ハリー・ポッターと王立国教騎士団   作:熊田ラナムカ27

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 先日、友人と元としまえんのハリポタツアーに行ってきました。
 
 どうも、熊です。
 
 なお、ぬいぐるみと杖は購入したものの、ローブは合うサイズが売り切れてた為、購入できなかった模様。
   
 午後に行ったとはいえ……まさかローブが買えないとは……。
 
 次は必ずリベンジしてやる……!!(固い決意)
 
 
 


16 Can't turn back later

 

 

 

 禁じられた森での出来事から数日。

 

 犯人が身近にいると分かったが故に、妨害を恐れてHELLSINGへの手紙も出したくても出すことが出来ず、いつ犯人が私達を襲いに来るのだろうと、私はここしばらくまともに眠ることが出来ないでいた。

 

 しかし、そんな心配をしている間にも、上位10位以内に入らなくてはならないという目標を背負った期末試験は目の前までやって来る。

 

 実技試験の方は何ら心配はなかったのだが……やはり、筆記試験。

 

 中でも魔法史は内容を中々覚えられない私にとって、ここ数日の睡眠不足による物忘れは致命的。

 

 私の緊張をピークな状態にまでに引き上げ、最悪のコンディションのままテスト当日を迎えた。

 

「終わった……。どうにか……無事に……テストが終わった………。色々とポカでかなり……焦る事になりましたが……どうにか……無事に……生き残った………」

 

「あら、そんなに難しかったかしら?あの問題?一六三七年の狼人間の行動考慮の問題もなかったし、熱血漢エルリックの反乱も全く出てこなかったから、随分簡単に思えたけど」

 

「ハーマイオニー……それは……勉強が出来る人が言うセリフで……私みたく出来ない側の人が言うセリフじゃないんです………。色々とくるものがあるので……これ以上何も言わないで下さい………」

 

「えっと……その、なんか……ごめん」

 

 案の定、変身術や魔法薬学を初めとした実技試験はほぼ全て満点(理論面の理解度が低いとして、変身術は減点された)だったので良かったのだが、問題はやはり残る筆記試験。

 

 天文学では相も変わらずつまらない星の並びを頭の奥底から引っ張り出さなけらば行けなかったし、薬草学では細かすぎる植物の別名に頭を悩ませるばかり。

 

 それでも、数日の勉強の甲斐あって、どうにか問題を空白なく解き切り、平均より少し上の点数を取れただろうと思える戦果を上げた。

 

 だが………最後まで私の前に立ち塞がり、行く手を阻もうとするのは………やはり、魔法史。

 

 1時間の回答時間を設けられた試験で、その気になる内容はというと「鍋が勝手に中身をかき混ぜる大鍋」を発明した風変わりな老魔法達についてなどという、本当に誰ですか!?と、絶望的な表情でツッコミたくなる程、本当に訳が分からない内容だったのだから。

 

(……まぁ、万が一の緊急策として張り巡らせていた、ドラコへのおど━━━交渉が上手くいってたので助かりましたが……この事はハーマイオニーには言わず、墓まで持って行った方が良さそうですね。………まぁ、私は墓もとい、棺には毎日入っているんですけど)

 

 交渉の詳しい内容については省くが、大まかに言うとこれまでドラコがやらかした事(主に森で先日大泣きしたことなど)を大々的に発表するのをやめる代わりに、代々スリザリン生の間でも極秘裏に伝わっているという魔法史の過去問の写しを、私以外の生徒には流出させないという条件付きで、譲渡してもらうことに成功したのだ。

 

 ……尤も、他の生徒への流出を防ぐ為、結局その譲渡のタイミングがテスト1時間前と、暗記するには短過ぎる時間だったり、全て暗記するには時間が足りないが故、写しの後半部分を暗記する事を諦める羽目になったり、交渉最中、ドラコが突如HELLSINGの箒事情に興味を持ち始めた結果、譲渡の条件として、魔法界では流通していないHELLSING独自開発の箒メンテナンスグッズを後日渡す事を付け加わえたりと、本当に色々あったのだが………閑話休題。

 

 これ以上、この話題をする事はハーマイオニーにこの事が露見する可能性を誘発し、ズルいとか、反則やら、先生に言いつけるやら、断罪と正論の刃で糾弾されるリスクを増やしかねない為………これぐらいのものとする。

 

「ハリー、もっと嬉しそうな顔しろよ。試験でどんなにしくじったって、結果が出るまで1週間もあるんだ。今からあれこれ考えたってしょうがないだろ」

 

 テストが終わってからの帰り道、どうも暗い表情をしていたハリーを見かね、ロンはそう言った。

 

「ここ数日、アイツと森であってから傷がずっと疼くんだ。……今までも時々こういう事はあったけど、こんなに続くのは初めてだ」

 

「森で変な病気でも貰ったんですよ、きっと。さもなくば新手の持病です」

 

「そんなに痛いんだったら、マダム・ポンフリーのところに行って来たら?」

 

「これは病気なんかじゃない。きっと警告なんだ……。………何か、危険が迫っている証拠なんだ」

 

 森の時同様痛むハリーの頭に、私は一筋の不安を覚える。

 

 ただでさえ、ほぼ確定した犯人像が最悪だというのに、これ以上の最悪な事態があって良い筈ないのだ。

 

 そうでなければ困る。

 

 しかし、そんな私の思いとは裏腹、ハリーは少し考えだしたかと思うと突如ハッと雷に打たれたかのように目を見開き、顔色がみるみるうちに蒼白なものとなっていった。

 

 顔色の反面、目は異常なまでに強い光を放っており、その姿はまるで予言者の様な気配さえ醸し出している。

 

「そうか、そうだよ!話が上手すぎる!」

 

「どうしたの?そんな大声で、急にそんな事言いだして」

 

 ハーマイオニーがそう聞き返すが、ハリーは話も聞かず一目散に何処かへ駆けて行った。

 

 私達はあまりに突然の事に残された顔を見合わせつつも、大急ぎでハリーの後を追う。

  

「おかしいと思わないかい?ハグリットはドラゴンの卵が欲しくてたまらなかった。でも、いきなり見ず知らずの人間が、たまたまドラゴンの卵をポケットに入れて現れるかい?法律で禁止されているのに。ハグリットに偶々出会ったなんて、話が上手すぎるよ」

 

「………ッ!確かに、物が物ですっかり忘れてましたが、全く持ってその通りです。ドラゴンの卵(面倒事の権化)を持ち運びたがる魔法使い何て、早々にいない。ただでさえ、法律で禁止されている上に、偶発的に孵化でもしたら本当に手の打ちようがないんですから」

 

「えっと、セラス?ハリーは結局、一体何が言いたいんだい?」

 

 ロンがそう尋ねてくるが、ハリーが予見した更なる最悪の可能性を前に、答る余裕は一切なかった。

 

 校庭を横切ってハグリットの家に行くと、当の本人は呑気にお茶をしており、肘掛椅子に腰を掛けて豆のさやをむいていた。

 

「よう、お前さん等。試験は終わったのかい?お茶でも飲むか?」

 

「すいませんが、ハグリット、今は、そんな暇はないんです。今直ぐあなたに、聞かなきゃいけない事が、あるんです」

 

 全力で走って来た為か、何度も切れる呼吸を整えつつ、私はそう言った。

 

「ねぇハグリット?ノーバートを掛けで手に入れた夜の事、まだ覚えてる?トランプをした相手って、どんな人だった?」

 

「わからんよ。顔は見とらん。何よりやっこさん、マント着たままだったしな」

 

 ハグリットのこともなげな発言に、私達は思わず絶句した。

 

 前に話した森での人物の特徴を思い出したのだろう。

 

 ハーマイオニーとロンに至っては私とハリー同様、顔色が真っ青になっている。

 

「そんなに珍しいこっちゃない。『ホッグズ・ヘッド』、村のパブなんだが、そこにはおかしな奴がウロウロしてる。もしかしたらドラゴンの売人だったかもしれん。脛に傷がある奴が集まる場所だ。フードを被ったまんまなんか珍しくもない」

 

「ハグリット、その人とどんな話をしたの?ホグワーツの事、何か話した?」

 

「話したかもしれん」

 

 ハグリットはそう顔をしかめてそう言うが、それ以上に顔をしかめているのは私だろう。

 

 何せ、情報漏洩という物を守るに当たって一番犯してはならない事を、何気もなしにこの男は犯しているのだ。

 

 ハグリットが純粋な善人なのは間違いないが、それはそれとして、この男を組織の枠組みに組み込むというのはナンセンスだと言わざるを得ない。

  

「わしが何をしているかって聞いてきたんで、森番をしてるって言ったな。そしたらどんな動物を飼ってるかって聞いてきたんで、それに答えて、その後ドラゴンが欲しいって言った。それからは……あまり覚えとらん。何せ、次々に酒を奢ってくれるもんで……それからは、確か、賭けをしたんだ。ドラゴンの卵を賭けてもいいが、ちゃんと飼えなきゃ駄目って言うんで、フラッフィーと比べりゃ、ドラゴンなんぞ楽なもんだって………」

 

「へー、それで色々話しちゃったんですか?色々と。もしや、フラッフィーの宥め方とか話しちゃったりします?」

 

「おっ、良く分かったな。フラッフィーもとい、三頭犬の奴等は宥め方を知ってりゃお茶の子さいさいよ。ちょいと音楽を聞かせてやれば直ぐにねんねしちまうって───」

 

 そこまで内容を話すと、ハグリットは突然口を閉ざす。

 

「しまった!お前さん達には話しちゃいけなかったんだ!」

 

 ハグリットがそう慌てて言うや否や、ハリー達は玄関ホールに駆け出していく。

 

「………ハグリット。仮にもあなたが大人足りえる人間ならば……せめて、物事の良し悪しぐらい、汲み取れる人間になって下さい」

 

 そう言い残してハリー達を追っていく私の顔は、しかめている表情を超え、最早一切の感情が宿っていなかっただろう。

 

 私の表情に呆然とするハグリットを捨て置き、私は玄関ホールにいる息も絶え絶えなハリー達に追い掛けた。

 

 大した距離がなかった為直ぐに追いつくも、互いに息が整うまで話す気になれず、校庭の明るさと比べホールはどこまでも冷たく、陰険に感じられた。

 

「ダンブルドアのところに行かなきゃ。ハグリットが怪しい奴に、フラッフィーをどうやって手なずけるか教えてしまった。マントの人物は、スネイプかヴォルデモートだったんだ…………」

 

「………いいえ、違います。犯人は例のあの人か別の人物です。あのマントの人物の正体がどちらだったかまでは、流石にわかりませんが」

 

「まだそれを言うのか!明らかに犯人はスネイプで間違いないだろう!」

 

「ハリー止めて!犯人がどっちだって関係ないわ!今は早くダンブルドアを探さなくっちゃ。私達の言う事を信じてくれるか分からないけど………ハグリットの事を伝えないと、大変なことになるのは間違いないもの。……校長室は、一体何処にあるのかしら?」

 

 ハリーとまたも犯人についてで口論になりそうだったが、私同様ハリーも今やらなくてはいけない事は理解しているらしく、校長室をキョロキョロ探した。

 

 何処かに校長室までの矢印でも張ってあればいいのにと思うが、そんなもの存在しないし、そもそも動く階段何てものを使っているせいで、城の全体像すら未だ掴めていない。

 

 せめて地図の様な物さえあればいいのにと思うが………時間がないこの状況において、それはないものねだりと言う他ないだろう。

 

「あら、そこの4人。そんなところで一体何をしているのです?」

 

 こうなれば城中のドアを開けて回ろうと画策していた矢先、山のような本を抱え、マクゴナガル先生がこちらにやって来た。

 

「先生。ちょっと、いや、かなり急ぎの要件なんです」

 

「ダンブルドア先生に、お目にかかりたいんです」

 

 いつもならば説教かと頭を抱えるところだが、今日という日ばかりは渡りに船とばかりに、私とハーマイオニーはそう詰め寄る。

 

「ダンブルドア先生にお目にかかる?それも急ぎの要件?……一応聞きますが、その理由は?」

 

 しかし、事情を全く知らないマクゴナガル先生にとって、私達が詰め寄った事はむしろ不信感を煽るだけだった。

 

 ハーマイオニーは先のドラゴン事件の減点の事もあるし、私に至っては数知れない程の前科があるというのだから、無理もない。

 

「……ちょっと、秘密なんです。ダンブルドア先生にしか、話せない内容で」

 

 私達をフォローするようにハリーは誤魔化すが、それは完全に逆効果。

 

 誤魔化しや嘘の類はマクゴナガル先生にとって一番の嫌いな事柄であり、心なしか先生の顔が少し無表情になった気がした。

 

「ダンブルドア先生は十分前にお出かけになりました。魔法省からの緊急の梟便で、直様ロンドンに」

 

「ロンドンに?この肝心な時に?」

 

 ロンは思わず呆れた様子でそう聞き返すが、別段おかしなことじゃない。

 

 何せ相手は師匠(マスター)と名を連ねるほどの魔法使いなのだから、生徒だけの相手をする訳にいかないのだろう。

 

「でも、重要な事なんです!………『賢者の石』の、事なんです!!」

 

 しかし、そんな事知らないとばかりにハリーはそう言い放ち、今まで無表情だったマクゴナガル先生の表情は、みるみるうちに驚きと疑いが混じったものになった。

 

「……先生。ハリーの言った事に、一切の嘘偽りはありません。HELLSING局員として、これだけは保証します。………この学校内に石を狙う裏切り者と………例のあの人が、もしかしたら、いるかもしれないんです」

 

 最後の方は息も絶え絶えでそう畳み掛け、マクゴナガル先生の手からはバラバラと本が転げ落ちた。

 

 ………例のあの人の事まで言い出したのはかなり踏み込み過ぎている気もするが、事が傍観する暇もないほど進んでしまった以上、手段を選ぶ事など出来ない。

 

 ハリー達を危険に立ち踏み入りさせない為には、早急にクィレルを捕縛して、奴の居場所を吐かせるしかないのだから。

 

 私達と先生の間に、冷たい沈黙が降りる。

 

「………ッ、何故、あなた方がその事を知ったのかはわかりませんが、安心なさい。盤石の守りですから誰も盗む事など出来ませんし、裏切りなど、あり得る訳がありません」

 

 自分自身にそう言い聞かせるように、マクゴナガル先生は沈黙を打ち破る。

 

 しかし、その声はついさっきと打って変わって弱弱しく、自分でも自身の言う事に確信が持てていないようだった。

 

「ダンブルドア先生は、明日お帰りになります。それと、職務に熱心なのは良い事ですが、ヴィクトリア。例のあの人がここにいるかもなどと………考え過ぎにも程があります。今日は今暫く、休息を取った方がいいかと」

 

「……先生、私に休息なんていりません。どうか、話を………」

 

「ヴィクトリア。二度同じ事は言いません」

 

 先生はこれで話は終わりだと言わんばかりに、きっぱりと言う。

 

「4人共、外に行きなさい。今日はせっかくの良い天気ですよ」

 

 先生はそう言うと落ちた本を直様拾って行ってしまい、追いかける暇もなく私達はホールに取り残された。

 

「今夜だ。スネイプが仕掛け扉を破るとしたら、今夜だ。必要な事は全部わかったし、ダンブルドアも追い払った。スネイプが、きっと手紙を送ったんだ。ダンブルドア先生が魔法省に顔を出したら、魔法省の人達はキョトンするに違いない」

 

 嫌に確信めいた表情で、ハリーは手から血が出んばかりに拳を握る。

  

 ………相も変わらずスネイプを犯人だと断定する部分は引っ掛かるものの、明らかにタイミングが良すぎる状況から見て、今日中にケリを着けに来るというのは、ほぼ間違いないだろう。

 

 しかし、そんな最中、ハーマイオニーが私の後ろを見たと思うと、突如として息を呑む。

 

「やぁ、こんにちはグリフィンドールの諸君。こんな天気のいい日に、一体何を企んでいるのかね?」

   

 ハーマイオニー以外の3人が振り返ると、そこにはスネイプが立っており、いつもの機嫌が悪そうな表情でこちらを見つめていた。 

 

「私達、ただ話してだけです。別に何も企んでなんかいません」

 

「おお、そうか。ならば、もっと場所を考えるべきだったな。こんな風にウロウロしている所を人が見たら、何か企んでいると思われても仕方がない。グリフィンドールとしては、これ以上減点される余裕はない筈だろう?」

 

 嫌味ったらしい言動に、ハリーは顔を赤らめた。

 

 犯人だと思う人物とこれ以上話したくないのであろう。

 

 何も言わず、一目散に立ち去ろうとする。

 

「……実は、私……色々と企み事があるんです。いえ。勿論、罰則されるような事じゃ、ありませんよ?正確に言うのであれば……クィレル先生に、相談したい事がある、という事なんですが」

 

 しかし、他の3人の行動とは一転。

 

 私は敢えて、自らスネイプ先生に話し掛けに行った。

 

 あまりにも信じられない行動に、ハリーは裏切り者を見るかのような視線で私を見つめ、ロンは信じられないと驚愕の表情。

 

 ハーマイオニーに関しては目を見開き、真っ青どころか手を震わせて、こちらを見つめている。

 

「………ほう?クィレルに相談とは、些か相談する相手は考えるべきだと思うぞ、ヴィクトリア。あの男に関わったとなれば、君もただでは済みまい」

 

「セラス。何してるんだ?早く、こっちに」

 

「ただで済むとは思ってません。ですが、急ぎの要なんです。私と先生、2人きりでお話をして、一角獣(ユニコーン)とか、トロールの事とか色々と、質問しなきゃいけない事が、沢山ありますから」

 

「セラス!!」

 

 ロンが焦った様に小声で話し掛け、ハリーが叫びたいのを我慢して話し掛けるが、気にする暇はない。

 

 ………これは、言ってしまえば一種の賭けだ。

 

 私の推理の通り、スネイプ先生が犯人じゃないというのならば、僅かではあるものの、協力してもらう可能性が出来る。

 

 だが、その一方、ハリーの推理の通りスネイプが犯人だというのならば、私は夜を待たずして、今この場で消される事となる。

 

 ある程度の確証はあり、分の悪い賭けというわけではないが、後者の可能性も十分に捨て切れない為、心の奥底には一筋の不安が未だにある。

 

 だが、ここでやらなければまともに動く事など出来ないし、ある1つの証明も、果てせず終いになってしまう。

 

 緊張と不安の冷たい汗が首元から滴り垂れ、心臓がバクバクと激しく鼓動する。

 

「クィレルならば、この城にはもういない。吾輩も探しているのだがね。今朝から一向に何処にも姿を見せない」

 

 いつもの嫌味ったらしい口調ではあるものの、敵意は感じられず、それどころか少し焦った様子で、スネイプ先生は言葉を紡いだ。

 

「君が仮にもあのアーカードと共にいる人物足りえるのならば、もっとやるべき事があるのではないのかね?例え君が幾ら蛮族だと言えど、自らの責務ぐらいは理解していると思ったのだが」

 

 先生がそう言った次の瞬間、点と点が結び付く音が頭に響き、暗い闇の中に一点の光明が見えた気がした。

 

 ……だが、その光明は私が頭の奥底にしまい込んで、見ないようにしていたものそのものであり、それを行うという事は、ここを立ち去る覚悟をしなければならないという事。

 

 賭けに勝利し、一応の助力、クィレルの情報を手に入れる事こそ成功したものの、未だできてなかった覚悟の重みが心臓を鷲掴みし、つい先程とは違う別種の冷たい汗がどろりと、私の頬から滴り落ちる。

 

「セラス、行こう。こんな奴の相手、これ以上することはない」

 

 何より自分が我慢できないとばかりに、ハリーは強引に腕を掴み、私を外に連れ出そうとした。

 

「ポッター、警告する。これ以上夜中にうろついているのを見たら、吾輩自ら退校処分にする。君があの有名なハリー・ポッターだというならならば、そこの蛮族同様、最善の選択をするべきだと思うがね」

 

 スネイプ先生はそれだけ言うと大股で職員室の方に歩いて行き、苦虫を100匹は嚙み潰した表情で、入り口の階段のところに私は連れ出されて行く。

 

「何であんな真似をしたんだい?スネイプが犯人だって、僕は散々君に言ってるじゃないか!」

 

「そうだよ!いくら何でもあれは無謀過ぎる!いつ君があの場で殺されてたって、あの状況じゃおかしくなかったんだぞ!」

 

 ハリーはそれはもうカンカンになって私を問い詰め、ロンはそれに同意する様に私を追求する。

 

 スネイプが犯人だと確信している彼等にとって、わざわざ犯人を自ら煽りに行く様は、傍から見て死にに行っているようなものだったのだろう。

 

 だが、2人の意見など、私は意にも介さない。

 

「いいえ。スネイプ先生は絶対にそんな事しません。少なくともこの状況で、私を殺している暇などありません。何せ犯人であるクィレル先生が姿をくらまし、何処かにを身を潜めているのですから、今はその捜索に大忙しのはず」

 

「何が捜索だ!あいつの話は聞いただろう?クィレルはこの城にはもういないって。あの様子じゃクィレルは……もう既に、ヴォルデモートに殺されてしまったに違いない……!!事を上手く運ぶのに邪魔だから……スネイプと協力して………こっそりと殺したに決まっている!!」

 

「何の利点があってそんな手段を使うんですか?まどろっこしい。そんなに邪魔だと言うなら何処にでも閉じ込めておけばいいでしょう?殺しなんてすれば、他の人の目を引くだけです」

 

「だからこの瞬間、スネイプは城を動き回ろうとしてるんだよ!ヴォルデモートを招き入れるチャンスを狙って、僕達の目から逃げようとしているんだ!!」

 

「ただ逃れたいのならもっと良い方法が幾らでもあります。何より、堂々と城を動き回っているスネイプ先生より、石を強奪する手段が整ったこのタイミングで、突如として行方不明のクィレルの方が怪しいと思いますが」

 

「ああ言えばこう言って……このわからず屋!何でこんなに言っているのに、どうしてスネイプを信じようと思えるんだい!?………君はもう、どうかしている!!」

 

 互いに互いの説得を試みるが、互いに事の確信に至ったと考えるが故に、お互い一歩も妥協も譲り合いも見せない。

 

 今の今まで意見がことごとく食い違って来た背景から見て、こうなる事は必然だったのだろう。

 

「これから僕は職員室の外で待ち伏せして、スネイプが出てきたらその痕をつける。………スネイプをそんなに信じたきゃ、君だけ勝手に信じて、そこでずっとジッとしてればいい」

 

 私の説得を諦め、どこか裏切られたような、罵詈雑言を我慢するような表情で吐き捨てるようにそう言うと、ハリーは職員室の方に向かって、大股で歩いて行った。

 

「………セラスには悪いけど、僕もハリーを追う事にするよ。別の誰かが犯人って考えるより、スネイプが犯人だって方が、よっぽど考えやすいし」

 

 ロンは何処か申し訳なそうにそう言うと、少し駆け足気味で、ハリーの事を追いかけて行く。

 

 ダンブルドアがここにいた為に中立ではあったものの、基本ロンはハリーの意見に賛同していた。

 

 ダンブルドアという絶対的な守りがなくなった今、彼がハリー側に付くのもまた、それも必然だったのだろう。

 

「………ハーマイオニー。あなたは、これからどうするんです?あなたがハリー達同様スネイプ先生を追いかけるというのであれば………別に、私は、止めやしないですけど」

 

 いつの間にか異様なまでに静まり返った入り口で、私はずっと黙っていたハーマイオニーにそう問いかけた。

 

 ………今の今までの事を思い返すと、ハーマイオニーはこの事件が始まってからどちらについたかの様な発言を一切見せず、ずっと私とハリーを仲裁するかのように立ち回っていた。

 

 まるで、両者を信じつつも、両者を信じ切れない様子で、その行動は全て曖昧。

 

 自身の意見など、殆ど見せた試しはなかった。

 

「………セラスが言ってる事、私は、全然間違ってないと思うわ。ハリーとロンは分かってなかったみたいだけど………あの時、セラスがスネイプ先生に話し掛けに行ったのは、今回の犯人がスネイプ先生じゃないって事を、ちゃんとみんな前で、証明したかったからなんでしょ?」

  

 ゆっくりと少しずつ紡がれる言葉に、そっと、私は首を縦に振る。

 

 誰も察してくれなかったと無駄になったかに思えた証明だったのだが、あの中でただ1人、ハーマイオニーだけはその事を察してくれてたのだ。

 

 ……なら、どうして。

 

「その事を察してくれたというなら………今までハッキリ言わなかった犯人の事も、分かったてことですよね?ならば何で!?………あの時、一緒にハリーを説得してくれなかったんです?ハリーがいくら頑固でも………ハーマイオニーと一緒なら、説得できたかもしれないのに…………!」

 

 所々で感情を露わにしつつ、ずっと、この会話が始まってから思っていた事を私は吐露した。

 

 ……この事件が始まってからずっと、私は他のみんなを抑える立場に回るばかりで、常に1人きりになるような感覚を覚えていた。

 

 他のみんなにそんな気はない事は百も承知だし、これがHELLSINGとしての役目だからと理解もしている。

 

 けれど……理解はいくらできても、いくら考えてみても………その立場に対しての、納得までは、何をしたって出来る訳がなかった。

 

 せめて、私が正しいと分かってくれたならば………1人になんて、しないでほしかった。

 

 どうしてという思いが、私の心をみるみるうちに埋め尽くしていく。

 

「………あのね。セラスに……ずっと、言えなかった事があるの。セラスがあの日……私達に言おうとした事を………。私………ずっと、気づいてたの」

 

 心を完全に思いが埋め尽くそうとしていると、ハーマイオニーのその言葉が、私の頭の中を一度真っ白にした。

 

「あの日、トロール事件に言おうと、してた………事。………気づいてたって……どうやって───」

 

「決定的にそうだと思ったのは、あの森の後の事よ。ハリーがスネイプが犯人だって言った瞬間、あなたはそれを、真っ先に否定してた。否定する材料がなかったはずなのに………何故か、迷わず否定してた」

 

「………そ、それは……相手の動きから、そう確信しただけで───」

 

「けど、そのあと、ちょっと考えてみて分かったの。あなたの正体がそうだというなら、”人では分からない事”も分かるっていう事………。もし仮に、犯人のマントに身近な人の”匂い”が付いてたとしたら………。あなたが本当に……吸血鬼(ノストラフェトゥ)だとしたら───」

 

 

 

 

ソム……ヌス(眠れ)…………ッ!!!」

 

 

 

 

 この学校に来てからバレずにいて欲しいと常に願い続け、この学校にいる限り守らなくてはならない最後の約束が破られたその時、私は鬼気にも迫る表情で睡眠魔法を放った。

 

 殆ど不意打ちに近い形で放たれ、低級の魔法生物のほぼ全てを眠らせる魔法に抗えるわけなく、糸が切れた人形かの様に、ハーマイオニーはその場で眠り込んでしまう。

 

「ハハッ……ハハハハハ………。………最低だ、私。散々試すような言い方をした挙句、一番言われたくない事を言われたら即口封じなんて………本当に、最低だ……!!」

 

 あまりにも情けなく、何処までも自己優先の行動に自己嫌悪しつつ、私は逃げるようにその場から立ち去った。

 

 犯人を捕まえる為の行動だ、ハーマイオニーを巻き込まない為だ、耳障りの言い言葉ばかりが脳裏をよぎるが、全て言い訳でしかない。

 

 あの時、してしまったあの問い詰めも、あの時、感情を露わにして吐露してしまった事だって、結局は全て嫉妬。

 

 私が、ハリー達と同じでない事に対しての八つ当たりで、私だけが吸血鬼だという事に対しての、憤りで他ならない。

 

 あの日から、ハーマイオニーは変わったというのに………あの日からずっと、私は………何も変わってなかった。変われていなかったのだ。

 

「ある意味……良かったのかもしれませんけどね?こんなにも簡単に、ここでの生活に、諦めがついて。犯人をどうしようが何だって……私がここを去らなければいけないという事は………何も、変わらないんですから」

 

 人間も吸血鬼も行くとこまで行くと笑いが止まらないらしく、こんなにもあっさり立ち去る覚悟………否。

 

 どうやったって立ち去るのだろうという諦めに、私は笑いを止められなかった。

 

 インテグラさんとの最後の約束まで破ってしまった以上、もう私がここにいる資格はない。

 

 事がどんな方向に落ち着こうと、正体がバレてしまったという事実は、何をしたって変えようもないのだから。

 

「………出来る事なら……せめて、ハリーと仲直りぐらい、したかったです。あと、ドラコにメンテナンスグッズ渡す約束………不義にしちゃう、事になりますね」

 

 今更どう言ったってどうしようもないのだけどと、思わず自嘲しつつ、私は寮に向かう階段を勢いよく駆け上がって行った。

 

 何があろうと、私がやるべき事は変わらない。

 

 友達を守るという事だけは、何があろうと果たしてみせる。

  

 ………けど、そのやるべき事をやったとて時は元に戻らないし、私が1人きりだという事実もまた変わるはずがない。

 

 やるべき事は決まったというのに、私の心は今までになく冷たく……何処か……空虚で………空っぽだった。

 

 

 

 

  





 
 
 オリジナル魔法解説
 
 
・ソムヌス
 
 
 杖を向けた対象の眠気を誘い、相手を半強制的に眠らせる魔法。
 
 一部の眠らないなどの特性を持った魔法生物を除き、危険度XXX以下のほぼ全ての魔法生物、及び人間を数時間眠らせる事が出来る。
 
 なお、高い精神力を持つ危険度XXXX以上の魔法生物、及び人間は意識を強く保つことで眠る事を避けることが可能であり、戦闘中この魔法が通用するケースはゼロに等しい。
 
 この魔法を遥かに上回る効果の魔法薬も存在する為、使いどころの見分けが重要である。
 
 
 
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