位高ければ徳高きを要す   作:CATARINA

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試験目前でマジで忙しいのだ……ごめんね……


平和を望むならば武装せよ

「クソ、都合良く夢オチだった事にはならねぇか……!」

「流石に無理があるでしょ。」

「何でお前らはそんなに落ち着いてるんだ?他人事どころか滅茶苦茶当人だろ。

というか普通女の方が色々と思い悩むモンじゃないのか……?」

 

……いや、なんか、今更思い返したらウチの嫁たちもその辺の切り替え超早かった気がする。

マジで女性側のが気にしないというか、過去振り返らない感じなのか?

 

「時間は戻せないんだから今更気にしても仕方ないじゃない。」

「男らしいなオイ。俺は無理だ……目先の問題が次々浮かんでパニクってる。」

 

よりにもよって偉そうに色々口上を述べた矢先にやってしまった。

タイミングは最悪だし、ホントに何もかも……

 

「記憶はどうなの?少しは戻った?」

「すげぇぼんやりと。ずっと霞みがかってるんだが……」

 

寝起きの時は本当に何も覚えていなかったが、落ち着いた頃に頭痛と共にある程度思い出した。

今更思えば部屋に着いてから二人ともやたらと暑がったり息が荒かった気がする。

あの時の二人と同じなんだよな……まるで学習してない……

そう、あの時と同じである。

どちらかと言うと襲われた側なのだった。

それが尚更に微妙なのだった。

 

「どうすりゃ良いんだ俺は……」

「別に責任取れって話じゃないでしょ?こっちも悪かったし。」

「俺が良くないんだよ!」

 

流石に無責任過ぎるしそれはそれで無理だ。

今回の件、犯人はウチの嫁たちとエリクトである事は既に分かった。

共謀した訳ではなく、奇跡的にタイミングが合致しただけとの事だがそれはどうでも良い。

取り敢えずエリクトはキーチェーンを指に引っ掛けてグルグルしている。

 

『止め……ごめんって……オロロロロロロロロロロ……』

「か、神威さん、そろそろ許してあげても……」

「お前がそう言うならまぁ……」

『パーメット汁が漏れる……うぇ……』

 

うわばっちぃ。

当然実際に液体分が滲み出る訳では無いのだが。

俺の義眼はエリクトから垂れ流しになるパーメットを捉えている。

 

『もうお嫁にいけないよ……』

「四歳児が何か言ってやがる。」

『貰ってよ!スレッタが良い感じだから母さんからの圧が凄いんだって……!

28歳は世間一般的には行き遅れなんだよもう……!』

「粒子生命体に言われてもな……そもそもなんでそんな話なんだ?俺何かしたか?」

『嘘でしょ!?あんな熱烈な救出劇を忘れたの……!?』

 

何も思い当たる節がない。

本当に何かしたっけか……?

 

「三年前に送電システムからエアリアルを庇ったからじゃないかしら。」

「……そういやそんなことあったな。俺にとってはそんな大事じゃないんで忘れてた。

別に俺はお前を助けようと思ったワケじゃないんだが……」

 

いつもの悪いクセである。

誰かが危うい時、あらゆる思考を無視して身体が動いてしまう。

部下から英雄病とさえ言われる気質だった。

 

『責任取って!結婚して!』

「流石に四歳児はなぁ……」

『28!』

「ならスレッタの気持ちを考えろよ、28歳無職の姉が同級生に求婚してる絵面最悪だぞ。」

『うっ……何も言えない……』

 

そもそもだったら何であんな事をしたんだ……

媚薬盛るところまではウチの嫁の仕込みだが浴場への誘導やらドアロックはお前らしいが。

 

『……まぁさ、落ち着いて考えてみてよ。』

「うむ。」

『スレッタは僕の妹だけど、僕のクローンでもあるでしょ?』

「まぁ、そうだな。」

『だから実質僕そのものって事で……』

「…………?雲行き怪しくなったな?」

『スレッタと神威の子供は僕の子供って事にもなるよね。』

「倫理観!どんな思考回路してんだお前は!?」

 

イカれた女である。

どいつもこいつもこれだから……

マトモなのは俺だけか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あーーーーーーーーーーーー

よし。

 

「取り敢えず飯食ってから考えよう、頭が回らん……」

 

一日に15〜20万kcalが必要な俺にとって絶食は非常に辛い。

正直今も餓死寸前である。

 

「まぁ、とにかく。私もスレッタもそこまで気にしてないし、いつも通りやりなさいよ。」

「いつも通りってなんだよ……そんなおかしいのか俺。」

「神威さんはもっとこう……なんか、空気の読めない発言が……」

「酷い言い方だな。」

 

事実だからしょうがないんだけども。

うーむ……そうだな……

期待に応えてやりたいところだが、意識してやってる訳じゃないのだ。

 

「あ、そういや。」

「ん?」

「スレッタからはたまに聞いてたけどお前意外と尻がデk

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「くそー顔がピカソになるまで殴りやがって。」

「自業自得じゃない。」

「消しゴム……消しゴム……あった。」

 

そういって神威は鏡に向かうと自らの顔に擦り付ける。

段々と輪郭が薄れ、完全に消えたところでペンを持つ。

そして神憑りな速度で虚空に顔を描いていく。

 

「よし!」

 

そう言って顔を力強く叩くと、元通りの姿に戻っているのだった。

 

「そんな古典的なアニメ作品みたいな……」

「顔がピカソになる時点でほぼ〇ートゥーンだろ、世界観。」

 

とりあえず飯を運ばせ……ぬけぬけと顔を出した嫁にアイアンクローをかます。

 

「ミ"ッ!? デデデデデ!!待って!?本当に死んじゃうから!」

「頭蓋が軋む……ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙……」

 

巨大な鉄塊から無造作に一握りの金属片を引き千切る剛力。

人類の、というより既に生き物の限界を凌駕した握力が二人を襲う。

尤も痛い痛いと騒ぐ程度ならばじゃれあいの範囲でしかないのだが……

 

「何でいつも薬を盛るんだよ前らは!?別に言ってくれれば応えるぞ流石に!」

「自分達から誘うのってなんか恥ずかしいじゃん?乙女心というか……」

「何処の世界に媚薬を盛る乙女心があるんだ!?」

「痛い!!!」

 

全くこの馬鹿どもは……

お陰で悩み事が増えた、ただでさえ解決しきらないのに……

はぁ……

 

「別に今更……既に百人以上手を出してるんだから今更でしょうに。

一回で耐性がつくから毎回違う薬を用意して貰ってるんですからね私たち。」

「それもお前らのせいだろうが!そっちもせめて認知させろ……!」

「二人で相手すると体力が持たないし……希望者も多いから仕方ないよね。

そもそもホッキョクグマと致すように人間の身体って出来てないんだから。」

 

俺が悪いみたいな方向に持っていくのはやめて欲しいのだが。

総帥としても社長としてもだいぶ大事なのだが……?

 

何もかもが嫌になる……こういう時にやる事は一つだ。

 

「スレッタ、ちょっと付き合え……」

「えっ、まだするの?」

「違ぇよ!!!パイロット二人、やる事は決まってんだろうが。」

 

何でこのたぬきもたぬきで満更でも無さそうな顔をしてるんだろうか。

全員殴っても勝訴出来るよなこれ。

 

 

 

 


 

 

「よーし、好きな武器選べ。追加武装は無しで手持ちだけだが、何でも使えるぞ。」

 

パイロットスーツを着た神威とスレッタはそれぞれの機体に乗り込む。

兵器試験MS・ツクモガミ。実戦を想定した設計でこそ無いが、汎用性は随一。

グループ解散に乗じて吸い取った技術とパーメット制御によりあらゆる武装を扱えた。

 

それこそ荒坂の巨砲からジェタークの格闘武器、アンチドートすら運用出来る。

これはそのうち二機であり、日々荒坂の警備部隊がMSの鍛錬に励んでいる。

 

「勝手に借りて大丈夫なの……?」

『俺は社長だぞ、この会社の備品は全て俺のモノと言っても過言だ。』

「過言なんだ……」

 

まぁ、誰も止めやしないだろう。

権力者とはそういうもんだ。

学園同様決闘レギュレーションが施されているので安全は保証されてる。

 

『病み上がりの上に、三年のブランク。万全じゃ無いだろうが本気でやらせてもらうぞ。』

『……望むところです!』

 

良い返事だ。

 

「これより双方の合意の元、決闘を執り行うよ。立会人は私、ソフィ・アラサカが務めます!

勝敗は通常の決闘同様、機体頭部のブレードアンテナの破壊を判定基準とする!

両者、向顔………合ってるかな?半年ぶりくらいにやったけど……」

 

『……勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず。』

『操縦者の技のみで決まらず。』

 

『『ただ結果のみが真実。』』

 

「……フィックス・リリース!決闘開始!」

 

 

 

 

 

 

 

先手、荒坂神威。

荒坂重工らしい足を止めての砲撃戦でなく、いきなりスラスターを全開。

数百mの距離を一気に詰める。

 

『……!?』

『定石通りに戦うとは限らない、戦場の基本だろ?』

 

咄嗟に後退を選ぶスレッタだが、同じ機体ならば当然前進の方が速い。

更に神威が選んだのはショットガン……スレッタの選んだビームライフルに比べてやや軽い。

その僅かな差が推力に影響を及ぼしたのだ。

まだショットガンで十分なダメージを与えるには遠い……

 

ビームサーベルを抜き、刀身を展開せずに投擲。

機体の進行速度に投擲の加速を加えて瞬く間にスレッタ機の眼前へ。

そこに散弾を撃ち込む、掠らせるだけで十分。

サーベル内のエネルギーや偏光装置が爆発し、一瞬怯ませ視界を奪う。

爆炎が晴れた時には既に100mを切り、ショットガンの加害範囲。

 

機動しながらの散弾は機体の推力を乗せて多大な衝撃を与える。

一射目を腕で防いだスレッタは即座にこのまま食らってはならないと確信。

姿勢を低くしながら側方に飛び退く。

そしてそれを予見した神威は既に軌道修正を終えており、側方にブースト。

衝突の寸前で静動しつつ脚で蹴り飛ばし、体勢を崩す。

 

更にもう一度散弾を放った後に武装での打突、体勢を整える前にショットガンそのものを激突させる。

そしてガードが崩れたスレッタの懐へと飛び込む、ここまでは完璧だった。

しかし、相手は元ホルダー。

ブランクこそあれ、パイロットとしての技量は圧倒的。

 

『……見えて、ます!』

 

機体を横転させながらも銃口はこちらを然と捉えている。

3年間一度もMSに乗ってないのが信じられない程の天賦の才。

光線がMSのアンテナを貫く。

 

 

 

 

その刹那、僅かに回転したMSが着弾地点をズラしアンテナを庇う形となる。

虚空へ放つ散弾は、その反作用故に機体を硬直させさえする。

両脚が空に浮いている状態ならば尚更。

 

ビームは頭部中央を貫き、コクピットへの映像送信が途切れる。

戦闘不能?否、決闘に於いてはアンテナの破壊でなければ何の問題もない。

 

仕留め損なった事に気付いたスレッタがサーベルを抜く前に組み付く。

何も見えていないが、間違いなくそこにいると確信していた。

 

『たかが、カメラの一つ二つ、やられたくらいで!』

 

恐らく、両手で相手の両腕を拘束している。

体勢は自分が飛び付いて相手が仰向けに倒れようとしている。

 

だからこれしかない。

ここから攻撃出来るとしたらこれしか無かった。

 

『ウオオオオオォォァァ!!!』

 

腹の底から絞り出すような雄叫び。

吠えながらMSの頭部を叩き付けた。

破損しているとはいえ頭部全体とアンテナ一つ。

強度の差は明らかだった。

 

べきり。

鈍い音と共にスレッタが搭乗した方の機体からアンテナが落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

『ガハハハハ、初めてだ。初めて……初めて、勝った。』

『負けました……』

『そうだろうそうだろう。何せ努力するなど、生まれて初めてだ。』

 

万能の天才、ありとあらゆる事が超一流並にこなせる俺が初めて当たった壁。

社長業と総帥業、二つに挟まれつつも年間搭乗回数は200を超える。

僅かな時間でも欠かさず乗り続けたのだ。

 

「……尤も、お前が本腰を入れて復帰するなら、直ぐに勝てなくなるだろうが。」

 

否、もしこのままもう一度戦えば敗北する可能性さえある。

薄氷の上で得た勝利、それほどまでに乏しい自らの才を嘆く。

 

「どうだ?久しぶりの操縦は。案外、楽しかったろ?」

「……はい!」

「なら、良かった。俺が伝えたかった事はまぁこれだけだ……全部な。」

 

コクピットを降り、機体から這い出るスレッタを見やる。

 

「腰でもやったか?」

「あはは……久しぶりの操縦で疲れちゃって……」

「無理はするなよ、天与の才がある俺とてお前の傷を受け負う事は出来ぬ。

俺もお前も、パーメットの奔流に身を焼かれているのだからな。」

「それだと、神威さんは……」

「気にするな、高々五十年程度。惜しむ必要すらないわ。」

 

直接パーメットを身体に流し込んだ影響は、流石の俺とて無視出来ない。

片眼を喪い、その上侵された臓腑は激しく損傷した。

世界有数の医者達の見立てによれば俺の寿命は五十年近く縮まったらしい。

つまるところ、精々二百歳くらいまでしか生きられないという事だが……

 

「否、これで良かったんだ。()()()()()がずっと晴れやかだ。」

 

スレッタを背負い、損傷した機体を降りると観戦してた皆が集まる。

……ニカの方も漸く目が覚めたのか。

 

一拍置いて轟音。

背後でMSが大破し、どう考えてもスクラップにしか見えない鉄クズへと変わる。

 

天才的な頭脳で少し考えた俺は一人最適解を導いた俺は可能な限りの笑顔で話しかける。

 

「直してくれ!」

 

 

ニカのシャイニングウィザードが俺の頭を刈り取ったのは言うまでもない。

 




社長……なんかデカくて可哀想なヤツ。
根の真面目さ故ホンモノの狂人には勝てない。パイロット性能A-。

たぬき……ブランク+初見の機体。ここまで揃えて社長の辛勝。
パイロット性能はグエル同様SSくらいある。

ミオミオ……意外とケツがデカい。パイロット性能E。
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