ハリー・ポッターと王立国教騎士団   作:熊田ラナムカ27

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12 Things you shouldn't get involved in

 

 

 寮で催されたパーティーも終わり、皆が寝静まった頃。

 

 私は妙に頭が冴えて眠ることが出来ず、セラスが先に寝てしまった部屋で一人、ぼんやりと教科書を眺めていた。

 

「今日は本当に色んな事があったわ。まさか、セラスの言ってた職場がHELLSINGで………その保護者がHELLSING団長その人だなんて……全く思っていなかったもの」

 

 魔法史の教科書によると、HELLSINGは中世においてマーリンと並ぶ偉大な魔法使いにして、歴史上最も優れたヴァンパイアハンターとして知られるヴァン・ヘルシングが設立した組織であり、歴史上最も強い吸血鬼であるアーカードを封印した後、人間界を魔法界からやって来る化物(フリークス)や闇の魔法使いから守り、魔法界をマグル達から秘匿している組織だ。

 

 その初代団長であるヴァン・ヘルシングはその魔法力の高さは勿論、魔女狩りという魔法使い排斥の動きがあってもその高潔さで決して屈しず、それどころか世界が2つに分けられる以前の曖昧な世界で猛威を振るっていた化物(フリークス)達を狩り、人民を守り続けた傑物であり、当時の英国王に気に入られ直属の部下となり、現在のHELLSINGの立場と役目を確立するまでの活躍を見せた。

 

 また、代々受け継がれてきた対化物(フリークス)、対魔法生物における技術と高潔さは今もなおHELLSINGに受け継がれており、第一次魔法戦争で人間界に侵攻したヴォルデモート勢力をその活躍によって、ほぼ根絶やしにまで追い込んだという。

 

「そんな組織のお嬢様だって言うんだから、セラスが魔法がとっても上手くて、トロールも倒しちゃうくらい強いっていうのは納得の話よね。本人は絶対に認めないだろうし、ビックリするくらい謙虚だから寧ろ私の方がすっごいって、言いかねないけど」

 

 そう軽く苦笑しながら、セラスの眠る棺桶に軽く耳を傾向けてみる。

 

 そこには年相応の寝息が蓋越しに響いており、そんな姿からは数時間前にあんな事をした人間と同一人物にはとても思えない。

 

「………けど、やっぱり何かが引っかかっている気がする。セラスが私達にまだ何かを隠しているというか……ダンブルドアが何かを誤魔化したというか………上手くは言えないど、そんな気がする」

 

 ダンブルドアはセラスが身体強化魔法を得意としていると言っていたが、少なくとも私の知る限りそんな魔法この世には存在していないし、セラスが得意と自ら言うほど、その身体強化魔法を使っている仕草なんて私は一度も見たことがない。

 

 尤もこの疑いは、代々伝わる魔法の為秘匿されているとか、私がいないとこでしか使っていないとかの説明で一応は納得が出来る為、本当に私の考え過ぎなのかもしれないのだが。

 

「………そういえば、HELLSINGは何か大きな事件があって、それが自分達だけでは対処できないと判断ときに、その時の団長が契約を交わしてアーカードを一時的に開放、事件が済んだ折に再び封印をするんだったわね。ここ数年だと急な当主死亡によって、当時11歳だった現当主インテグラさんが死喰い人(デスイーター)残党に襲われた際、偶発的にアーカードを開放。それからずっと、アーカードは封印されていないのよね。……その時のセラスは多分まだ4歳。その頃にはもう既に、HELLSINGに引き取られていたのよね」

 

 魔法史のアーカード開放年表を見ているうちに、私は近年のアーカード開放時にセラスがHELLSINGにいた事に気が付いた。

 

 セラスの話によると、両親は10年前に全員死んでしまったそうであるし、他の親類はその時にはもう既に流行り病や寿命などで全員死亡。

 

 そうなってくると必然的に当時、既にHELLSINGで引き取られているとしか考えられず、本人の話様からして孤児院に一時的にいたとも考えにくいだろう。

 

「………アーカードは最恐の吸血鬼ではあるが吸血鬼であるが故に弱点も多い。ニンニクや十字架を強く嫌い、聖餅や聖水は酷く身を焼く。川・海・湖畔流れる堀を渡れず、太陽に目を背け、聖書に耳を背け、安息のねぐらは唯一暗く小さな棺だけ。……あれ?セラスが嫌がる事と、似ている所がある……?十字架や聖餅、聖水、聖書の類はわからないけど……ニンニクはアレルギーだってすっごく嫌がっているし、水と太陽にはあまり近づかないようにしていて、毎晩棺桶の中で寝ている。………けど、吸血鬼にはないはずの味覚だってほぼ間違いなくあるし、帽子は被ってたけど昼間も行動してる。そもそも……亜人が魔法を使う事は法律上認められていなし……そんなこと………いや、まさか………ありえない………」

 

 吸血鬼の特徴にセラスが幾つも当てはまる事に気が付き、点と点が繋がった感覚に私は襲われた。

 

 だが、その推察はセラスに対してとても失礼なものであり、あくまで偶々当てはまっている可能性だってあるし、吸血鬼の特徴に当てはまっていない部分だって所々ある。

 

 しかし、無意識の部分で興味心が勝っているのか、私の手は気づかぬうちに魔法生物の教科書へと、手が伸びてしまっている。

 

「ハーマイオニー……。私のパンプキンパイ……勝手に食べないで下さいよ………。お腹が空いているのはわかりますけど………流石に食い意地が………張り過ぎです………」

 

 私の手が表紙に触れる直前、セラスの棺桶からはそんな寝言が発せられ、私は咄嗟に教科書から手を離した。

 

 つい先ほどのパーティーの夢を見ているのか、その寝言の声は幸せそのものだった。

 

「………友達の秘密を勝手に探るなんて……私最低ね。セラスが何であったって、私には関係ないのに」

 

 そう呟くと私は杖を振って、広げていた教科書を鞄の中に戻していき、教科書を見るために点けていたキャンドルの火をフッと一息で消した。

 

 

 セラスが何であったって、私の友達である事には変わりはない。

 

 セラスが話しそうとしない限り、私がその秘密を知ろうというのはおかしな話だろう。

 

 ………もし、セラスの正体がそうであって、皆から嫌われる事を恐れているとしても…………私は─── 

   

 

 

 

 

 

 

 

          ◆◆◆◆

                                                     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 11月に入り、季節は冬真っ盛り。

 

 学校を囲む山々は凍り付き、湖は鋼の様に凍り、校庭には毎朝霜が降りるのが日常。

 

 しかし、そんな季節の寒さとは裏腹、大広間には寧ろ暑苦しいほどの熱気が溢れていた。

 

「明日はようやく試合本番か。ハリー、調子の方は大丈夫なのかい?」

 

「大丈夫だよロン。けど、その話は昨日も一昨日の朝も聞いた。ここ最近、みんな僕にその事ばっかり聞いてくるんだ」

 

「そりゃあ、ハリーはグリフィンドールのとっておき何ですから、みんな試合前の体調面を心配するのは当然です。試合前に倒れたらどうしようもないですし、何せ相手は因縁のスリザリン。期待も心配も、同じくらい高まってるに決まってます」

 

「それはそうとみんな、秘密兵器の意味をわかってないし、流石に四六時中ハリーを心配するのはどうかと思うけどね」

 

「全く持って、間違いありません」

 

 ハーマイオニーが軽く溜息を着き、私がそれに頷く。

 

 広間の熱気が溢れるのも当然で、遂にクィデッチシーズン到来し、明日には初戦のグリフィンドール対スリザリン。

 

 つい先日まで大騒ぎとなっていたトロール侵入+私がHELLSING局員だということの話題はもう見えず、ホグワーツの話題は明日のクィディッチへと移っていた。

 

 クィディッチは英国魔法界で最も人気とされるスポーツであり、そのルールは至って簡単、箒に乗った選手達がクアッフルと呼ばれるボールを奪い合い、そのボールをゴールにシュートすれば10点。

 

 その間、選手を箒から落とそうと飛び回るブラッジャーを避けつつ、最終的にスニッチと呼ばれる小さな羽が生えた金色のボールを探し出し、そのボールをシーカーが捕まえれば150点を獲得してゲームセット。

 

 総合得点で勝負を決めるという、単純明快分かりやすい素晴らしいスポーツだ。

 

 ……ただし、魔法界特有の危険意識の低さは健在であり、今までクディッチの試合で死んだ選手は約1000人。

 

 空を飛ぶ最中の妨害なんて物は日常茶飯事であり、試合で死んだ選手が夜な夜なゴーストとして試合をしているなんていう………色々と笑えない点も多くある……色々と(危険意識が)おかしい……危険なスポーツでもあるのだが………。

 

「ポッター、そこに持っているのは何かね?」

 

 私達がそんなこんなで明日のクィディッチについて話していると、何故か足を引きずっているスネイプ先生がハリーの持っている本を指差した。

 

 ハリーの手には確かに、『クィディッチ今昔』という本が手に握られいる。

 

「図書館の本は郊外に持ち出してはならん。よこしなさい。それとグリフィンドールは5点減点」

 

「そんな!勝手すぎます!!そもそもそんなルール、図書館の規則には一つだって────」

 

「セラス、よせよせ。余計点数を引かれるだけだ。一旦落ち着け」

 

 私が本を理不尽に取り上げ、意味が分からない減点をしたスネイプ先生に食ってかかろうしたところ、隣に座っていたロンにローブを掴まれて私は立ち上がることが出来なかった。

 

 その隙にそそくさスネイプ先生は足を引きずりながら行ってしまい、私達は訳の分からぬまま本を奪われてしまう。

 

「流石に今のはハリーがいくら嫌いでも理解できませんよ!明らかに違法です!」

 

「スネイプは規則をでっち上げたんだ。こんな事なら、さっさとマクゴナガル先生を呼べばよかった」

 

「きっと、ハリーがシーカーでみんなからチヤホヤされているのが気に入らなかったんだよ。だとしても、あれはないよな」

  

 私達3人はそう憤慨し、少し考え事をしつつ、ハーマイオニーも言葉を発せずともロンの言葉に頷いた。

 

 先日の事件以来、私達4人は親友といえる仲まで交友を深めており、ここ数日は夜以外殆ど4人でいる事が多かった。

 

 ハーマイオニーは勉強が苦手なハリーとロンの宿題を手伝っていたし、私は2人が勉強に飽きぬよう、時折HELLSINGでの仕事の話も交えて解説をしたりしていた。

 

 また、私がHELLSING局員である事が知れ渡った事で、他の人の私への対応もガラリと変わっており、全体的に蛮族としてではなく、秩序を重んじる人間としてのイメージが全体的にほぼ定着した。

 

 なお、ドラコに関しては私が”人間界”の名家ではなく、”魔法界”の名家の養子だと思っていたらしく、驚いてはいたものの

 

 ”ヘルシング家は魔法界でも有力な家系であったはずだし……マグル出身ではあるが魔法界の英雄の血筋であるから接し方は今まで通りでいい。けど、まさか……セラスの実家があの……ヘルシング家とは…………”

 

 とか、なんとか、困惑しつつも納得はしてくれたらしく、前と今であまり関係性の違いは見られていない。

 

「それはそうと、スネイプ先生の脚の怪我。あれ、一体どうしたのかしら?」

 

 つい先ほどまで黙っていたハーマイオニーがそう言い、言われてみればと私は気になった。

 

 つい先ほどまで黙っていたのは、どうやらこの事について考えていたかららしい。

 

「確かに、言われてみるとスネイプ先生、いつの間に怪我したんでしょう?少なくとも、ハロウィンの日までは怪我なんてしてませんでしたよね?」

 

「女子トイレに駆け付けた時には、もう既に引きずっていた気がするわ。けど、何で足なんか怪我を?まるで何か襲われたみたいじゃない」

 

「いや、多分だけど、その予想は正しい。……実は僕とロン、あの日見たんだ。スネイプが、騒ぎの中一人4階に向かってたのを」

 

 ハリーが手に顎をつけながらそう言い、正面のロンがそれに頷く。

 

「何ですって?スネイプ先生が?」

 

「ああ、そうだ。そんでもってあの4階に急いで行く理由といったらあの化け物がいる部屋ぐらいしかない。騒ぎに紛れてあの犬にを出し抜こうとして……それで嚙まれたんだよ、きっと」

 

「それって、まるで、スネイプ先生がトロール2匹を嗾けたって言い切ってるようなものじゃないですか。じゃあ何です?スネイプ先生が、前の事件の犯人?」

 

「多分。僕はそう睨んでる」

 

「ハリー、そんなはずないわ。スネイプ先生は確かに意地悪だけど、ダンブルドアが守っている物を盗もうとする人ではないわ」

 

「そうですよ。そもそもそんな人材、ダンブルドアが手元に置いているわけないじゃないですか。スネイプ先生が嫌いなのは理解できますが、流石にその考えは話が飛躍し過ぎかと」

 

「僕はハリーと同じ考えだな。君達は先生みんな聖人だって思っているのかもだけど、スネイプならやりかねない。けど、仮にそうだとして、スネイプは一体何を狙っているんだろう?あの犬、何を守っているんだろう?」

 

 ロンがそう言って皆が頭を傾けるが、あまりに情報が足らな過ぎた為に結局のところは、今日はわからずじまい。

 

 棺桶に入ってもその事が私の頭から離れず、トロールがまるで魔法に掛けられたかの様に異様に硬かった事を思い出しては、ハリーの話した陰謀論が時折眠りにつくまで、私の頭の中をグルグル回った。

 

 そして、早くも次の日となり、遂にクィディッチの試合当日。

 

「ほら、何か食べないと今日丸一保たないぞ」

 

「ごめん。どうも今日は食欲が無いんだ」

 

「ヨーグルトだけでもいいですから、ほら、口開けて」 

 

 ロンが心配そうに言い、私がヨーグルトの入った器を差し出すも首を振って拒否。

 

 試合への緊張のあまり食欲がわかないらしく、ただでさえ少し瘦せているハリーの影はいつもより小さく、いつもより数割増しで顔色が悪く見えた。

 

「ほら。例え負けたとしてもトロール相手とは違って死にはしないんですし、仮に責められたってみんな明日には忘れてますよ」

 

「トロール相手の緊張と、みんなからの期待じゃ全然意味が違うよ。明日にその事忘れたって、どの道今日沢山責められるだけじゃないか」

 

「まぁ……それはそうなんですけど………えっと………」

 

「とにかく、そうならない為にも今は沢山食べるべきよ。シーカーは真っ先に狙われるし、力をつけるだけつけるには問題ないわ」

 

「そうそう!それを言いたかったんです!ほら、とりあえず口開けて」

 

 そう言いながら私は自分の皿に乗せられた大量のベーコンとソーセージを差し出し、ハリーは苦虫を嚙み潰したように、それらを無理矢理胃の奥に押し込んだ。

 

 それから時刻は流れ、時刻は11時。

 

 クィディッチ競技場に観客がつめかけ、私達は客席への波に乗って競技場に入場して、ロンやハーマイオニーやネビルなどと共に最上段を陣取った。

  

 みんなでハリーを驚かせようと、ベットシーツで大きな旗を作り、『ポッターを大統領に』と絵がうまいディーンがグリフィンドール寮のシンボルのライオンを描いた。

 

 ハーマイオニーは少し複雑な魔法掛けて絵が色々な色に光るように手を加え、私がハリーの友達だという森番のハグリット(師匠(マスター)が森を過去に何回も破壊したという事で、HELLSING関係者である私の事をハグリットは最初警戒。ロンが私がハリーの友達だという事を教えるまで、小屋の扉すら開けてくれなかったが)から貰った長い棒に旗を魔法で接合。

 

 元がベットシーツとは思えない立派な応援旗を担ぎ上げ、試合の開始を今か今かと待ちわびる。

 

「さあ、皆さん、正々堂々戦いましょう。よーい、箒に乗って」

 

 ハリー達は箒に乗り、フーチ先生は胸元の笛を持つ。

 

 

 

 

 ピーーーーッ!!

 

  

  

 

 その甲高い笛の音と共に試合は開始。

 

 フーチ先生がクアッフルを空に投げ、選手達は一斉に飛行。

 

 選手達はボール目掛けて突っ込んでいき、試合が一気に展開されていく。

 

『さて、クアッフルが投げられ試合開始!クアッフルをもぎ取ったのはグリフィンドールのアンジェリーナ・ジョンソン! 素晴らしきチェイサーであり、その上魅力的───』

 

『ジョーダン!』

 

『失礼しました、先生』

 

 先生方の席からは実況放送が響き辺り、フレッドとジョージに並ぶ悪ガキことリー・ジョーダンが解説をした。

 

 隣にはマクゴナガル先生が座っており、いたずら好きの彼が余計な事を言わぬよう厳重に監視している。

 

『ジョンソン選手、ゴール目掛けて突っ走っていきます!おっと、ここでアリシア・スピネットに華麗なパス。あぁ!しかし!!スリザリンのキャプテンであるマーカス・フリントがクアッフルを奪った!!』

 

 リーの実況通り、フリントがゴール目掛けてクアッフルを投げるが、これはグリフィンドールのキャプテンであるフリントが上手くカバー。

 

 クアッフルは再びグリフィンドールのケイティ・ベルに渡る。

 

『さぁ、クアッフルを奪い返し、素晴らしいカウンターの急降下!ここから反撃開始──と思われたがこれは痛い!ブラッジャーがベル選手の後頭部を直撃した!』

 

 ブラッジャーが頭に直撃し、私は思わず息を吞んでベルを目で追う。

 

 ブラッジャーはスタジアムを不規則な動きで飛び回るソフトボールほどの大きさの鉄球であり、標的を見つけては軌道を変え、選手に襲い掛かるいわば邪魔者。

 

 急な方向展開は出来ない為、避けようと思えば避けきれるのだが、今回の様に意識の外側から突如選手を襲ってくる事は何ら珍しくない。

 

 幸い、クアッフルは奪われたものの、意識はどうにか奪われていなかったようで、ベルは冷静に箒を操って見事落下を回避。

 

 奪われたクアッフルを奪い返そうと、空高く上昇していき、焦りながら目で追っていた私は思わず変な息を口から出す。

 

「はぁ、よかった。意識が飛んでなくて。……それにしても、何でよりにもよってお邪魔キャラがよりにもよって鉄球?あんなものに人を襲わせるなんて……最悪死人が出てもおかしくないですよ」

 

「そりゃあ、痛くなかったら誰も避けないからじゃない?それに何度も人を襲わせるなんて事してるんだ。普通の玉じゃ簡単に壊れるに決まってる」

 

「そこは何とか……魔法でどうにかしてくださいよ。あんなの大砲と変わりないですからね?毎度毎度……何で魔法族はこう………安全意識というか……危険意識をド底辺で固定しているんだが………」

 

 私がロンの言葉に思わず溜息を付いていると、いつの間にかグリフィンドールが点を決めていたらしく、観客席からドッと、声援が湧き出す。

 

「ちょっとすまんな。ちょいと詰めてくれ」

 

 前に聞いた声がすると思うと何処からか、ハグリッドが私の後ろに現れた。

 

 手に持っていた応援旗をネビルに預け、ロンとハーマイオニーとギュッと詰めて、ハグリットが座れるよう広く場所を空ける。

 

「小屋から見ておったんだが……やっぱり、観客席で見るのはまた違うんでな。それで、スニッチは現れたか?」

 

「まだだよ。今のところハリーにやる事はないよ」

 

 ロンはそう言って、ハリーを指をさした。

 

 ハグリットは双眼鏡を覗き、ロンの指差した方向を見る。

 

「スニッチが目に入るまでは、他かの奴等から離れた方がええ。後でどうしたって攻撃されるし、下手に今突っ込んで体力を減らすよりかは遥かにいい」

 

「ウッドが試合前にハリーと何か話してたけど、それがこの作戦って訳ね」

 

「あの、ところであの金色の玉。もしかして、あれ、スニッチじゃないですか?ほら、スリザリンのゴール近く!今フリント達がいるところ!!」

 

 私が指を指して3人に教えるが、3人が見つける前にスニッチは金色の残像と共に消滅。

 

 もう一度探してみるが見つからず、私は完全にスニッチを見失ってしまう。

 

「お前さん凄いな。双眼鏡なしにスニッチに見つけるなんて。あんなちっちゃいもん簡単に見つけるなんて、とても人間業とは思えねぇ」

 

「(ヤ、ヤバい!よくよく考えずとも、吸血鬼以外に見けられる訳がない!!)え、えっと……偶々……というか…………」

 

「ハグリッド。きっとセラスは身体強化の魔法を使ったんだ。セラスは、みんなには秘密にして、って言ったけど、みんな自慢できるぐらい凄くてさ。こないだなんか、セラス怪我してたのに大砲を振り回してたんだよ?」

 

「なるほどな。HELLSINGには昔から色んな魔法が伝わっちょると知ってはいたが、これがそうなのか。身体強化魔法なんて聞いた事はないが、何せワイヤー1本で闇の魔法使い10人を倒したっちゅう奴もいるぐらいだ。そんぐらいの魔法ぐらい、伝わってたっておかしくねぇ」

 

(いーや、それは魔法じゃなくてその人が色々とぶっ飛んでるだけです。というか、今の話の人……もしかしなくてもウォルターさんの……事ですよね?)

 

「ねぇ3人共!ハリーもスニッチを見つけたわ!」

 

 ロンとハグリットを上手く反らす様なタイミングでハリーがスニッチを見つけたらしく、ハリーはスニッチを追おうと箒を旋回させていた。

 

 しかし、そのハリーが箒を加速させようとしたその瞬間、ハリーの箒が突如大きく横に振れる。

 

「一体何をしとるんだ?殆ど箒のコントロールを失っちまっとる」

 

「ハリーじゃなきゃ、ただコントロールをミスっただけだと思うけどな。練習を時々見てた限り、ハリーがあんな動きするわけないよ」

 

 ハグリットとロンがそう呟き、私は明らかな箒の不自然な動きに疑問を持った。

 

 何せ、ただコントロールを失ったにしては動きが激しすぎるし、その動きはまるでハリーを振り落とそうとしているようにも見えるからだ。

 

「まさか、スリザリンの奴等が妨害でもしてるのかな?それで、あんな、ハリーの箒が暴れ出して───」

 

「そんなわけないでしょロン!ドラコ達がハリーを殺そうだなんて事……考えるわけないじゃないですか!!」

 

「わ、わかってるよ、ごめん。つい、気が動転して………」

 

「セラスの言う通りだ。ハリーが乗ってる箒はニンバス2000。強力な保護魔法が掛かっとる。チビ共が寄って掛かったって、手出しが出来る訳ない」

 

 そう震えながら発せられたハグリットの言葉でピンッときたのか、ハーマイオニーはハグリットから双眼鏡をひったくった。

 

 そしてハリーの方ではなく、突如観客席を狂ったように見渡す。

 

「何してるんだハーマイオニー?一体どうしたんだよ?」

 

 ロンは真っ青な顔でハーマイオニーにそう尋ねた。

 

 私も何が一体と思いそちらを覗いてみると、ありえていいはずがない光景に、思わず目を引ん剝く。

 

「嘘、そんな、ありえない。何で、こんな事……」

 

「セラスまで一体どうしたんだよ?何が一体どうなっているんだ?」

 

「スネイプよ………見てごらんなさい。何か……ハリーに呪文を掛けてる」

 

 ロンがギョッとなって双眼鏡をもぎ取り見た先には、何やら絶え間なくブツブツ呟くスネイプ先生の姿あり、その視線の先には紛れもない、ハリーの姿が確かに映っていた。

 

 一般生徒ならともかく、大人、それも皆に魔法を教える教師レベルの魔法使いとなれば箒に掛かっている保護魔法を破る事など容易であろうし、杖を使わず、口頭の詠唱のみで魔法を発動させる事だって勿論可能だ。

 

 その上、スネイプ先生はいつもハリーを目の敵にしており、その様子からは一種の殺意すら時折感じる。

 

 現状証拠だけで見ると、スネイプ先生がハリーに呪いを掛けた犯人なのは確定的だ。

 

「何てこった。先生が呪いを掛けてるなんて!そりゃあ、いくらニンバス2000だって狂うはずさ!」

 

「現状証拠だけで言ったら、ほぼ犯人で間違いありません。何が目的かはわかりませんが、少なくともハリーに何かしらの呪文を掛けているのは事実です」

  

「とにかく、早くスネイプを止めなきゃ。けど、止めるたって、一体どうしたら……」

 

「私に考えがあるわ、任せて。2人はこれ以上スネイプが変な事をしないかを見張ってて」

 

 ロンが動揺を隠せず震えている間に、ハーマイオニーはそう言い残し姿を消した。

 

 追いかけたい気も一瞬起きもするが、これ以上人手を割いたって仕方ないし、何よりスネイプ先生が更に強力な呪文を唱える可能性がある。

 

 ハーマイオニーが間に合えばいいが万が一ということもあるし、仮に先生をここで止めることができるのはこの私だけ。

 

 そう思い直すと、私は杖を取って呪文を唱える体制だけ取ると、スネイプ先生とその周辺を徹底的に監視。

 

 最悪、退学覚悟で武装解除呪文を放つ覚悟をする。

 

(……んっ?クィレル先生も、ハリーをジッと見つめて何かを唱えてる?これは一体全体どういう事?まさか、クィレル先生も、ハリーに何かしているっていうんですか?)

 

 決心を固めて監視をしている最中、視界の端にいたクィレル先生もまた何かをしているのを私は発見した。

 

 席が離れている様子からして、スネイプ先生とクィレル先生が協力関係という線は薄いであろうし、2人掛りの呪文にしては、箒に対しての効果が小さすぎる。

 

 と、なると、どちらが真の犯人で、どちらかがハリーを守ろうと奮闘しているという可能性も無きにしも非ずにもなってくるのだが………。

 

 ……流石にこの距離ではどちらが何の魔法を使っているなどと判別なんて出来る訳もないし、どちららも動きが怪し過ぎて両方犯人とも思えてしまう以上、どうやっても一概には判断がつかない。

 

 そんな私が混乱し、隣のロンは必死に祈っていたその最中、もう一つの事件は、突如として観客席で起こる。

 

「か、火事だ!燃えている!燃えているぞ!何処からこんな炎出て来たんだ!?」

 

「早く消して!消して!消して!!このままだと観客席全体に燃え広がってしまいます!!」

 

 なんとハーマイオニーがスネイプ先生のマントに火をつけ、観客席全体を混乱の渦に叩き込んだのだ。

 

 マントが燃えている事に気づいたスネイプ先生は、マントを足で何度も踏みつけ、クィレル先生は騒ぎの波に飲まれて転倒。

 

 どちらが犯人だかわからずじまいになってしまったものの、どうにか両者の魔法を止めることに成功し、ハリーはようやく箒のコントロールを取り戻す。

 

『ハリー・ポッターがスニッチをキャッチ!グリフィンドール170点対60点得点で試合終了!!グリフィンドールの勝利です!!』

 

 直様スニッチ目掛けて急降下し、口で飲み込む形での確保であったものの、スニッチをその手の中にキャッチ。

 

 スタジアムが爆発したと錯覚するほどの歓声が、あったり一体に沸き起こる。

 

 リーによる実況がスタジアムに響き渡り、グリフィンドールの勝利をスタジアム全体に知らしめた。

 

 

 

 

 

 

 

  

 

          ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スネイプだったんだよ。僕もハーマイオニーもセラスもみんな見たんだ。ずっと君から目を離さずに、ブツブツ君の箒に呪いを掛けてた」

 

 そうロンは熱心に状況を説明し、ハリーはその説明に耳を傾けながら、ハグリットに入れてもらった濃い紅茶を啜る。

 

 ハリーも含め全員1度情報を整理したかった為、私達は他の人の誘いを断り、試合後の騒ぎから避難。

 

 お茶会の意味と内緒話の意味を兼ね、ハグリットの小屋に入れてもらっていた。

 

「馬鹿な。なんでスネイプがそんな事をする必要がある?奴はホグワーツの教師だぞ」

 

 ハグリットはそう呆れ、私達の考えを否定した。

 

 何と驚いたことに、ハグリットは自分のすぐ近くにいた私達の状況を全く把握していなかったらしく、試合中一言も話を聞いていなかったらしい。

 

「僕、スネイプについて知ってる事があるんだ。あいつ、ハロウィーンの日、きっと四階廊下の三頭犬に足を噛まれたんだ。何を企んでいるのかわからないけど、僕等、スネイプがあの犬が守っている者を取ろうとしてるんじゃないかって思っているんだ」

 

 そうハリーが告発した直後、ハグリットは分かりやすく動揺したのか、手に持っていたティーポットを床に落とした。

 

「何で、お前さん等がフラッフィーの事を知ってるんだ?まさか、全員あの廊下に立ち入ったのか?」

 

「フラッフィー?それが、あの三頭犬の名前ですか」

 

「そうだ、あいつの名だ。去年、パブで会ったギリシャ人の奴から買ったんだ。俺がダンブルドアに貸した、守るため──」

 

「何を?」

 

 ハリーはその先を聞こうと身を乗り出し、私はこれ以上深入りしては面倒事になると、直感で察する。

 

「もう、これ以上聞かんでくれ。重大秘密なんだ、これは」

 

「ハリー。ダンブルドアが関わっているというなら、私達がこれ以上関わるべきじゃありません。そろそろ、寮に帰らないといけない時間ですし、本日はこれで───」

 

「だけど、スネイプが盗もうとしたかもなんだよ?クィレルも僕を狙ってるかもしれないって、君もそう言ったんじゃないか」

 

「それは、そうですが………それとこれとは話が別です。何より……本当にどちらかが前と今回の事件の犯人だったとしてしても……未成年の私達なんかじゃ……成人の魔法使いを捕まえるなんて事……出来る訳がないですし………」

 

「そうかもしれしれないけど───」

 

「ちょっと待て!今の聞き捨てならんぞ!お前さん達は間違っとる!俺が断言する!」

 

 私が2人を犯人扱いしたのが気に食わなかったのか、ハグリットはそう言って立ち上がる。

 

「俺はハリーの箒が何であんな動きをしたのかはわからん。だが、スネイプもクィレルも、生徒を殺したりは決してせん。4人ともよく聞け。お前さん達は関係の無い事に首を突っ込んどる。あの犬の事も、犬が守っている物の事も忘れるんだ。あれはダンブルドア先生とニコラス・フラメルの───」

 

「ハグリット!!」

 

 私が強い口調で止めるがもう遅く、ハリーは一番聞き逃して欲しい事を聞き逃さなかった。

 

「ニコラス・フラメル!ニコラス・フラメルって人が、関係してるんだね?」

 

 ハグリットは口が滑った自分自身に強烈に腹を立て、私はハリー達が自ら面倒事に関わろうと事に思わず大きな溜息をつき、これから訪れる危険に対し、頭を大きく抱える羽目となった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

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