塩分の過剰摂取で死んだ主人公。
彼は天使の計らいで、望みのスキルを一つだけ持って異世界転生することになる。

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転生したら豆腐だった~ついでにTSしたけど最早どうでもいい~

「私は………貴方は塩分の過剰摂取で死………ので、貴方を異世界に転生…………望みのスキルを………」

 

 俺の目の前に人がいる。男と思えば男に見えるし、女と思えば女に見える。中性的な美人だ。

 俺の周りがどうなっているかは良く分からない。度の外れた眼鏡を掛けている時のようにブレブレで、目の前の人以外は何も認識できない。

 

「……?」

 

 目の前の人がナニカ話している。ボーとした俺の耳には、その話が断片的にしか入ってこない。

 

 ──────俺の名前は豆屋 灯譜。江戸時代から続く豆腐屋の跡取りだ。

 今日は何時ものように、醬油とポン酢をかけた木綿豆腐(勿論自家製の奴)を10個づつ食い──それから先の記憶がない。

 ここに来てから酷く頭が痛む。インフルで39度出した時の頭痛より酷い。

 

「………ということで、異世界に行くにあたり、欲しいスキルをおっしゃって下さい!

 あ、そうそう。長く悩み過ぎると、魂が消えちゃうので気をつけてください! 

 ここ、一応神様のおわす領域なので。只人の魂が滞在するにはちょいとハードなんですよね」

 

 俺が思索にふけっていると、目の前の人がこちらに顔を近づけてきた。

 ─────よく見ると、その人の背には巨大な翼が生えている。絹ごし豆腐のような穢れなき白。

 

「………豆腐」

 

 酷さを増し続ける頭痛。朦朧とする俺はただ脳裏に浮かんだ言葉を口にした。

 

「豆腐? 流石にそんなスキル……まあいいか。

 天使である私が新たにスキルをちゃちゃっと…………よし! 異世界にいってらっしゃい!」

 

 天使は満面の笑みを浮かべて指を鳴らす。

 

「!?」

 

 指を鳴らした音に連動するかのように、俺の足元はパカリ、と開く。そして俺はなすすべなく落ちていった。

 

 

「…………やべ、スキルの設定を色々ミスったかも。まいっか、バレないバレない」

 

 

 

§

 

 

 

異世界人視点

 

「偉大なるデ・バルトル・バラム王。申し上げたいことが────」

「今は非常事態である。刹那の時すら惜しい。今だけは礼義を尽くすのを止め、端的に要件を述べよ」

 

 玉座に座る『バラム王国』の王、デ・バルトル・バラムは臣下が膝をつこうとするのを制止し、話の続きを急がせる。

 

 バラム王国────火、水、土、風、光、闇、の大精霊が作り上げたとされるこの世界、『エレメンタール』における、人類最大の国家。

 本来なら人類で最も豊かな筈の王はしかし、やせ細り憔悴していた。

 

 

「はっ、では述べさせて頂きます。

 ……派遣した調査官によれば、『魔王』の復活までの時間は既に予断を許さない状況にあるとのことです」

「その情報、民衆へ漏れてはおらぬだろうな」

「はい、今のところ、民衆は概ねいつも通りの生活を送っております。

 ですが、一部の占い師が魔王の復活を予言している様でございます。このままでは民衆に不安が広がるかと」

「そうか、ではその占い師達を買収し、予言の流布を辞めさせよ。占い師には金貨一枚までだすと伝え、それで頷かぬ者は放置で構わん」

 

 それだけ言うと王は骨ばった手を無気力に振り、臣下を下がらせる。

 

 ────魔王、魔王、今の王の悩みの種。

 他の生命を害する為だけに生きる魔の存在、魔物。そして、全ての魔物を生み出したとされる存在、魔王。

 魔王は不滅。何度倒そうとも必ず1000年ごとに復活し、魔物を率いて全生命を滅ぼさんとする────これまではそうだった。

 

「───」

 

 王は玉座からゆるゆると立ち上がり、自身と家族の描かれた肖像画をそっと撫でる。

 

 魔王が倒されたのは30年前、戦いの傷も未だ癒えてはいない。だというのに、もう魔王は復活を遂げようとしている。一度目はどうにかなったが、二度目はもうどうしようもない。

 

「──王様、王様!」

 

 と、王の背後からバタバタとやかましい足音と声が聞こえてくる。

 

 王が気だるげに振り返れば、そこに居たのは王家お抱えの魔術師。

 カールした緑のミドルヘア、おっとりした顔、こじんまりとした身長。齢15歳、いかにものんびりした風貌の、しかし卓越した腕を持つ人類有数の魔術師。名を『フルーレ』という。

 

「どうしたフルーレ」

「異世界召喚が………その、成功? しました!」

「それは真か! はよ連れてまいれ!」

「いや、それが、そのぅ………」

 

 王は手を打って歓喜する。フルーレは歯切れ悪く応答する。

 

 フルーレがもたらした吉報。召喚の成功。

 王家の蔵で見つかった由来不明の魔導書、汚い字で書かれた胡乱気な書。ソレに書かれていた『異世界より勇者を召喚する』と言う、聞いたこともない魔術。

 勇者が何なのかは良く解らないが、名前からして魔王を倒すに相応しい優秀な者なのだろう───そんな勇者を召喚する魔術が成功したとなれば、そりゃ嬉しいに決まっている。

 

 

「いや、あのですね………」

「どうしたフルーレ! もしや、勇者が惰弱だったか!? 獣の如き無礼者か!? 見るに堪えぬ醜悪か!?

 だとするなら遠慮はいらん。惰弱であろうと出来る事はある。無礼者には礼儀を叩き込めばよい。醜悪な者なら着飾らせれば良い。

 我はバラム王国の王、人類で最も偉大なる国の王ぞ。我に使いこなせぬ人材などおらん」

「……………………解りました、ではお呼びします」

 

 そう言うと、フルーレはおずおずと勇者を連れてきた。

 

「───」

 

 連れてこられた勇者は─────白い人型だった。肌が白いとかじゃなくて、髪も目玉も何もかもが白い。人間かどうかも怪しい珍物体だった。

 

「えっと……私は豆屋 灯譜と、申します」

 

 勇者が喋る度、白い体?がプルンと揺れる。

 王はフリーズした。

 

 

 

§

 

 

 

主人公視点

 

 

 俺が異世界?とか言う場所にくると、そこは如何にも中世ファンタジー的な場所だった。

 石造りの床、魔法陣、お城っぽい内装。”ファンタジー”と入れて画像検索したら真っ先に出てきそうな場所だ。

 

 俺が異世界に来て初めて会った人間。それは少女、結構可愛い緑髪の少女。俺をかなり困惑した目で見つめていた。

 なんで困惑しているんだろう、と思ったら気が付いた──────俺は豆腐(絹ごし)でできた豆腐人間になっていた事に。

 

 …………確かに俺は、『欲しいスキルを~』と聞かれた時に豆腐と答えた。だが普通に考えて、体が豆腐になるのを望むと思うか!? せめて豆腐生成とか、そういう感じになるだろ。いやまあ、嬉しく無くはないけど。

 

 あとついでに性別も女性に変わってる。自分の肌に写る顔(トゥルントゥルンの豆腐だから鏡みたいに顔が写る)を見た感じ、まあまあ美人な方だと思う。正直どうでも良い。

 

 

「─────」

 

 因みに今、俺は王様の前に居る。

 王様は今現在フリーズ中。フリーズ解けたら殺されるかもしれん。異世界から召喚されてきたのがコレとか、誰でも怒るだろうし。

 

 

 

§

 

 

 

数年後

 

「ブモオオオオ!!」

「敵の大技来ます!」

「任せろ、高野豆腐モード!」

 

 俺は全身に力を入れ、体の材質を高野豆腐に変更する。

 柔らかくも強靭である高野豆腐の肉体?は、魔物───身長5mはある牛頭の怪物───の攻撃を容易く受け止めた。

 

 ─────召喚された後、結局俺は王直々に魔王討伐の任を任されることになった。

 因みに俺が豆腐人間であることは、『異世界の人間はこう言う感じなんだろ、多分』(意訳)という王の発言でなあなあになった。王様も疲れてたんだと思う。

 

「リエル! デカめの魔法をブチかましてやれ」

「言われずとも、もう準備してますよ。それっ」

 

 萎びた翼を持つ元天使──リエル──が敵にドデカい魔法をぶち込む。

 

 ─────召喚されてからしばらく後。俺を転生させた天使が堕天して来た。

 なんでも、俺を転生させるときにかなりヤバいやらかしをし、その償いとして堕天させられたのだそう。可哀想だが、まあ自業自得だ。

 

 

「トドメは任せろ!」

 

 体勢を崩した敵。熱血系イケメン──賞由──が超高圧醤油でソイツの心臓を貫いた。

 

 人類で二番目に大きく、人類で最も長い歴史を持つ国家──ハルヴ教国──が異世界から召喚した勇者。

 『豆腐人間が勇者とかありえねえだろ』と言う、至極全うな理由によって対立し、それ以降ライバルとしてしのぎを削っててきた賞由。

 だが、ハルヴ教国を救うため共闘した時、彼が江戸時代から続く醬油屋の跡継ぎであること、体液が全て醬油に置換された醬油人間であることが判明。それ以降は意気投合し、共に戦っている。

 

 ────最近、彼を時々目で追ってしまう。豆腐の本能がそうさせるのだろうか。

 

 

「敵を倒したぞ!」

「よし!」

「やりましたね!」

 

 豆腐人間、堕天使、醬油人間────色物揃いの俺たち。正直、魔王を倒せるか不安でしかない。

 だが諦めない────豆腐を、世界を救った食べ物として後世に残す為に!


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