某掲示板にて見かけた設定が気になって書いてしまったSSです。逃亡海兵の二人の話です。時系列は逃避中。お目汚しですがよろしければ。

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あと二つ話が続きます。


斜陽

多少の陽はあれど、休める時には休む。追ってから逃げ続ける二人にできた習慣だった。風が強く雲も低い。まだ降り始めてはいないが、その内降り始めるだろうというのがウタの見立てだった。休める洞窟が見当たらず、大きな木の洞に二人で入り身を寄せ合った。肩の触れ合う場所に大切な人がいる。体温も感じられる。心も体もボロボロになった二人に残る小さな幸せ。疲れ切った恋人同士が静かに寝息を立て始めるのに時間はかからなかった。

 

 

「ウタ」

 

 

「ん、るふぃ…?」

 

 

瞼を震わせ少女は目を覚ます。視界いっぱいに映るのは麦わら帽子の大切な少年。目を閉じる前より幾分か薄暗くはなったが、彼の顔を見間違える事はない。その真剣な表情は追手が近づいている事を言葉よりも強く物語っていた。手を引かれ立ち上がり、すぐさま移動を開始する。見聞色の覇気に敵の所在を尋ねてみれば、広く探りながら行進している。まだ距離はある程度あるが間違いなく距離は縮まっている。追手から距離をとる為、二人は手をつないだまま足を波音のする方へと向ける。

 

 

見つからないよう逃げるまま、二人は森を抜けると切り立った崖際に出た。風は吹き荒び海を高く舞い上げている。森の中よりは幾分明るいものの、低い雲に遮られているせいで西日はその場所がわかる程度の主張しかしていない。ウタがちらりとルフィの顔を伺えば顔色が良くない。顔を見られている事に気づいたのか、ウタにいつもの温かい笑顔を向ける。大丈夫だ、その短い言葉と共にルフィはウタの手を引いて駆け出す。

 

 

「!! ルフィ!追手がきてる!」

 

 

「ああ!罠だった!」

 

 

もう見聞色に頼らずともわかる距離まで追手が迫っている。ウタとルフィが崖際にたどり着くタイミングを見計らい、追手たちは急激に行軍ペースを上げたようだった。能力者の弱点が眼下に広がる危険地帯。包囲は確実に狭まりつつある。ハッと何かに気づいたルフィは力任せにウタを抱き寄せる。一拍の後、乾いた音が響きルフィの右足から血が噴き出した。

 

 

「うっ!」

 

 

「ルフィ!?」

 

 

「ハァ…ハァ…!ウタ!俺から離れるなよ!」

 

 

「もういい加減諦めろ。天竜人の怒りからは逃げられん。」

 

 

足を撃たれ地面に身を投げたルフィにウタが駆け寄ると、追手から隠すようにルフィは彼女を背に隠す。現れたのはスーツを着た男たち。天竜人の私兵達だった。その手には銃身の短い拳銃を持っている。30人程度の男たちが二人の若者に銃口を向けながら徐々に包囲の輪を縮めていく。恐怖を思い出し、ルフィの背にしがみ付き顔を伏せるウタ。

 

 

ぽつり。小さな雨粒がルフィの肩を打つ。

 

 

「…ウタ、離さねえから」

 

 

「え」

 

 

ルフィが、ウタを抱えて海へと跳んだ。

 

 

「キャアアアアアァァァ…!?」

 

 

「一歩…だけでも…!」

 

 

「撃て!逃がすな!」

 

 

大きな悲鳴が崖下へと落ちていく。一度空気を踏みつける音が聞こえたが、すぐに銃声と波音にかき消される。追撃を加えようとした私兵が崖下を覗くが、すでに二人は夕闇と暗い海に飲み込まれていた。




ルフィが覇王色の覇気を使わない理由,ルフィに銃弾が効いた理由に関しては次の話で説明があります。

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