位高ければ徳高きを要す   作:CATARINA

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プロママから滲み出る小物界の大物感is何……?


燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや

たった一発の砲弾だった。

限界まで張り詰めた世界はそれだけで崩壊する。

死と破壊が連鎖していく。

 

「父さん……!母さん……!」

 

幼い妹を除いて家族の姿はない。

跡形も残らなかったのだろう。

周りは火に囲まれ、鋼鉄の機兵が此方に銃口を向ける。

 

……最早失うものなど無くなってしまった。

死ぬ事すらどうでも良かった。

自分達が生き残ったところで、ところで…………

背中の妹が強くしがみついた。

 

 

 

 

 

 

「……死にたくない。」

 

 

転がっていた石を投げつける。

 

そうだ、ここで諦めたら死ぬのは自分だけじゃない。

出来ることを、何か出来ることを。

 

 

 

 

抵抗する者に。諦めぬ者に。

それに応えてくれるのだ。

 

銃を握るMSの腕が狙撃により千切れ飛ぶ。

それを確認したグループ駐在部隊のMSが振り向き……

同時に突撃してきた巨大な戦闘機によって上半身ごと切断。

一拍置いて跡形もなく爆散させた。

 

さらに戦闘機は無差別に攻撃をするデモ隊を視認すると姿を変え、MSに変形。

迅速に対話による解決が不可能だと判断し、背中の武器を抜きながら振り抜く。

MSよりかなり小型かつ軽装なデモ隊の車両は容易く溶断され、一振りで十数人を殺傷。

名をビームミツマタ、かつてフォルドの夜明けに所属していた名も無きエースの得物。

荒坂 神威に敗北し、奪われた。そんないわく付きの武器は新たな主と共に戦場に舞い戻ったのだ。

 

V字のアンテナと二つ目のメインカメラ。

華美な装飾は無くとも機能美を追求し、一切の無駄を廃したそれは美しい。

 

その姿を知っていた。

厳密には、GUND技術が施されていないこの機体たちはGUND-ARMでは無い。

ガンダムではないのだが……

 

「ガンダム………」

 

救いを求める者らにとって、その機体は紛れもなくガンダムなのだった。

 


 

『我々はアラサカ重工所属の鎮圧部隊である!グループ駐在部隊!武装デモ集団!双方に告ぐ!

この荒坂神威の名の元に矛を収めるが良い!!!貴様らの愚かな行いで何百何千が死ぬのだぞ!!!

アーシアンを束ねる長としてこれ以上の凶行を見過ごすワケには行かぬし、その理由もない。

当然の事だが、止まらぬというのなら人道的支援として介入する。

武装しているならアーシアン、スペーシアンの区別無く無力化する!それが嫌なら今すぐ武装を解除せよ!』

 

巨大なMSであった。

改修の度肥大化するサイズは上にとうとう28m。

また、大量の武装を搭載し、その上で装甲を何重にも重ねた機体の厚みは50mに近い。

異形。辛うじて人型を保っているだけの怪物。

武装さえもが、取捨選択ではなくあるもの全てを積み込んだ故の巨体。

 

戦場のどこからでも見える体躯。

しかし、異常に太ましい外見とは裏腹にその頭部は若干の鋭利さを感じさせるガンダムの頭部。

ツインアイにV字アンテナと、塗装以外はエアリアルと酷似さえしていた。

唯一にして最大の違いはアイカメラの両端。

深々と切りつけられたように縦に切れ込みが入れられていた。

視野拡大の為、かなり強引な方法で拡張されたそれ故、外見から覚える印象はかなり違う。

異形の身体と相まって凄まじい悪人面……それはパイロットの凶暴性が表層化してるような顔。

結果的に敵への威圧効果に貢献しているのだが。

 

『繰り返すぞ?今すぐ武器を捨て、全員投降するのだ……こんなに不毛な争いなど……』

 

放送をジャックして投降を促す神威。

しかしそれを聞くことなく、またも何処かで爆音が響く。

やれやれとうんざりしたところで被弾、同時に爆発。

今度はカガセオの顔面に何かが命中したのだった。

 

『殺らなきゃ殺られる!何だか知らんが撃ち落とせ!』

 

グループ駐在部隊からの掃射、共鳴したようにデモ隊からの一方的な砲撃。

巨体故、回避もままならずその全てをモロに被弾する事となった。

黒い爆煙がカガセオの躰すら隠してようやく打ち止め。

 

何だったかよく分からないが、とにかく敵性存在と思しき何かを撃破した。

そう納得して……誰もが次に狙う敵を考えていた。

尤もそれは、爆煙の中から無傷のカガセオが出てくるまでの話だったが。

 

一斉攻撃ですら焦げ跡一つ付かない。

異常事態である。

決して武装の整備状態が悪いなどではない。

彼らの武装でカガセオの装甲に挑むのはあまりに無理があった。

つまり、避けられなかったのではない。

避ける必要が無かった、というだけである。

 

 

「残念だ、我としてもミオリネの顔を立てて不要な殺生は避けたかったのだが……」

 

そう呟き、両腕に装備した機関砲の回転を高めていく。

六銃身40mmガトリング砲。MSの武装としては十二分な性能のそれを更に三つ。

そして両腕に装備する事で更に倍。合わせて六門。

 

「来世ではもっと賢く生きられると良いな。」

 

両腕をゆっくりと薙ぐ。

秒間200発に近い弾丸の暴力。

殺意の嵐はあらゆる装甲を引き裂き、脆弱な内部機構を貫き、搭乗者の命を奪う。

 

弾切れと同時にくぐもった音が止み、視界が開ける。

千切れた機体の残骸、砕けた建造物、人が居たであろう血溜まり。

 

「嗚呼……最高だ。」

 

一万発近い弾を発射し、銃身が完全に焼けたガトリングを投棄。

空になった薬莢で埋め尽くされた地面に落とす。

背部FA(フライングアーマー)から両手用の狙撃銃を取り出すと共に、僚機へ通信。

 

『ソフィ、ノレア、今何処だ?ある程度鎮圧出来たらエアリアルを狙うぞ。』

『了解です。』

『それは良いんだけど後ろに張り付かれちゃって……振り切るのは簡単なんだけどさ!』

 

方角は……2時の方向。

なるほど、可変機故に速度では勝っていても向こうは建物の破壊など気にしないワケだからな……

 

『……確認した。我は前の方を狙おう。』

『なら私は後ろを。ソフィ、その先のビルを時計回りに回って。』

『了解!あと2秒!』

 

空中でのマニューバに特化した可変機の急旋回には着いていけず、ソフィを追撃する二機が外に膨らむ。

その一瞬の減速を見逃さず二機の狙撃がそれぞれ貫いた。

前方の機体は頭部。後方の機体は胸部。

 

『惜しいな。』

『やっぱり操縦自体の才能は本当に無いんですね。』

『我の本来の領域は砲撃だ……狙撃ではない。』

 

とはいえ、悔しいモノは悔しいのだが。

 

『危ない事をするな、お前たちの機体の装甲は十分とはいえん。その為の我なのだ。』

『それでも肉薄しないと私はどうしようも無いし……』

『それでも。それでもだ。お前達が死んだら我はヤケになって宇宙全域に核を撃ち込むからな。』

『超迷惑!』

 

さて、肝心のエアリアルは……

 

『嘘……降りてきます!』

『何?逃げ隠れするでもなく、我らのところにか?』

一体何のために……

 

『随分と仲が宜しいようね。』

『久しいな、レディープロスペラ。つい先日結婚したばかり故な。まぁなんというか……案外悪くないものだと思ったよ。アンタらの気持ちもほんの少し分かった。』

『あら、それは良かったじゃない。』

『ああ、だから。だからこそ単刀直入に言う__死ね。』

 

右肩に装着した360mmキャノンか火を吹く。

MS対MS兵器としては最大クラスの火砲であり、その威力は絶大。

実弾故、弾速は遅くビットに迎撃こそされたが爆風のみでエアリアルをぐらつかせた。

 

『……あら、突然撃つなんて……アーシアンは野蛮ね?』

『ガハハ、故意に戦闘を起こして我が友人を嵌めた奴に言われたかないがな。』

『ウチの娘にそんなものを向けないで欲しいわねッ……!』

 

ビットが神威たちの機体を囲み、青く輝く。

パーメットスコア7。その効果はあらゆるパーメットの掌握。

ガンダムならば問題無く機体の操作を奪える、そう踏んでのジャック攻撃。

しかし、幾ら時間が経っても機体の操作を奪う事もなく。また男の口も止まらない。

 

『そろそろ満足したか?ピカピカピカピカと、子供の玩具でもあるまいに。』

『一体何故……その機体はガンダムじゃ……?』

『ガンダムさ。GUND-ARM技術は愚か、パーメットすらも含まれていないがね。』

 

その言葉の真意が水星の魔女に届くことはない。

また、伝える気もない。

 

『これだからスペーシアンは困る……パーメットがなきゃ兵器が作れないと思ったか?

お前たちがパーメットを発見するまで人類は石と棍棒で戦ってたとでも思ってるのか?

そりゃあ、あんまりにも浅慮が過ぎるんじゃあないか?()()()()()。』

『……………』

『おっと、怒ったか?怒ったな?何ともわかりやすい、愚かな女よ。

あんな甘い腹芸で満足してるようじゃまだまだ、生娘と言っても過言ではない。

善人だったお前には到底無理さ……20年そこらの復讐心じゃそれが限界よ。』

 

 

 

人の神経を逆撫でする神威の語り口。

だがしかし、それは既に彼の術中である。

頭に血が上るという事は判断力を奪うものだ。

 

『母さん!』

「ッ……!!!」

 

カガセオの背後、正体不明のMSの腕が切り離される。

瞬間、独立して飛行。ビームサーベルを持ったままの腕が複雑に空中で軌道を変えつつ突撃。

人一人分はあろうかという太いケーブルに繋がれた腕はビットによる防御を突破し、エアリアルに肉薄。

すんでのところで此方もサーベルで受け止めるが、鍔迫り合いの体勢から腕部グレネードを接射。

辛うじて直撃こそ避けたが、装甲の一部が黒く焦げた。

 

『インコム、中々使いこなしてるじゃないかノレア。』

『腕そのものを飛ばすというのは中々使い勝手が悪いと思うのですがね。』

『ガハハ、しかしこれを嫌いな男子というのはいないものだ。』

 

パーメットを利用したビット類はエアリアルに無効化される。

なら、使わなきゃ良いだけ。

オールレンジ攻撃がしたければ他の方法もある。

パーメットに頼らない有線式のビット兵器、インコム。

GUNDの呪いを断ち切るガンダムには相応しい装備だろう。

 

『悪いが決闘をするつもりは無い。これは狩りであり、処刑だ。水星の魔女よ。』

 

変形し、戦闘機の形状を取る片割れ。ソフィの駆るガンダムに神威の駆るカガセオが騎乗する。

それを見届けると同時に、インコムアームを回収したノレアのガンダムが消失。

 

『AR-G-02、  (ウィルド)ガンダム甲式。ソフィ・アラサカ!』

「AR-G-03、  (ウィルド)ガンダム乙式。ノレア・アラサカ……」

 

  (ウィルド)

別名をブランクルーン。何も書かれないルーン文字である。

その意味は運命、そして新たな可能性を導く力がある。

彼女たちは選択し、自らの運命を選んだ。

そして僅かな可能性を掴み取ったのだ。

 

 

 

 

 

『各員戦闘状態へ移行。標的はプロスペラ・マーキュリー……否、エルノラ・サマヤ。』

 

断罪されるべき魔女の真名を告げる。

 

スレッタ・マーキュリーを洗脳し、ガンダムの覚醒パーツとして利用した。

ミオリネ・レンブランを陥れ、親の罪を贖わせるべく苦しめようとした。

GUND-ARMの名を穢した。

 

 

 

『だんちゃーーーく……』

 

冷静さを取り戻したプロスペラはようやく気が付く。

あの男の機体、そのバイザーから微弱だがレーザー照射がされている。

ロックオンの為だろうが……常に出しておくモノだろうか?

一体何故……

 

『今!』

 

思考を衝撃で掻き消される。

危険を察知したエアリアルが半自動でバリアを展開するも、勢いは防ぎ切れない。

MSの軽いボディ、飛行により支えのない身体が風に舞う紙切れのように吹き飛んでいく。

 

『命中確認!次弾装填を急げ!』

カガセオのコクピットにだけ響く無線。

それは海岸に待機していた戦艦からのもの。

 

「やはり詰めが甘い、エルノラ・サマヤ。言っただろう、決闘ではないと。」

 

とはいえ、エアリアル。

アレに反応せしめるとは、やはり一筋縄ではいかぬ。

 

『我ら死の商人、宇宙随一の軍事企業、荒坂。その全てが貴様の敵よ。』

『吶喊するよ!』

『それで良い。全弾確実に叩き込み、機体もろともに粉砕してくれる。』

 

既にエアリアルは体勢を立て直し、此方に銃口を向けていた。

弾速の速いビームライフルを目視で回避するのは不可能。

 

『ソフィ、警告はする。自分の回避に全霊を注げ、我は問題ない。』

『簡単に言うけどさぁ。』

『右にターン、上昇してクルピットで一回転、その次は低空飛行でビル街を盾にしろ。』

 

目視出来ずとも感じ取る事は可能。

この不思議な直感について、特に疑問に思ったことは無かったが……

どうやら戦場で気分が乗るほど精度が上がるようだ。

 

指示された通り見事な動きでライフルを回避する甲式。

その上に搭乗するカガセオは幾つか直撃した上、ビルに激突し破壊するなどもあったが。

異常な装甲がそれを阻み、僅かに表層が歪むのみ。

目視するほどの距離に肉薄した神威らに対し、エアリアルはガンビットでの迎撃を試みる。

 

『便利なモノだ、半ば自立飛行する上に出力はライフルに劣らぬ。

敵の包囲殲滅からバリア、盾の変形など防御まで網羅する万能兵装か。

だが、だがな。敵の強みにこそ隙があるものだ。それを無敵だと思ってるなら尚更。』

 

ガンビットが飛行する二機を捉える瞬間、カガセオはFAから二丁のグレネードランチャーを装備。

そして包囲するビットらに掃射した。

生半可な攻撃はその硬度故に無効化するガンビットだが、通常の榴弾ではない。

強力な電磁パルスがパーメットの伝達とビットの駆動系を阻害、数秒間だがダウンさせる。

 

『対ガンダム用に開発した蜘蛛の巣弾だ、効果は問題なく発揮されている。

そして漸くお近付きになれたな!水星の魔女よ!』

 

お互い、必中の間合い。

ビットが使えない致命の数秒を稼ぐ為、後方にブーストするエアリアル。

当然カガセオもそれを見逃す理由はない。

ソフィの駆る甲式がエアリアルに飛びかかるように跳躍。

それをライフルで撃ち落とさんと再度カガセオを狙う。

装甲が厚すぎる事はよくよく分かった。

 

ならば、狙うべきは頭部。

カメラさえ破壊すれば殆どのMSは無力化出来るのだから。

回避不可能なタイミングを見定める為、ギリギリまで引き付け……

ここぞの瞬間で引き金を引く。

 

ガインッッッ!

 

鈍い金属音。

発射されないライフル。

エアリアルの右人差し指が欠損していた。

 

断面から被弾方向を振り返ると、膝立ちで狙撃姿勢のガンダム。

ノレアの駆る乙式はアクティブカモと狙撃による火力支援主体の機体であった。

極限まで貫通力に特化した銃弾。それは砲撃のような致命的な破壊こそ為さない。

しかし、最も致命的な瞬間に、最悪の一射を叩き込む。

 

咄嗟の判断でライフルを取り落とし、再度サーベルを抜く。

判断は正しい、だがあまりに遅過ぎた。

 

エアリアルを正面に捉えたカガセオは腹部から二本のアンカーを撃ち込む。

鏃のように凶悪な返しのついた杭がエアリアルを貫いて自由を奪った。

 

『地球にようこそ!宇宙人野郎(スペーシアン)!』

 

300tを超える質量の落下。

当然繋げられたエアリアルも引っ張られて落下する。

必死に高度を維持しようとするが、重過ぎる。

自身の数倍の機体はとても保持し切れなかった。

 

圧倒的質量でもってエアリアルを地に叩き落としたカガセオ。

そして二機が向かい合う。

 

お互いの距離は100m足らず。ことMS戦に於いては触れ合う程の近間。

そしてお互いを正面に捉えて縛り付けられている格好。

正面からの撃ち合いにて最強の機体で勝つにはどうすれば良いのか?

これが答えだった。

 

想像以上に深く突き刺さった杭は最早簡単には抜けない。

ならば目の前の敵を撃破して突破するのみ。

そう考えたプロスペラは再起動したガンビットを集結、件のキャノン砲を形成していく。

 

『それが最大火力か、良かろう。そうでなくてはつまらぬわ。』

 

そうだ、抵抗しろ。

諦めたならばその場で殺していたが。

可能な限り全ての手を尽くし、生きる為に足掻くが良い。

 

『我はその全てを粉砕し、貴様の全てを奪ってやろう!』

 

 

 

正直なところ、邪魔をしようと思えば簡単に出来る。

ソフィに撹乱させても良し、ノレアに狙撃させても良し。

それどころか、先制攻撃を仕掛けるも再度蜘蛛の巣弾をぶつけるも良し。

そんな隙を晒してキャノンを構える辺り、やはりプロスペラにパイロットとしての鬼才はない。

 

これがもし、スレッタ・マーキュリーなら……

そう思わずには居られない。

 

「無念だな、エアリアル……否、エリクト・サマヤ。」

貴様の母はMSの操縦においても優秀だ、しかし天賦の才はない。

この俺と同じく、精々が一流止まり……最上に至る資格が無いのだろう。

 

『カムイ!避けないの!?』

『回避……?そんなものはこの機体に必要ない。そう言ったハズだ。

寧ろお前たちこそ我の後ろから離れるな、護れなくなるだろうが。』

 

回避をする。

逃走する。

攻撃を未然に防ぐ。

 

成程。実に合理的な戦い方だ。

必勝、と言っても過言ではない。

 

だがそれで___それで良いのか?

その戦い方は王に相応しいのか?

否、断じて否!

 

仁王立ちをもって正面から受け止める。

エアリアル、あの強く恐ろしいガンダムの全てを受け切り、正面から粉砕する。

ただ勝つだけなどあまりに手緩いことよ。

勝利など当然、要はその過程よ。

 

その背で護る配下を奮い立たせ、対峙する敵の心を挫く。

王の戦いとはそういうものだ。

 

『来い!ガンダム!』

『ちょっと!』

『ソフィ!さっさと隠れて!』

 

諦めの悪いソフィを引っ張り込むようにカガセオの影に飛び込むノレア。

そうだ、それで良い。

 

『避けぬ!躱さぬ!退かぬ!この機体は我が社の技術の結晶!結実した社員の心血そのもの!

そして背に我が妃、向かうは仇敵!これでどうして我が護りが破られようか!?

プロスペラ!悪しき哀れな魔女よ!!!貴様の全てをここで過去のものとしてくれるわ!』

『やかましい男ね、エリクト!』

 

中心のビームライフルを核として凄まじいエネルギーが収束し、解き放たれた。

それはあらゆるもの、あらゆる障害を打ち破る最強の矛である。

残存していた量産型のルブリスをも山もろともに消滅せしめる。

 

極太の光の奔流がカガセオに突き刺さり、光がその姿を覆い隠した。

時間にして十数秒、通常の光学兵器としては有り得ない程の照射時間。

通常の数倍の時間をかけて確実に全てを蒸発させる事が可能である。

 

 

 

 

 

 

ただ一つ、例外を除いて。

 

 

 

 

それはあらゆる脅威、あらゆる外敵から妻を、友を、配下を護る絶対の盾。

荒坂重工が誇る最先端かつ最上の技術全てを注ぎ込んだ極限の装甲。

それに伴う傲慢とすらいえる自信、圧倒的な慢心。

実際にその背に護るべきものがあるという確かな事実。

 

スペーシアンの矛とアーシアンの盾。

少なくとも本日この場では矛盾せず、盾の勝利。

エアリアルのキャノンは確かに絶大な威力を発揮した。

圧倒的な重装甲を誇るカガセオをして装甲を約半分。

もう一度放てば或いは貫通も有り得る__という程には削った。

 

しかし残念ながら、そんな余力はない。

過剰なほどの出力で放ったが故、僅かな時間だがビットすら機能しないのだ。

重傷を追った勝者と無傷の敗者。

 

『素晴らしい威力だった、お返しといこうか。』

 

FAから取り外して腕に機関銃を二丁。

展開したサブアームにそれぞれ四本のラテーケンバズ。

肩に120mm砲が三門と360mm砲一門。

同時発射数が四倍に増加した背部FA120連装MMRと連動式膝ミサイル。

砲兵部隊に支援砲撃を要請、確実に仕留め切る。

 

引き金を引く刹那、考える。

エルノラ・サマヤ、エリクト・サマヤ。

この二人……否、片方は機械だが。

彼女らはこんな状態だろうとも、スレッタの、我が盟友の家族である。

どんなに悪辣だろうとも我に殺す権利はあるのか?

自らの人生を狂わされたスレッタやミオリネにこそその権利があるのでは?

 

 

 

 

 

「ガハハ、馬鹿らしい。」

 

そんな事知ったことか。

これがもし、我が民の暮らす街ならば。

死ぬことになったのが妹たちや妻らなら……

今、逃せば次そうならないとは限らないのだ。

 

『怨嗟の楔をここで断ち切る。』

 

僚機である二機のガンダムも、それぞれガトリングとスナイパーライフルを構えていた。

コイツはここで殺さなければ駄目だ。全員の思いが一致する邪悪。

 

『放てッ!!!』

 

神威の号令と共に全ての武装が火を噴く。

容易く島一つを粉砕させる大火力。

それをたった一機のMSに、エアリアル一騎に撃ち込む。

爆炎と硝煙で前が見えなくなっても撃ち続け、確実に粉砕する。

そして全ての武装が弾切れになったところでパージ。

100tはあろうと言う武装の殆どを外した事で一気に身軽になった。

 

撃ち込んだアンカーを巻き取るが、手応えはない。

 

「跡形もなく粉砕した……のだったら簡単だったのだがな。」

 

恐らく、被弾による破損でアンカーが外れてしまい、その隙に撃たれながら離脱したのだろう。

逃がしたことは痛手だが……此方の損害は大したことがない。

何より明確な()()を挙げられた以上、逃走されたとしても敗北ではない。

 

 

 

『MS部隊は帰投する。陸戦隊は強行上陸し、未だ戦闘を続ける武装デモ隊と駐在部隊(バカども)を制圧。

こんなくだらない理由で起動エレベーター直下の街が崩壊していくのは見るに耐えん……』

『了解っす。でも社長、後で機体直しますから大人しくしててくださいね。』

『時間が無いだろう、宇宙に上がりながら直せ。お前なら出来る。』

 

 

アレだけ減らしても何処かから悲鳴と爆発音、銃声が聞こえてくる。

エアリアルによるパーメット操作……パーメットジャックと言うべきか。

今やパーメットが含まれない素材などほとんど無い様なモノ。

あらゆる兵器を乗っ取れる恐ろしい能力といえる。

 

だが、その仕組みさえ解析出来れば或いは………

 

 

 

 

『それとMS研究部門の全員を揃えておいてくれ。』

『承知で……しかし一体何用で?』

 

『エアリアルの腕。片方のみだが……魔女の腕を奪った。』

 

修理はされるだろうがそれまでの間は足止めになるだろう。

この戦いはきっと無駄ではなかった。

そうとでも思わねばやってられない。

 

「さてと、宇宙に行かねばならぬが、情報戦の必要もある。背負うものが無いバカは恐ろしいな。」

 

 

 


 

 

 

[ガンダム!悪魔の力!?]

 

[本日発生した襲撃事件について、主犯と思しきガンダムとその運用会社であるGUND-ARM社CEO、ミオリネ・レンブラン氏にアーシアン、スペーシアンを問わず非難が殺到しています。これに対し、荒坂重工CEOのカムイ・アラサカ氏は『真の元凶は他にいる、皆に真実を公表する準備を進めている。だからどうか、安易な中傷は控えて貰いたい。』と発言し……]

 

[荒坂重工による治安維持活動と経済面での支援も開始、被災地での炊き出しも__]

 

[この事件でGUND-ARM社の株価は暴落し、一時半額以下に落ち込みましたが今はある程度回復した模様です。]

 

 

 

 




少年……後にガンダムを信仰するようになるが、それは別のお話。

エアリアル……片腕をもがれてしまった。ひどい。

プロスペラ……所詮本職は研究者、パイロットとしては一流に届くかどうか。

魔女s……新機体でノリノリ。神威の為ならアーシアンもスペーシアンも殺すね!

社長……新機体でノリノリ。エアリアルキャノンすら受け止めたキチガイ機体。
情報戦でも荒坂は最強である。



 (ウィルド)ガンダム』(甲/乙)

ルブリス・ソーンとルブリス・ウルの残骸を荒坂の技術でリサイクルした機体。
そのため、基本的な操作感は二人の乗り慣れたガンダムに近しい。
ガンダム頭だがGUND-ARMは未搭載。パーメットジャックでも安心のアーシアン技術。
甲型には試験中だった可変機能を搭載し、機動力に劣るカガセオが騎乗する形で弱点をカバー。
機体の軽量化の為、通常時にはミツマタとヒートソード、ハンドガンしか装備しておらず火力不足。
カガセオのWRに大量の持ち帰り武装を搭載する事で火力不足を補っている。
乙型は既存の技術を併用した最新機。
ガンビットを失ったことによる広範囲の制圧などが難しい事から腕にインコムを仕込んでいる。
また、ノレアの狙撃主体の戦い方と相性の良いアクティブ・カモの簡易版を搭載している。
甲型同様素の武装は腕グレネード、サーベル二本、ハンドガンのみ。
機体を大型化せずにアクティブ・カモを無理やり乗せた事で装甲などが犠牲になっている。

三者三様に特化こそすれ、お互いの補助が無ければ100%の能力を発揮できない。
AR-G系列はとことん共依存の関係性にある機体たちである。

長くなったからカガセオの設定は次回!
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