位高ければ徳高きを要す   作:CATARINA

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3話纏め更新、この話は2話です。
1話から読んで頂けると幸いです。





IFとはいえ割とお労しい感じになってしまう。


落日

……当たらんか。

やはり強いな、お前は。

 

だからこそだ。

だからこそ俺は引く訳にはいかない。

 

『どうしてですか……!?』

『何がだ!』

『どうして、ニカさんを……!』

『順番が代わっただけに過ぎん、少し早まっただけだ!。』

 

スレッタは鈍い、鈍いが人の感情の機微を察する事は出来た。

 

『ニカさんは、あの人は貴方の事を!』

『知るか!今更、今更なんだよ……!』

 

怒りのまま、子供のように絞り出す。

憤怒であり、哀愁であり、困惑であり。

神威自身さえ理解できないのだ。

 

「平和を望む人間とバケモノ(俺たち)が共存出来るハズが無いんだよ!

生きる事よりも殺す事に夢中で、ただ戦う事だけが望みだった。」

 

物理的に空間を埋め尽くす弾幕を潜り抜け、キャリバーンが肉薄する。

ビームサーベルをヒート刃で推し留めながら、肩部のガトリング。

先程被弾したミサイル群のダメージも大きく、装甲を貫通される事を嫌ったキャリバーンが退き、その体勢のままビームライフルを放つ。

対して神威は正面からの被弾を選んだ。

並のMSなら一発で貫通するに足る出力の一射を受け止める機体。

装甲はあまりに堅牢であり、装甲の表面を僅かに溶かすに留まった。

再度切りかかったキャリバーンを今度は機体を取り囲む四枚の盾が防ぐ。

自律して動作する盾は一切歪みなく敵機を弾き飛ばす。

それは訣別を示すように、冷たく、頑なに。

 

『ジェタークのダメージコントロール技術、ビットの開発データ。ペイルの空力特性に最先端の空間戦用スラスター。グラスレーの緻密な機体制御機構にブリオンが持つ膨大な実戦記録。

どんな時代、どんな場所にも居るもんさ、戦いがなきゃ生きられない奴ってのは。

ソイツらからしたら俺はきっとキリストかモーセのように見えたんだろうな。』

 

それなら使ってやるさ、使い潰してやるとも。

戦火の広がりを、戦禍の混沌を望むロクデナシ、その集大成。

何よりも硬く、何よりも速く、何よりも精密。

皮肉にも、誰よりも早くその融合を果たしたのは宇宙と地球の災禍を望む彼らだった。

 

ほんの数日前に完成したばかりの機体に神威は名を付けた。

地球(リク)宇宙(ソラ)の間の子、誕生を祝福されぬ忌み子。

カグツチ、そう名付けたのだった。

 

 

 

一方対面するスレッタは、冷静さを取り戻しつつあった。

普段の、本来の神威ならここまで無駄撃ちはしない。

弾幕を張る事こそ好むが、その裏には天才的な砲術家、狙撃手としての精度がある。

今の彼は__どう考えても動きに精細さを欠いている。

ミサイルはロックオンし切る前に放たれ、FCSが捉えるより先に発砲する。

 

なればこそ止められる可能性もあった。

未だ彼が冷静なままだったら、この機体でも既に堕ちている。

そしてその理由は明白だろう。

ニカ・ナナウラの死が神威に動揺を与えていた。

 

友と訣別し、人ではなく、王として。

厄災を齎す人でなしの君主として生きると決めた荒坂神威。

人間的な感情も、想いも忘れ、ただ機構として戦う。

覚悟をした、ハズだった。

 

自覚すら出来なかった想いが、それを自ら殺めた苦痛が彼に感情を取り戻させた。

荒坂神威という人間の、人間らしさが隙となっているのだった。

 

スレッタはその時を虎視眈々と狙っていた。

回避に専念し、時に致命打だけを避けてギリギリのところでいなす。

神威は十分注意していたが、それでも必ず訪れる。

 

「……チッ。」

 

弾切れ。

複数の武装で可能な限り再装填が重ならぬようにしていたとしても、

何度も繰り返せばそれが重なる時は必ず来る。

 

キャリバーンは急速接近、進路を妨げるシールドビットを踏み台にして更に加速。

迎撃準備の整わないカグツチを切りつけ、肩部のガトリングを破壊した。

 

『流石だスレッタ。それでこそ我が好敵手。』

『お願いです、神威さん。降参して下さい、でないと私は……』

()()何だ?それは降伏勧告か?不思議な事を言うのだな、友よ。』

 

《再装填完了 破損部位以外の武装全使用可能》

 

『……それは勝ってる方がする事だろ!?』

 

俺はまだ負けてない。

そう応えるように再度の斉射。

手に持つスナイパーライフルを放り投げると巨大キャノンを構える。

シールドビットに分割して搭載した巨大なキャノン砲は、戦艦の主砲すら霞む威力。

MSが被弾すれば掠るだけで機体が木っ端微塵になる凄まじい兵器である。

 

議会連合の戦艦の残骸に降り立った神威は即座に砲撃姿勢に入る。

シールドの二枚を砲を支える支柱とし、残る二枚で側面をカバー。

キャリバーンが距離を詰める前に発砲した。

 

数m離れずして高速の砲弾が通り過ぎ、後方で爆発。

アレはどう食らっても駄目だ。

そしてライフルは有効打足りえない。

故にスレッタには近接戦しかなかった。

降り注ぐミサイルや弾丸の嵐を振り払い、刃の届く距離へ飛ぶ。

一方で神威は凄まじい機動を見せるキャリバーンを捉え続けていた。

火器管制装置は最早追いつかない。

最後に頼れるのは結局自らの目と腕。

 

『来い!』

『神威さん……!』

『真っ向勝負だ。正面からお前を打ち砕いて、俺は荒坂の意思を貫く!

だがお前がその考えを貫くというなら、俺は退かん!来い!』

 

僅かな死角、キャリバーンの速度が最高速に到達する。

カグツチは自ら装甲の一部をパージ、関節部の可動域を無理やり拡張。

本来発射不可能な射角を確保した。

しかしその時には長い砲身の懐にキャリバーンが肉薄しており、サーベルを振りかぶっていた。

 

『その程度なら、想定内だ!』

 

カグツチはもう一方の肩部に積まれたキャノンを接射。

装填されていたのは対空用の三式弾、威力は低いが爆風で決死の間合いを外れる。

そしてよろめいたキャリバーンを本命の砲が狙う。

 

これで詰みだ。

圧倒的な破壊力の砲弾が放たれる。

そして、それは砲内部で爆発した。

 

『なっ____!?』

 

巨砲の誘爆はさしものカグツチでも痛手となり、特に構えていた左腕が使い物にならない程グシャグシャに捻じ曲がってしまった。

 

「誘爆……しかしそんな素振りは……」

 

困惑する神威の視界の端で、小さな浮遊体が光る。

 

『……クソ、なるほど、二機のガンダムが揃って俺に楯突くか!』

 

エアリアル、あの送電砲を食らって大破したお前を忘れてたよ。

スレッタを思う心だけは真実のお前の事を。

 

装甲に綻びが生じ、鉄壁の防御が崩れた。

空力性能を得る為の機体は、完璧な形だからこそ速度と硬さを両立する。

ダメージを負った今、ビームライフルの直撃に再び耐えられる確証は無い。

 

吹き飛んだ機体の姿勢を正し、放り投げた狙撃銃をキャリバーンに構える。

キャリバーンもまた、ライフルで此方を狙っていた。

体勢を大きく崩した分、狙うのはキャリバーンの方が早かった。

 

だが、スレッタは引鉄を引けなかった。

冷たい金属の機体の向こうに、友人の姿を見出してしまったから。

初めて出会ってから、今に至るまで。

神威は険しい顔をしている事が殆どだった。

それでも、ほんの一時。

浴場で揉めた時や、決闘の後。 稀に見せた本心からの笑顔。

学園で過ごした短く、長い時がスレッタの動きを鈍らせた。

刹那を見切る戦いに於いてあまりに致命的な隙だった。

 

一瞬が永遠に感じるほどのゆっくりとした時間の中で、スレッタは神威が此方を狙うのを眺めていた。機体のモニター越しに、目が合った事を直感する程に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『撃て!』

 

 

 

 

硬直した身体が、言葉に反応して動く。

機体はパイロットの操作に追従し、ライフルの引鉄を引いた。

キャリバーンから放たれた閃光はカグツチの装甲の、尤も脆い場所を貫く。

 

機体のバイタル、回復不可能な場所を破壊されたカグツチは小さく爆発しながら自壊していく。

スラスターに始まり、果てはコクピット。破壊が波及し砕ける。

 

『…………そうだ、それで良い。良いぞ、スレッタ。』

『何で、何で神威さん!?だっ、脱出を!早く!』

『良いんだ、ゲホッ……ハァ、ガハハ、俺はこれで良かったんだ。』

 

コクピットの爆発と衝撃で内臓が潰れた。

肺も破れたし……そもそも血のせいで良く見えない。

機体がどうなったかはもう良く分からんが、まぁこれは死ぬな。

……すまねぇ、皆。失敗した。

失敗したな……

 

『神威さん!』

スレッタ、スレッタ・マーキュリー。

本当に甘い奴だ。全く。

『……スレッタ。お前は……』

 

ああ、寒い。

指先から凍り付いていく。

世界が点滅して、クラクラして眠ってしまいそうだ。

 

 

 

 

 

 

『……折れるなよ。』

 

カグツチはフレームの強度故、その形を留めたまま爆発した。

爆心となったコクピットを除いて。




たぬき……これこの後一生の傷になるよね?って思いながら書いた。

社長……優し過ぎた男。

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