ハリー・ポッターと王立国教騎士団   作:熊田ラナムカ27

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 10years later………
  
 


賢者の石編
2 The little vampire


  

 

 王立国教騎士団、HELLSING本部、地下室。

 

 光が届かない地下室の一室で、私は『棺桶』に入り、深い眠りについていた。

 

 今日は何か大事な日だった様な……大事な事が起きる日だったような気がするが…………疲労による睡魔と、中に敷き詰められている毛布の温もりに勝てるはずもなく、目を開けるなんてことできるはずもない。

 

 思い浮かんだ考えを頭の奥底にしまい込み、私は眠りを続ける。

  

『起きろセラス!起きろセラス!今日はお前の誕生日だから早く起きるよう伝えたはずだ!!さっさと起きろ!セラス!!』

 

 誰かが地下室にいる私を起こしに来たようで、棺桶越しなのと寝ぼけていることもあって言葉の内容は聞き取れないが、棺桶の蓋を叩き私を起こそうとしていた。

 

 ………うーん、うるさいな。

 

 昨日は人間界に迷い込んだデミガイズの捕獲で、夜遅くまで走り回ったんですから、もうちょっとだけ寝かせてくれてもいいじゃないですか…………。

  

 そう思った私は叩き起こそうとする誰かの声を無視し、半ば開きかけていた目をもう一度閉じて狸寝入りを決め込む。

 

『ほう?私の手を煩わせておいて……まだ棺桶から出てこないとは?お前も随分と偉い身分になったようだな?………良いだろう。わからぬというのなら仕方ない…………』

 

 私を起こそうとした誰かは起こすのを諦めたのか、棺桶の蓋を叩くのをやめ、その足音は棺桶から遠ざかっていった。

 

 ふぅ……これでようやくゆっくり寝れる………。

 

 そうだな………あと30分……あと1時間ぐらい……だけ…………───

 

 

 

    

 

ドンッ!ドンッ!ドンッ!!

 

 

   

 

「ふぇあっ!?ふぇっ!?」

 

 

 

 

 

 閉じられた棺桶ごしに、どこか夢見心地だった私の顔に向かって3発ほどの銃弾が打ち込まれ、奇跡的にも顔をかすめる程度で当たらなかったものの、私は思わず変な声を出しながら棺桶から飛び出る羽目となった。

 

「……貴様、昨日私が朝早くに起きるよう言ったはずなのにも関わらず、私が起こしに来てもなお、眠り惚けるとは。11歳になって、随分と偉くなったようだな」

  

 起きたばかりで何が何だがわからずきょろきょろしていると、部屋の奥から私の所属するHELLSINGの現団長にして、私の保護者兼上司である【インテグラ•ヘルシング】がその綺麗な顔に血管を浮かび上がらせながら、私に対し銃口を向けていた。

 

 ………そうだ。今日は私の誕生日で、今日は"例の手紙"が来るからと、いつも忙しいのに休みとってくれてたんだ。

  

 仕事必死に切り上げたっていうのに、その当人がぐっすり寝ているんじゃあ……そりゃあ怒りたくなるよな。………さて、どう釈明しよう?

 

「いや、あの、インテグラさん?別に私今日が誕生日って、言うことを忘れてたわけじゃないんです。ただ昨日のデミカイズ捕獲に思ったより時間を喰って、睡眠時間が取れなかっただけでして………それにほら私って夜行性ですし………」

 

「貴様ここに来て何年になる?夜行性はとっくに改善しただろう阿呆が。そんでもって、私の前で睡眠時間の話をするか?貴様の諸々の申請と通常業務に追われ、今朝鏡を見たら小じわが増えていた私にその話をすると?」

 

「別に増えてないと思いますけどね、小じわ。インテグラさん若いですし」

 

「若い頃から気にしていないと、30年ぐらいしたらしわくちゃのおばぁちゃんになっちゃうんだよ!30年ぐらいしたら!お前は若いし小じわ増えないかもしれないがな!」

 

「なんですか?その30年って、やけにピンポイントな数字。大丈夫ですって!しわの一本二本増えたところで、鉄の女のインテグラさんには対して変化ありませんから、大丈夫です────ふぁっ!?いきなり蹴ることないじゃないですか!?」

 

「人の気にしてること言うな馬鹿!というかお前!今絶賛謝る時間なのに一言も謝ってないじゃないか!?この口か!?悪いのはこの口か!?謝れ!それと睡眠時間を私によこせ!!」

 

「後者はどうしようもないじゃないですか!ごめんなさい!すいません!すいません!けど引っ張らないで!!」

 

「お嬢様、お手紙の方が届きましたので、お届けに参りました。……して、この状況は一体?」

 

 私がインテグラさんに頬をつねられてると、上の階からこのヘルシング家の執事(バトラー)である【ウォルター・C(クム)・ドルネーズ】が階段を降りてこの部屋に入り、私達の現状に対し思わず困惑の表情を浮かべた。

 

 ウォルターさんの表情と、手に持つ手紙を見たインテグラさんは、私の頬をつねるのをやめる。

 

「何、これは軽い折檻の様なものだ、気にするな。それで、その手紙が来たのはいつだ?」

 

「つい先程の9時1分と38秒頃。運んできた梟の種類はアビシニアンワシミミズク。執務室のデスク中央に手紙を投げ込んでいきました」 

  

「セラスがここに来て早10年。魔法力が発現したときは随分と驚いたものだが、遂にこのときが来たか」 

 

「年が巡っていくのは早いものです」 

 

「あの、もしかしてそれ、あれですか?私宛の!」

 

「ああ、お前宛てのホグワーツからの手紙だ」

 

 インテグラさんの言葉を聞いた私は、つい先程までの頬をつねられて落ち込んでいる様子とは一転、目をキラッキラッに輝かせながらウォルターさんから手紙を受け取り、迷わず手紙を開封した。

 

 そこにはホグワーツ入学に際しての祝辞と教材リストが記入されており、ずっと待ち望んでいた内容に思わず、私は笑み(傍から見ればだいぶ不気味な)を浮かべる。

 

「待ってました……待ってました……この時を!これでようやくこの生活費と称して給料をぼったくるブラック環境から卒業できる……!これでようやく毎週1日休みのホワイト環境に転職できる………!」 

 

「うちがブラック企業だと?どの口がいうか居候」

 

「だって事実じゃないですか、人使い荒いのは。この間だって、せっかくの休みだーってはしゃいでたら、急な密輸入されたキメラ捕獲任務駆り出されましたもん、その時の出来高なしに。普通のマグルの機関だったら、余裕で労働基準法違反でしょ」

 

「ブラックではない。貴様の扱いだけが荒いだけだ。あと給料の件はアーカードの使った弾薬費と、暴れた時の損害費の一部を差し引いた結果、あんな見るも無惨になっているだけだ」

 

「………えっ、私の給料低い理由ってもしかして師匠(マスター)のせい?マジですかウォルターさん?」

 

「残念ながら事実です。特にアーカード様が使う弾薬費が甚大であり、1回の戦闘だけで通常の職員20人分。経費がかかる分1回の戦闘に参加する人員をかなり減らし、人件費を大幅に削減することはできていますが、それでも機関の財源だけでは賄えない上、本人に言っても聞かないだろう、ということでこの様なことに」 

 

「そんなぁ……とばっちりじゃないですか。………ちなみに、1週間前出張に出かけた師匠(マスター)の、経費の方は?」

 

「今報告を受けてる限りで、ざっとお前の給料3回分だな。魔法界との国境近くにノコノコ出てきたトロールを追い返すだけのはずが、弱ったトロールを餌にしようと巨人まで現れたらしい」

 

「私の給料………私の給料がぁ…………」

  

 喜びから悪い意味で心機一転。

 

 私は真っ白になってその場に座り込み、口から僅かながら魂が漏れ出した。

   

「まぁ、兎にも角にもお前は11歳となり、ホグワーツ入学することが決まった。………改めておめでとう。【セラス・ヴィクトリア】」

 

 ついさっきまでの怒ったような表情は何処へやら、インテグラさんは私を元気づける様に笑みを浮かべ、私のホグワーツ入学を祝福してくれた。

 

「はい!ありがとうございます!!」

 

 それに対し、私もまた、思いっきりの笑顔で言葉を返した。 

 

 

 

 

  

 

  

 

 

 

 

 

    

                                     ◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

「それにしても久しぶりに来ましたね、『漏れ鍋』なんて。前に来たのは確か、師匠(マスター)がダンブルドアさんに対して一方的に決闘を仕掛けた時の、損害賠償の支払いのときでしたっけ?」 

  

「ああ、あれは実に不味かった。幸い休暇中だったから生徒がいなくて人的被害はでなかったが、何せクィディッチコートの半分が吹き飛んだからな。………大笑いしていたダンブルドアはともかく、マクゴナガルのキレ具合ときたら、今思い出しても笑い話にはできん」

   

「加えてインテグラさん、監督生になるの間違いなしだったのに、候補から完全に外されましたしね」

 

「お前がマクゴナガルを怒らせて、私がまた呼び出されないことを心より祈るよ」

 

 太陽に体に当たらぬよう、できる限り丈の長いブカブカの上着と、底の深い黒い帽子を被った私はインテグラさんとともに、ロンドンのチャリング・クロス通りに面した少し錆びれたパブ、『漏れ鍋』に向かっていた。

 

 漏れ鍋は魔法使い達が必要とするありとあらゆる魔法道具が売られている魔法界の商店街、『ダイアゴン横丁』に繋がる場所であり、人間界で魔法使いが大勢で集まれる数少ない場所だ

 

 ダイアゴン横丁にのみに用があるのならば、姿現しや煙突飛行ネットワークといった瞬間移動のようなもので行く手段もあるのだが、実のところ私はヘルシング家に引き取られて早10年、仕事の手伝いの関係で呪文や基礎的な魔法生物の知識などの実践に必要なことこそは知っているものの、魔法界のことに関しては魔法新聞をちら見する程度あまり知らず、賠償金のことで1度漏れ鍋には行った事はあるのだが、その先の魔法界には1度も行ったことがないため、このような手段を取っているといわけだ。

 

 ………亜人を嫌う魔法族に関係上、私が吸血鬼ってことがバレたらどんな扱いをされるかわかりませんし、妥当といえば妥当なのかもしれませんけどね。

 

 インテグラさんもインテグラさんで、元々私の魔法力が発現しなければ、私に魔法界へ立ち入ることをさせるつもりも、魔法を教えるつもりもなかったらしいですし、今回のホグワーツ入学の件も、ダンブルドアさんと師匠(マスター)の個人的な付き合い、そして何でも前にあった前例がなければ実現しなかったそうですし、運命っていうのは本当に不思議だ。

 

 ………そういえば、『生き残った男の子』って言われてるハリー・ポッター?も、今年ホグワーツ入学でしたっけ?

 

 師匠(マスター)でも倒し切れなかったっていう、”例のあの人”を打ち破ったって聞くけど………正直どんな人か想像できない。

 

 ………やっぱり、師匠(マスター)みたくデカくて、”例のあの人を打ち破ったっていうぐらいだから、ゴリゴリのマッチョだったりするのかな?さもなくば、ヒゲモジャモジャの大男だったりして。

 

「……何をろくでもないことを考えていた、セラス?ここ10年で一番変な顔をしていたが」

 

「いえいえ、大したことじゃないですよ。ただ、私が魔法界に足を踏み入れる日が来るだなんてな、と思いまして」

 

「それもそうか。正直私もお前がここに立ち入るとは思っていなかった。………魔法界に入る上で重要な事、覚えているな?」

 

「”決して、自身が吸血鬼だとバレてはいけない”。”決して、他者に怪しまれない”。”決して、面倒事には関わらない”、ですよね?」

 

「そうだ。校長であるダンブルドアにはもう既に伝えてはあるが、お前の入学反対を防ぐため、ダンブルドア以外の職員にはお前が吸血鬼だということを伝えていない。そして、HELLSINGは人間界でこそ強い力を持っているが、基本魔法界に不干渉な分、正直私としてもお前をあまり庇う事はできない。………堅苦しいとは思うが、悪くは思うなよ」

 

「悪くなんて1ミリも思ってませんよ。私としては、インテグラさんが私のために色々してくれただけで、十分ですもん」

 

「何だ?お前にしては素直だな」

 

「だって、前にペット飼いたいって言っても許してくれなかったですし、有給が欲しいって言っても1度もくれたことなかったですし、お小遣いくれーって言っても、くれたことなかっ────イタタタッタ!悪かったです!言い過ぎました!!」

 

「全く、お前という奴は何年経っても進歩しないな。だが、その優しさだけは、多少評価してやる。ホグワーツに入学しても、その優しさを失わん様にな」

 

「うーえっ。インテグラさんが似合わない臭いセリフ言ってる。それにそういうのって、出発直前に言うもんじゃないんですか?」

 

「仕方ないだろ!当日予定山積み何だから!それと臭い言いうな!………まぁ、とにかくだ。行くぞ、セラス」

 

「はい、インテグラさん」

 

 そう私が頷くと、インテグラさんは漏れ鍋の裏庭にある煉瓦の壁には壁の煉瓦のうち、少しばかり飛び出ている煉瓦を軽く腰の杖で3回ほど叩いた。

  

 すると壁の煉瓦全体が震え、動いていき、最終的に壁は大きなアーチ型の入口になった。

 

 そして、アーチを潜り壁のその先に向かっていくと、つい先程までの錆びれた雰囲気とは一転。

 

 普通のマグルの大通りでは置いていないであろう、フクロウやネズミが並ぶペットショップや、明らかに怪しそうにプクプクと泡を立てて緑に輝く薬が並ぶ薬屋、誰が買うのだろうと思わず思ってしまう人に噛みつく奇妙な本を扱う本屋などの、多種多様な店が揃ったダイアゴン横丁に辿り着いた。

 

 人間界とは全く違う景色と雰囲気を前に、私は興奮を隠せない。

 

「うわぁ……凄い……!めっちゃ色々並んでますよ!!」

 

「確かにそうだが、もっと捻った感想は言えんのか。あまりにも感想が幼稚すぎる。」

 

「だって、全体的にグワー!って感じですし!彼処の店なんかグーイッ!って感じですし!」

 

「全部擬音じゃないか。そんでもってなんだ?グワーッとか、グーイッって。まぁ、目の付け所がいいっていうのは、間違いないようだが」

 

「もしかして、買い物するお店ですか?」

 

「”マダムキマルキンの洋装店”、制服の購入場所だ。他のホグワーツ入学者達の目はペットショップやら、箒屋やらに目がいって、丁度今空いていているようだし、早速ここから回るとしよう」

 

「わーいっ!支給品以外の洋服だ!!」

 

「こらっ!危ないから走るな!」

 

 興奮が冷めきらぬまま、私はマダムキマルキンの洋装店に突撃し、チリンチリンとなる古めかしいドアを開けた。

 

 マダム・マルキンは、藤色ずくめの体型を着た愛想のよい魔女で、物凄い勢いで入ってきた私を、可愛らしいものを見たかのように小さく笑った。

  

 その様子に私はハッとなって顔を赤くし、遅れて入ってきたインテグラさんはやれやれとため息をつく。

 

「元気のいい、お嬢ちゃんですこと。よっぽど服が欲しかったみたいね」

 

「お恥ずかしいものをお見せしてすまない。……やはり私が来て正解だった」

 

「いえいえ、構いません。ところでお嬢ちゃんはホグワーツなの?それならここで全部そろいますよ?」

 

「はい、今年入学なので制服を一揃えお願いします」

 

「それと注文を一つ。この子は皮膚が弱いから、できるだけ素肌を日光に当てるわけにはいかない。制服のローブを、気持ち大きめに頼みたい」

 

「そうなりますと、少し高くなりますが大丈夫ですが?」

 

「ああ、構わん。いくらかかってもいいから、素肌を隠すことを重視してくれ」

 

「分かったわ。では、今から採寸しましょう」

 

 そう言われると私は踏み台の上に立たされれ、頭から長いローブを着させられた。

 

 問答無用とも言える速さに、私が驚いている間にもマダム・マキルキンは素早い手付きでピンを刺し、足りない分の丈を手元の紙に書き込んでいく。

 

「やあ、随分と騒がしかったようだが、君も今年ホグワーツに入学するのかい?」

 

 マダム・マキルキンが紙に足りない丈の長さを書き込み奥に行き、インテグラさんが採寸の間、教科書やらを買いにその場から立ち去ると、隣の特徴的なプラチナブロンドの髪型の男の子が、私に話しかけてきた

 

「はい、騒がしくてすいません。何分支給品以外の服を買ってもらったことなかったので、少しはしゃいじゃって」

 

「支給品?君の両親はどうしたの?ついさっきの眼鏡を掛けた女の人じゃないのかい?」

 

「両親の方は赤ん坊の時に死んじゃいまして、インテグラさんは私を引き取ってくれた人の娘さんです。それでそのインテグラのお父さんは私が物心つくぐらいに、昔闘った闇の魔法使いとの古傷が悪化して死んじゃったので、今はインテグラさんが私の保護者兼上司をやってくれてます」

 

「ふーん、随分と複雑そうだね。保護者兼上司って、君がなにか仕事を?」

 

「まぁ仕事って言っても、殆ど雑用みたいなものです。迷い込んだデミガイズの捕獲とか、密輸入されたキメラ捕獲の囮とか、アッシュワインダーの卵の冷凍凍結とかまぁ、色々やらされてます」

 

「………複雑どころか、よく生きてるね、君」

 

「改めて思い返すと………よく生きてますね、私」

 

 男の子は私に少し同情的な視線を向け、私はというと窓の方の少し遠い場所を見つめる。

 

「それはそうと、君のその、死んじゃった両親は魔法族なのかい?君がそんな凄い事をしているんだ。きっと名家生まれに違いない」

 

「うーん、そこはあまり詳しく聞いてないんですよね、私。今の生活は大変ですけど楽しいですし。師匠(マスター)、じゃない。私を拾ってくれた人が言うには、尊敬に値する強い人間だった、らしいですけど。あっ、インテグラさんの家は一応(人間界の)名家、らしいです」 

 

「きっとそうだと思った。そんな雰囲気が出ていた。僕の両親は2人とも魔法族。純血の(魔法界の)名家ってやつさ」

 

「へぇー、じゃあ凄い立派な家なんですね」

 

「ああ、そうさ。ところで君は自分用の箒を持っているのかい?」

 

「いえいえ。私は肌が弱い(そういう設定)ので、箒に乗るなんてことできませんよ。あっ、けど、クィディッチのことは知ってます。インテグラさんが凄い強い選手だったので」

 

「そうかい。君が箒に乗れないとは実に残念だ。じゃあ、君はどの寮に入るかもう知ってるの?」

 

「いえいえ、まさか。それは行ってみないとわかりませんよ。ただ、入るならやっぱりグリフィンドールが良いですね。塔の上に寮があるらしくて、そこから見える星が綺麗らしいんですよ」

 

「僕としてはスリザリンをオススメする。多くの名家の魔法使いはそこを卒業してるし、僕もきっとそうだ。けど、ハッフルパフはオススメしない。もし入れられたら、僕なら退学する」

 

「ハッフルパフだっていい寮ですよ?魔法動物とその生息地っていう、有名な本の作者のニュート・スキャマンダーさんも、ハッフルパフ出身でしたし」

 

「それを言ったら、かの有名なマーリンはスリザリン出身だろ」

 

「確かに……それを出されたらネームバリューで負けるな………」

 

 僅かながらすれ違いはあった気がするが、私と隣の男の子はそこそこ楽しい会話をし、先に男の子の方が採寸を終わらせた。

 

「じゃ、ホグワーツでまた会おう。たぶんね。僕の名前はドラコだ」

 

「私の名前はセラスです。じゃあ、またホグワーツで」

 

「ああ、元気でね」

 

 そう言うとドラコは行ってしまい、その数分後に私の採寸が終了した。

 

 料金の方はインテグラさんが事前に払っていたようで、私は制服の方を受け取り、店の前で本を読んで待っていたインテグラさんと合流する。

 

「おお、採寸の方は終わったようだな。そんでもってどうした?そんな楽しそうな顔をして」

 

「実は隣で採寸してた子がホグワーツの入学者だったみたいで、色々と話してたんですよ。もしかしたら、友だちになれたかもしれません」

 

「まだ入学もしていないというのに、気が早いやつだ。交友関係が広いことに越したことはないが」

 

「ところで、教科書とかの方の買い物は終わりましたか?」

 

「ああ、全て問題なく買い終えてある。あとの残るは杖だが……これはオリバンダーの店で、問題ないだろう」

 

「へぇ、お店ですか。てっきり、いつもみたく、誰かから貰うのかと」

 

「貸出用の杖でも使えんことはないが、自身に合う杖とでは雲泥の差だ。何よりあれはHELLSINGの所有物だから、それほいほいと任務以外で持っていかれたら敵わん」

 

「で?ここがオリバンダーさんの店ですか?………随分と古くて、ボロボロですけど」

 

「何せ紀元前382年創業らしいからな。それだけ歴史もあるってことだ」

 

「歴史は確かにありそうですけど………歴史がありすぎて、店が壊れそうなんですけど」

 

「魔法界には部屋をくっつけて高くしたような、歪な形をした家だってあるんだぞ?細かいことを気にするな」

 

「せめて看板の錆取りぐらいはしたほうがいいと思うんですけど………」

 

 そんな事を言いながら入った店は案の定古っぽかったようで、全体的に埃だらけであり、小さな店内に古臭い椅子が置いてあるだけだった。

 

 そして扉を開けて目の前を見た瞬間、いつの間にか薄い色の目をした老人が目の前に立っている。

 

「いらっしゃいませ。杖をお買い求めで?」

 

「はい、そうです。ホグワーツに入学するので」

 

「それでは、さっそく杖を選びましょう。杖腕はどちらですかな?」

 

「両利きですけど、どっちかと言ったら左です」

 

「腕を伸ばして。そうそう」

 

 私が腕を伸ばすと、オリバンダーさんは肩から指先、手首から肘、肩から床、膝から脇の下、頭の周りと、寸法を採りながら話をする。

 

「この店の杖は、一本一本に強力な魔力を持った芯を使っております。ユニコーンのたてがみ、不死鳥の羽根、ドラゴンの琴線……ですが、同じ杖は1つとしてありませんユニコーンも、ドラゴンも、不死鳥も皆それぞれ違うのじゃから。オリバンダーの杖には1つとして同じ杖はない。勿論、他の魔法使いの杖を使っても、決して自分の杖ほどの力は出せないわけじゃ」

 

「へー、そういう風な感じなんですね。あれ?そういえば、インテグラさんの杖はお父さんが使っていたものを受け継いで使ってますよね。その話だと、あまり力出せないんじゃ?」

 

「いや。この杖は代々ヘルシング家当主を選び、受け継がれるものだ。父が使っていたどうこうは関係ない」

 

「魔法使いが杖を選ぶのではなく、杖が魔法使いを選ぶのです。もっとも受け継がれるほど気のいい杖は、あまり見たことがありませんが」

 

「何というか、杖1本1本に性格があるみたいですね」

 

「実際にそういう傾向はあると思いますよ。では、ヤナギの木にドラゴンの心臓の琴線、24センチ」

 

 そう言ってオリバンダーさんは箱から杖を取り出し、私の左腕に手渡した。

 

 試しにそっと振ってみると、杖の先から眩い光が放たれ、私は眩しさのあまり杖を落とした。

 

「ふむ。これは駄目か。では次。ブドウの木とユニコーンのたてがみ、30センチ」

 

 続いて渡された杖を振ってみると、杖からは砂粒がちょびっと零れ落ち、小さな砂の山を作った。

 

「ならば、これ。シカモアの木。ドラゴンの琴線、21センチ」

 

 更に渡された杖を振ってみると、今度は杖が急に熱を持ち、私は思わず杖を放り投げてしまった。

 

 その後もオリバンダーさんは様々な杖を渡し、私はその度に何度も杖を振るが一向にも合う杖が見つからず、オリバンダーさんは思わずため息をついた。

 

「難しい客じゃの。今日はこれで2人目じゃ」

 

「セラスはちょっとばかしおかしいからな。並の杖では合わんだろう」

 

「ちょっと!それどういう事ですか!?」

 

「となるとどうしたものか………。………いや、待てよ?もしかしたら………」

 

 そう言いながらオリバンダーさんはカウンターの直ぐ側に置いてあった、まだ箱に入ってない見新しい杖を持ってきて、私に手渡した。

 

「では、これを振ってみてください。もしかしたらそうかもしれません」

 

「もしかしたら、って。ついさっきみたいに、材料の説明は────」

 

「いいから!早く!早く振ってください!もしかしたらそうかもしれません!」

 

「はっ、はい!わ、わかりました!!」

 

 ほぼ強制的ながらも私は思わず目を閉じ杖を振り、そして次の瞬間、店全体から漏れ出るほどの赤黒い光が、辺り一面に放たれた。

 

 どうやら光は私の持っている杖から放たれたようで、数秒間光は店中を飛び回った後、私の胸元に飛び込んだ。

 

 その瞬間、私は体の奥底から湧き出るような、不思議な力を感じる。

 

「………これだ。この杖だ。私を待っていてくれた杖は!この杖です!」

 

「ブラボー!素晴らしい!まさか1度ならず2度までも!不思議な事に巡り会えるとは!私も杖作りをして長いですが、こんな凄い日は初めてです」

 

「驚きだ。まさかここまでセラスの杖選びが早く終わるとは。ビビりながら振った割には、随分と似合ってるじゃないか」

 

「急かされていたので最初はわからなかったんですけど、今となってはこの杖しかない!って感じです。握りやすくて振るい安いですし、何よりなんだか持ってて落ち着く、そんな感じがします」

 

「そこまで言ってくれるとは、私も職人冥利に尽きますよ。この杖の制作を依頼した方も、きっと喜ばれる」

 

「この杖を作るように依頼された?そういえばこの杖は箱に収められていなかったが、作りたてなのか?」

 

「はい。今日の明け方にできた物です。イチイの木で22センチ、非常に固く、そして依頼者の持ってきた吸血鬼の髪を芯に使っております」

 

「吸血鬼の髪………。………なるほど、セラスを気に入るわけだ」

 

「吸血鬼の髪だなんて珍しいもの、よくその制作を依頼した人は手に入れましたね。普通そんな貴重なもの手に入れて、誰かの杖にするだなんて考えられませんよ」

 

「もしかしたら、あなたがその杖を持つ事をわかっていたのかもしれませんよ?1週間ほど前に来たその方は、丁度その様な事を申していましたから」

 

「1週間前?………おい、セラス。まさかな?

 

いやいや、流石にそれはないでしょ、インテグラさん。勘違いですよ、勘違い………

 

「そうだな。きっと、勘違いだ、勘違い………」

 

「どうかされました?」

 

「いえいえ、何でもありません。ちなみに、ですけど?その人、どんな、見た目してました?いえ、ちょっと、少し気になるので、一応、知って、おこうかと」

 

「見た目、ですか。そうですね………。………確か、杖を持たず、マグルの使う武器を持っていました。それと………」

 

「………赤い服と、赤い帽子を来ていて」

 

「サングラスを付けて、結構大柄な男性………なわけ、ないですよね?」

 

「あっ、そうです。その方です。もしや、お知り合いの方でしたか」

 

 オリバンダーさんのの笑顔の一言に、私とインテグラさんは口を大きく開けたまま目を見合わせ、私の持つほぼ100%師匠(マスター)の髪が入っている杖を見つめる。

 

「お代の方は結構です。依頼した方が依頼料と一緒に杖の代金を持ってきて、選ばれた方にタダで渡して欲しい仰られていたので大丈夫です。しかし、知り合いの方が材料を持ってきて制作を依頼するとは、なんとも愛されてますな」

 

「ハハッ、ソウデスネ。ハハッ、ハハ」

 

「では、セラス。この杖を早く持って、ダイアゴン横丁の郊外に行こう。そこなら、迷惑がかからないはずだ」

 

「迷惑?もしや、早速魔法の練習ですか?」

 

「いや、そんなのではない。そんなのでは」

 

「では?どの様に?」

 

 

 

 

 

「簡単ですよ。この杖、今直ぐ燃やそうかなと」

 

「徹底的に折った上で、灰も残らないくらい」

 

「何を考えているんですか!?!?」

 

 

 

 

 

「だってこの杖完全にアウトです!!色々とアウト!!いや、確かにこの杖なんですけど、駄目です!!色々駄目です!!」 

 

「あの馬鹿は何を考えているんだ馬鹿!?こんな物を作らせるな!!何をろくでもないことをしているんだ本当に!!」

 

「代金を払い依頼までしてくれたその方になんて失礼なことを言うんですか!?やめてください!!杖を折って燃やすのはやめてください!!」

 

「いいや、これは絶対に処分する!!燃やせぬとしても海に沈めるなり厳重に清めた上でこの粉々にするなりにして絶対に処分する!!だから離せ!!離すんだ!!オリバンダー離すんだ!!」

 

「杖を処分するなどというお客様を離せるわけないでしょ!?」

 

「あー、もうっ!!師匠(マスター)のバカーァァァッ!!!」 

 

 私の虚しい叫びはダイアゴン横丁中に響き渡り、斯くして、私の初の魔法界巡りであり、ある意味最も疲れた魔法界巡りは、ここに終了した。

 

 

 

  

 




 
 
・その後の、杖の行方
 
イ「………嘘だろ?万力を使っても折れやしないし、1000度の炎を浴びても燃え尽きない、だと?」
 
ウォ「加えて銃弾を受けても傷一つつかず、海に沈めようものなら10秒も待たず1人でに舞い戻り、刃を当てようものなら逆に刃が零れ落ちるとは………流石アーカード様の髪でできた杖…………」
  
セ「最早これ……杖じゃないですよ…………」
 
 どうやっても処分できず、結局、セラスは(嫌々)この杖を使うことにしたそうな。
 
  
 
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