浮き立つ足取り
道中にある花屋で私は薔薇を買った
適当に7本
それを持っていったら変だと思われてしまうから
私の車の後部座席に置いた
この花を渡す時は訪れてくれるだろうし
散ってしまったら捨てるのは勿体ないから土に埋めよう

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肥料

この花をどうしてくれよう

もう散ってしまったものは仕方がない

土に埋めて次に繋げよう

 

この恋は叶わぬ恋だ

 

裏路地の穴場

喫茶店でただ一人そこに花びらが舞い散る

姿は美の権化

現代のモナリザ

黄金比とは彼女のこと

 

裏路地だから窓から日は射してないが彼女から発せられる光は私を射抜いた

 

______________________

 

カメラマンという職業でよく写真を撮っている

近頃のスマホは画質が上がったとかなんとかでカメラに劣らないと言うものがいるがバカ言っては行けない

デジタルならまだしも一眼レフに勝るものはない

 

私は少し人気のない町にきていた

そこで出会った裏路地の陰気な雰囲気に趣を感じて吸い込まれるように歩いていくと、仄暗い裏路地に現れた小綺麗な喫茶店

ドアを開けると上につけられた鈴が鳴る

髭を生やした白髪の正にマスターの名に相応しい初老の男性は

「いらっしゃい」

と言い、手でお好きな席にと促した

内装はアンティークで統一された最高の世界だった

 

私はその世界を満喫するために、全体が見渡せる席に座る

そして私は出会ってしまう

私は入り口から左に行き奥側の四人席に座り一息をついて目を上げた

真ん中のカウンター席を通り越して対角線に見える一人の女性に目が行った

 

一瞬だった

 

「綺麗だ」

 

とても小さな声だが言葉が漏れてしまった

これが恋なのかと私はこの気持ちに驚かされた

今までしてきた恋は全て実らなかったがその女性たちを全て過去にしてしまうような熱量を持つ恋だった

 

恋は盲目とはよく言うがよく考えたらその行動は少しおかしいんじゃないか

「私、仕事でカメラマンをやってまして写真を撮らせてもらってもいいですか?」

手順が足りてないと「まずは仲良くなる所から始めた方がいい」私の足りない頭と刹那の反省会をする

 

彼女は私の方を見ていた

その私が突然立ち上がりこの席に近づくまでを見ていたのだ

彼女は少し驚いた顔を見せた

その顔もまた美しくその瞬間を撮りたいと思ったが

それと同時に

困惑してるに違いない当たり前だ誰とも知らない男に写真を撮らせてくれなど

「いいですよ」

了承するはずがない

私の脳内会議が終わるのに間に合わず返答が返ってきた

そうかダメか…

「えっ………?!」

私は素っ頓狂な声をあげてしまった

私は即座にカメラのカバーを外しカメラを取る体制になろうとしたがカバーをポケットに入れようとして落としてしまった

焦って拾う

殺して〜…

心から思った

すると彼女はその口から優雅な笑い声が漏れた

「フフッ…….そんなに焦らなくて平気ですよ、私は逃げませんから」

真っ赤な顔が耳にまで達した

そうなっているであろう私を想像してより恥ずかしくなった

私はポッケにカバーを突っ込みカメラを構える

値段は4〜50万のカメラ

この時のために買ったのかもしれないと思えた

カメラの画素数は彼女の顔を複製してモニターに映し出す

震える指を必死に抑えてシャッターを押す

その反射してしまいそうな白い肌、麗しい瞳、赤く潤う唇、頬に映し出された愛らしさまで感じる紅色

それを全て複製できている

あぁ私は幸せ者なんだ

 

「この写真印刷します!明日もここにいますか?」

多分変なことは言ってないはずだ

「はい!私ここに毎日通ってますから明日の3時に来てください!」

あぁ天に昇ってしまう

明日も会える約束ができてしまうだなんて

 

早く現像したい

私は頼んでいたコーヒーを失礼にならないように静かに飲み干して

「ご馳走様!」

とマスターに礼をして店を出た

路地は相変わらず暗いが路地から見える日光は眩く煌めいていた

 

______________________

 

 

有料駐車場に停めていた赤い車に乗りエンジンをかけた

エンジンの音もなにやらゴキゲンなテンポで音を鳴らす

ガリガリ!

「あっ!」

フラップがでたまんまで発進したがために少し下を傷つけてしまったようだ

しかし確認は特にしなかった

そんな事気にすることはないのだから

お金を払い私は今度こそ車を発進させて帰路へとついた

青信号がいつもより多く感じる

微々たるものだが祝福してくれてるのだろうか

到着

マンション3階に住んでいる私は、いつもならエレベーターを使って上がるが今日は上機嫌なためこの興奮を抑えるために階段で一段飛ばしをしながら上った

これが恋の力

とても強く熱い

部屋に入り早速印刷作業に移った

と言ってもSDカードを差し込んで印刷機で印刷するだけと言うものなのだが

「嗚呼待ち遠しい」

そういえばインクの交換はしていただろうか

そういえば最近お気に入りの写真をたくさん印刷したせいで少なくなっていた気がする

まずいキャンセルしなければと思った時には時既に遅し

写真が出てきていた

その写真は全体的に真っ赤で彼女の顔が辛うじてわかる程度のものだった

私はそれをすぐに破り捨てた

カートリッジを入れ替え印刷を開始

機械的な音を鳴らしながら印刷機は写真を出す

「今度こそ…」

その写真には彼女がいた

嗚呼彼女だ

麗しき彼女を写し出した

勢いで7枚も印刷してしまった

明日が楽しみだ

 

______________________

 

眠れなかった

真夜中眠れなかった

彼女の写真を見ては目が覚めてしまったからだ

 

さぁたどり着いたぞ

昨日も乗っていた赤い車に乗ってきた

お気に入りのデオドラントをつけてキツくない程度の香水をつけた

写真をしっかりとした硬めのファイルに数枚入れてきた

さぁここが正念場

彼女とお近づきになるのだ

 

路地裏に入り喫茶店に着く私は扉を開けようとした

ノブに手をかけたその時

その時体に得もいえない悪寒に襲われ体を少し後退りしてしまった

私はそれは勘違いだと信じて今度こそ入った

 

しかし今思えばそれは私に注意を促していたのかもしれない

入ると笑い声が聞こえる

誰かの声かはすぐわかる彼女だ

誰と話しているのだろうか?

すぐそちらに顔を向ける

しかし私の顔は絶望に塗り固められる

四人席のソファに座る彼女の隣には男が座っていた

とても楽しげだ

誰だおまえは 何故隣に座っている

スーツ姿で顔は世間一般ではイケメンの部類

彼女は私に気づいた

「あっ!先日はどうも!座ってください!」

あの落ち着きを持った麗しい彼女とは思えない明るく言葉全てに感嘆符がついていた

何かがバラバラと崩れていく

脳が混乱する

あぁあぁあぁあぁあぁ

いや破壊される

彼女に促された通り私は座る

彼女は話し始める

「昨日の写真見せてもらってもいいでしょうか?」

「えぇ…」

私は答えた

写真を出すとそのただの写真を男と凝視する

少し目を上に上げると見えたのは

二人の手が真ん中へ寄せている

クソッ!

男が口を開けた

「さすがカメラマン!とてもいい写真をお撮りになるんですね!」

言葉にはとても明るく好青年というのが伝わってくる

「もしよろしければなのですが………」

あぁあぁ聞きたくない

その先が私には読めてしまった

「私と彼女の結婚写真を撮ってはくれませんか?日付としては…………」

あぁ……………

もう嫌だ

たった数秒で恋焦がれ

この数秒で私の全ては焼き尽くされた

君は私のものだったのに

運命的だと思っていたのに

どうして…どうしてそんな

 

酷いことをするんだ

 

「はい……」

 

散った心はもう戻らないのに

 

「スケジュールなどの調整をしますので考えさせてください………」

 

もういいよ

 

そんなの

自分で発した言葉を自分で否定した

 

「ありがとうございます!これ私のLINEIDです」

 

私はそれを受け取り席をたつ

彼女がもういいんですか?もう少し話していきませんか?

と言った気がする

耳が聞こえにくくなってる

「いえ…体調悪いんで先帰らさせてもらいます……」

 

外へでた

 

路地は本当に真っ暗だな

どこもかしこも薄暗くて汚らしい

 

路地裏から出るために真っ直ぐ歩くが少し横にふらつく

足が根深く地に張り巡らされたかのように重い足取りで私は車にたどり着いた

 

昨日できた車の傷を見て私は無性にイラッとした

金を払い

私は車を少し走らせた

後部座席には気がはやって買ってしまった薔薇の束がある

見るに耐えないものだ

私は人気のないところで路駐をした

少し疲れたんだ

少し

俯き続けた

何分経っただろうか

 

それに意味はあるの?

 

上をバッと見る

私は前をじっと見つめる

「意味はある」

私は車を発進させた

 

______________________

 

 

ゴミ箱に捨てるのは少しいただけないと思い近くの山にきた

薔薇はもういらない

土に一緒に埋めてしまおう

綺麗なのを埋めたんだ

ここに咲く花はきっと美しいだろう

嗚呼まだ綺麗なんだな…

私は土を被せる前に徐にスマホを取り出して写真を撮った




タイトルいいの思いつきませんでした
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