位高ければ徳高きを要す   作:CATARINA

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めちゃくちゃ投稿遅れた……

その分多少長いから許して……


布衣之交を忘れる事なかれ

「という訳で、久しぶりだな貧乏人ども!」

「久しぶりだねそのキャラ付け。」

「正直完全に忘れてた所もある、俺も久しぶりに使った。」

 

何話ぶりだ?25話くらい結局使ってない気がする。

初期特有の謎のキャラ付けってあるよな。

 

「元々いずれお前たちを招きたいと思っていた、随分遅くなったが。」

「いつ見てもおかしな建築にしか見えないけどな。」

「一応高層ビル……ではあるが横にも広い分遠景だと天守閣に見えるだろ?荒坂本社の設計は今に至るまでデザイン、造形を評価される三代目様が、そしてこの街と共に建築に長けた四代目様……つまり俺の曽祖父殿が創りあげたのさ、まぁードローン戦争の時や二人の出産の時に俺と母上が半壊させたりしてるんだがな。」

「地上でこんなに栄えてるエリアも中々無いでしょうね……」

 

荒坂城下町、商業エリア。

神威は合流した友人達を連れて本社へと歩いていた。

本来なら会社の敷地内に直接降下する手筈だったのだが、シティーガールに憧れるパーメット生命体、エリクトが駄々を捏ねたので少し離れたところから散策を兼ねて歩く事となった。

 

『これだよこれ!やっぱりボクにはこういうお洒落な街並みが相応しいでしょ!?』

「四歳児には早すぎるだろ。」

『二十五歳!!!歳上を敬おうって気持ちが君には無いのかい?』

「粒子上に存在してるガキが何を言ってやがる、ウチの影の方が余程現実味があるぞ。」

 

神威ミオリネが付けているストラップをつまみ上げる。

子供らしいキンキン声で喚き散らす小姑にはさぞうんざりするだろう。

 

『冷静に考えてみなよ、ボクは本来二十五歳。』

「まぁそうだが。」

『そしてスレッタはボクのクローンだよ?想像してごらんよ、5年後のスレッタを。

つまりボクもそのくらいナイスバディなグラマラスお姉さんなのさ!!!』

「無理があるだろうその理論、クローンったって自己は隔絶してるし……寧ろお前達にこそ感謝して欲しいのだがな俺は。お前達の母親の戸籍偽装も苦労した。対外的にプロスペラ・マーキュリーは大罪人として処さねばならなかったからな。エルノラ・サマヤの戸籍が行方不明で残ってたのは幸いだった。」

 

口封じにプロスペラの正体を知る者を始末したり……この辺の暗部は教えるまいが。

シャディクがある程度の罪を被ってくれたのも大きい。

本当にギリギリ__辛うじて死を偽装して名を消す事に成功したのだ。

 

「さて、そろそろ本社に向かって良いか?如何せん俺は顔が割れ過ぎてる。

変装してもこの身から溢れる気品さがどうも人目を引くからな………」

「サングラスだけで変装は無理があると思うよ。」

「身長だろ。こんなデカい人間他にいねぇし、今いくつだよ?」

「流石に止まったが251cm、体重は500kg弱だな。」

「ヒグマか?」

「近いのはホッキョクグマだ、最大サイズのな。」

 

人混みを掻き分けながらゆったりと向かい出した。

ある程度歩き、本社まで少し開けたところで立ち止まる。

 

 

 

「そういや、お前達に聞こうと思ってたんだが__」

 

そう言って神威はゴソゴソとサイドポーチを探る。

数秒後に取り出したのは数冊の本だった。

 

「何それ?」

「まぁ、なんというか……所謂、薄い本ってヤツだ。おっと、女性陣は見るなよ……」

 

ニカやスレッタの目から遮るように表紙を隠す。

しかし位置関係上、隣に居たミオリネだけがそれを見てしまった。

 

「…………………私?」

「…………ああ、多分そうだな……」

 


 

発覚したのは元々、ウチの技師長からだった。

言わずと知れた限界オタクである技師長。

彼女が年末に収集した『戦利品』その中の一つ。

見覚えのある白髪と異様に筋骨隆々の男が表紙に印刷されたそれ。

……大組織の2つ頭で偶然にも男女。

表現の自由がある以上は()()()()()が作られることもまぁ、否定出来ないワケだが……

 

「このサークル主の作品、幾つかありますよ。」

「マジかよ……」

 

俺とスレッタ、ニカ辺りは勿論、直接の関係の薄いグエルやセセリアなどそのジャンルは多岐に渡る。

……売上も相当だな?これは流石に看過できないか。

取り敢えず裏は神威(カモイ)に取らせるとして……犯人に心当たりがないでも無い。

 


 

「画としての俺の裸体がやたら緻密なんだよな、普段は服で隠れてるような傷跡とか。

つまり犯人は高確率で俺の裸を見た事があるって事だ。だが……その割には……」

神威は一度どもり、ため息をつく。

 

「ナニとは言わないが身体の書き込みに対して一部造形が雑……作者は多分本物見たことがないのだろう。」

「そもそもサイズ感が小さ過ぎる。」

「シチュエーションが絶妙に処女の妄想っぽいですね。」

「処女で悪かったね!!!」

「ああ、技師長も『絵柄から処女膜の香りがする』と気持ち悪い事を言ってたな。」

「キッショ、なんで分かるんだよ。」

 

それは深く同意する。

あまりに気持ち悪かったんで俺は泣きそうだった。

 

 

 

 

 

 

ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、マヌケは見つかったようだな。」

「…………あっ、急用を思い出したから帰

 

アリヤ は にげだした!

魔王からは逃げられない(しかしまわりこまれてしまった)

 

「出来心だったんだ!思ったよりずっと売れて……これがなきゃ生活が……!」

「こんなくだらない話で友人を捕えなきゃならない俺の気持ちを考えてくれ……」

 

情けないやら何やらで本当に涙が出てきた。

 

「警備兵!連れてけ!たっぷり絞ってやれ。」

「イヤダーシニタクナーイ!シニタクナーイ!!!」

 

極論、俺は構わないのだ。

某動画投稿サイトで音MADの素材にされてるし、今更。

それくらいは今更、構わないのだが……

向こう側には最低限、許可を取るべきだと思う。

 

 

 

 

「……悪は滅びた事だし改めて。我が城、荒坂重工本社へようこそだ!三日後にウチの新事業であるアリーナでイベントがあるからな、お前達にも是非観戦させてやろうと思っている。それまでまぁ、のんびりしてくれ。」

 

凄まじく広いが敷地内には先進研究部や兵器の試験場、問題ばかりのラボ。

そして一般開放もしてる荒坂の歴史を取り扱う博物館なんかもある。

 

「明日明後日、暇なら部下に案内させる。勿論、城下で買い物をして経済を回してくれても良いぞ。特にメカニック科なら本社内より技術区の方が面白いかもな。そちらも話は通しておこう。俺は__」

 

 

 

 

少し寝る。

 

 

そう言って神威はその場に倒れた。

轟音ともに崩れ落ち、衝撃でアスファルトにヒビを入れながら。

 

「神威くん!?」

『あぁ、やっぱりこの辺で倒れてましたか。』

 

ガシャガシャと機械の擦れ合う音を響かせる数mの人型ロボットとそれに跨る人影。

 

『ヤハリ無理ガアッタンジャナイカ?ムリヤリデモ休マセタ方ガ良カッタ気モスルガ。』

『まぁ、今日の為に時間を空けたワケですし……止めるのも酷でしょうに。

あ、お久しぶりです皆さん……?ああそうか、この姿だと初対面でしたね。』

 

よっと飛び降りながら、中性的な風貌の美青年は姿を変える。

流体状にこねくり回したように一度崩れ、顔立ちも、背格好も変化する。

そして地面に着く頃にはその姿は倒れた男そのものであった。

 

『私です、神威(カモイ)です。そろそろ社長が限界かと思って拾いに来ました。』

『……楯無ダ。今ハ機械化兵ノ部隊長ヲ務メテイル。社長ヲ運ベル奴ハ少ナイカラナ。』

 

神威と楯無、どちらも自らの身体を機械に改造してまで荒坂に尽くす忠臣だ。

 

『皆さんご存知の通り、社長は多忙を極まれます。今日……厳密にはアリーナへの出場まで、無理やりスケジュールを確保すべく社長はここ一週間全く寝ずに働きづめでしたので……』

「そう言えばウチの子達は?良い子にしてる?」

『神楽お嬢様は今日の子守り担当だった八龍を半壊させて逃走__したところを義母上に捕まって取り敢えず三日後の試合までは向こうの預かりとなりました。王我様は神楽様お一人だと心配だから付き添うとの事でご同行なされましたね。』

『悪イ。俺モ止メヨウトシタガ、イツモノ義体ヲ破壊サレチマッタ。』

「だから旧型ボディなんだ、ごめんね……」

『まぁ、我々人間じゃないのですぐ直りますから。我々は社長を寝室に叩き込みましょうか。』

 

そういってカモイは神威を担ぐと楯無に跨り本社へと消えていった。

 

「子供たちも大きくなったから合わせたかったけどそれは今度って事で……

取り敢えず今日の夜まではこの本社の説明をするね。」

「なんと言うか、相変わらずあらゆるスケールがおかしいです……」

「エリクト、アンタもああいう義体なら自分で動けそうじゃない?」

『もっと可愛げのある見た目が良いんだけどなぁ……』

 

 

 

 

 

 


 

「にしても私たちだけで貸し切りなんて豪勢ですね。」

「地球寮のお風呂も無駄に……ホント無駄にお金かけてたけどこれは……」

 

どう考えても比ではない。

これと比べたらあれだけ大掛かりな施設ですら大衆向け銭湯と大差ないだろう。

スペーシアンと比べてかなり入浴文化が発展しているアーシアン。

その中でも神威達の人種は群を抜いて温浴に拘りがある……らしい。

あくまで聞いた話でしかないが。

 

「リリッケさん達はまだ来てないんですかね?」

「まぁ先に入ってればそのうち来るでしょう……多分。」

 

衣を脱ぎ……もたつくスレッタを捕獲して服を剥ぎ取る。

ある程度身体は癒え、自らの足で動き回れるようになったとはいえ戦いの痕は未だ深く。

仕方ない事だと理解していても、それを見る度ミオリネは自己嫌悪に陥る悪癖があった。

 

「ミオリネさん?」

「いや、何でもないわ……早く入りましょスレッタ。頭洗ってあげるわ。」

 

地球寮に馴染むまでは全く馴染みのない文化だったが……

こういう場合、いきなり身体を洗うのがマナーとされる事もある。

一方で、掛け湯だけをして湯船に浸かってから入る、というものもある。

体温の上昇と発汗により効率良く身体の垢が落ちるとかなんとか……

とはいえ、一応は他人の家でやる気にもならず。

自分のを手早く洗い終えると毛量に四苦八苦するスレッタを補助。

暫く時間こそ取られたが無事に頭と身体を洗い終えた二人は湯船へ。

恐らくは高級であろう石材で作られた真っ黒な岩風呂に身体を沈める。

 

温度はかなり熱めだが、白濁した湯はしっとりと独特の質感があり心地好い。

……本当にこれだけで商売が出来そうな程だ。

 

「凄い……!泳げそうですよミオリネさん!」

「はしたないから止めなさい。」

「心地好いが十分温度も高いからな、あまり長湯すると逆上せるぞ。」

「貴方みたいに何時間も入らないのよ普通の人間は。」

「まぁ、それもそうか……」

 

ふぅ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミオリネのジャンピング・ニーが美しい軌道を描いて神威の顔に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 


 

「普通、人が入浴を楽しんでる時に蹴ってくるやつがあるか!?」

「うっさい!なんでいるのよ!」

「そりゃここは俺の家で、半ば俺専用の浴場だぞ………?……来客用の浴場はここから見て逆方向……技術区画側にあるんだが、間違えたな?外見は殆ど同じだが、説明しなかったのか。まぁ良い。淑女が風呂場でそんなに騒ぐんじゃない。はしたなく見られるぞ? 安心しろ、お前達から見物料など取らんさ。いつもの事だろう。」

「なんで私たちが覗きに来たみたいな話なのよ!?」

 

実際後から来たのはそっちだろう。

そして我が至高の玉体、何一つ恥じるところはない。

数千カラットの宝石と並べて展示して尚、宝石を霞ませる輝きよ。

 

「見てください!ホントに泳げますよ!」

「ブレないな……友よ……」

 

まぁ風呂の中の出来事、誰が咎めるでもなし。

行儀が悪いといえばそうだが、別にわざわざ目くじらを立てる必要もあるまい。

気持ちはよく分かるしな。

ただまぁ、うむ。

 

「スレッタ、取り敢えずその尻を浮かべるような泳ぎ方は止めた方が」

「見てんじゃないわよ!」

「うおっ……普通残った片目を狙うか!?指が砕けるのがオチだぞ。」

 

とんでもないマネをする。

確かに失った方の目も()()()()()()()が、肉眼は片方だけなのだ。

そっちまで失うのは流石にいかんともしがたい。

 

「馬鹿らしくなってきたわ。」

「ならば良い……まぁその辺の常識を問うのも酷か。」

「そういやアンタ不能だったしね。」

「流石に叩き殺すぞ、不能なら子供がいるわけねぇんだよ……」

 

お前までボケ(そっち)に回ると収拾が付かなくなる。

 

「……目の具合はどう?」

「悪くない、GUND様々だな。」

 

地球への帰還後、片目を失った俺にミオリネはGANDによる治療を提案した。

尤も一度ロストテクノロジーになったGAND医療、半ば人体実験だ。

身内とはいえ中々肝が座っていると当時は思ったモノだ。

だからこそ、それを受諾した。

俺の細胞からクローニングにより培養した眼球にGANDによる施術を施し、眼窩に嵌め込む。

自分の細胞でないと強力な自浄作用で排除されてしまう故に。

 

更に義眼には脳波コントロールの為のサイコミュ制御装置を内蔵している。

戦闘力という面では寧ろプラスと言って良いくらいだ。

起動中、無駄に赤く光るのは少し気になるが……

 

「とはいえ、データ取りに使うには俺の身体はあまりに異質過ぎる。

ほら、アイツ……グエルの弟の嫁の……何だったか?誰だっけ……?」

「ホントに人の名前覚えないわね……それにまだ結婚してないはずだけど。」

「何、遅かれ早かれだろう。この間グエルに会った時にも冷やかしてやったわ。

『遠からずお前も叔父さんだろうな』とな。アレはアレで早く嫁を探すべきだが。」

 

結婚といえば……そうか。

 

「今更感あるが結婚おめでとう。二人とも。」

「結婚……うへへへへ……」

「なんてだらしねぇツラを……いや、幸せなら良いのだがな。

なら次は子供だな、こういうのは早ければ早いほど良いぞ。」

 

スパァンッ!

 

ミオリネの腰の入った平手打ちがモロに決まり、ミオリネは手首を痛めた。

 

「痛っ!?」

「軟弱なオフィスワーカーめ、俺はパイロット(スポーツマン)だ。

そこらの社長とは鍛え方が違う。一緒にされちゃあ困るな……」

 

とはいえ、割と冗談でも無いのだが。

 

「あれ、でも、私とミオリネさん、女の子同士で……」

「なんだ、そんな事か?水星は遅れてるのだな……地球(こっち)じゃ全然アリだぞ。

男同士は技術的にまだ途上だが、性質上女同士ならそう難しい事でもない。

俺はてっきりそれを分かった上で婚約したもんだと……いや、子を成すだけが価値では無いがな。」

「そもそも、何でアンタがそんな事を気にするのよ。」

「お前が聞くか?心当たりくらいあるんじゃないか?俺に届くという事はお前の方にはその数倍は届いていると思うのだが……周りの誰か、取引先、誰でも良い、言われなかったか?」

 

何を意味するのかはきっとミオリネなら分かるだろう。

俺の方にも月に1,2回。

立場の弱いスペーシアン側ならそれこそ毎週は耳にするだろう。

 

「……まぁ、ね。」

「?????」

「察しが悪いのは美徳だな、スレッタ。包み隠さず言うならアーシアンの代表であるこの俺とスペーシアンの代表であるミオリネを婚姻させようという派閥が……おっと良い音がしたな。脳が破壊された音だ。」

 

その言葉を聞いた途端、口を開けて硬直するスレッタ。

こりゃダメだ、何度か目の前を手で仰いでも反応しない。

両手を全開に広げ、眼前で打ち鳴らす!

僅かだが衝撃波が発生し、爆音と相まってスレッタの意識を取り戻した。

 

「まぁ……ある程度は予想していた意見ではあるのだが、奴らが執拗に俺たちを結ばせようとする理由が分かるか?」

「……立場かしら。」

「それはある意味正しいが、満点の解では無いな。夫婦というのはつまり、如何に親しく愛し合おうが他人でしかない。血の繋がり……お前とデリング氏がそうであるように、身内であれ血を分けていないのだから……奴らが欲しているのはつまり『安心』よ。自らの生活が崩れないのだという安らぎを求めるのだ。 倫理観を無視し、究極的に割り切って言うならば婚姻など子を残す事が目的だろう? まぁ地球の覇者たるこの俺と宇宙の代表者たるお前、その間に子を作らせればそれは奴らにとって何よりの『安心』という事だ。実際に仲違いした夫婦が子の存在で諍いを治める様に、その存在は宇宙と地上にとってのバランサー足りうると。そう考えているのさ、浅ましい事にな。」

 

尤も、机上の空論でしかない。

 

「愚かな事に奴らは俺がなんのためにアーシアンとスペーシアンの代表者を分けたか分かっていない……融和の為には寧ろ逆。互助の関係ながら相互に監視し合わねばならぬ。それを双方の血を引く者を担ぎあげようなど、あまりに考えが甘い。代表が一人……その代表者を引き入れた陣営の発言力が増すだけだぞ?何故それを考えられないのか。」

 

そんな愚者があまりに多いということ。

俺にはそれが嘆かわしい。

目先の安心を求めるあまり長期的な視野に欠けている。

 

「だからこそさっさと子供を作れ。黙らせるには最良だ。

一般的に身体が若いうちに生む方が良いというのもあるしな。」

「簡単に言うわね……」

「俺としちゃ他人事だからな……まぁ、あくまで推奨という程度だ。」

 

 

 

 

さて、と。

 

一度息を深く吐くと、神威の顔が変わる。

それはこれまでのように友人と雑談をする気安いモノではなく、戦いに赴くような険しさであった。

 

「お前たちがここに来たのも、ある意味運命めいているのかもな。」

 

そこまで言って、一度どもる。

少し考えて、諦めたように呟く。

 

「三年前のあの日。正直、面を合わせるまでお前達を始末するって考えはずっとあった。」

 

そう言って神威は深々と頭を下げる。

言葉だけで謝罪する事こそあれ、実際頭を下げるという事は有り得ない。

そんな男が唐突に頭を下げている事実に、二人とも無言になる。

 

「ミオリネの方は流石に理解しているようで助かるがまぁ、当然だよな。 荒坂は戦争屋、地球と宇宙の蟠りはそれこそ最大の飯のタネなワケだ。 社員の誰も彼も、口にはしないがそれを望んでいたし、後は俺の指示を待つだけだった。」

「…………」

「そんなに意外か?友よ。俺の生命、技術、力、その全ては社と社員の為にある。 なればこそ、非情な判断を要求されるのも仕方あるまいよ。」

 

お前達の友人として協力する事を考えていた。

同時に荒坂の長として消す事を考えていた。

少なくとも、それは俺にとって相反しない。

 

「だがまぁ……失敗したな。どう考えても共には在れない。

平和主義者と荒坂は不倶戴天の仇敵同士である。そのはずだったが。」

 

自嘲するように顔を覆って塞ぎ込む。 故にその顔は伺えない。

 

「当たり前のように俺を友として頼るお前達を見たら、どうも馬鹿らしくなってな。 ……ああ、本当に失敗した。我が人生最初で最後の経験となる事は間違いない。つい、社長(一千万の長)としての自らより、お前達の友人である事を優先してしまったなどと。」

 

 

 

 

 

___一体誰に言えようか。

 

 

 

その言葉は口にしたかしてないか、音無く浴場に響く。

それは俺に忠誠を誓う全てへの裏切りであり、分の悪い賭けに熱狂する様な愚行。

 

「ああ、そうさ。俺はお前が羨ましかったんだよ、スレッタ。立場もしがらみも無く、進めば二つ。そう信じて愚直に進むお前に憧れたんだ。そして思い出した。選ぶのでは無く、この世の何もかもを。全てを手中に収めるのが俺のやり方だったと……だから、俺はそうしたのさ。お前のお陰だ。今俺たちがこうしていられるのも全てはお前が俺に勇気を与えてくれたからだ。感謝する、スレッタ・マーキュリー。」

「……アンタ、ちゃんと頭下げたりするのね。」

「俺は荒坂だぞ?外では一千万の部下たちが、そして商売相手が俺を見る。

その王たる俺が頭を下げることなど許されないのさ、本来ならな。」

 

では何故今は出来るのか。

それも含めて運命的だと思った。

 

「逆に問おうか、お前達には今の俺はどう見える?冠も、衣も身に付けていない俺は、何に見える?……権威とは衣の上から着るもの、威光とは冠に宿るものだ。今の俺はそうではない。裸の王など居やしないさ。今の俺は荒坂……ただの神威、そうだな。お前たちの友である一人の人間だ。それ以上でも以下でも無く、な。」

 

いつか言えたら良い、そんな中途半端な気持ちだった。

思ったよりずっと早く告白出来たことは俺にとってこの上ない幸運だ。

 

「俺からは以上だ、許しを乞う気は無いが__」

「でも、神威さんは私たちを助けてくれましたよね?」

「結果的にはな。」

「なら、それで良かったじゃないですか。何も悪くないですよね?ミオリネさん。」

「ま、今更掘り返しても仕方ないしね。だから、別に自分を責めるんじゃないわよ。」

 

……甘い奴らだ。

全く、お人好しが過ぎる。

 

だが、まぁ。そうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かった………」

 

そう呟いて微笑む。

それは精神をすり減らして若くして()()()()()()()()()()()()()彼の、本来の姿。

根底に存在した人の良さが僅かに滲み出た、心からの笑顔だった。

 

 

「……そんな顔するのね。」

「神威さん!今の顔凄い可愛いかったですよ!?もう一回……!」

 

いや、別に意図したわけじゃないのだが……

そんな気の抜けた顔してたのか?

 

「皆にも見せてあげましょうよ!いつも悩んでるみたいな顰めっ面ですし。」

「待った、そうなのか?全然自覚無いのだが……」

「子供なら泣きそうなくらいには厳ついからね、アンタ。」

 

わちゃわちゃとにわかに煩くなる。

静かな入浴時間は台無しになった。

……だが、これで良い。これが良い。

片目くらい大した問題ではない。

 

俺が本当に、守りたかったのは______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

「ん………?」

 

なんか……頭が痛ぇ…………身体もだが……

俺は何を……?

スレッタたちと風呂に入って……その後……

確か、俺の部屋でアリーナの過去動画を見せようと思って……

……今、何時だ?

 

 

08:00……珍しくゆっくり寝たか……?

あ?

 

 

 

 

 

 

ちょっと待て、二日経ってないか。

時計が壊れた……ワケでもないようだが……

 

ヤバいな、何も思い出せない……

 

 

 

なんか寝汗も凄いし……いや、そもそも服着てない気がするぞ。

湿った肌と肌が擦れ合う絶妙な不快感がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多分気の所為だな、そうに違いない。

そう自分に言い聞かせながら恐る恐る布団を捲る。

 

真ん中……上に青、左右に紅白。

縁起が良さそうだな……

 

 

取り敢えず俺は二度寝(現実逃避)を決め込む事にした。

寝起きの頭で処理できる限界を超えている。

 

 

最も起こって欲しくない事が最も起こって欲しくないタイミングで発生する。

そんな言葉があったような。

 

……マジで夢であってくれないだろうか。

微睡みに飲まれ行く意識の中、無理な願望を唱える。

龍の玉も魔法のランプも無いなら、それはどうしようもないのだが。

 

 

 




社長……百合の間に挟まされた男、被害者。
スレミオニカ……巻き込み事故、被害者。

エリクト……犯人その1。
スレミオが社長のお風呂に行ったのもコイツのせい。
但しその後には関与していない。

魔女s……犯人その2,3。
社長風呂に遅効性の媚薬を流し込んだ。テロリスト。
尚、風呂上がりの牛乳にも盛っており、効きすぎて記憶が飛んでいる。
無理やりニカ姉を巻き込んでいる。

母上……元凶。
父親同様理性の化け物なので自分からは手を出さない事は予想していた。
義娘たちに自分が旦那を落とした手法を教え込んだ。

百合の間に挟まる化け物。
ちゃんと理由はあるけど文字数と流れ的に次回に……
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