機体乗り換え(フルアーマー化)は基本だから仕方ないね……
誤字修正など感謝。
何度乗ってもやはり宇宙というのは慣れないな。
AMBACだったか……?相変わらず苦手な我にはどうも好きになれぬ。
『新機体の調子はどうっすか社長?』
『悪くない、最高だ……とはいえやや重すぎるな。』
装甲の見直しで軽量化した15%。その分追加した武装により最終質量は元の121%。
結局オーバーしてしまったのだ。
出力の向上により辛うじて機動力は今まで通りとはいえ、旋回性は少し劣る。
無論その分火力や対応性は上がったのだが、極めてピーキーな性能になったな。
『事実上補給艦の支援無くば運用不可。決闘向けとは言い難いだろう。』
『だからこそ軍用規格のまま持ってきたんでしょう?』
軍用規格でなければフルスペックを発揮できないのだ。仕方あるまい。
この後決闘用の調整や武装の着脱をして申請に通るようにすれば良いだけよ。
『内蔵武装と、状況に応じて換装出来る手持ち武装に、特殊兵器丙式。』
『怒ってたっすよアジア支社。全部の製造をキャンセルしてこれ一つ作れとか……』
完成したのだから問題ない。
我がそう判断した。
それにしても……通信はまだ繋がらないのか?
『さっきまでは普通に繋がっていたんですがね、意図的なジャミングの可能性もありますぜ。』
『有視界域まで後2,3分ですが……このまま突入しますか?』
ジャミングか。
意図的に情報を断つ、理由は主に二つ。
救援を呼ばせない事、救援に行かせない事。
救援を呼ばせないのは勿論、一般に通信の届かない領域に入りたがる者は居ない。
予期せぬ来訪者などを弾く事が出来るわけだ。
使うとしたらつまり、襲撃だろう。
狙いはデリング総帥か?GUND-ARMの社長か?それともガンダムそのものか。
考えられる動機は数あれど、ここまで大規模な計画なら間違いなく御三家クラスが関与している。
ジェターク、に見せかけたグラスレー社の仕業だと我の勘が囁くがな。
そんなことはどうでも良い。
そこには
何より、
何を躊躇う事があろうか。
『ドダイを出せ、我を載せて潜入だ。戦える者は?』
『連れてきていた楯無と八龍、それと私。』
『偶然というか必然というか……十分過ぎるな、全員乗せてすぐ発進だ。』
『そう言うと思ってもう準備出来ています。』
『システム戦闘モード起動。』『準備おっけーよー。』
ならば良し。
後方から飛来するドダイを捉えてMSを空中で固定。
機体は可能な限り折り畳む、視覚的にもレーダー的にも目立ちにくくなる。
『有視界域まで三秒、アクティブ・カモ起動。』
「充電式の使い切りだが持つか?」
『ギリギリ持たないくらいですが、入港は可能です。ご計画は?』
「一人は発着口で機体とドダイを守れ、二人は俺に着いてこい。地球寮の皆を救う。
言うまでもないだろうが、他には目もくれるなよ。」
発着口にはすでに荒々しく入港したであろうテロリストの揚陸艇が停泊していた。
中々の大きさだが三隻か、相当入り込んでいるな。
奪えれば避難艇として使えるか?
「神威、楯無、八龍。お前らで先頭の一隻を奪え、俺は後ろの二隻を落とす。」
『了解しました。』『任務了解。』『はーい。』
『迷彩解除まであと三秒です、』
初撃ならば、弾を使うまでもない。
ドダイを踏み台に飛び出す。
両足が離れた瞬間、光学迷彩が解除され鈍く輝く機体が姿を現した。
塗装ベースは灰と鈍い緑に、黒。
決闘で使っていた試作壱号のように目立つ必要はない。
戦闘に特化させた、良くも悪くも普遍的で面白みのない色。
故に光の照り返しを抑え、宇宙の闇にも容易く溶け込める。
腰からヒートナイフを引き抜けば、赤熱した刃がぼんやりとその輪郭を照らす。
背後からの奇襲を想定していなかったのだろう。
無理もない、情報の遮断された此処は言わば
オオカミが逃げ場の無いウサギを狩るようなモノである。
コクピットに取り付き、目視でMSの腕を捉えて漸く気付いたらしい。
カメラ越しに大騒ぎする兵士どもが見えた。
「ガハハ、知らなかったのか。悪いオオカミは大抵、勇敢な狩人に狩られて終わりだとな。」
赤熱した刃がゆっくりと突き刺さり、人も機械も容易く溶解させて抉り抜いた。
『そういや神威ちゃん、私ヒート刃に詳しくないのよねぇ。』
『なら今回はヒート刃とビーム刃について解説していくぜ。』
『『それではゆっくりし『イヤ、言ワセネェゾ。真面目ニヤレ無イノカ……?』
奥には部下たち。
かなり強引な方法だが上手いこと奪取に取りかかれているようだ。
刹那、沈黙した揚陸艇を切り裂くように光波が突き出す。
MSをまだ搭載しているとは、しかもコイツ……!?
咄嗟に左腕シールドを斜めに構える。
数瞬置いて猛烈な勢いでの突進を受け、槍の穂先をズラして紙一重に躱す。
僅か一度の激突ながらシールド部の装甲は半分以上が融解してしまった。
防げてあと一度……まさか奴らが運用しているとは。
ディランザ。
ジェターク社の主力MS、厳密にはその実戦モデル……ディランザ・ソルか。
通常ならサーベルやアックスを持つであろうその右手には巨大な三又槍。
「違法改造だな、ビームミツマタと言ったところか?」
通常のサーベルでさえ刺突ならかなりの威力が出る。
それを三本分、あの加速から繰り出してくると。中々良い発想じゃないか。
『社長、分かっていると思いますが……』
『ああ、
ここはこのコロニー最大の出入口であり、揚陸艇を奪取して脱出の要とする重要地点。
破壊する訳にはいくまい、つまりこの機体の武装の殆どは今使えないのだ。
ヒートナイフの銃剣仕様とMS用重機関銃。だがこれすら流れ弾に注意しなければならず。
あとはせいぜいが左腕シールド。この程度である。
その上最大の出入口といってもMS同士で戦うにはまだ狭い。
明らかに格闘機体が有利な地形だ。
「ハンデはそのくらいで十分か?」
願ってもない好条件だ。
パイロットがあのグエル・ジェタークでないのは惜しいが、それでも。
試作壱号で二度苦渋を舐めさせられたディランザが相手。
まさに新機体の性能を確かめるのに最適な相手ではないか。
可能なら自分の有利な土俵で戦いたい、どうにか宇宙空間に誘導出来ないか?
否、それは弱者の考えだ。
そもそも、例え火砲が使えたとしても我は使わなかっただろう。
かつての敗北を、不利を覆して。
正面から討ち滅ぼす。
逃げも隠れも、小細工の一つも不要よ。
圧倒的不利にも関わらず、一切の動きを見せない神威の機体。
それを不気味に感じたのかディランザ・ソルも動く事が出来なかった。
『ガハハ、冷や汗一つかいたら負けよ。』
機体を駆るパイロットが汗を拭おうとした時、見抜くように言う。
当然、お互いのコクピット内が見えるはずもないのだが。
逃げたら一つ、進めば二つ。
良き格言だ。聞く度に初代アラサカが遺した言葉の一つを思い出す。
『退けば老いるぞ、迷わば敗れ、臆せば死ぬるぞ。』
退けば時をただ徒に浪費し、老いる。
迷えばお互い命を懸けた戦い故に、敗れる。
臆せば信念と誇りが脆く崩れ落ち、死ぬ。
喉が灼ける衝動、全身の皮膚が痺れる緊張。
ああ、やはり戦いは良い。
恍惚に溺れながらじわりと操縦桿を引く。
連動するように僅か頭一つ分をズラせば、掠めて外れる三叉槍。
プラズマ化したビーム刃の熱が塗装のみを軽く焼いた。
そのまま槍を通過させるように踏み込み狙うのは胸部。
決闘では無いなら、狙うのはその一点である。
銃剣としたナイフを外し、銃本体は一度投げ放る。
銃剣越しに充填されていたエネルギーが一瞬途切れ、即座に本体から送られて高熱化。
敵機の背中を掴み、胸部に赤熱した刃が突き刺さる直前で回し蹴りを食らう。
即座に横にスラスターを吹かし、蹴りを食らうと同時に回転、衝撃を殺す。
その頃には既に体制を整えた三叉槍での薙ぎ払い。
なるほど、本物の三叉槍と違いビーム刃のそれか単純な斬撃にも秀でる。
咄嗟に逆手持ちのヒートナイフで受け止めるが、明らかに力負けしていた。
此方は片腕、向こうは両腕で長物を振り回しているなら当然の結果。
『舐めるでないわ!』
一度空中に投げた機関銃を左手でキャッチしてそのまま射撃。
ジェタークの重装甲でさえ幾度も食らえば貫く大口径弾、嫌がって一度離れる。
牽制を兼ねたトーチの射撃を受け止めながらナイフを着剣。
盾を構えて装甲で無理やり押し通る突撃の構え。
対するディランザ・ソルも三叉槍を掬い上げるように突き出し、ヒート刃の先を三叉に挟み込む。
MSは、人型なれど人間に非ず。手首を回転させ、巻き取るように弾いて体制を崩す。
弾かれた上体の隙を、弾いた動きの反動を。
お互いがお互い最適なタイミングで弾き、鍔迫り合いの格好となる。
それでも尚、不利。
元々格闘武装として作られた槍と、格闘主体の機体。
此方は近接戦闘を最低限捌く為の武装と砲撃戦を想定した機体。
この距離ではどうしようも無かった。
今までならば。
即座にバイザーのプロテクトを降ろし、一度カメラの機能を落とす。
同時に左肩のやや小ぶりな砲身を零距離で放った。
左肩マルチランチャーユニット。
右肩の240mmキャノンと異なり直接的な破壊力は無い。
その代わりに閃光/トリモチ/煙幕/EMPフレア等の多用途を腕部を用いず使用可能。
この性質はアラサカ重工のMS最大の特徴でもある、『全てマニュアル操作である為、熟練すれば複数の武装を同時に使用出来る。』というモノと極めて相性が良く、高い汎用性を得ている。
この小さな砲弾の効果は、閃光と僅かな時間のレーダージャミング。
一秒に満たない時間、レーダーは使用できなくなり、閃光はカメラ越しのパイロットを怯ませる。
僅か時間、致命的な時を。
鍔迫り合いを切り、ガラ空きになった胸部に銃剣を突き刺す。
ジェターク社製の重装甲にヒート刃が突き刺さっていく。
僅かに遅れながら左手で無理やり掴み留め、片手のミツマタで袈裟懸けの両断を狙う。
肥大化した肩部に食い込むのが先であったが。
胸部装甲をじわじわと、確実に貫く銃剣。
肩部の装甲諸共機体を断ち切ろうとするミツマタ。
勝敗を分けたのは、機体の差。
機動力を犠牲にしてまで得た異常な装甲と、銃剣の銃剣たる理由。
突き刺さす最中、カムイは引鉄を引いた。
単純な貫通力ならばあらゆるMSに傷を付け、軽装なら容易く貫徹する大口径弾。
それを残弾全て叩き込む。
銃剣で綻んだ装甲が悲鳴を挙げて引き裂けていく。
『……フォルドの夜明けに栄光あれ。』
その言葉が通信越しに届くと同時にヒート刃がコクピットに到達し、機体を貫いたのだった。
『パージします』
「肩の装甲を三枚持っていかれた……良い腕だったぞ。」
『社長、此方は制圧が終了しました。揚陸艇一隻いつでも動きます。』
『そうか、なら当初の予定通り一人は待機して……』
背筋が凍った。
濃密で、冷たく、まとわりつくような。
殺気。
振り向く前に、羽交い締めにされた。
信じられん、コクピットは既に原型すら留めていないというのに。
『社長!』
咄嗟に脚でコロニーの壁で踏ん張ろうと試みるも、時既に遅く。
スラスターを吹かせたディランザ・ソルは入港口の壁を無理やり貫き、カムイの機体を連れ去った。
大義の為に。
同胞の為に。
コイツだけは、道連れに。
「そうか……怨念、というやつか?或いは執念、その両方と。」
パイロットの死後機体が動く、その理由には荒唐無稽で非科学的だ。
しかし、現実に例が無いわけでもない。
時に人はその命が、全ての生命活動を止めて尚、動く事がある。
心拍も呼吸も止まった格闘家が試合の終わりまで戦い続けた。
首を落とされた侍が刀を取り落とす事なく、主君の仇を討った。
闘争は、時に人間の有り得ない可能性を引き出す事がある。
限界を超えたブーストにより、僅かな間に2,3kmはコロニーから引き剥がされてしまう。
この距離なら確かに、万に一つもコロニーの仲間を巻き込まず我だけを巻き込めるだろう。
だが、大人しくやられてやる必要も、無い。
失った機関銃の代わりとして持つのは打ち切り用の巨大なランチャー。
コロニーから連れ去られる直前にドダイから外したモノである。
意図的に切っていたスラスターを一気に点火、機体の出力自体では勝るカムイが僅かに離れた瞬間、マルチランチャーユニットが真後ろを向いた。
通常の砲と違い本体と独立して射角を確保出来る故に、後ろのディランザ・ソルに届いたのだった。
選択された弾はトリモチ弾。
粘度の高く、高い質量を伴うトリモチが纏わり付き、弾き飛ばした。
AMBACが苦手なカムイは、無駄な動きを伴いながらも向き直る。
放っておいてもこのディランザ・ソルは間もなく爆散する。
「だが、強き者よ。褒美を取らす。この我自ら葬ってくれよう。」
右腕に焼夷グレネード。
左腕で支えるシュツルム・ファウスト。
HEAT弾を装填し、炸薬量を増した腰部六連グレネード。
膝部の連動式
アラサカの象徴たる火砲、右肩部240mm砲。
『……化け物、め。』
その言葉を遮るように全てが着弾。
爆風に包まれたディランザ・ソルは跡形もなく蒸発した。
「ガハハ、化け物……化け物か。言い得て妙、なれど不敬なるぞ。」
我は、この機体は化け物に非ず。
「我が名は荒坂 神威。荒坂重工七代目社長。機体を荒坂製・機動兵器壱号改。
またの名を
ディランザ・ソル:F仕様
グラスレー社からフォルドの夜明けに秘密裏に提供された機体。
突貫工事気味ながら改造が施されており、主武装がビームミツマタに変更されている。
装甲で受け止めながら加速した三叉槍での突撃により、敵陣を掻き乱す事に長ける。
何らかのトラブルなので作戦が遅延し、救援艦隊が到着してしまった場合。
この機体が吶喊攻撃を行い、時間稼ぎを行う予定であった。
正採用品とはいえ、最新機が容易くテロリストに渡る。
或いはジェターク社の未来を暗喩しているのだろうか。
楯無/八龍……アラサカ重工の社長直属護衛部隊。二人とも100%のサイボーグ。
もう一回は出すつもりなのでその時にまた解説する。今は名前だけ出すって事で……
名も無きエースパイロットとの死闘。
多分UCのジュアッグ乗りくらいは強い。