位高ければ徳高きを要す   作:CATARINA

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スレッタの口調とか違ってたら遠慮なくお願いします……
吃る感じ難しいんだよね。


大国主命 起動

「ガハハ、臆せず決闘の場に来たか貧乏人!褒めてやろう!」

「あの、えっ、えっと、あう、あう……」

「そう緊張するな、俺はお前の全力を見たいのだ、未来の我が社員のな。」

 

臆病という訳では無いな。

人馴れしてないと言うべきか……まるで獣だな。

獣と言っても地球の山で見た狸の方だが……

 

 

『ホルダーが変わったらすぐ決闘だなんて結局貴方も私が目当てなワケ!?』

何を言っているのだこの女は……

頭の中がピンク一色なのか?哀れな事だ。

「元より興味はない、何より我が家では政略結婚は禁じられている。」

親父も爺も創設者である初代も、皆基本的に恋愛結婚だったそうだ。

曰く、下手に政略結婚をするよりも何故か社運が上向くそうだ。

「このご時世に?正気なの?」

「正気だとも、良ければ母より数億回は聞いた馴れ初め話を聞かせてやっても良い。」

「要らないわよ!」

「初めは二人の学生時代に遡る……」

「ミオリネさん!は、は、話を聞いてません!」

 


後のアラサカ重工社長、つまり我が父は地球でも有数の名門校に進学した。

理由は言うまでも無いが、将来の社員を見繕う為だったと聞いている。

主席で入学した父を出迎えたのが一つ歳上の上級生、母だった。

代々軍人の家系であり、文武に長け、小銃から戦闘機、果てはMSまでを使いこなす母。

そんな母を是非にと欲した父は約一年をかけて入社を約束させたらしい。

その後も滞りなく交流は続き、母の卒業式が終わってだな。

入社手続きに必要な書類を持って母の元へ走り寄った父が目にしたのは__

 

妊娠検査薬と婚姻届を手ににこやかに微笑む母だったそうだ。


 

「怪談じゃない!」

「やはりそう思うか、正直俺も初めて聞いた時は背筋が凍った。」

とはいえ結果俺や妹達のような超人の類が次々生まれた訳である。

図らずしも御先祖様の言う通りだったという事だ。

 

『えーと、そろそろ双方良いだろうかな?』

「ああ、済まないなシャディク。そこの喧しい女に代わって謝罪しよう。」

「ッ〜!!!スレッタ!貴女絶対に勝つのよ!吠え面かかせてやりなさい!」

「えぇ!?」

 

 

 

 

 

『勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず』

『操縦者の技のみで決まらず』

『ただ、結果のみが真実』

 

 

 

やはり緊張する。

相手はホルダー。あのグエルを下した新鋭。

手が震える、怯えではなく昂りで。

それでも負けるハズが無い。

 

「機動兵器、試作壱号-大国主命(オオクニヌシ) 、出る!」

 

この機体に乗る限り、(オレ)に敗北はない。

 

 

 

 

異様な光景だった。

普段で生徒が広く使うデミトレーナー、それに見慣れているほどに。

軽く見積もっても二回りは巨大な機体であった。

全身は吸い込まれるような漆黒の塗装に覆われ、関節部等を残し、何重にも重ねた装甲を纏う。

関節すら干渉しない限界まで装甲を盛られたその姿は、まさに重MSと呼ぶに相応しい。

背部にウェポンラック。マイクロミサイルと予備弾薬を満載。

肩部に二門、今回は通常のキャノンを装備。

腰部の六連装グレネードはいつでも獲物を焼き払う準備が完了している。

腕部ユニットには前回同様のトリモチランチャー、脚部に湾曲したヒートナイフ。

MSの体躯の八割に及ぶ巨大な火砲を両手に携える。

この超重量を稼働させる巨大なエンジンが火を吹き、神の名を冠するMSが戦場に現れた。

 

初手、ガンダムエアリアル。

機動力の優位性を活かし、ビームライフルを二射。

対して、大国主命。

早々に回避を捨て、最も装甲の厚い肩部で受ける。

直撃ならば一発で貫通する、そう思われたビームは二射共に受け止められ、肩部を溶かす。

《パージします》

金属が擦れ合うような機械音を響かせながら、装甲の一枚を剥がすと何事も無かったように再度射撃体勢に入った。

 

『どうした?貫通しなかった事が驚きか?我としては二発で装甲一枚を破壊したそのビームライフルこそ褒め讃えたいくらいだが……次は此方から行こうか。』

《ロックオン、マイクロミサイル発射》

「ガハハ、避けられるなら避けてみるが良いぞ貧乏人!」

ミサイルは半自動射撃、つまり同時に手持ち武器で追撃出来る。

対MS用徹甲弾が装填された巨大な砲で驚く程緻密に狙撃を行う。

つまり巨大な火砲を容易く扱えるだけの出力を兼ね揃えているという事だ。

 

エアリアルが選んだのは防御、分離したシールドビットが全てのミサイルを撃墜。

砲口の角度から狙うであろう頭部にビットを集中させ、再びシールド化する。

 

「反応が早い……そして選択も悪くない。素晴らしい、素晴らしいぞ貧乏人!!」

それは正解だ。普通ならば。

普通という枷はアラサカ社にとって機能しない。

初代アラサカは言い残した。『つまらないものは、それだけで傑作たりえない。』

 

《装填、対MS用()()()()

「止められるなら止めてみるが良い!」

 

射撃というより悲鳴のような金切り声を上げて砲は放たれる。

その弾速は実弾兵装としては異常な速度であり、故にこそ盾受けするしか無かった。

 

ガオンッ。

 

鈍い音と共にシールドが四散する。

異常な破壊力によって結合崩壊を起こしたのだ。

とはいえ、ビットそのものを破壊した訳ではなく、時間さえ有れば再度の結合が可能だろう。

しかしその隙を与える程甘くは無い。

 

肩部キャノンによる追撃がエアリアルを捉えた。

二発の砲弾はMSに着弾する直前に拡散、広範囲を爆破する。

 

「やはり三式弾では有効打とはなり得んか……グレネードかキャノンを当てるしかあるまい。

だが左腕は貰った、耐久勝負なら此方に負ける要素はない……が、この程度で折れやしないだろう?」

 

エアリアルの左腕……肘から先が避けきれなかった爆風によって吹き飛んでいた。

圧倒的に不利なエアリアルが選択したのはビームサーベルを構えての特攻。

 

「進めば二つ、という奴か。良かろう、真っ向から打ち破ってくれるわ。」

《再装填完了、射撃武装オールグリーン》

 

再びキャノンが火を噴く。

音を切り裂き、エアリアルを引きちぎろうと進む。

その砲弾を再び結合したシールドが防ぎ、また四散した。

 

「その程度なら読めて……ッ……!!」

 

四散したビットが今度は大国主命を包囲するように飛ぶ。

気付いた時には既に遅く、四方八方からビットによる飽和攻撃が始まった。

ディランザの四肢を容易く溶断したビット攻撃は、しかし巨大なMSを無力化するに足りない。

 

「何秒保つ?」

《推定、約三十秒》

「十二分だ、盾を失ったのは失敗だったな!そんな矮小な兵器で容易く破れる程この大国主命の装甲、甘くないわ!」

《腰部グレネード射程圏内》

 

勝ったな。

勝利を確信した故の慢心と油断。

グレネードの発射スイッチを入れ__爆音と振動が再び戦いの場に意識を呼び戻す。

 

「何が起きた!?」

《腰部擲弾ユニット破損__敵ビットによる射撃を確認、誘爆です》

偶然か?否、最初からこれが狙いだったと考えるべきだろう。

 

『……見事だ、マーキュリー。この機体の唯一の弱点、それを見抜くとはな。』

広域通信をONにして、迫る水星の魔女に繋ぐ。

『読み負けた、読み負けたのは間違いない__だが。』

 

『それだけで負けてやるつもりも無いのでな!』

《パージします》

 

 

全装甲とWR、手持ちキャノンに肩部キャノンも全て外す。

大国主命の緊急離脱ギミックとして全身の一斉パージを組み込んだのは正解だったな。

切りかかるエアリアルが弾け飛ぶ装甲に殴られて仰け反るのが見えた。

 

ここだ。ここしかない。

体勢を低く、全推力を水平方向に集中。

重MSだから鈍重だと思ったか?超質量を支える出力を推力に変えればこの位は出来るのだ。

 

砲弾のように低姿勢から繰り出されたタックルはエアリアルを捉え、そのまま攫った。

数百m先には壁。

 

「このまま叩き付ければアンテナも折れるだろう!?どうするマーキュリー!」

 

勝利の確信、されどその裏に仄かな期待。

もしかしたら__お前ならここから逆転出来るんじゃないか?

負けるつもりは無い、しかし。

 

『それでも……!進めば、二つ!』

激突の刹那、エアリアルは壁を蹴り飛ばす。

大国主命のパワーをそのまま受け止める事無く、斜め上に、前方に押し返した。

 

こうなると、元々体勢の崩れていた大国主命は立て直す事が出来ない。

咄嗟に上半身を捻り、直感に従って振り向きざまに投擲したヒートナイフはエアリアルの肩を掠め、それを打ち破る様にエアリアルのビームサーベルが大国主命の頭部をアンテナ諸共切り裂いた。

 

「……畜生、勝てないか。」

カメラの接続が切れ、真っ暗なコクピットの中。

恐らくは歓声の中に居るであろう敵を思い、独り言ちた。

 

 

 

 

 


 

 

 

「さぁ焼けたぞ!俺の奢り故、存分に飲み、食らうが良い!」

「なんで私まで……」

「不満か?スレッタ・マーキュリーは勝者の権利を行使し、この俺に奉仕を命じた。

されど内容までは指定されていない故な……地球寮の親睦会を兼ねさせて貰った。

そして親睦を深めるといえば肉である。俺がそう判断した。」

 

ジェタークの倅も誘ったのだがな。

流石に公衆の面前でああも振られた相手とは顔を合わせにくいか。

 

「ミオリネさん!とっても美味しいです!」

「あんたは絆されるのが早すぎるのよ!」

 

当然だ。俺が友人たちに粗悪なモノを食わせるワケなかろう。

肉は勿論、野菜から炭まで全て一級品。

今日の分で一般家庭ならひと月は暮らせるだろうな。

 

本当なら決闘後すぐにでももてなしたかったワケだが……

どういう訳かエアリアルが禁じられたガンダムである、という言いがかりが付いた。

潔白を証明する為に再びグエル・ジェタークと決闘をすることに。

ディランザで負けたのが余程悔しかったのだろう。

最新MSであるダリルバルデを繰り出してまで勝ちに拘ったようだが、

どう見てもアレはジェタークの倅に合っていないだろうな。

専用のチューンもしてなければ、途中異様に動きが悪くなった。

映像はまだ解析中だが……戦闘AIといったところだろう。

 

射撃管制AIならアラサカMSにも積んでいるがな、まだAIは生身のパイロットを超えたとは言い難い。

グエル程の逸物なら、尚更。

秘蔵っ子を持ち出してまで負けた訳だが__此方としては良いデータが取れた。

 

『俺と、結婚してくれ』

 

それからこれも。

最新機の映像を撮ってたらそのまま録画出来た。

一々編集するのも面倒、何より面白いのでそのまま役員会に提出。

迫真のプロポーズをウチの役員一同に晒されてしまったワケだ。

面白。

 

本人は知らないだろうってのが何より味わい深いな。

今度映像持って揶揄いに行こう。

散々ホルダーとしての奴に苦しめられたからな、多少は溜飲が下がるだろう。

 

「あ、あの!」

「どうしたスレッタ。メニューが不服か?」

「いや、その……モビルスーツ、が…」

 

「気にするな、頭部と装甲が破損しただけ、あと二日もすれば本社から修理された機体が戻るだろう。

ウチの技術者たちは優秀だからな……だがまぁ、まだ負い目があるというなら。」

「?」

「新しい試作機が完成したら性能テストに付き合ってくれるか?」

「……勿論です!」

 

胸を張り、手を差し出してくる。

ガハハ、中々爽やかな奴じゃないか。

 

「宜しく頼むぞ、スレッタ。我が友よ。」




貧乏人→マーキュリー→スレッタ→我が友

一話で好感度が上がり過ぎる水星たぬき。これは魔女。
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