位高ければ徳高きを要す   作:CATARINA

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ちょっと遅れてしまった……申し訳ない


不惜身命の心意気

『目標まであと数分。アクティブ・カモを使用します。』

『……ん、もうそんな時間か。悪い、寝てた。』

『ちょっとは緊張感とかないの?アレだけの艦隊を一瞬で沈めた敵なのに……』

『無いな、全く無い。スペーシアンの艦隊如きの装甲とこのカガセオを比べるのが間違いよ。

それにクワイエット・ゼロの全守備戦力を相手にした大戦だぞ?こんな戦いは二度とない。

我が持てる力の全てを出し切れる戦闘。ガハハ、心が踊らぬはずがないだろう!』

『……そうですか。』

 

心配なのは分からなくもないのだがな。

それはそれとして楽しまねば……

戦う理由があり、戦う力がある。それだけで十分。

 

『ところでだ。』

『……何か?』

『さっきから、明らかに目的の方向とは違う方角に進んでいるように感じるのだが……?』

『……ソフィ!』

 

その瞬間、急激に加速。

アクティブ・カモの有効範囲を超え、姿を晒しながら暴走する。

やはり方角は全く違う……アレだけの建築物故に、目視出来るのが幸いだ。

 

『なんのつもりか知らんが、その機体は俺が設計したのだ!』

『……ッ!!!』

 

騎乗状態の解除はどちら側からでも可能に設計してある。

緊急時に二手に分かれて回避率を上げるためだがな。

 

カガセオに逃げられたのを確認した二機のガンダムは振り返り、此方に武器を向ける。

その動きに躊躇いは無く、明確な敵意をぶつけてきていた。

 

『さて、説明してくれるよな?』

『今更必要?』

『言うまでもないと思いますが……』

『さぁな、さっぱりだ。今更我を殺そうというワケでもあるまいに……』

 

全くもって動悸が掴めない。

ここに来て我への殺意が再燃した?

否、それは無いだろう。

しかし、そうでないとなると全く検討もつかない。

 

『あれ!?何も分かってないじゃん!』

『肝心なところで本当に鈍い……これだから貴方は。』

『何故我そんな怒られているのだ!?』

 

敵意は感じる、しかし殺意はない。

奇妙な感覚だ。

この我を打ち倒そうという気概はあるのに、殺意だけがない。

 

『神威、これから私達は貴方を無力化します。』

『手も足もぜーんぶ壊して……さらっちゃおうかなって!』

『ふむ、理由は?尚更読めんぞ。』

『正直に言って下さい。貴方、死ぬ気でしょう?』

『……ガハハ、何を言う。耄碌するには随分と早いと思うが?』

『死ぬ気は無くとも、死んでも良い。そう思ってるよね?』

 

まさか。

死ぬつもりなど毛頭ない……ない筈だが?

 

『じゃあ無意識だね。自覚ないんだろうけど、思い残す事ないみたいな顔しちゃって。』

『……いつだって覚悟はしている。死ぬ気はないが、死ぬかもしれない。

そのくらいは戦場に立つ以上、心得るべきだと思うが?』

『だったら何故、私達を連れていかないんですか。』

『戦力は均等に分ける必要があるだろう。』

『神威、アンタ自分が思ってる程強くないから。それに独りじゃ尚更ね。』

『ガハハ、我が妃ながら手厳しい……』

 

確かにこの機体は単騎では十全に機能しない。

二機の僚機と連携する前提。

だがそれでも、これだけ高密な敵集団ならそれこそ何処に撃っても当たるだろう。

 

しかしその分、乱戦だ。

360°を敵に囲まれた戦いなのだ。

とてもとても、護りきれぬ。

ウィルドガンダムはどちらも機動力を確保する為に装甲が最低限だ。

流れ弾の数発でさえ致命傷になりかねん。

 

本心を言うなら未だ戦わせたくないのだが、それならせめて。

比較的ヘイトの分散する本隊の方に行って欲しい。

偽らざる我が願いである。

 

『自分は死ぬつもりで、私達には生きろなんて酷いエゴだと思わない?』

『ちゃんと責任取れって言いましたよね?』

『ならば、話を変えよう。我を攫ってどうするつもりだ?ここでクワイエット・ゼロから目を背けたとして、いずれは直面する。今しか解決出来る機会は無いのだぞ?』

『なら何故!何故貴方が死ぬ覚悟を決めなきゃならないんですか!?

クワイエット・ゼロが問題なら、それは当事者同士で解決すれば良い!

なんで貴方が巻き込まれなきゃならないんです!?ねぇ!』

 

言葉も半ばでノレアが斬りかかってくる。

迎撃するしかない。

 

即座に右腕のナノマシンを硬質化、刃として形成。

高密のビーム刃を受け止める。

 

『だったら戦う事の何が悪いというのだ!我がやらずに誰がやる!?

この役目を負える者が他に居ようはずもなかろう!』

『だからって何で自分は……!もっと、自分を大切に思えないの!?』

『…………お前達に生きて欲しいからだろうが!それを分からんか!!!』

 

鍔迫り合いの隙を狙うようにミツマタでの刺突。

左腕ナノマシンで腕部を保護するようにクローを装着。

迫る穂先を無理矢理押しとどめる。

 

しかし純粋な質量兵器であるブレードやクローは相性が悪い。

本来、ビーム刃との鍔迫り合いなど想定していないのだ。

ヒート刃のように発生したプラズマが弾くわけではないのだ。

形成に用いる電流の反作用で辛うじて弾いてこそいるが……

 

『退け!お前達を傷付けるワケにはいかん!』

『そういう所が……!貴方のそういう所がッ!』

 

パワーでは圧倒的に勝っていても、カガセオはあまりに鈍重だった。

サーベルを片手持ちから両手構えに変更し、刀身を滑らすように切り上げ。

軽い小手打ちの形だったが、偶然にもナノマシンユニットを切り付けて破壊した。

神威としては二人を傷付けるわけにもいかず、ダメージを与えずに無力化する手段は限られる。

 

『一人で勝手に死のうとするなって!ちゃんと責任取ってよ!』

『別に死ぬ気など無いと言っただろうが!』

 

此方も鍔迫り合いの状態から変形で離脱。

一度カガセオに急接近してからのターンでその頭部を殴りつけた。

 

距離が開き、仕切り直しの状態。

しかし神威からすれぱ状態はあまりに良くない。

こうしている間にも、スレッタ達の突入時間が迫っている。

 

為すべき事を、為すのだ。

 

一拍置いて乙式の腕が外れ、自立して強襲してくる。

左腕は腕部グレネード、右腕は……ソフィのガトリングか!?

弾幕を食らいつつ、無力化の為接近。

圧倒的な装甲が攻撃を阻むことでどうにか手の届く距離まで接近出来た。

 

『近寄らせないよ!』

『ぐぉ……相手にすると厄介だな……』

 

そのタイミングで変形した甲式が十分な加速を終えて再突撃。

数倍の質量差をものともしない衝撃力でカガセオを突き飛ばした。

金属の歪む嫌な音を響かせ、体勢を崩したところに乙式から再度有線攻撃。

インコム式トライ・ブレード。

連射は効かないが、コード操作で高威力の爆発する刃を撃ち込む強力な兵器。

それを背後に2つ装備しているのだ。

 

回転する刃が正確にカガセオの両肘を捉え、僅かな隙間に食い込む。

そして、その僅かな隙間で十分だった。

ガチリ、金属が関節部に突き刺さった後に爆発。

 

ウィルドガンダムにそこまで高火力の武装は搭載していない。

但し、これがただ一つの例外である。

たった二射しか放てない分、破壊力は凄まじいモノだ。

神威の改良により超小型の核兵器……それに匹敵する爆発が両腕を内側から破壊する。

 

爆発の閃光が収まった後には、両腕を失ったカガセオが仁王立ちしていた。

 

『やるじゃないか、的確にこのカガセオの急所を狙ってくる。

そして最大火力を惜しまないその判断も素晴らしい……本当に、素晴らしい。』

『勝負ありです。大人しく連行されて下さい。』

『まだまだ武器はあるだろうし、こっちは殆ど弾切れ……でも神威。

貴方は私たちを撃てないでしょ?だから、もう私たちの勝ちなんだよ。』

 

なるほど。

 

『……よく分かってる。だが、それがどうしたというのだ?』

 

これ以上の時間は無い。

機体を直す時間も、当然もうない。

それでも。

 

『避けぬ。この機体は我が社の誇り、荒坂の魂そのもの。』

『躱さぬ。相手は我が妃。その渾身を受け止めずして何が王か、何が夫か。』

『退かぬ。それは友の為、我を信じる誰かの為。』

 

 

 

『神威、貴方は……』

『どうした?この程度か?』

『強がりを……両腕さえ失ったのに!』

『たかだが腕二本、失ったところでなんだというのだ。

武装はまだある、我は戦える。ならばこの歩みを止めることは無い。』

『……分からず屋!』

 

それで構わんさ。

お前たちを守れるならそれで。

 

『我はお前たちから逃げはしない、全てをぶつけて来い!全身全霊を以ってその全てを受け止め、真っ向から打ち砕いてやろうではないか!!!』

『……だったら私達は貴方を守る為に貴方を倒します!ソフィッ!!!』

『了解!確実に仕留める……!!!』

 

 

 

 

変形した乙式は限界を超えて加速。

その速度は神威の視力をして動きの動線が読めない程。

殺意は無く、敵意すら無い。

そこにあるのは、純粋な愛情。だからこそ攻撃は、神威には避けられない。

否、避けるつもりなど無かった。

例えその一撃を被弾した後に、自らの機体が木っ端微塵に砕けようと……

避ける(拒む)ことなどあろうハズが無かった。

 

突き進むは最短距離、ただ愚直に真っ直ぐ。

背に背負うは最も信頼する相方。

乙式がビームミツマタを構えていた。

 

狙いはあまりに明らか。

戦いならば、あまりに愚か。殺し合いなら、あまりに軽率。

しかしこれは戦いでも、殺し合いではない故に。

真っ直ぐな想いをただ相手に伝える為に。

 

回避も、防御も、無粋だろう?

 

 

 

『何も分かってない!』『人の気持ちも考えない!』

 

人間の視界では到底捉えられぬ速度。

その中で二人の少女はただ怒る。

それだけ彼に生きて欲しいし、彼と生きたかったから。

 

『『ちょっとは考えろ!馬鹿野郎!!!』』

 

思いの丈を吐き出し、気合い一閃。

渾身の一撃がカガセオの頭部を穿つ。

重厚な装甲を伴うスポッターバイザーを容易く破壊し、溶断。

ガンダムを模したツインアイのその片方、右眼を奪う快挙。

 

砲撃に特化したカガセオにとってそれはあまりの痛手であり……事実上の戦闘不能。

人間同様、二つの眼で距離や細かい動きを測るのに特化したツインアイの欠点。

モノアイに比べて片方の眼の性能は僅かに劣り、高価。

その上片方を失うと途端に利点を大きく損なう。

 

神威は半分になった視界の中、何があったのか確認すべく機体の顔に触れる。

そして溶断されて滑らかになったカメラの眼窩を確認すると、笑う。

 

『ガハハ、強いな。お前たちの想いは確かに受け取ったよ。

殺意や敵意、そういったモノの一切無い攻撃……想像を超えていた。

カガセオの両腕と右眼を奪う武功も誇るが良い、我が妃よ。』

 

素直に褒め讃えた。

不覚を取ったのは事実、然し__

振り抜いた体制のまま二機のガンダムが硬直する。

 

『え__?』

『惜しいな、ナノマシンはナノだからナノマシンなのだ。ユニットが破壊されて散乱したとして、そこから無くなるワケではない。そしてアンテナさえ生きていればコントロールは難しくない。』

 

 

 

ナノマシンジャック。

ウイルス汚染したナノマシンによる物理的なハッキング。

一度取り付いてしまえばそれを回避するすべは無い。

例えそれが友軍であってもだ。

 

『一手差で()の勝ちだ。』

 

操作権を奪われた二機がゆっくりと宙域を離脱していく。

 

 

 

最後に残った僅かな操作権で二人は此方に手を伸ばす。

乙式の方は文字通りに腕を伸ばしてだが。

手はカガセオに絡み付く。

逸れるのを恐れる幼子のように。

 

『いやだよ、おいていかないでよ……』

『……おねがいします、わたしたちも。』

 

縋り付くような泣き声に、神威は一瞬表情を曇らせた。

それでも止まらぬ。

 

 

 

 

「……なぁに、俺は死なないさ。まだまだやりたい事がある、やらねばならぬ事が多過ぎる。」

 

 

 

 

『こちら神威!これよりクワイエット・ゼロに突入する!アレを使うぞ!』

『こちら母艦、既に射出済みです。社長の位置を特定して追跡させています。』

『了解。これより通信も切断し、アクティブ・カモを起動してクワイエット・ゼロの防空網に入る。

そして内部で起動して陽動を開始する、それまでの数分は頼むぞ。』

『了解、奥方の方は……』

『回収してやってくれ、弾切れで戦わせるわけにはいかん。』

 

通信、切断。

アクティブ・カモ起動。

慣性運動で音を立てず

 

通信を断ち、透明化した機体がガンドノードの網を通り抜けた。

真っ暗なコクピットの中、神威は考える。

 

位高ければ徳高きを要す。

 

荒坂家に伝わる家訓、その意味。

我ら生まれながらの強者、生まれながらの捕食者。

故にこそ、徳高くあれ。

 

誰かの為にこそ命を懸けてこそ。

それが荒坂神威の生き方だ。

いつだって素直に、欲望のまま、自らの心に従う。

 

想う。

スレッタ・マーキュリーを。

ミオリネ・レンブランを。

自らを信じる仲間たちを。

 

望む。

自分の身内と呼べる者、その皆が笑って暮らせることを。

自らの心のまま生きる世界を。

 

 

 

地球の魔女たちが、幸せであるように。

未来へ負債は残さない。

全てをリセットする、その為の力だ。

 

 

 

透明のまま進む神威の背に巨大な球状の何かが迫る。

その直径は優に100mを超えているであろう。

巨球が神威に追従し、数十機のガンドノードを叩き潰す。

異変に気付いた機体達がすぐさま一斉射撃を始めるがその外殻を貫通する事も出来ない。

 

『……来たか。』

 

巨球の唯一の入口から傷付いたカガセオで侵入、即座に再度ロック。

誰だろうがそれを妨げることば叶わず。

 

数分間撃たれて尚、僅かに表面が溶けただけの状況に辟易したのか高出力のサーベルを装備した機体がゆっくりと強靭な外殻を溶かして切り裂いていく。

その刃が貫通した刹那、内側から飛び出すのは回転する刃。

六本の巨大な回転刃を連結し敵を引き裂く事に特化した兵器。

 

ガンビットの一機は一瞬だけ拮抗するも、圧倒的な暴力の奔流に飲まれて消える。

消失したことで完全に臨戦態勢に到達したガンビットのが一団となって群がった。

正面に陣取った数十機を薙ぎ払う回転刃……グラインドブレード。

さらに反対からも同様にもうひと振りグラインドブレードが出現。

挟み込む形で全ての機体をスクラップに変えた。

 

『見えぬままでは不便か。』

 

そう神威は呟き、自らを覆う外殻を刃で切り刻んでいく。

巨大な殻を破る程に、その禍々しい全貌が明らかとなる。

 

まず、大きい。90mを超える大きさと側方の厚みは150m程。

その脚部には履帯。陸戦を想定した巨大なキャタピラ。

背部にはMS半分もある巨大なミサイルとVOBが2つ。

左右に展開したVOBはあたかも翼のように。

車体から生えたサブアーム三対からそれぞれ、具現化した暴力の塊。

 

それは戦車、或いは要塞、或いはMS。

荒坂重工の象徴たる超弩級MTを改造し、カガセオのユニットとしたモノ。

 

 

 

『モビルスーツではない、言うならばモビルアーマー。それが戦闘に特化した装いに相応しい。さあて、思う存分やってやろう。スレッタには悪いが……全て蹴散らしてくれるわ。』

 

隻眼の機体が戦いの愉悦にに打ち震えた。

 




社長……ヤンデレな嫁に愛されて戦いにいけない。
覚悟ガンギマリ、英雄病と言える。

魔女s……病みの発露。普通に考えて確かに魔女sの言い分のが正しい。
問題はそうするにはあまりにも社長は英雄気質。

モビルアーマー……OWを運用するすんごいの。
次回解説と共に本格的に動く。

水星の魔女結局MA出なかったから出そうと思って……
タンクに合体してるので外観がほぼガンタンクなんだけどね。
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