全員言葉足らずにも程があるだろ!
さてと。コイツの開発意義を一年越しに試す時が来たと言う事だな。
勿論、立ち塞がる全ての雑魚を蹴散らしてやるつもりだが……俺の目的は当然そんな所ではない。
「スレッタ・マーキュリー、我が友よ。ここは一つ狩り比べに興じるのはどうだ?」
「狩り……?」
「なに、単純な事よ。此度のランブルリング、最後に残るのは当然俺たち……だが、当たり前過ぎてつまらぬだろう。
結託での戦いが半ば認められてる故に尚更な。今回の勝負はお互い挙げた首級で競おうではないか。
確かあの体験入学生……アーシアンの……まぁ、奴らも居るのだろう?アレは三点としよう、早い者勝ちだ。」
「で、でも、その、人を点数にするのは……」
「ふむ、ホルダー殿は自信が無いのか。」
「……やります!私、負けません!」
分かりやすい奴だ。人に利用されないと良いのだが。
出撃前に機体の細部まで隈なく確認する。
決闘に於いて戦闘前の工作などは日常茶飯事だからな……
その辺りの用心が我が友には足りぬ、俺やニカが補助してやらねば……
『遊撃は我に任せるが良い!スレッタを守れ!』
『おい!勝手に飛び出すなよ!?』
時既に遅し。
出撃の初速をそのままに、正面に捉えた敵機を襲う。
出撃からまだ数秒。恐らくは戦略の打ち合わせでもしていたか?
隙だらけだ。
双斧を交差させ、双方から引き裂くように首を落とす。
アンテナさえ折れたらそれで良いが、首を落とすのが確実。
操作を失って崩れ落ちる敵機を抱えて残敵の一方からの射線を切り、同時にもう一方と対峙する。
実戦に於いては友軍諸共貫く事は少なくないが……これは決闘。
FCSはコクピットをロックオンせず、友軍への発砲には武装がロックされる。
だからこんな戦法が取れるのだ。
正面に捉えた一機の右腕を切り落とし、盾にした敵機を今度は其方へ押し付ける。
呆気に取られた敵の脚部を切り払い、崩れ落ちる前にサブアームの斧が敵を八つ裂きにした。
これで二つ……側方を見れば、隻腕の機体がビームソードを振りかざす所。
怯まないか、良きパイロットだった。
サブアームの斧がその切っ先を弾き、横殴りの一振りでアンテナも破壊する。
「生憎だが手数が違う、文字通りな。」
これで3点、スレッタの方はどうだ?
アレはディランザ、それに大斧……ラウダ・ジェタークか。
確か奴はCEOを継ぐ為にこの決闘後に学園を辞めると聞いたが……
なるほど、兄の仇討ちといったところか。
美しい兄弟愛に涙を流したい所だが、スレッタを傷付けて貰うのは困るな。
『スレッタ、二秒後に全力で後ろに吹かせ。』
『はい!?』
『ソイツは我が貰う。』
ディランザが斧をエアリアルに叩き付ける瞬間、後方に加速。
当然二機の距離は離れ、追うディランザの前に赤い影が飛び込む。
『随分……冷静さに欠ける操縦だな、ラウダ・ジェターク。』
『お前……!』
『この機体の仮想敵はディランザ……機体は同じなら、試させろ。』
双斧の連撃を大斧の肉厚な刀身で捌くラウダ。
兄弟揃って凄まじい腕前である、とはいえ問題はない。
「サブアーム展開、一気に攻める!」
鍔迫り合いの状態から不意に攻撃が飛ぶ。
さながら触手の如く自在に蠢くアームがあらゆる隙を埋め、手数を倍増させる。
しかし四振りの斧を纏めて薙ぎ払うように、大斧の峰で殴られる。
圧倒的な質量差の前に弐号機は吹き飛ぶが、空中で反転。
大地を削りながらなんとか体勢を立て直すことに成功した。
刃では無いとは言え、傷一つ無いのは流石のアラサカ製ともいえる。
『なるほど、強い。やはり斧は格下にしか通じぬか。』
『邪魔をするなァァァ!!!』
『あまり喚くでない、弱い獣ほど……というやつだ。』
大上段から、全質量を載せた唐竹割り。
弐号機の装甲でもとても耐えられないであろう一撃。
技量、タイミング、威力。全てが完璧。
『良い一撃だ、ならば此方も全力にて応えるのが筋。』
両手の斧を取り落とし、腰に携えた太刀に手を添える。
試作伍号と違い、その刀はしっかりと鞘に納まっていた。
見るものが見ればその構えに、地球のとある武を見い出せるであろう。
居合。
納刀され、鞘に覆われた刀を引き抜きざまに切りつける技術。
その特異な見た目から、多くの創作に用いられてきた。
だが、確と構えた太刀に比べて威力など上がろうはずも無い。
あくまで不意打ちを迎撃する為の技術に過ぎない、というのが見識である。
しかし、初太刀ならば話は別。
鞘に納まった刀身を抜き打つ振り幅。そして精神的な平穏が生まれる。
静と動の振れ幅は、そのまま振るう太刀筋をより鋭くするのだ。
人間以上に人間らしい動きを再現する機体だからこそ出来た。
脱力に脱力を重ね、遂に身体は落下。
瞬間、踵に満身の力を込めて前に蹴り出す。
体落下の速度をそのまま前方へ投げ出す事で生まれる神速。
更にそれを急制動し、腰の捻りが力を生み出す。
ディランザが斧を振り下ろしてから動いて尚、それに勝る。
『ぐおッ……!』
『勝負は尋常であった。恥じる事は無い、相手が我だ。』
ディランザが斧を保持する片腕を見事に断ち切った。
更に抜き身の刃で頭部アンテナの切断を狙う。
当然、ディランザもそれを迎撃する。
オッズ上位者同士の苛烈な削り合いは、然し残念ながら決着付かずに終わる。
不埒な乱入者によって。
激昂により攻撃一辺倒に染まった思考が災いし、ラウダの駆るディランザは一撃で沈黙する。
戦いに水を差された事を不満に思いながらも、神威は冷静に乱入者を分析していた。
「……おいおい、あれはこの間のテロリストでは無いか。見ない機体……まさかあの二人が?
然し、何故ここに……否……テロリストだと?だから……つまり……」
そもそも、
茶色ががった機体が、参加者の一人、タンクのコクピットに照準を合わせる。
放たれたビームはじっくりと装甲を焼いていき__溶かし貫く刹那、飛来した斧がタンク側面に命中した事で辛うじて貫通を免れた。
距離的にこれしか無かったとはいえ、我ながら雑な解決法だ……とにかく。
『セセリア・ドート!ロウジ・チャンテ!誰でも、誰でも良い!
奴らの武装は実戦仕様だ!中止しろ!死人が出るぞ!』
タンクにめり込んだ斧を回収し、サブアームを更に展開。
四振り全てを其方へ移動し、本来の腕で太刀『叢』を構える。
決闘用のリミッターがかかった武装で、実戦仕様のMSと戦うか。
ガハハ、五分といったところだろう。
この場で奴らを止められるのは俺、或いは……
『スレッタ・マーキュリー、我が友よ。聞こえるか?』
『カムイさん!け、怪我は!?』
『我がするはずなかろう……本当ならば、お前の事も守ってやりたかったが。
だが生憎、手が足らぬ。誰も彼も救うにはこの両手ではあまりに足りぬ。
だから、お前に頼む。手を貸せ、我ら二人で奴らを止めるぞ。』
『……!はい!』
『良し、俺は茶色の方を叩く。都合良く緑の方はお前を狙っているようだからな。死ぬなよ。』
初手の刺突、躱される。
左アーム斧二連撃、効果無し。
回転を利用した袈裟斬りに見せかけた飛び膝蹴り、命中。
打撃力により敵機の体勢を崩す、有効と認める。
『パーメットさえ使わなきゃ所詮貴様はただの高性能機、だらしないなぁガンダム!』
『……ッ!』
「む?」
流れを掴んだのも束の間、神威の周りを六機のMSが囲む。
「モビルスーツ……GAND-ARMが作用しているなら、無人か?」
つまりこれはビット兵器。
MSの様な風体ではあるが、その中身はエアリアルやファラクトのビットと相違無い。
ならばつまり、目的はオールレンジからの飽和攻撃。
向けられた銃口を視認し、その隙間に身を翻す。
一拍遅れて光線が通過、すんでのところで回避に成功する。
「見えぬ……見えぬが……弾が湾曲するワケでもあるまい。」
『貴方には!分からないでしょうね、虐げられる側の気持ちは!』
『ああ、さっぱり理解出来ぬ。』
再度包囲しての射撃。今度はガンダム本体も共に射撃。
回避する隙間も無い密な弾幕が弐号機を包み込む。
『理解する気も無い。我が背には荒坂グループ一千万の命が掛かっている。
分かるか?一千万人だ。我にはその皆を守る権利と義務があるのだ。
それを守るためなら、一億だろうが十億だろうが殺してやるとも。』
それが我が務め、我が使命、我が呪い。
これこそが荒坂神威の生き方ならば。
再度手に斧を二振り、サブアームと合わせ四振り。
肝要なのは回転力。斧を振り回し、同時に機体も動く。
高速で回る斧は残像を伴い、やがてその形さえ失う。
姿形は見えずとも、尾を引く赤熱の軌跡が確かにその重厚さを伝えん。
ヒート刃はプラズマを伴い、ビームさえ弾き飛ばす。
斧回球と名付けたその技。例え一斉掃射でも貫けぬ。
弾幕が止んだ頃、速度を緩やかに落とし、再度斧を格納した機体が太刀を抜く。
絶対王者、グエル・ジェターク。勝率100%、シャディク・ゼネリ。
そして閃光の如く現れた水星の魔女、スレッタ・マーキュリー。
その全てと競って尚、彼は二位の座を守り続けた。
決闘の数はグエルを超え、勝利数もシャディクの遙か上。
彼に、天はMSを自在に駆る才能だけを与えなかった。
最も欲する力を、持ち合わせなかったのだ。
だが、そんな事はどうでも良かった。
才能の差は機体性能で埋めれば良い。
彼には財力があった。権力も、設計の才能もあった。
MS操縦以外全て、自らの持てる力全てを注ぎ込み、彼は自らの正当性を証明した。
『リミッター制御不能、決闘レギュレーション解除』
『……OSの書き変え程度、片手間で可能よ。さて、地球の魔女、或いは我が3ポイント。覚悟は良いか?』
ただ一つ、彼には弱点があった。
『神威!大丈夫か!?』
『愚か者!来るんじゃないッッッ!!!』
ビームガトリングが火を吹き、ビットの一機を破壊した。
決闘レギュレーションでも十分な威力が保証されていたからだが……故に、それは悪手だった。
『何言って……』
ガンダムは、その脅威度を認識した。認識してしまった。
ならば、当然排除に移る。
デミ・トレーナーの機動力の低さでは、あの弾幕は避け切れない。
避けようの無い死が、チュアチェリー・パンランチに向かう。
そんな未来を、彼は視た。
視えてしまった。
その時点で、彼の取れる行動は一つしか無かった。
『我より前に、出るでないわ!』
『うおっ!?』
限界を超えた機動でデミ・トレーナーを蹴り飛ばす。
蹴り飛ばすのが、限界だった。
殺意の雨が弐号機に降り注いだ。
神威……王としての慢心、傲慢さが精神的強さを支えている。
故に背に臣下を庇う時、帝王に後退は無いのだ。
チュチュ……庇われてしまう。ガンヴォルヴァのキルスコア2なので強いのだが……
地球の魔女……3ポイント。当然名前は覚えられていない。