HELLSINGを見返してたら、舞台がハリーポッターと同じ英国なんだなって、思って作ったクロスオーバーです。
多分、というかほぼ間違いなく亀投稿なので、そこはどうかご了承を……
1 Night of beginnings
1981年10月31日。
英国北部の小村。チェーダース村。
都市部に比べてあまり栄えているというわけでもなく、目立った特産品がないながらも、のどかで、平和な、ごく普通の村。
そんな村の満月の夜、3人の男がやって来た。
全員が黒いローブを身にまとい、腰にはただの木の枝と呼ぶには立派な棒、そして、特徴的な入れ墨を左腕に付けた実に奇妙な3人組だった。
男達は村を一通り回った後、村の住人を家畜を見る目で嘲笑い、その男達に怒りを覚えたのか、村の男の中でも特に気の荒い酒屋の店主が男達に掴みかかろうとした。
しかし、その瞬間更に奇妙な事が起こった。
3人組の男のうち1人が腰に付けていた棒を振った瞬間、男は見えない糸に引っ張られるかのように浮かび上がり、この世のものとは思えない苦悶の表情と声を上げたのだ。
突如として発せられた店主の苦悶の声に、様子を見ていた周囲の住人は悲鳴を上げ幾人かは逃げ出し、父を苦しめる男達を止めようと双子の息子達が拳を振り上げて殴りかかるが、残る背後の男達が放った緑の光に飲まれ、その瞬間たちまちのうちに死んでしまった。
その後、村の住民の一部が猟銃や農具を持ち出し、男達3人を止めようとするも、男達が棒から放つ緑の光や、突如として何処からともなく現れた狼とも人とも言えない
村の家という家は焼かれ、住民という住民は苦しみ死に、男達の狼藉を止めることはできず、村は見る影もなく壊滅した。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
そんな村を壊滅させた男3人から逃げるため、女は一人、愛する我が子を抱いて走っていた。
彼女の他にも逃げ出した村人はいたはずだが、そのあるはずの足音はもう聞こえず、そこにあるのは狩りを楽しむかのように笑う、件の男達の声だけ。
しかし、女はそれでも足を動かし、必死に男達の魔の手から逃れようと必死に走った。
夫が残した我が子を守るため、我が子が幸せに生きる未来のため、女はそれでも必死に走り続ける。
「おいおい、マグルの癖に楽しませてくれるじゃねーかよ。これでかれこれ鬼ごっこをやり続けて10分ってところか?」
「箒もないってのによくやるぜ。そんでだ。ついさっきの賭けの話、確か10分以上女が逃げ続けたら飯を奢るって話だったよな?」
「そうなると当然、お前が飯を奢る話になるわけだが、お前ほんと、賭け弱いよな。これで10戦中0勝10敗だろ?そろそろお前の財布もスカンピン、ってとこか」
「うるさい!この女がちょこまか逃げなければ俺の勝ちだった!マグルの癖に生意気な………そろそろいい加減に殺してやる」
「待て待て!せっかく生きがいいんだ!遊んでから殺した方が良い!」
「こんな女!遊ぶ価値もないわ!!こんの………糞ったれマグルが!!」
3人組のうち特に大柄な男が棒を振った瞬間、女の走っていた地面が爆発し、女は宙に放り出された。
突然起こった爆発を前に女は息もできないが、咄嗟に子供を守ろうと強く抱きしめ、そのまま落下。
結果自身の体がクッションとなって子供は即死を免れるが、その代償かのように女の体はボールのように何度も跳ね、動きが止まった頃にはもう全身がボロボロ。
体のあちこちの骨が折れ、息をする度に口に血の味が広がり、否が応でも自らの死を、女に確信させた。
それでも子供を守ろうと女は男達を射殺すように睨みつけるが、やはりあまり効果はなく、男達は女に近づき、棒を女の喉元に突きつける
「全くよう、手こずらせてくれやがって。てめぇが10分間も逃げ続けるせいで、俺の財布はスカンピンになっちまったじゃねーかよてめぇ。この落とし前、どう付けてくれるんだ?」
「落とし、まえ?それは、こっち、の、セリフよ。私、た、ちの村を!かぞ、くを!おっ、とを!こ、きょうをめちゃくちゃ、にして!私達が、あなた達に、何をしたっていうの!?」
「あんっ?何をしたかだって?そんなの何もしてーねーよ。てめぇ等はマグルだからそうなった、それだけだろ?」
「マグ、ル?何を、言ってる、の、あなた達、は?その、木の、棒は、一体、なに?」
「んなもん、てめえぇが知る必要ねーだろ。俺達魔法族の遠く足元に及ぼない、てめぇ等マグルが俺達魔法族を知って一体何になるんだ?どうせお前も、その死にかけのガキも、今ここで死ぬだけだろうだろうが!」
「この、子は、絶対に、殺、させない。この、子だけ、は、必、ず……!」
「死にかけのマグルのババァになにができるっつうんだ!?てめえ等はみんな!!ここで全員死ぬんだ────」
ドンッ!ドンッ!ドンッ!!
男が棒から緑の光を放とうとした瞬間、突如として銃声が鳴り響くとともに、弾丸が男の頭に命中。
男は棒を私に向けたまま、赤い血を辺り振りまきながら地に倒れ伏した。
「お、おいっ!?どうした!?今のは何だ!?」
「まさか、こいつ以外の生き残りか!?おい、女!!一体これはどうなって─────」
そう男が私の喉元に掴みかかり、言葉を発しようとするが、突如周囲に張り詰めた圧力のようなものによって、男達はおろか私までもが息ができない錯覚に見舞われた。
そして、そんな張り詰める空気の中、それは、ゆっくりと、何かを楽しむかのように現れた。
手には私に棒を突き立てていた男を撃ったであろう銃を持ち、血を思わせる赤い服と赤い帽子をまとった男の姿をしたそれは、こちらに近づいてきた。
男達はどうにか息をできるほどには心を持ち直したようだが、私はその、人とは思えない圧力を発する者の前に息もできず、声も発することができず、ただ自分の子を抱え、震えることしかできない。
「いい加減にしろよお前等。最近の若者共は全く………下衆だ。モラルもへったくれもあったものじゃない。街のチンピラと変わらんな」
「何だと?あの方に仕えし我等が死喰い人を愚弄するか?」
「お前は一体何者だ!?闇祓いか!?」
「俺の名前は【アーカード】。特務機関『HELLSING』の手先のごみ処理係だ。お前等みたいなの専門の殺し屋だ」
「HELLSLNG………!魔法族でありながらマグルに属し、我等魔法族を狩る血を裏切りし一族か………!!」
「魔法族を狩ると言っても、我等が狩るのは魔法界だけでは飽き足らず、愚かにも人間界で馬鹿なことをする貴様等阿呆だけだがな。井の中の蛙らしく、魔法界で闇祓い共と騒いでいればいいものを……我等が領域を犯すとは、阿呆にもほどがある」
「井の中の蛙?杖すら持たず、マグルの武器に頼るお前が言えたことか」
「その程度の反応しかできないからこそ、貴様等は井の中の蛙だと言っているんだ。お前達みたいなクソガキがな、好き勝手絶叫に暴れられると困るんだよ。貴様等食う飯の殆どを作っているのはマグルだ。魔法族なんぞ、すぐ絶滅して共倒れだぞ。先の見えんガキど────」
「アーカ、ードさん……!危、ない……!」
女が言葉を発するがもう遅く、男2人の杖からは緑の光が放たれ、アーカードと名乗った男は顔から地面に崩れ落ちた。
「……阿呆はどっちだ、クソHELLSINGのゴミ処理係。こんな至近距離かつ、開けた場所で、2人掛の死の呪いを躱せるわけがないだろうに」
「そ、そんな……アーカードさんまで………」
「正義の救世主様もこれで終わりか。呆気ない最後だぜ」
「見ろよ女!この阿呆の馬鹿げだ死に様をよ!血を裏切るような奴が!俺達に敵うわけなんて────」
グチュッ、グチャッ
「あ、あ、あ、ああ、ああぁぁ!!杖が、手が!!な、な、何故まだ生き────」
「クク………ク………ク………ククク、ククククハハハハ。悪いが俺は死の呪い程度では死なない。それも、貴様等程度の雑魚如きの死の呪文では、特にな」
「……人に近しい姿、人の握力を優に超える怪力、そしてその人の生き血を啜る鋭い牙。……まさか、お前、
近づいてきた男の棒を手ごと握り潰し、もう片方の手で男の心臓を手刀で貫いたアーカードさんは、もう物言わぬそれを手から払いのけ、口の鋭い牙を剥き出しにしながら、男の言葉に笑う。
「ああ、そうだ。俺は
「な、なぜッ、何故お前……!?何故吸血鬼が人間、それもマグルに味方を!?お前が吸血鬼だとしても何故死の呪いを受けて生きている!?他の吸血鬼共は簡単に死んだというのに!!」
「だから言ったろ。俺は真の
「こ、こんなところで死んでたまるか!そんなマグルの武器、盾の呪文で────」
そこから先は、銃声以外何も聞こえなかった。
男は棒を振って透明の膜のようなものを作り出すが、アーカードさんの放った銃弾は膜を男の胸元ごと貫き、男は言葉にならない言葉を発し、そのまま地面に崩れ落ちた。
「ランチャースター大聖堂の銀十字を溶かして作った、13mm爆裂鉄鋼弾。ダンブルドア程の魔法使いが放った魔法でさえなければその呪文を無効化し、そのまま対象を破壊する代物だ。巨人やトロールならいざ知らず、こいつを喰らって生きてる魔法使いなんかいないよ。もっとも、1発10ガリオンのとんだ金食い蟲だがな」
「………た、す、けてくれて、あり、がとう……ござい、ます。あなたは、いの、ちの、ゲボッ!ゲホッ!!」
「喋らないのが身のためだ。全身の骨が折れ、頭にも深い傷。もう長くはないだろう」
「な、ら、せめて、この、子を………。【セラス】を………ど、うか………」
「……たった一人の生存者だ。生かしておきたいところだが、それは無理だ」
「そん、な……どう、して」
「貴様ほどではないが、その赤ん坊は頭を強く打っている。成長した人間ならばともかく、赤ん坊にとっては致命的だ」
「じゃ、じゃあ、魔法で、どうにか……」
「生憎と俺は魔法は使えん。それにその手の癒者、それも赤ん坊を治すことができる癒者は魔法界でも数が少ない。ハッキリ言って、こいつを助ける手段は現状ない」
「そんな……生まれたばっかりなのに………。この子はまだ、何も……知らないのに、そんなこと………」
ついさっきまでの強気な態度とは一転、少しずつ呼吸が弱くなっていくセラスを抱きしめ、彼女の服に大粒の涙を垂らした。
………ただ、このまま朽ち、死にゆく生命。
弱肉強食の理に従い、強者に踏みにじられただけ。
あの男達は、ただ世界の理通りに踏みにじり、そして強者に踏みにじられただけだった。
だが、この女はどうだ?
世の理を知りながら、自らの大切なものを護るために最後まで戦い、死にゆく定めと知りながら最後まで理に抗おうとした。
この女はたしかに弱い。
武器も使えず、魔法も使えず、ただ逃げ惑うしかない、踏みにじられるだけの弱者だ。
だが、この女は抗った。
武器も使えず、魔法も使えず、ただ逃げ惑うしかない、踏みにじられるだけの弱者なのにも関わらず、それでも抗った!自らの大切なものを護るため!それでも抗ったのだ!!
アーカードは笑みを浮かべると、片膝をつき、女に対して頭を下げる。
「………何故、あなたが、ひ、ざを?お礼を、いうのは、私なのに………」
「………その子供を救う術はない。如何なる魔法を使おうと、如何なる薬を使おうと、その子供を救う術はない。だが、人ならざるものとなることで………化物となることでなら、その人間を救うことができる」
「………もしかし、て、あなたと、同じ、きゅう、けつき、に?」
「ああ、そうだ。だが、助かったとしても、その子供は人間ではなくなる。普通の人生は送れまい。例えそうだとしても、お前は子供を助けるか?それとも、人間のまま、このまま死なせるか?どうする?」
アーカードがそういうと、女は抱きしめるセラスをじっと見つめ、そっと、震える手でその頭を撫でた。
そして少し目を閉じ、セラスを優しくアーカードに差し出す。
「………いいのか?人間でなくなるのだぞ?俺と同じ、人ならざる化物になるのだぞ?それでもいいのか?」
「例え、化物だと、しても、その子が私の、私達の子供だということには、かわりあり、ません。………それに、当然でしょ?親が、自分達の子が、笑って、くれる、未来を、ゆめ、み、るのは」
「人ならざる俺に当然を求めるとは………。………だが、いいだろう。願い、確かに聞き届けた」
そう言うとアーカードは弱るセラスの首元に噛みつき、彼女の首から流れる血を啜り吸った。
そして血を吸ってしばらくすると、セラスの口にはつい先ほどまで生えていなかった鋭い牙が生え、少しずつ、少しずつ、そして確実に呼吸のペースは強まっていき、遂に呼吸のペースは普通の状態へともとに戻った。
「今、この瞬間、セラスは我が眷属となった。私と同じ闇夜に生きる、吸血鬼になった。これでこの子供は死ぬことはない。お前の望み通り、この子供は生きることができるだろう」
「ほんとうに、ありがとうござ、います。セラ、ス、たす、け、てくれ、て、あり、が、と、う」
「この子供は俺が眷属として世話をしよう。これでお前の思い残すこともないはずだ。……だから眠れ。強き人間よ」
「………セラス。私達の、可愛い、娘。どうか、幸せに。どうか、健康に。どうか……………。…………笑って、いき、れます、よ────」
言葉にならない最後の言葉を口の中で紡ぐと、女は安心したかのように木の根元に深く座り込み、そのままゆっくりと、目を深く閉じた。
「………やはり素敵だ。やはり人間は、素晴らしい。見事な生き様だった。………やはり、人間は素晴らしいな」
そう呟き、今この瞬間まで生きていた女に敬意を払い一瞥すると、アーカードはセラスを抱え、どこか満足そうに、満月の闇の中に消えていった。
この日は奇しくも、英国を恐怖に陥れた闇の帝王ヴォルデモートの死の呪いから史上唯一の生存を果たし、ヴォルデモートを【ハリー•ポッター】、後に『生き残った男の子』と評される赤ん坊が打ち破った日となるのだが、この時のアーカードも彼の腕の中で眠るセラスも、まだ、その事を知る由もなかったという。