネードで、ミサイルでも。
撃破する。破壊する。
過程はどうあれ確実な事が一つ。
人を殺しているから。
その事実で心が潤う。
自分に足りないモノが満ちていく。
得た力を存分に振るう戦いの愉悦と合わさって。
一種のゾーンというものだ。
「そこだ!」
弾幕に晒されながら構えを崩したMSは、身体を反転させながら一つの機雷を撃ち抜く。
その狙いが正しかったのかの答えは、正常に戻ったレーダーを見れば考える必要さえない。
被弾を気にせず射撃したが為、ダメージを負った胸部と肩部の装甲が剥がれ落ちる。
逆に言えば被害はそれだけなのだが。
『ガハハ、悪くない余興であった。さらばだ。』
妨害電波により一度散開したミサイルが再び獲物を捉えた。
テロリストの残存機は一箇所に固まり、襲来するミサイルの迎撃を試みるも、駄目。
二度に渡って放たれたミサイル、合わせて80発。
精々数発落としたところで、文字通り一帯を埋め尽くすミサイルの嵐。
一機落ち、迎撃力が落ちて二機。
死の連鎖は留まることなく全て沈黙した。
『パージします』
ミサイルが品切れだ。可能なら再補給を……否、使いどころか。
『聞こえるか?我だ。』
『艦長、新手のワレワレ詐欺っす。』
『おっかねえ、さっさと切っちまいな。』
『減給にするぞ……乙式を出せ、ここで切る。』
『了解……あれ?となるとさっきの武装は……』
『殆ど使い切ったぞ、弾持ちは流石に悪いな。』
『グレネード六発で我々の年収より高いっすよ!?そこら辺分かって!!!』
とはいえ惜しんで死んでは意味がなかろう。
それに社長である我自身が許してるのだから別に……
分かった、分かった。
我が悪かったからそのプレッシャーはやめるのだ!
メカニックを怒らせるとロクな事が無いッ……!
『はは……まぁ落ち着きなさんな。特殊兵器乙式射出準備!到達は5分後辺りで。』
『委細承知、通信切断。』
さて、透過スキャナーでミオリネを探せると良いが……
エアリアルの方は何処だ?
我より先に出て、ミオリネの捜索に注力したはず。
ならば、既に見つけているやもしれぬが。
何も無い宇宙の闇に発砲。
同時に飛び出してきた残党機がコクピットを正確に撃ち抜かれ、爆散した。
「違うな、これは。」
直感、第六感、勘。
そういう人間の謎めいた力、その類だと思っていたが。
これは違う。
見えるのでなく、視える。
隠れた敵も、その未来の動作まで。
パイロットになって初めて、自らの非才を恥じた。
あらゆる文武に長け、この世の全てを欲したこの我が最も欲した才が。
MSを操る才だけが無かった。
他の才能で補える?
ホルダー以外には決闘で勝っている?
それがなんだというのか。
皆が寝ている時にあらゆる戦術を学んだ。
皆が遊ぶ時に自ら機体を設計した。
皆が鍛錬するとき、当然に鍛錬をした。
そこまでして追い求めて尚、見えなかった。
手の届かぬ遠い世界。
そうか、これが。
「追いついたぞ……!スレッタ・マーキュリー!!!」
これが頂の景色、お前たちの世界か。
艦船からの砲撃を最小限の動きで躱す。
装甲の外側、塗装一枚を僅かに焦がすギリギリで。
幾ら重MSでも大出力ビームの艦砲を数発食らえば流石に撃破されてしまうだろう。
しかし、当たらなければどうということはない。
砲口を捉えれば後はタイミングである。
その瞬間は身体が教えてくれる。
全て躱して取り付いてしまえば、如何な砲だろうが無力。
ヒートナイフを艦橋に突き刺し、亀裂に銃口を突き刺して射撃。
行き場を失ったエネルギーが艦内で炸裂、融合炉に到達し誘爆した。
ライフルを引き抜き、薬莢を排出しながら遥か先へと再び放つ。
超音速の弾丸がエアリアルを僅かに外れ、更に奥、地球の魔女を掠める。
『ッ……危な……何すんのよ!』
『ふむ……我が故郷の言葉か、意外と言えば意外だ。』
同じアーシアンとはいえ、まさかそんな身近に潜んでいたとは。
『貴方は……?』
『何?この姿を見て分からぬとは。ガハハ、下賎で貧しい人間は思考まで劣るな。』
『ノレア、こいつのエンブレム。アラサカだよ!!!』
『分かれば良い、我は寛大だ。平伏の必要はない……地球の魔女共。
今すぐ投降するというならば、我が軍門に下る事を許すぞ?』
『……は?』『……え?』
『言ったろう、我は寛大だとな。本来生きる価値など無い貴様らテロリスト共だが……その
何より優先すべきは機体。
だが、次に必要なのは操縦手だ。
実戦に対応したGUND被験者。
研究対象として良し、
む……返答が無いな。あまりの慈悲に気を遣ったか?
『その槍働きでもって我に仕えよ。その力、テロなどに使うは惜しかろう?』
『……』『……』
やはり返答はない。
その変わりとして強力なビーム砲の一撃が返ってくる。
中々の威力だ、先のディランザで摩耗した左腕盾が完全に溶解してしまった。
『……ざけんなよ……ふざけんな!お前みたいのが、居るから地球は!私たちは!』
話が通じぬか……やはり対話を試みるのが無駄だったか?
まぁ、良い。どの道スレッタ相手に一対二などと小物然とした雑魚だ。
『所詮獣か、これだから地球人のくせに光学兵器に頼るような奴は信用ならん。』
地球の魔女、すなわちその機体は地球のガンダム。
陸戦型ガンダムということだろう、なぜ実弾兵器を使わぬのだ!
軟派な機体、許すまじ。
『嗚呼、惜しいな。敵味方を問わず優秀なパイロットがまた、二人も死ぬとは。
だが、その選択は咎めまい。自ら道を選ぶ事は何より尊ばれる事だ。そうだろう?』
『一々大仰なんだよ!人殺しの一族、時代遅れの機体。いい加減……』
『今、なんと言った?』
機械越しに流れた、低い声。
その響きが温度を奪っていく。
超低音の宇宙から更に。
『テロリストが、我を、荒坂を笑うか?』
『【位高ければ徳高きを要する】と。先祖より伝わる家訓により、二度まで非礼を許す。
我が友に、スレッタ・マーキュリーに銃を向けた。許そう。我が家、我が社を愚弄した。許そう。
時代遅れの機体、と。お前はこの機体を嗤ったな。我が社員が寝食を惜しみ、尽力したこの機を。
先祖代々伝わる我が社の技術をだ。……図に乗るなよ端女風情が。』
殺戮の狂奔から覚めた。覚めてしまった。
それほどの憤怒、それほどの怒り。
友への狼藉、会社への愚弄はまだ良い、どうせ殺すのだから。
だが、部下を、技術を嗤うというならそれは許し難い。
全ての照準を合わせ、引鉄一つで射撃出来るようにして言う。
『生憎とここは決闘の場ではない。殺し合う戦場だ。尚更やる気になった。
案ずるな、機体の残骸は開発チームに、貴様らの屍を切り刻んで研究してやろう。
覚えておくと良い。俺より優秀なパイロットだろうが、それは勝利の一つの要素に過ぎぬ。
機体の性能こそが闘争の勝敗に直結するのだ、それを教えてやろう。』
怒れる獅子は獰猛に笑った。
激おこNT社長
NT力はゾーンに入ったから高まってるだけで普段はカイ・シデン以下です。
社長……部下への侮辱は許さない、ブッコロ
たぬき……なんかこわい
地球魔女……地雷を踏み抜くプロ