位高ければ徳高きを要す   作:CATARINA

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お休み中の全力執筆ラスト

ランキングから来た人はこの作者は毎日更新するんやな!と期待してしまうかもしれないのだけど調子に乗って書いてるだけで普段は一日1000〜2000とかなんだ……
多分次の更新は土日になるけどお許しを……


雄弁は銀だが沈黙に勝る

学園は学園で、グエル・ジェタークの帰還やら何やら騒がしいようだ。

設計などが終わったとはいえ、俺も一度この目で情勢を見極めねばならぬか。

だが、その前にしておきたい事がある。

 

二人が寝静まったのを確認して寝台から抜け出す。

彼女らにとって愉快なモノでもない。わざわざ見せる必要も無いだろう。

 

地上に降り、移動用の電動バイクを走らせて十数分。

先日ソフィらを伴って来た作業場である。

 

とはいえ、既にガンダムらの原型はない。

研究の為、調査の為、あらゆるパーツを解体し、此処に解析している為だ。

しかしながら、神威の指示で残したモノがある。

ルブリス・ソーンとルブリス・ウルの外装パーツ。

即ち機体の外殻となる部分である。

パーメットなども含まれていない純粋な金属部分のみ取り出した。

 

何故と問われたら、特に理由は無い。

そもそも、特に目立った技術も無いガワの部分である。

やろうと思えばこれ以上の性能の外装を用意するのは容易い。

だがあの二人を守るのに、これより最適なパーツは無い。そう思えた。

 

GUND技術は本来、人の命を救い、守るもの。

今や呪いと化した『それ』に意味があるのなら。

本当に誰かに願われた存在なら。

 

「証明してみせろ、ガンダム。」

 

不意に天井からの光を浴び、二色の装甲が煌めいたように見えた。

 

 

 

 

 

そうして、新たな機体の製造を命じた神威は地球の魔女らに後を任せ、

再び学園へと戻るのだった。

 

『報告内容の通りでございます。あとはいつものように記憶の共有を致しましょう。』

「頼む、今回も入れ替わりには誰も気付いていないのだな?」

『勿論。誰一人違和感無く。』

「流石だな、今の所ニカ・ナナウラにしかバレていないだけはある。」

 

何故か今の所ニカにのみ入れ替わりを勘づかれるのだ。

ウチの社員でさえ誰一人見分けが付かぬというのに。

 

そうボヤきながらカモイの上半身が液状化し、神威の頭部を包み込む。

そして今までの経験を共有、記憶を送信して再度離れた。

 

「……何度やっても慣れはせぬな。」

『そんなにですか?』

「お前は送るばかりだからだ。同じ時間に二つの、自分二人分の記憶が存在するというのは中々不思議なものだぞ?」

 

だがまぁ、状況はよく理解出来た。そしてやるべき事もだ。

 

 

「さて……ミオリネ達の元へ向かうか。」

学園に帰還しているとの事なら、恐らくスレッタのところだ。

そしてこの時間、スレッタは十中八九ミオリネの温室に居る。

何気に学園の本舎からある程度離れていてアクセスは悪い。

 

道中で地球寮に立ち寄ると、チュチュが不満げにこちらを睨んできた。

 

「ニカ・ナナウラが居ないのがそんなに心配か?」

「違ぇよ!いや、それもあるけどよ……」

 

一呼吸於いてチュチュは俺を咎める。

確かに地球寮への嫌がらせは悪質だったが幾らなんでも骨を折るのはやり過ぎだ。

それも再起不能になりかねない程徹底的に。

 

全く心当たりは無かったが、記憶にはある。

なるほど、カモイの方がやったのだな……

 

「確かにそうだな……しっかりとトドメを刺さないのは良くなかった。」

「違ぇよ!……もういいや、スレッタのとこ行くんだろ?温室で合ってるよ。」

 

違ったか。俺なら完膚なきまでに破壊し、確実に絶命させるが……どうやら違うようだな。

とはいえ、スレッタの居場所が確定したのは有難い。

そして道中、ミオリネと出くわす。

 

「久しいな!ミオリネ社長!」

「わざとらしいわね……普通に呼びなさいよ。」

「ガハハ、それもそうだ。スレッタのところへ行くのだろう?俺も用事があってな。」

 

連れ立ってあるけばやがて温室が見えてくる。

 

「わざわざ管理するのも骨だろうに、マメな事だ。

やりたがってるならさせるべきだがな……」

 

そして扉を破るような勢いで何かが飛び出してくる。

咄嗟にミオリネとの間に割って入り、受け止めたが……こいつは確か。

 

「エラン・ケレスか?」

「クソッ!離せ!」

「おいおい、何だってこんな温室に……」

「カムイ!そいつはスレッタに暴行を加えようとした現行犯だ!武器も持ってるぞ!」

 

おお、グエルじゃないか。

一体どういう事だ?スレッタが何___

 

「離せ!」

「は?」

 

瞬間、雷光が轟く。

異常な出力に改造された電気銃が神威の身体に突き刺さった。

感電し、怯んだところを突破しようとしたエランだったがここで想定外の事態が起こる。

 

「スタンガン……それも致死レベルじゃないか。穏やかじゃないな?」

「なぁ!?」

 

常人なら感電死してもおかしくない電圧だった。

しかし、相手が常人では無かった。

これに関して、エランを責めるのは酷だろう。

恐らくは全世界で唯一そのタイミングで出会ってはならない男とぶつかってしまったのだから。

まことに不運な男である。

 

とはいえ、彼も必死だ。

咄嗟にナイフを抜き、深々と切り付けようと刃を突き立てる。

確かな品質が保証されている鋼で出来た数打ちの刃。

 

 

 

 

そんなモノで、荒坂重工7代目社長を傷つけることは出来ない。

 

防刃のシャツを破ることは構わず。巌のような胸筋に阻まれ、呆気なく根元から折れてしまう。

とはいえ、折れた刃先がミオリネの方に飛ぼうとしたのを掴んだ事で拘束から逃れる事には成功するのだった。

後ろも振り返らず全力疾走するエランは既にかなりの距離。

 

「……怪我は無いか?ミオリネ。」

「え、ええ。でも貴方は……」

「俺がこの程度で手傷を負うかよ、何故なら俺は荒坂重工7代目社長だからである!」

 

そう言って神威がいつものように名乗ると何処からともなく群衆の歓声が聞こえ、やがて止んだ。

 

「とはいえ、不埒者に罰を与えねば……な!」

 

そして刃を遠投。

辛うじて後ろ姿で識別出来るような距離のエランに刃が突き刺さる。

狙い通り背中に深々と突き刺さる刃に悶えながら彼は逃げ去っていった。

 

「その逃げ傷を笑われる度にこの俺の事を思い出すが良い!自らの愚かさを悔い改めるのだ!」

 

 

 


 

「だいぶ変わったな、グエル・ジェターク。迷いの薄れた、良き顔をしている。

会社を立て直す……良き目標じゃないか?こちら側へようこそだな。にしても、告白の焼き直しとは。

実に面白い!面白いぞ、ガハハハハハハ!!!!!」

 

端末を構えて録画していた男が笑う。

 

「おいまさかお前!また撮ってたのか!?」

「こんな熱烈なモノ面白……参考として保存するに決まってるだろう!」

「消せ!なんて事しやがるんだお前は……!」

 

売り言葉に買い言葉。

元ホルダーと二位の揉み合いは数分に及んだ。

 

「そろそろ良いかしら?」

「もしかして怒っているのか?ミオリネよ。」

「誰のせいだと思ってるのかしら……?」

 

一体誰が……許せないな!

 

「だが決闘とは、何故今更?」

「私がグループの総帥になる為よ。ジェタークには後ろ盾になってもらう。」

「おい待て!話が読めんぞ!」

「そうか?俺は掴めたぞ、つまるところ……お前がスレッタに勝つ必要があるのだ。」

「何だと!?……俺に、勝てと言うのか?何故?」

「アンタと同じよ、グエル。私も守りたいモノがあるの、花嫁を……スレッタから奪い返して。」

 

ちょっと待った。

 

「何故俺に打診しないのだ!俺じゃあスレッタに勝てないと!?」

「そうよ。」

「素直で宜しい!悔しいが事実だろうからな!」

 

悔しいが仕方ない。

改修型エアリアルの能力は俺の想定を遥かに超えている。

想定外は想定内だが、機体が着いていくワケではない。

 

次世代機……もう一度機体を更新出来たなら、或いは……

 

「にしてもだ、ミオリネよ。大切なら何故そうと言わないのだ……?

想うばかりでは伝わらぬぞ?大切ならばそうと、愛してると言うべきだろう。」

かく言う俺も改めて教えられたばかりなのだが。

 

「アンタに何が分かるのよ……」

「いや、つい最近似たような事があってな。夫婦といっても結局は他人。

しっかりと言葉にして想いを伝える事の重要性を痛感した。」

「……そう簡単に行かないから、苦労してるのよ。」

 

 

 

「おい、ちょっと待ってくれ二人とも。」

何かが引っかかるようで、グエルが声をかけてくる。

「どうしたのだグエル、改修型エアリアルの戦闘データなら此方から提供出来るが……」

「……お前今、夫婦って言わなかったか?」

「あれ……?」

「ああ、言ったな。」

何かおかしいことがあっただろうか。

 

 

 

 

「俺は一応、既婚者だぞ?」

「「は!?」」

そういえば、学園の者には誰一人言っていなかったな……

 

 

 


 

そして決闘が決まったワケだが……

わざわざ俺を巻き込んだのには、理由があるのだろう?

 

「ええ、言ってしまえば、一種の八百長を仕込むわ。」

「おっと、風向きが変わってきたな。俺にくだらん仕込みをさせようと?」

 

神威は敢えて怒気を露わにした。

確かに決闘においては事前の小細工など日常茶飯事。

だがそれは小物同士の戦いでこそ推奨すべきものだ。

 

事実、神威は改修型エアリアルと元ホルダーのグエルの決闘は楽しみであった。

それに水を差すような真似はしたくない、というのが本音である。

 

「今なら、聞かなかった事にしてやるが。」

「……ッ!協力しなさい!あの子をガンダムから解放する為に!

私は、私はこれ以上!あの子を巻き込みたく無いのよ!」

 

そうか。

 

「だったら!だったら何故直接そうと言わない!?あの母親が邪魔なら俺が始末すれば良い!

何故直接話そうとしないのだ臆病者めが!それだから貴様は言葉が足らぬのだ!」

「スレッタを、傷付けたく無いからでしょう!?」

 

嗚呼。全く。

 

理解出来ぬ。全く理解出来ぬ。

 

「……理解出来ぬし、賛同もしかねる。しかねるが……それが友の為なら、一度だけ協力しよう。」

 

全く気は進まない。それでもやらねばならない、か。

久しぶりの学園でまさかこんな事になるとは……

 

何やら嫌になってきたな。

 

 

 

 

 

案の定というか、機体の整備は俺に任された。

ある意味当然……ニカがいなければ次点で動けるのはこの俺なのだから。

ミオリネが仕込んだ緊急停止アプリに反応して機体を停止させる。

その為のOSの書き換え、言ってしまえば爆弾の仕込みか。

エアリアルに搭乗、機体を起動して端末に接続。

端末越しにプロテクトを解除していく。

 

「中々複雑で独自のセキュリティをかけている……5,6分ってところか。」

 

特に問題はない。

プロテクトを外すと同時にウイルスのアップロードを開始。

これが入り切ればエアリアルはいつでも停止させられるようになるだろう。

 

あぁ、イライラする。

グエル・ジェターク、お前でもさえ、『コレ』無しではスレッタに勝てないのか?

だったら俺は……俺は、どうやってそこに至れば良い。

 

試作壱号での苦い敗北から、既に百回は設計を見直している。

その果てに生まれたイザナギでさえ、その背に届かないのなら。

リミッター。

火薬と質量弾を伴う俺の機体はどうやっても決闘用に大幅な制限がかかる。

実戦なら或いは、どうだ?

何かの手違いで、エアリアルと殺し合いになったなら俺は勝てるのか?

 

『アップロード完了』

「いつか、な。その時は小細工無しだ。小細工無しで……お前を叩き潰す。」

 

そう考えれば多少は気持ちも晴れた。

言い訳に過ぎないのだがな。

 

『カムイー、機体は大丈夫そうなのか?』

『……あぁ、問題はない。少なくとも今可能な限界の性能にはした。』

 

嘘では無い。

事実、可能な限り直そうとはした。

 

 

機体から降りて、エアリアルを見上げる。

かなり突貫工事だが、少なくともMSの体裁は保てただろう。

 

正直、この場に居たくなかった。

苦しさで頭がどうにかなりそうだ。

 

「カムイさん!」

 

朗らかに笑いながら声を掛けてくる。

 

「出来る限りだが、万全に仕上げた。」

「ありがとうございます!」

 

その笑顔がとにかく辛い。

俺を誰よりも苦しめるのだ。

 

「スレッタ。」

「はい?」

「……頑張るのだぞ。」

「勿論です!」

 

 

 

 

 

 

 

そして俺は自らの成果をしっかりと確認した。

 

『グエルさん!も、もう一度!もう一度決闘を!』

『諦めろ、スレッタ。』

『カムイさん!?』

『決闘決闘と……エアリアルはもうお前の機体ではないだろう。お前は、負けたのだ。』

 

「カムイ!テメェ!」

当然、こんな事を言えば怒る。

チュアチェリー、お前はそういうタイプだ。

 

椅子に座っていたため十分届く範囲にある顔面に、拳が突き刺さる。

しかしその拳はめり込む事も無く、また、よろめいたが彼が倒れる事も無い。

 

「事実は、事実だ。結果が全てだろう。」

「だからって言い方ってモンがあるだろ!なぁ!」

 

その態度に激昂したチュチュはとうとう神威を押し倒し、マウントポジションを取って殴り始めた。

慌てて地球寮生が止めようとするが、それを遮ったのは意外にも神威本人であった。

 

「止めるな、別に大した怪我にはならん。」

「なんだよ!あーしの拳が!そんなに軽いかよ!」

 

いいや、重いさ。重いからこそ、お前には殴る権利がある。

 

「スレッタの代わりに好きなだけ殴れば良い。奴はきっと、それすら出来ないだろうから。」

 

暫く殴打を食らい続けたが、やがて息を切らしたチュチュが止まる。

肩で息をする彼女を丁寧にどかし、神威は立ち上がる。

 

「おい……!どこ行くんだよ……!」

「スレッタ・マーキュリーと会いたくないのでな、暫く離れる。」

「会いたくないって……!あんな状況なんだぞ!私たちで支えなきゃ……!」

「……だからこそだ。結果的に片棒を担いだ俺では、駄目なのだ。」

 

俺に……俺たちにその資格は無い。

そうだろう?ミオリネ、グエル。

お前たちも同じ苦しみを感じているだろうが。

 

 

 

『もう一度地球に戻る。』

『承知致しました。学園のことはおまかせ下さい。』

 

カモイに通信しながら地球行きの私用機へと向かい……その途中、ふと花壇で立ち止まる。

美しく一面に色とりどりのダリアが咲き誇っていた。

 

「皮肉がすぎるわ……どいつもこいつも莫迦ばかりだ。」

 

 

この俺も。

自らの弱さを恨むことしか出来ない。

苦しいものだな。




地球魔女s……今回はお休み。同衾が当たり前になっている。

グエル……技量NO1だが、作者がグエルくんの戦闘を言語化出来そうにない。

ミオミオ……言葉が足らない。とにかく足らない。

チュチュ……あーしの拳が真っ赤に燃える! 優しさからの暴力が染みた。

神威……一番やりたくない事(小細工、裏工作)をやらされて精神はボロボロ。
グエルでさえそれでもギリギリと言うのを自覚し、自分との差でガン曇り。
パイロットとしての力量があまりに足りない。

ワッ……アッ……(ノレア死亡)
幸せにしてやるぞ地球の魔女……
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