位高ければ徳高きを要す   作:CATARINA

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一話からのフラグ回収パート。

最終話最高だったよ……


魔女も技師も照らせば光る

「死者は0人……重傷や意識不明者はかなり多いが、奇跡的だな。」

 

やはり意図的に殺害は避けたか。

校舎の崩壊に巻き込まれた事による怪我は避けようが無かったみたいだがな。

直接の実行犯たる兵隊蜂どもは皆殺しにして、首領も敗走。

一先ずは完全勝利と言えるだろう。

崩壊した学園跡に仮設住宅を建て、何とか生きていく事ができる状態となった。

 

なら俺のすべき事は一つ。

 

「スレッタ・マーキュリー!」

「は、はい!?」

 

服が汚れることも厭わず、正座の体制。

膝を付き、地に這い蹲るカタチで謝罪する。

土下座。

地球における最上位の謝罪の作法。

プライドが高い彼がこうして頭を下げることは通常有り得ない。

有り得ないが……それでも詫びることを選んだ。

 

彼にとってスレッタはかけがえの無い友人だったから。

 

「すまなかった。俺はお前の信用を裏切り、決闘に水を差した。

それが全ての事実であり、一切の申し開きのしようもない。」

「カムイさん……」

「許せ、とは言わぬ。だがミオリネにも考えあっての事だった。

だからどうか、ミオリネを責めないでくれまいか。」

「いえ、分かってます。お母さんも、ミオリネさんも、私のことを考えてくれてたって。」

 

……お前は強いな、スレッタ。

初めてあった時はすぐ誰かの影に隠れ、物怖じするような貧乏人だったというのに。

いつの間にこんなに強く__

 

「それと、カムイさん。」

「む?」

「カムイさんの事も、裏切ったなんて思ってません。だから自分を責めないで下さい。

いつもみたいなカムイさんで居て欲しいです。きっと皆も。」

「そうか……別に俺、自分を責めてる気も無いのだがな。」

「えぇ!?そ、そういう雰囲気じゃなかったんですか!?」

「当然だろう、俺を誰だと思っている……我が覇道に反省も後悔も存在せぬわ。」

 

振り返る時間はない。

その時間で前に進み続けねば末端から腐り果てる。

走り出したら止まることは許されないのだから。

 

「だがまぁ、そうだな。お前達がそれを望むというなら……」

 

ぐっと力強く拳を握り、胸を叩く。

常人ならそれだけで全身の骨が砕かれ、絶命する程の快音。

 

「ガハハハハハハ!そこまで言うなら許されよう!皆がそう望むと言うなら!」

 

そうだな。

皆に望まれる荒坂神威とは、そういう男だ。

このような逆境でこそ、笑い、全ての障害を打ち砕く。

そういう姿だ。

 

「そういや、ニカ・ナナウラはどうした?」

「さっきマルタンさんと一緒に居ましたよ。」

「ふむ……行方不明の間の話も聞きたいし、様子を伺うか。」

 


 

「それでなんであーしまで一緒に連れて来られたんだよ。」

「何があったのか気になってるんだろ?直接言うようなタイプに見えるか?」

「それにしてもこれ、意味あるんでしょうか……」

 

ニカとマルタンが話す傍ら、両手に葉付きの枝を持ち、草むらに擬態する三人。

 

「まぁそれなりに意味はあるだろう……それなりにだが……」

「お前デカ過ぎて色々はみ出してんだよ、無理があるだろ。」

 

 

「だから、復興が終わったら自首しようと思ってね。」

 

「自首……ってことはやっぱりニカ姉は……」

「自首ねぇ、そりゃ困る。俺が困るし、皆困る。こんな事してる場合じゃないな。」

 

ズァァァンと音を鳴らしながら茂みを掻き分け、二人の前に姿を表す。

 

「ヘェ!?カ、カムイ!?」

「よぉ二人とも……ベートーヴェンが分かるか?」

「今どきの子にレオンの話は分かんないと思うよ。」

 

なんてことだ、序曲を聞くと力が湧いてくるのに……

まぁそれが過ぎると少しダレるんだが。

 

「まぁ、話は聞かせてもらった。」

「うん、ずっと見えてたし……皆にも言うつもりだったからね。」

「やはりよく見てるな、だからこそ惜しい。自首などしたら学園には戻れぬぞ。

二度と会えずとも何らおかしくは無いのだ……それなら俺のとこへ来い。」

 

自分でも意外だ。

ここまで執着していたとは。

 

「戸籍の偽装、これまで人生のカバーストーリー……何もかも俺がどうにかしてやる。

だから早まったことをするんじゃない。俺はお前と共に在りたい。」

「でも、実際テロに加担したのは事実で……!」

「そんな事を今更この俺が気にすると思うか?テロの幇助ごとき……

俺など今までに何百何千万人殺したか分からんのだぞ?些末なことよ。

それでも俺はお前が欲しい。そう心から言えるのだぞ、ニカ・ナナウラ。」

「…………」

「結局のところ、決めるのはお前自身だがな。

無理矢理手の内に収めるのは容易いが、それは俺の望むところではない。」

 

あくまで俺は自ら選んで俺の元に来て欲しいのだ。

それまでのしがらみや束縛を断ち切ってな。

ああ、そうか、なるほど。

つまり俺は……

 

 

「逆に言えば、全てが終わるまで時間はあるのだろう?

それまでの間に精々よく考えて欲しいが。」

 

「……ありがとうね。」

「うむ、選択がどうあれ、お前の決めた道を応援するつもりだがな。」

「……そうだ、アレ辞めた方が良いと思うよ。お前は俺の物だ!ってヤツ。

私は良いけど、他の人達にに勘違いされたら困るでしょ?」

「勘違い……?言葉の通りだろう。」

「そうかもしれないけどさ、なんと言うか……こう、恋愛的な?そういうのに聞こえる人もいると思うし。カムイくんも変な噂が立ったら大変じゃない?そんな事で迷惑かけたくないからさ……」

「む?」

「……へ?」

 

「……言葉通りだと言ったが?」

「あー…………待って、ちょっと待ってね。」

「うむ。」

「取り敢えず、その言葉通りっていうのは……」

「お前が考えてる意味と同じだと思うが。そもそも、そもそもの話になる。

普通、誰彼構わずに所有権を主張するような奴はおかしな奴だろう。」

「お前が常識を語ると違和感しかねぇよ!」

「チュチュ!それにスレッタまで……」

 

酷い言い草だ。

これでも最上級の英才教育を受けてきた身なのだぞ。

一般常識や礼儀作法は習得していると思ってはいるが。

 

「で、でもさ!皆に言ってたよね!?ねぇ!?」

「……いや、社員になれとは言われたけどよ。」

「私もそうです。」

「僕もそうだったかな。」

 

そりゃそうだろう。

社員は庇護下にあるとはいえ俺の所有物ではないのだから……

 

「初対面の時から言ってなかった!?」

「確かに言った、つまりそういう事だ。」

「……ごめん、全然気付かなかった。」

「なに、気にするな。俺も自覚したのは今さっき故にな。

どうやら俺は自分の手の内から零れ落ちそうになって初めて気付けるらしい。」

 

案外自分の想いというモノは、自分では認識出来ないものなのだな……

それを学ぶにはあまりに遅過ぎた気もするが。

 

「まぁ、先程言ったように別に返事はいつだって良い。例え本当に罪を償うというならばそれも良し、お前が出所するまで我が社を拡大しながらのんびりと待つさ。」

「そしたら学生と仕事と、二足の草鞋なんだけど……」

「ガハハ。俺に出来たのだ、お前にも出来る。俺が保証しよう。」

「無責任だなぁ……」

 

同期であり、神威の戦い方故に尤も絡みが多かったニカ。

お互いに笑い合う仲でありながらも、そこに嘲りなどは無い。

確固たる信頼故の関係が、そこにはあった。

そんなものは外野にはまた別の話であるのだが。

 

「マルタン、コーヒー買いに行こうぜ。すんごい苦いやつ。見ててイライラする。」

「八つ当たりしないでよ……」

「お前達もそろそろ休憩は終わりだ、そろそろやるべき事も見つかったんじゃあないか?スレッタ。」

 

一先ず、目下の目標は……ミオリネ達との合流か。しかし……

 

「エアリアルが無い今、お前の機体がないのが問題だ。」

 

そもそも、並の機体ではエアリアルに丸ごと乗っ取られてしまう。

パーメットを一切使用していない機体……もしくはエアリアル以上のパーメット掌握能力のある機体。

そのどちらかが無ければ戦いの土俵にも立てないだろう。

条件を満たすのは俺のカガセオと二機のウィルド。後者は、エアリアルの特異性を考えたら難しいだろうな。

 

「現状、戦闘可能なのは俺とウチの嫁二人……後はエアリアルとの相性が劣悪だからな……」

「お前んとこの機体は残ってねぇのか?」

試作肆号(先行量産型)試作陸号(水陸両用型)はまだ学園にあるが、陸号は宇宙に出れん。

そして肆号は俺の試作壱号の量産型だぞ?流石の我が友でもアレでエアリアルと戦うのはな……」

 

そもそも、機動戦を好むスレッタの戦い方と我が社の機体はあまりに合わない。

せめて弐号機が残っていれば良かったが……フルスペックを発動出来るかは別としてだか。

 

「……あれ?ちょっと待って?」

「どうした、何か心当たりでもあるのか?」

「いやさっき……聞き間違えかもしれないけど。」

 

引き止める言葉に神威が振り返った。

その首に光る二つのリング。

 

「リング……?」

「ん……?ああこれか、二つ薬指に嵌めるワケにもいかんだろう?

最初は両手薬指に嵌めていたのだがどっちが左手なのかで酷く揉めたんでな……」

「え?」

「ん?」

「神威さん、今お嫁さんって……」

「うむ、この間結婚したからな。いや、お前たちには言ってないんだったか……?」

 

時が止まる。

ニカ・ナナウラは困惑した。

あんな勢いで告白したとは思えない言動である。

一年半ほどの付き合いで破天荒さは慣れたつもりだったが、想像を遥かに超えているのだ。

色々な感情が渦巻き、頭の中を駆け巡っていた。

取り敢えず、一つの結論。

 

「……ばか!」

「ぐおぉぉぉ!?!?!?」

 

女の敵である。

純粋な気持ちを返して欲しいと切に願うのだった。

 

「前が見えん……!」

「歯ァ食い縛れェ!」

「うぉぉおお!?」

 

更に怒髪天のチュチュが追撃。

首の骨から鈍い音が辺りに響いた。

まあ別に死なないだろうし……少し反省すれば良い。

そうニカは諦め半分に思う。

 

ここまでやっても嫌いにはなれないのは本当に不思議である。

彼の人徳によるものなのか、それとも……

 

「何故殴るのだ!?殴られるような事か!?」

「カ、カムイさん、それって浮気なんじゃ……!」

「きょうび重婚など珍しくないだろう、ほんとに水星はお堅いのだな……」

 

いや、まぁ、うん。

なんか腹が立つな。

もう一回くらい殴っても許されるだろう。

ニカは晴れやかな気持ちで再び拳を握った。

 


 

 

 

「今更スレッタをガンダムに……それもキャリバーン(怪物)に載せるだと?それはあまりにも勝手だろう!」

 

神威は声を荒らげて机に拳を叩き付ける。

砕けない辺りかなり加減はしていたが、激昂は明らかだった。

 

「しかし、彼女なら……」

「貴様らの内輪揉めなど知るか!勝手に此方を殺そうとして艦隊が全滅した?

其方の都合だろう。俺としては議会連合もろとも磨り潰してやっても良いのだが。」

「正気か!?」

「狂気だ。俺に言わせてみれば議会連合も、あのクワイエット・ゼロも変わらんさ。

アーシアンを軽視したスペーシアン共の勝手……俺にはそうとしか思えん、人を馬鹿にするのも大概にしろ。」

 

議会連合とオックスアースの繋がりは既に掴んでいる。

GUNDの悪用を画策した何よりの証拠が俺の元に在るならば、尚更な。

ああ、全く。親父殿や爺殿が奴らを先んじて始末していてくれれば……

今更言っても仕方ないとはいえ、惜しまれる。

 

「荒坂重工社長、荒坂神威としての俺の意見を言うなら『殲滅』。この一言に尽きるが。

クワイエット・ゼロも、宇宙議会連合も、我が前に立ち塞がるというなら全てを灰燼に帰すべきだ。

悉くを殺し、全てを無かったことにする……しかし、お前はそれを望まないのだろう?」

「はい!私は諦めたくありません。ミオリネさんの事も、お母さんも、エリクトも!」

「強欲な事だ、進めば二つどころか、三つとは……だがな友よ。」

「?」

「足らぬ足らぬ、三つなどではとてもとても……全くもって足らぬだろう。

欲し続けよ、求め続けよ。お前の胸にその尽きせぬ欲望が滾る限り。」

 

 


 

 

ミオリネやグエル達とも合流……

地球での一件から随分沈んだ様子のミオリネは少し心配ではあった。

スレッタによるアニマルセラピーが良く聞いたようで何より。

 

「随分と持ち直したじゃあないか。」

「ええ、お陰様でね。」

「うむ、それでお前達、どこまで……」

 

言葉を遮り、ミオリネがペンを投擲。

その細腕からは考えられない速度にて直進し、神威に突き刺さる刹那で弾かれる。

 

「危ないな、俺じゃなきゃ怪我するし目に刺さったら失明モノだぞ?」

「狙ったのよ!」

「なんて事言うんだ全く……」

 

不躾な質問だったのは分かるが、そこまでするか?

冗談の一つとして受け止めて欲しいのだが。

 

「別に夫婦なら『そういう事』に至っていてもおかしくは無いだろう……

それを咎めたり嘲る事は絶対に無いし、軽い冗談のつもりだったのだが。」

「それでも聞く事としてどうなのよ!?」

「少なくとも俺は既に通った道だし……嫁の年齢はちと問題があるが。

まぁそんな話は良い、わざわざ俺一人に話をするという事は何かあるのだろう?」

「……ええ、そうよ。」

 

いつになく重苦しい顔じゃないか。

尤も、何を言うのかは大体想像がつくが。

 

「クワイエット・ゼロへの攻撃……貴方には私たちと違う方向から撹乱して貰うわ。

戦線を二つに分けてエアリアルやガンドノードのヘイトを分散して……」

「上っ面の言葉で取り繕うのは止めろミオリネ。」

「!」

「『キャリバーンのパーメット負荷で苦しむスレッタの戦闘時間を減らす為、或いは彼女に向く銃口を一つでも減らすために捨て駒として弾除けになってこい。』そうだろう?」

「……!そんな事!」

「ただの勘さ、だが俺の勘は外れない。」

 

まぁつまり、無意識に俺の命とスレッタの安全と望みを天秤にかけたのだ。

当然、甘ちゃんなミオリネにその自覚は無いだろうがな。

本当に馬鹿だなこいつは……

 

「……乗った。」

「え?」

「その条件、乗ってやろうというのだ。但し、ウチの嫁は其方側に付けるぞ。

これだけ不利な条件を飲むのだ、俺にも一つ二つ口出しする権利はあるよな?」

 

戦力は可能な限り均等に割り振らねばならぬ。

寧ろ俺一人でさえ戦力があまりに偏るのだから仕方ない。

 

 

 

「でもそれは……」

「ガハハ、勘違いするな。俺が容易く死ぬと思うか?捨て駒、時間稼ぎ……そりゃ簡単だが、別にクワイエット・ゼロもガンドノードも、エアリアルさえ俺が倒してしまっても構わんのだろう?」

 

そう不敵に笑い、神威は部屋を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『準備は出来ているか?』

『勿論です、しかし……』

『歯切れの悪い、何の問題がある。』

『これは本来、()()()です。空も飛べますし、深海でも戦闘可能です。しかし……』

『ガハハ、その為に改造したのだろう、問題ない。』

『どうか、ご武運を。貴方を失えば我が社は立ち行きません。』

『事実だが、買い被り過ぎだ。俺すら我が社の永き歴史のほんの数行に過ぎん。

そうなるように、社を育てねばならぬのだから。』

 

 

 

 

 

俺が自由に戦えるのはあとどのくらいになるだろうか。

ずっとその事は考えていた。

学生と社長を両立するあやふやな身分だからこそ許された自由。

ましてや、このような大戦(おおいくさ)、生涯に一度あるか無いか。

本当に、運が良い。

社の為、友の為、そう大義を持って戦える。

 

「俺も覚悟を決めなきゃな。」

 

逃げたら一つ。進めば二つ……その先の全てを掴む為に。

俺に出来る事をやるしかないから。

 

 

 




社長……自覚無く割とニカ姉に重い感情を抱いてた男。
魔女sの件然り、結構一目惚れするタイプ。
覚悟完了により修羅に入る。

ニカ……全然気付かなかった人。技術者としての能力は凄い高い。

地球寮生たち……薄々気付いてた人。
やたらニカ姉に執着してるのは傍から見ても分かるレベルだったりする。

たぬき……覚悟完了。

魔女s……NTRやんけ!

元々ヒロイン枠はニカ姉だったんだよね一話時点だと。
色々あってより悲惨な境遇のメスガキ二人に取られちゃったけど……
前回のサビーネクラッシュ然り、一,二話のセルフオマージュがちびちびある。
次回からとうとう最終決戦。
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