本編の続きです。
初期プロットの方は突然差し込まれて分からなくなるとのことで変更させました。
30話が2回出てしまうことになり申し訳ない。
「Hello?Buon giorno?你好?اَسَّلاَمُ?Здравствуйте?」
「……別に日本語で良い。拠点が日本にあるのだから話せるのは分かりきって居るだろうに。」
「国という枠組みは廃れて久しいが、自らの人種に誇りを持つのは大事だぞ?
にしてもなるほど。灯台もと暗しとはよく言ったモノだ。一年も時を浪費した……」
荒坂神威、18歳。
クワイエット・ゼロの動乱から丸一年。
世界は大きく動いた。
グループの解体。
宙ぶらりんになった中小企業達を荒坂は莫大な資金で取り込んだ。
宇宙議会連合の粛清。
議会連合の行いを白日の元に晒し、強化人士関係の非道な実験を始め、
クワイエット・ゼロの作成や地球で争乱を起こしたエアリアルの蜂起に至るまでの問題。
その全てを議会連合の罪として濡れ衣を被せ、議員らを絞首台送りにする。
あくまで地球圏に限り絶大な影響力のあった荒坂がグループの大半を吸収する形。
その上、旧体制といえる議会連合を崩壊されたとなれば次の覇権を握るのは当然である。
「そして最後に残った不安要素を消しに来たと。」
「そこまで分かってるとは、流石に先見の明がある。」
「これでも年相応に見たくないものは見てきたもんでね。これも経験さ。」
かつては日本と呼ばれた国が存在した地であり、荒坂の支配力が非常に強い地帯。
だからこそ、却って見つけるのに時間がかかったのだが。
老朽化した防波堤の片隅で男は静かに釣りに興じていた。
「釣れるか?」
「……まぁ、ぼちぼちだな。人間の減った世界は魚たちにはさぞ住みやすいのだろう。」
「実際、荒れ果てた地球ではあるが、一次産業はそれなりの規模があるそうだ。
環境問題などは人が宇宙に手を伸ばす前より若干改善されている、ともな。」
人間は地球のガン。
そういった主張も、ある程度は的を射ている。
まぁ、だからといって星を落として地球を住めない程冷やす様なのは馬鹿だが。
インテリというのはどうも性急でいけない。
心情的な要素、現場での問題を考慮せず机上の空論だけを信仰している。
「それで?そろそろ殺すか?」
「テロリストは過激思想しかいないのか。別にお前を始末するだけならわざわざ俺が出向く必要も無いだろうに。辺り一帯丸ごと空爆して綺麗さっぱりだ。」
「その言葉、そのまま返させて貰う。」
「別にアンタが隠してる銃じゃ何発食らっても俺は死にやしないんでね。試してみても良いが。」
「……報告は聞いている、生まれながらの超人体質。凡そ対人兵器は通用しないと。」
「別に
その言葉を遮り、遙か遠方からの凶弾が放たれる。
軽装甲車両なら貫通する対物狙撃銃。
熟練の狙撃手が放てば2km以上先から標的の頭を撃ち抜くことも容易い。
音速を超えたその弾丸は当然不可避である。
「おっと、やけに鋭い殺気はこれか。」
「……成程。殺せないワケだ。」
背後から放たれた弾丸が到達する前に、殺気を察知して回避。
僅かな時間差で神威の居た地点を正確に通過する弾は、正確故に当たらない。
片目を失った代償なのか、より強まった第六感__
研究により新人類と定義され、
神威は特に殺意、敵意の類いを顕著に察知する事に長けていた。
「AK7S-12.7か?俺が
まぁ、キリの良いところで諦めて貰えると助かるのだがな……」
「降参だよ、殺せ。」
「
アンタも、その取り巻きも。そろそろ戦後を生きろよ。ドローン戦争からもう何年だ?
旧き体制は滅び、宇宙全体が明日に歩み始めてる。進めば二つ、俺の友ならそう言うだろう。」
「そう簡単に割り切れるモノではない……」
「いいや、割り切って貰うさ。これ以上不要に人が死ぬのは御免だ。社会の損失に他ならない。
アレだ、持続可能な社会を目指すナントカ……
SOSだか……SNSだったか……○witterとかFace○ookとかそんなヤツだ。
「アンタを殺すと多分嫁が悲しむんでな。次会った時に足を洗ってなきゃ殺すが。今は見逃そう。」
「……そうかい。天下のアラサカが随分と寛大な事だ。」
「子供も生まれたばっかりなんでな、恩赦処分というヤツだ。」
将来的には我が子である以上、その手を汚すのは間違いないだろうが。
今くらい綺麗な姿を見せていたいというのが親心である。
俺を腹に抱えたまま最前線で敵を八つ裂きにしていた母上は本当におかしいと思うのだ。
子を持って知る親心……すまない母上、全然理解出来そうにない。
別に俺としては健やかならそれで良いし。
殺人と虐待の狭間のような教練をさせる気にもならなかったし……
「……ん?嫁?子供……?アンタ幾つだ?」
「18だが?別に今どき珍しく無いだろう。テロリストはお堅いのだな。」
「そうか……?いや、やっぱり早くないか……?」
「そもそもアンタの居場所に目星が付いたのもウチの嫁に聞いたからだぞ?ほら。」
そう言って神威は端末を取り出す。
膨大なデータの中で一際目立つように配置されたフォルダを開くと、中の写真を見せる。
それは二人の、否。四人の写真。
彼の愛妻と生まれたばかりの子供二人の写真であった。
尚、出産日に神威は緊張の余り貧乏ゆすりで凄まじい振動を発生させ、本社の一角を砂に変えた。
それを止める母に殴り飛ばされ、結局1/3が崩壊する甚大な被害が出たのだが、それはまた別の話。
「ソフィ……ノレア……」
「そうか、そっちだと死んだ事になってるのか。生憎と生きてるよ。
俺が言うのも何だが、多分そこそこ幸せにしてやれてる……と思うが。」
「そうか……だろうな。」
少なくともその笑顔は、真っ直ぐなモノだった。
満足な食事も取れず、明日の命すら分からない身の上よりは遥かに__
特段深い関係というワケでは無い。
あくまで利用される少年兵と唆すテロリスト。
その関係でこそ、あったが。
ナジはじんわりと熱くなる目頭を抑える。
「……1つ聞いて良いか?」
「俺に答えられる範囲なら。」
「お前、この子たちに手を出したのか?」
「……アンタまでそういう事言うのか!?仕方ないだろ出来たモノは!!!
俺と二人の名誉の為に言っておくが!!!寧ろ俺が手を出された方だッ!」
どうやら大変不名誉な嫌疑を掛けられているようだ。
止めろ!俺をそんな目で見るな!
三ヶ月ぶりに会った嫁がやたら太ってて!
急な体調不良になったり……酸味のあるモノを好むようになったり!
貴様らに俺の気持ちは分かるまい!
ミオリネ達からは道にばら撒かれたゴミを見る目を向けられ!
チュアチェリーは無言で殴ってきて!
我が友にさえ優しい目を向けられた……!
神威は思い出し怒りで地団駄を踏む。
生物の域を超えた膂力により鉄筋コンクリート製の防波堤が僅かにヒビ割れて揺れる。
別に自分のせいではない……筈だ。
しかし誰かのせいにしたくとも、自分の顔しか思い浮かばない。
文字通り、自分の蒔いた種である。
「……もう良い。俺も暇じゃないのだ……帰らせて貰うぞ。」
「何も言うまい、敗者にその権利は無いのだからな。」
今日は俺にとって……否、全人類に等しく大事な一日になるのだ。
早々に切り上げて準備せねばならない。
『……テスト、テスト。聞こえているか?見えているか?
ああ、機械の故障では無い。案ずるな。』
水星プラントのテレビの一つ。
怪物じみた巨体の男が映っていた。
それは人類の活動圏なら至る所で。
『この放送は地球を中心に水星から木星まで、あらゆる情報媒体をジャックして行っている。
そう多くなかろうが、俺を知らぬ者の為に。俺は荒坂神威。地球最大の企業、荒坂重工の長である。
この世界に於ける統治機構は旧宇宙議会連合が担っていた。それを破壊したのが、我らである。』
虐殺者は声高々に告げる。
自らの行いを正当なモノだと確信しているから。
『然しながらそれは、秩序の破壊が目的ではない。寧ろ維持……世界の調和を願う故である。
……GUNDの軍事利用、非道な強化人士の研究、アーシアンの孤児を洗脳して少年兵に。
余罪を挙げればキリがない。兼ねてより我々荒坂はこれらに宇宙議会連合が絡んでいた確実な証拠を掴んでいた。そして一年前のクワイエット・ゼロ事件。アレすらも議会連合の一派閥が目障りなグループを排除するべく暴走した結果だと分かった。即ち、
『さて問題だ、新しい秩序を作り上げるのに必要な要素は?』
『……若さかしら?』
『俺の見込み違いだったか?お前の父にも劣らぬ才覚を俺はお前に見たのだが。』
『余計なお世話よ!』
『先んじて解を出すならそれは痛みだ。膿を出すには血を流すしかない。
革命とは一種の自浄作用、免疫システムと呼んでも良い。多くの場合それは自傷を伴うのだ。』
『それが、あの虐殺だって言うの?』
宇宙議会連合の破壊。
それは概念のみならず、物理的な殺戮を伴った。
議員やその関係者、警備兵などの死者は四桁を超える。
幾らか理由があったとしても、それは虐殺に他ならない。
かつてのヴァナディース事変とさえ比べられない被害である。
『虐殺とは人聞きの悪い……粛清と言ってくれ。どの道奴らに救いは無い。
贖うには罪を重ね過ぎたんだよ、それなら有効に殺してやるべきだろう?』
『……正直、貴方とはその辺りでどうやっても分かり合えないけれど。』
『気が合うな、俺もだ。だが、理想論だけを語る奴は嫌いじゃないぜ?
まぁ、汚れ仕事は
しかしお前にもしっかりと働いてもらうぞ……お互い忙しくなるがな。』
『上等よ……とはいえ、ここからどうやって丸く収めるつもりなの?』
『何、俺の手腕を有難く拝見すると良い。お前の助けとなろう、次代の王よ。』
『しかし、秩序無き世界に残るのは混沌のみ。我々はそれを望まない。
故に我々は新たな秩序を築くことにした。
これはその垣根を越えた勢力である!最早お互いの出生で憎しみ合う時代では無いのだ。』
そう言うと男は机を力強く叩く。
本気で叩いたら粉砕してるであろう事から、パフォーマンスなのは明白だが。
『スペーシアンの圧政に苦しめられたアーシアンの怒りを、俺は知っている。
アーシアンの凶行を恐れるスペーシアンの恐怖を、俺は知っている。
だからこそ我々は耐え忍び、手を取り合わねばならないのだ。民の暮らしを守る為に。』
両手を振り上げ更に続ける。
『しかし俺は肯定する!闘争とは人の可能性そのものだと。時に争い、殺し合う事で未来を切り開く事もあるのだと、俺は認める!より強く、他者より先へ、他者より上へ!競い、妬み、憎んで、その身を食い合う!それこそが人間の愚かさであり、美しさなのだと!」
『戦いは良い。我らのような人でなしにとってそれは必要不可欠だ。
あらゆる人の宿業を受け入れた上で、それを新たな秩序とする。
この秩序を地球共栄圏と呼称し、その総帥はこの俺、荒坂神威が務めさせて貰う。
そしてスペーシアンの代表として俺はミオリネ・レンブランを指名し、共栄圏総裁に任命する。』
総帥と総裁。
極めて似た名称の役職二つ。
『両者間に上下の関係はなく、全体としての方向性はお互いの承認で判断する。
暴走しないよう、相互監視に置くという事だ。』
彼の判断としては異質な……下に就く事こそ無いが、同格の者を認める。
荒坂神威は心から平穏と闘争を願っているのだ。
二律相反した心に素直に、正直に生きているだけ。
『この決定に異論ある者はそれも良し!我々はそれを正面から打ち破り、人類の発展を推し進める!
この瞬間より我々に逆らうモノ全てに、荒坂は徹底的な武力を以て応えることだろう!
正義は我らにあり、故にこの秩序を宇宙全体の民が受け入れる事を、俺は望む!』
掲げた拳を握り、今一度力強く宣言する。
『人類の未来に栄光有れ!』
ナジおじさん……やったことはろくでもないが、社長も大概なので生存。
ミオリネ……巻き込まれガール。たぬきとは違う形で社長と並ぶ事を許された。
ある意味では誰にも成し得ない偉業。
社長……最近子供が生まれてとても幸せ。
尚、仲間からはロリコン犯罪者としてシバかれた、理不尽。